宇宙戦士バルディオス

◆メディア:TV ◆放映年月日:1980年6月〜1981年1月
◆話数:全34話 ※1 ◆監督:広川和之
◆キャラクターデザイン:上條修 ◆メカニックデザイン:佐藤元
※1:TV放映上は全31話だが、DVDでは未放映分が追加されて全34話となっている。
あらすじ

 ソウルと呼ばれる恒星。その第1惑星であるS-1星は、滅亡の危機に瀕していた。放射能汚染が進み、余命いくばくもないS-1星を救うため、レイガン博士は、放射能ろ過装置の研究を進めていた。一方、軍部を率いるゼオ・ガットラーは、移住可能な惑星を探して武力侵略を行うという策を提案していた。そして、レイガン博士の実験が成功したその日、ガットラーは皇帝トリノミアス三世を暗殺。さらには、腹心の部下ローザ・アフロディアをレイガン博士殺害のために向かわせた。アフロディアはレイガン博士の暗殺に成功するも、博士の息子マリン・レイガンは、アフロディアの弟ミランを射殺して、亜空間航行機パルサバーンで脱出。マリンは、ガットラー率いるアルデバロン軍の亜空間要塞アルゴルと戦おうとするが、その亜空間ワープに巻き込まれてしまう。
 目覚めたマリンは月にいた。そのころ、木星や火星にある地球人の基地は、突如として現れた謎の侵略者─アルデバロン─に攻撃されていた。地球防衛軍ブルーフィクサーにより発見されたマリンは、侵略者の仲間として連行されてしまう。雷太、オリバーらブルーフィクサーの面々から敵のスパイだと、あらぬ嫌疑をかけられてしまうマリン。父を殺したアルデバロンを憎んでいるのだというマリンの声も、彼らには届かない。そんななか、アフロディアが繰り出したアルデバロンメカ、ビッグオクトの襲来により、雷太が乗るキャタレンジャー、オリバーが乗るバルディプライズがピンチに陥る。マリンは地球の技術で改造により強化されたニューパルサバーンで出撃。キャタレンジャー、バルディプライズと合体したバルディオスで、ビッグオクトを撃破するのだった。

キャラクター

 キャラクター面での最大のトピックは、やはりマリンと女軍人アフロディアの関係だろう。お互いに肉親の仇でありながら、しだいに惹かれあっていく展開はある意味王道ともいえる。ただし、特筆すべきなのはマリンとアフロディアの道は、いく度となく交差しつつも最終的に1つにならずに悲劇の幕を閉じる点である。また、異星人であるマリンが長きに渡って地球人から過酷な仕打ちを受けてしまうという点にも注目したい。従来のアニメでは、多くの場合異星人は倒すべき敵であった。本作でもそれ自体は変わらないが、地球のために戦う主人公であるにもかかわらず、S−1星人であるというだけで、いわれなき蔑視の目を向けられるという展開は、人間がもつ負の側面を生々しく表現している。S−1星人からは裏切り者として、地球人からはスパイとして疑われるマリンだが、少しずつ地球人に受け入れられていくという希望も描かれている。

用語1

●ブルーフィクサー

 正式名称「ブルー・フィクサー・シークレット(BFS)」。西暦2091年に設立された地球の環境汚染を調査するために世界連盟が設立した組織。月影剛士が長官を務める。ブルーフィクサー基地は通常時は地上に固定されているが、有事の際には移動要塞として浮上することが可能となっている。バルディオス完成後のブルーフィクサーは、世界連盟軍を凌駕する戦力を有しており、「影の軍隊」とまで呼ばれるほどになっている。
 ちなみに、本作の世界観では地球が外敵からの攻撃にさらされたのは初めてではない。西暦1999年に異種生命体からの攻撃を受け、甚大な被害を被っているのである。この時の反省から世界は1つとなり、統一国家である世界連盟が誕生したのである。

©PRODUCTION REED 1980


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ストーリー

 なんといっても、放射能汚染されて余命いくばくもないS-1星が、地球の未来の姿であるという衝撃のタイムパラドックス展開が絶句もの。しかも、ブルーフィクサーとアルデバロン軍の戦いの結果として、地球はS-1星へと変貌してしまうのだから、悲劇はここに極まれる。なお、この作品は残念ながら全39話の予定のうち、第32話までしか実際にTVでは放映されておらず全31話となっている(第30話は未放映)。紹介したあらすじは、フィルムは完成したものの放映されなかった話数や、のちに関連書籍などで公開されたシナリオのみ完成していたエピソードを加味したものである。
 では、TV放映時の最終回はというと、なんと地球が壊滅していくシーンで終了している。しかも、これは本来、前後篇の前篇だけを放映したものであった。このアニメ史上まれに見る強烈なインパクトを与えたラストシーンは、多くのファンの反響を呼んだ。そして、放映終了から1年も経過しない1981年12月には、ファンの声に応えて劇場用作品が公開された。これは、TV版に大幅なリテイクを加え、未放映エピソードを追加するなど、ストーリーを再構築したものだった。

メカ

 バルディオスは、全長100メートルという、数あるロボットアニメの主役メカのなかでもかなり大型の部類に入り、劇中でもその絶大な力をあますことなく振るっていた。また、3機のメカが合体して誕生するロボットは当時すでに珍しくはなかったが、戦車であるキャタレンジャーと空母であるバルディプライズが、左右対称の両脚に変形するというギミックは、現在の目で見ても新鮮である。なお、先述のとおりこの作品には未放映のシナリオが存在する。そのなかで、バルディオス最大の必殺技バルディロイザーの存在が明かされているが、これは劇場版においても映像化されることがなかった。しかし、2008年に発売された『スーパーロボット大戦Z』にてゲームではあるものの初めて映像化された。TV版放映から4半世紀を経過し、はじめてファンの前にその全貌を現している。ちなみに、未放映のシナリオでは、バルディロイザー使用時に雷太が死亡。バルディオスも再起不能となってしまっている。

用語2

●アルデバロン

 ゼオ・ガットラーを総統とする地球侵略軍。ガットラーのもとで、最高司令長官であるローザ・アフロディアが、科学局、情報局、移民局など、さまざまな部署を統括する。
アフロディアは、「情け無用の戒律」と呼ばれる鉄の掟をもうけており、組織内部での綱紀粛正を図っている。その内容は以下のとおり。
・情け無用の戒律

一、勝手な行動は死刑
二、敵に背を向けた者は死刑
三、敵に情けをかけた者、かけられたものは死刑
四、戦隊を乱す者は死刑

 なお、アルデバロンは21,300メートルに及ぶ巨躯に、3億2000万人ものS-1星の人々を収容する亜空間要塞アルゴルを本拠としている。