戦闘メカ ザブングル

◆メディア:TV ◆放映年月日:1982年2月~1983年1月
◆話数:全50話 ◆監督:富野由悠季
◆キャラクターデザイン:湖川友謙 ◆メカニカルデザイン:大河原邦男
あらすじ

 惑星ゾラと呼ばれる地球。そこではイノセントと呼ばれる人々により、シビリアンと呼ばれる人々が支配されていた。イノセントによってもうけられた、あらゆる罪が3日間逃げ切ることですべて不問となる三日の掟。それを破り、人々にうしろ指をさされつつも、両親の仇を捜して無法の荒野をさすらう少年がいた。その名も、ジロン・アモス。あるときジロンは、山賊グループであるサンドラットのラグ・ウラロらと知り合い、彼女たちの力を借りて運び屋キャリング・カーゴから新型ウォーカーマシン、ザブングルを強奪しようとする。しかし、キャリングの娘エルチが乗るもう1機のザブングルにより企みは失敗し捕らわれてしまう。だが、そんななかジロンは両親の仇ティンプ・シャローンと再会するのだった。
 戦いのなか、キャリングが帰らぬ人となった。ジロンとサンドラットは、カーゴ一家のランド・シップ、アイアン・ギアーと行動をともにすることに。アイアン・ギアーはイノセントとの取引を行うべく、ティンプの口車に乗った運び屋ビッグマン一家からの攻撃をかわしつつ上納ポイントへと向かうのだった。ドームに住まうイノセントの一級司政官ビエルはジロンたちに新時代を生きる人類の可能性を見い出し、好意的であった。しかし、ジロンはティンプと決着をつけるためにドームを破壊。これにより、ジロンはイノセントのお尋ね者となってしまう。

キャラクター

 『戦闘メカ ザブングル』の特徴である「パターン破り」は、キャラクターも例外ではない。それを代表するのが「そうカンタンに死ぬかよ! アニメでさ!!」という、主人公ジロン・アモスのセリフだろう。ほかにも物語後半で、超巨大なアイアン・ギアーが空を飛ぶのを「マンガだからね」のひとことですませてしまったりと、メタフィクション的なネタが多数盛り込まれていたのだ。この作品の登場キャラクターは、誰もが細かいことでクヨクヨ思い悩むことのない心の強さ─どちらかというと大ざっぱさ─を持ち合わせていた。その点こそがほかの作品には見られない『ザブングル』最大の魅力で、だからこそ見ている我々も「マンガだからね」と言われるだけで納得させられてしまう力強さを持っていた。

用語1

●イノセント

 惑星ゾラを支配する人々で高い科学力を持っており、それを用いてシビリアンを支配下に置いている。ウォーカーマシンやランド・シップを作り出したのも彼らである。一方でその肉体は非常にぜい弱であり、惑星ゾラの外気に漂う細菌に対する免疫力を持たない。そのため、各地に巨大なドームを築き、その中で外界と隔絶された生活を営んでいる。
 その正体は、惑星ゾラを荒野へと変えた大異変から逃れ、一時宇宙に退避していた人々である。彼らは失われた文明を再興すべく、ぜい弱な自分たちに代わる新人類を遺伝子操作によって生み出そうとした。トラン・トランやハナワン族といった失敗を経て、生み出された種がシビリアンである。イノセントのなかには、アーサー・ランクらのように、本来の目的どおりに、いずれはシビリアン(の進化種)に文明を託そうと考える者もいたが、カシム・キングのように特権的なシビリアン支配を続けようと考える者も多かった。
 なお、イノセントはブルーストーンという特殊な鉱石をシビリアンから高値で買い集めていたが、その目的は不明である。

©創通・サンライズ


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ストーリー

 この作品は『無敵超人ザンボット3』や『機動戦士ガンダム』を手がけた富野由悠季監督による作品である。一時期「皆殺しの富野」とすら呼ばれたこともある同氏の監督作品ながら、この作品はコメディ色が非常に強く、純粋なエンターテインメント作品として仕上がっている。全編を通じて見ると展開自体は意外にもハードで、死亡したキャラクターも決して少ないとはいえない。だが、そこにまったく陰うつさを感じさせないのは、ジロンたちのキャラクター性が持つバイタリティ、そしてそれを表現する軽妙な演出のなせるワザであった。
 1983年に公開された劇場版『ザブングルグラフィティ』は、TV版を再編集した作品だったが、その作風は輪をかけて明るいものになっていた。TV版で非業の死を遂げたアーサー・ランクがラストシーンで「実は生きていた」ことが判明するほか、色が塗られていない動画を直接撮影したシーンが用いられており「これが動撮だ!」というテロップが付けられるなどの遊び心も満載の作品となっていたのである。

メカ

 この作品はさまざまな「パターン破り」が盛り込まれ、のちの作品に大きな影響を与えたパイオニア的な存在である。そのうちの1つが、主役メカの交代劇だ。物語の前半でジロンが乗るウォーカーマシンは、番組タイトルにもなっているザブングル。だが、第26話において新型ウォーカーマシン、ウォーカーギャリアが登場し、ジロンはそちらに乗り換えることになる。現在の目で見れば、こうした後継機への乗り換えはめずらしいことではないが、当時としては初の試みであった(同一デザイン、同一名の新型ロボットに乗り換えた前例はある)。
 また、主人公のロボットであるザブングルや、母艦であるアイアン・ギアーに同型機が多数存在するということも、これまでになく視聴者の意表をついた要素であった。また、アイアン・ギアーが戦艦ながら、ロボット形態に変形するという破天荒な設定も非常に斬新である。一方、作風自体はコミカルながら、ウォーカーマシンのデザインは重機を思わせる質実剛健なもので、その独特の存在感を愛するファンも多い。

用語2

●ウォーカーマシン

 イノセントによって開発された人型機械。もともとはシビリアンの移動、運搬、採掘といった各種作業などに用いられる重機的役割を持っていたが、荒くれ者が多い惑星ゾラでは兵器として使われることも少なくない。新型のウォーカーマシンのなかには、ザブングルのように最初から戦闘用として開発されたタイプも存在する。また、ウォーカーマシンは、基本的には2本足で歩行する陸上用の機械だが、のちにはホバー飛行がメインとなるタイプも登場している。なお、燃料にはガソリンが用いられており、ザブングルタイプなどは自動車同様にハンドルやアクセルなどで操縦するようになっている(レバーで操作する形式のウォーカーマシンも存在する)。