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『鬼滅の刃 柱稽古編』2話ネタバレあり感想。そっと背中を押してくれるアオイから感じる母性。シリアスシーンなのに微妙に噛み合ってない義勇と炭治郎のやりとりが面白すぎた

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年5月19日(日)に放送された、『鬼滅の刃 柱稽古編』第2話“水柱・冨岡義勇の痛み”の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『鬼滅の刃 柱稽古編』第2話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。


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アニメオリジナルシーンの炭治郎とアオイのやりとりから感じた"尊さ”

 2話では、1話ラストでも描かれていた、浅草で炭治郎が出会った鬼・珠世が産屋敷邸に招かれるシーンからスタート。

 珠世はすでに炭治郎とは協力関係になっていたものの、鬼を殺すための組織である鬼殺隊の本部にいくにか相当な覚悟が必要だったはず。炭治郎との出会いでの珠世自身の変化、無惨を打倒したいという想い、禰豆子を調べることで鬼を人に戻すための薬が完成する可能性があるなど、いろいろな要素が影響しているのでしょう。

 一方、それはそうと速水奨さんボイスの産屋敷の鎹鴉の存在感、あまりにも強すぎました。他の鎹鴉たちはちょっとカタコト感があるというか、鳥っぽい喋り方をしているんですが、産屋敷の鎹鴉はとても流暢に喋っています。産屋敷を呼び捨てにしているのもそうですし、先代以前の産屋敷から仕えている、かなり長寿の鎹鴉なんでしょうね。


 アニメオリジナルで追加されていた、炭治郎がアオイに「どうやって義勇と話せばいいのか」と相談するシーンは、2人の関係性から”尊さ”を感じられて非常に良かったです。

 炭治郎は大きな戦いがある度に大怪我をして運び込まれるので、何かにつけて交流の機会がある2人ですが、まっすぐで嘘がつけない誠実な性格とか、結構似たもの同士でもありますよね。わざわざアオイを呼び止めてアドバイスを求めるあたり、炭治郎がアオイの人間性をすごく信頼しているということが分かります。

 そして何より最高なのが、質問したいと炭治郎に頼まれた時のアオイの「……うん」っていう反応ですよ……! 今までほぼ敬語を崩さなかったアオイが、ここでタメ口っぽい感じで返事をするのが、尊敬している炭治郎に頼られた嬉しさに近い感情を抑えきれずに出た反応だったのかなと(ビックリして思わず敬語を忘れた、というのもありそうですが)。

 その上、「私ならそっとしておいて欲しい」と、炭治郎のやろうとしていることに反対の考えを示しながら、最終的にはおにぎりを渡してその背中を押してあげているのもまた良いんですね。個人的にアオイは、『鬼滅』の中でも一番“母性”的な温かさを感じられるキャラなんじゃないかと思っています。


 その後アオイに言われたこととはまさに正反対の、力技で義勇の元に押しかける炭治郎でしたが、義勇が口にした「水の呼吸を極めなかったことに怒っている」は、炭治郎を帰らせるため方便でありつつ、同時に本心でもあるのでしょう。

 現在の炭治郎は、亡き父から受け継いだヒノカミ神楽を主軸として戦うようになっていて、水の呼吸は使う機会がほぼなくなってきています。とはいえ、ヒノカミ神楽がなければ炭治郎がここまで生き残ってこられたかはかなり怪しいところ。義勇もそれは内心分かっていながらも、自身の師匠でもある鱗滝の後を継ぐ水柱になれる存在だと、炭治郎を高く評価していたんでしょう。

 それでも、何度義勇に突き放されても諦めない炭治郎の執念はすごい。稽古場に無断で寝泊まりを始めている時点で結構ヤバいんですが、トイレや風呂にまで待ち伏せているのはちょっと一線を越えてしまっている感があります。


 こういうシーンって、普通は何かきっかけとなる事件が起こって、それが解決されたことで関係性が改善される……みたいな展開が一般的じゃないかと思うんですが、『鬼滅』の場合は、純粋にストーキング(?)のストレスに耐えられずに義勇が音を上げたという流れなのが面白すぎました。こういう他の作品にない独特の味わいみたいなのも、『鬼滅』の魅力の一つなんですよね。

過去を知って改めて気付けるようになる、義勇の言葉の真意


 そんな義勇の口から明かされたのが、錆兎との過去のエピソード。錆兎といえば、TVアニメ第1期で行われていた最終選別において炭治郎を導いてくれた存在でもあります。アニメとしては約5年近くぶりの登場となるのもあって、無茶苦茶懐かしいです。

 当時から炭治郎や義勇と同じ、鱗滝の弟子であることは分かっていましたが、今回で義勇の同期であったことも判明しましたね(地味に鬼殺隊の村田さんらしき人物も登場していて、同じ最終選別を受けた同期であることが分かります)。


 義勇の中には、「もし錆兎が生きていたら」という想いがずっと残っていて、炭治郎に水柱になって欲しいと口にしたのは、炭治郎を錆兎と重ねていた部分があったのかもしれません。

 1話で義勇が口にしていた「俺はお前たちとは違う」は、「俺はお前たち(のような立派な隊士とは)違う」という意味だったことも、このシーンで分かります。しのぶは義勇の自己評価が低いことも知っているでしょうし、「言葉が足りない」と言ったのはそこまで理解した上での発言かなと。

 この過去を知ると、義勇の名言「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」も、力が足りずに他人に命を救われ続けてきた義勇だからこそ湧いて出てきた言葉だったんだろうなと思えます。

 一方で、炭治郎の言葉をきっかけに、義勇がかつて自分の記憶に封印していた錆兎や姉と交わした約束を思い出し、自分をもう一度奮い立たせるシーンは熱い……のですが、そのあたりを義勇が一切口に出さないままなので、炭治郎が内心の変化にまったく気づかないまま終わるのもまた味があります。


 アニメでは、そこで炭治郎が大食いという発想に至ったのは、アオイの「ごはんをしっかり食べないと、心も身体も元気にならない」の台詞が前フリのようにもなっているのが上手い構成だなと感心しました。義勇はかなり戸惑っている様子でしたが、なんだかんだ大食いに付き合ってくれるあたり優しいです。

 ラストのしのぶのシーンでは、感情が乱れそうになったのを押し殺そうとする、早見沙織さんの演技が本当に素晴らしかったです。あの一瞬の独白で、すっと感情が落ち着いていく流れが声だけでも感じ取れる。その表現力はまさにプロの演技です。

 しのぶは目のハイライトは完全に消えてるし毒使いだし、ということで『鬼滅』の中でもパッと見のヤバそうなの雰囲気はトップクラスのキャラですが、内面を知るにつれ隠された人間味が分かってきて、どんどん好きになっていくんですよね。個人的に「最後まで『鬼滅』を読んで、しのぶが好きにならない人0人説」を推したいくらいです。

 元々すごく感情豊かだったしのぶがそれを押し殺しているのに対して、感情表現に乏しかったカナヲがどんどん笑顔を見せるようになっている対比のような構図も印象的なコンビ。しのぶがここでカナヲに何を告げたかは、おそらく柱稽古編では明かされないと思うのですが、ここでしのぶがカナヲにが鬼を殺すための話をしていたことを覚えておくと、後の展開をより楽しめるのではないかと思います。

 炭治郎の体調も回復し、次回からは本格的に柱稽古が始まりそうな予感。どんな地獄の鍛練が炭治郎を待っているのか、先に稽古を受けているであろう善逸たちは無事なのか。来週の放送も楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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