超獣機神ダンクーガ

◆メディア:TV ◆放映年月日:1985年4月~1985年12月
◆話数:全38話 ◆監督:奥田誠治
◆キャラクターデザイン:いんどり小屋
◆メカニックデザイン:平井寿(中村プロダクション)、大張正己
あらすじ

 突如現れ、地球へと魔の手を伸ばした侵略者ムゲ・ゾルバドス帝国。その圧倒的な力の前に、地球軍はあまりにも無力だった。その緒戦のなかで、士官学校のパイロット候補生である藤原忍は、教官であるシャピロ・キーツと、その恋人結城沙羅が敵側に寝返ろうとするところを目撃。沙羅を止めることには成功するも、シャピロには逃走されてしまう。ムゲ帝国による一方的な攻撃が続くなか、忍は特別機甲部隊である獣戦機隊への配属を申し渡される。地球軍のロス・イゴール長官とバイオ・ハイテックの権威である葉月考太郎博士によって率いられる、新兵器・獣戦機を擁する獣戦機隊。その戦闘要員は当初忍のみだったが、やがて沙羅や式部雅人、司馬亮が配属され、世界各地のゲリラと協力しつつムゲ・ゾルバドス帝国との戦いを展開する。
 そんななか、ムゲ帝国に下り幹部となったシャピロが罠を張り、獣戦機隊を待ち受ける。罠にかかり、窮地に陥ってしまった獣戦機隊。そのピンチを救うべく、葉月は獣戦機の合体の封印を解く。忍が兄貴と慕う輸送班のキャプテン、ゲラールがその身を犠牲にしたことで合体は成功。獣の怒りを超え、人の憎しみを超えた神の戦士ダンクーガが誕生する。その圧倒的な力は、ムゲ帝国の将軍デスガイヤーを本星へと退けるが、ムゲ・ゾルバドス帝王は新たにギルドローム将軍を派遣し、戦火はますます激しさを増していく。

キャラクター

 この作品に登場するキャラクターのなかで、ひときわ異彩を放つ存在は、獣戦機隊のライバルとなるシャピロ・キーツであろう。地球人でありながらムゲ・ゾルバドス帝国に下り、狂気的な野望のためにのし上がっていくさまは非常に印象的で、その言動には悪の華とでもいうべき魅力があった。沙羅との愛憎劇もまた、彼のキャラクター性を高める一因となり、敵でありながら、第34話以降のエンディングテーマとして彼をイメージした楽曲、映像が用いられるほどのキーマンとなった。
 一方、破天荒な性格を持った美男美女である獣戦機隊の面々にもファン人気が集中した。1987年には、獣戦機隊を演じた声優によるバンドユニット(その名も「獣戦機隊」である!)が結成され、ライブツアーが行われた。当時は現在ほど声優の方々が表舞台に立つことは多くなく、このライブツアーは一種の伝説と化したのである。このライブを収録したビデオが発売されたほか、『GOD BLESS DANCOUGA』の劇中で忍たちがライブを行うシーンが挿入されるというような影響を与えている。

用語1

●獣戦機隊

 エイリアンの襲来を予期し、ロス・イゴールが日本にて創設した地球軍の特殊機甲部隊。葉月考太郎が開発した4機の獣戦機─イーグルファイター、ランドクーガー、ランドライガー、ビッグモス─を主戦力とする。獣戦機はそれぞれ、タンクモード(イーグルファイターはファイターモード)、ヒューマノイドモードへの変形が可能だが、搭乗者の野生の本能が目覚めることでアグレッシブビーストモードとなり、その真価を発揮する。そのため、搭乗者には藤原忍ら、高い闘争本能をもった若者たちが選ばれた。
 なお、前線で戦う戦闘部隊は、通常4機の獣戦機のみだが、その輸送を担う輸送班や特殊処理班など、さまざまなバックアップスタッフも所属している。

©PRODUCTION REED 1985


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ストーリー

 1985年にTVアニメとして放映された『超獣機神ダンクーガ』。単機で絶大な力を誇るロボットに、謎の侵略者の襲撃と、スーパーロボット路線の色濃い設定ながら、ゲリラの存在をはじめとしたミリタリズムに満ちたリアルロボット路線をも両立している。アニメファンから高い人気を獲得した作品ではあるが、TV版では、ムゲ・ゾルバドス帝王との決着がついていない。ムゲ・ゾルバドス本星へ獣戦機隊が乗り込むところで放映が終了しているのだ。だが、放映中すでにOVA『失われた者たちへの鎮魂歌』の製作が決定しており、こちらにおいてデスガイヤー将軍とムゲ・ゾルバドス帝王との最後の戦いが描かれている。さらに、復活したムゲ帝王との戦いを描いたOVA『GODBLESS DANCOUGA』が1987年に発売され、1989年から1990年にかけては、シャピロが復活してランドライガーに乗るという衝撃の展開を盛り込んだ、全4話からなるOVA『白熱の終章』がリリースされている。また、2007年にはダンクーガとの関連を匂わせつつ新しい世界観のTVアニメ『獣装機攻ダンクーガ ノヴァ』が放映されるなど、その人気はいまだとどまるところを知らない。

メカ

 この作品はロボットアニメ史上きわめて稀有な特徴を持つ作品である。というのも、主役ロボットであるダンクーガが、なんと全38話中の第16話までまったく登場しないのだ。それまでは分離メカである獣戦機が活躍していたが、そのヒューマノイドモード(人型)への変形は第11話。さらにさかのぼれば、獣戦機が全機そろったのは第5話であり、第1話にいたってはそもそも獣戦機が登場しないということである。当時、メインスポンサーである玩具メーカー主導のもとに、玩具の販促意図を込めて製作される傾向にあったロボットアニメとしては、異例中の異例ともいえる展開であった。
 満を持して登場したダンクーガは、存在自体が必殺技のごとく扱われ、素手であらゆる敵をなぎ倒す絶大な力を誇った。そのため、武器は一切持っていなかったが、『失われた者たちへの鎮魂歌』で必殺武器として断空剣が登場。『GODBLESS DANCOUGA』では、断空剣を用いたさらなる必殺技、断空光牙剣が披露されている。ちなみに、『第2次スーパーロボット大戦Z 破界篇』には、アランが乗る鳥型メカ、ブラックウイングと合体したファイナルダンクーガが登場するが、これはメカニックデザインを担当した大張氏がDVD-BOXのために描き下ろしたパッケージ画が初出であり、アニメ本編には登場していない幻の機体である。

用語2

●ムゲ・ゾルバドス帝国

 ムゲ・ゾルバドス帝王が統治する国家。我々の銀河とは異なる宇宙に存在するゾルバドス星が本拠地であり、その宇宙そのものがムゲ・ゾルバドス帝王である。デスガイヤー、ギルドローム、ヘルマットの3将軍がおり、その強大な戦力によって、勢力を拡大してきた。彼らが地球を狙った意図は判然としないが、とくに重大な目的があったわけではなく、広大な銀河を渡る過程での、辺境侵攻の一環に過ぎなかったとされている。