◆メディア:映画 | ◆上映年月日:2009年4月 |
◆原作:ボンズ | ◆総監督:京田知己 |
◆キャラクターデザイン:吉田健一 | ◆メインメカニックデザイン:河森正治 |
◆メカニックデザイン:柳瀬敬之 |
西暦2009年、南極大陸で発見された謎の生命体「イマージュ」。宇宙から飛来したとされるイマージュは、地球侵略を開始。人民中央政府は、長きにわたりイマージュとの戦争を続け、その結果人類は滅亡寸前となっていた。イマージュに関する研究を行うワルサワ研究所に住む少年レントン・サーストンと少女エウレカは、KLF・ニルヴァーシュの幼生や先生のドミニク・ソレルとともに穏やかな日々を過ごしていた。だがある日、ドミニクは実験により死亡。エウレカは兵士によって連れ去られてしまう。
西暦2054年。レントンは、人民解放軍のKLF乗りとして、隊長であるホランド・ノヴァクが率いる強襲戦闘母艦・月光号に身を置いていた。「軍の最重要機密を回収」する命を帯びて出撃したレントンは、目標の施設で8年前に連れ去られたエウレカと再会する。一緒に故郷に戻ろうと提案するレントンを拒絶するエウレカ。だが、エウレカは上空の巨大イマージュの融解現象により崩落していく施設から落下。レントンは彼女を助け、「これ以上離ればなれになるのは嫌だ」という2人の想いに応えたニルヴァーシュはspec2へと変貌する。
劇場版ではストーリーだけでなく、登場キャラクターの設定や役どころもTV版とはまったく異なっている。
レントンとエウレカの生い立ちや設定などは言うに及ばずだが、わけてもホランドや月光号のクルーらの設定変更は衝撃であった。TV版のホランドは、少年であるレントンに対比される、ある意味での大人の象徴であった。だが、それが本作においては大人たちによって未来を奪われた17歳の少年となっており、しかも最終的にはレントンと対決することになるのだ。ほかにもTV版で重要な役割を持っていた少女アネモネが、老婆の姿で登場するなど、さまざまな劇場版オリジナルのサプライズが盛り込まれている。しかし、一方でレントンとエウレカの絆が物語の中核になっている点は、TV版と変わらない。『交響詩篇エウレカセブン』は、あくまでレントンとエウレカのラブストーリーを描いた作品なのである。
イマージュは素粒子をコントロールすることで、世界を自在に作り変えることのできるシステムを持っていた。だが、彼らはそのスイッチを自らONにすることができなかったのだという。そのため、彼らは人類にそのスイッチを押させようとしてマニュアルを用意した。それは神話という形で人類の手にわたり、これを解析して行われた実験が失敗して発生したのが、ホランドたちの成長スピードを速め、多くの犠牲を生んだ「ドーハの悲劇」である。
©2009 BONES / Project EUREKA MOVIE
TV版『交響詩篇エウレカセブン』の劇場版として制作されたこの作品。TV版の最終話で描かれた、スカブ・コーラルの半分が別の可能性を求めて旅立ったパラレルワールドでの物語なため、そのストーリーはまったく新しいものに生まれ変わっている。TV版のカットを一部流用しているにも関わらず、世界観の根底から異なる作品に仕上がっており、ファンに驚きをもって迎えられた。わずか2時間の上映時間ゆえに、ストーリーの密度は非常に高く、TV版とは別個の完結した物語として楽しむことができる。なお、世界観・ストーリーともにTV版との関連性はないが、ホランド達が見た「ネバーランド」の月に、レントンとエウレカの名が刻まれているなど、TV版を見ているとニヤリとできる演出も存在している。
メカニック面でまず注目すべきは、主役ロボットであるニルヴァーシュ。「もきゅう」と鳴くかわいらしい姿をした幼生の登場にド肝を抜かれたファンは多いはず。その愛らしさは、物語ラストの一種幻想的なニルヴァーシュとのお別れのシーンには必要不可欠なものであった。
また、TV版では最終的にspec3と呼ばれる形態へ進化するニルヴァーシュだが、この作品においては、それとは異なるspecVという形態にパワーアップする。さらに、ホランドが乗るKLFデビルフィッシュにも、多数のミサイルと巨大ブースターを備えた追加装備スーパーパックが新たに設定されており、レントンが乗るニルヴァーシュとの大迫力の攻防が、物語のクライマックスバトルを盛り上げていた。
アーキタイプという特殊な生命体に、外装を取り付けて対イマージュ用の兵器としたもの。生まれてまもなくは幼生というぬいぐるみ大のかわいらしい姿をしているアーキタイプだが、成長することで10メートル前後の大きさになる。レントンは、ニルヴァーシュとの感応能力が非常に高く、言葉を交わすことなく互いの意思疎通が可能であった。そのため、レントンは14歳という異例の若さで特例的に軍に配属されている。