News

2010年5月11日(火)

独裁者となり東西冷戦の狭間で甘い汁を吸うユーモラスな箱庭ゲー『トロピコ3』

文:電撃オンライン

■民主的に選ばれた権力者となるか秘密警察に働いてもらうか?

 シリアスな側面といえば、国の運営がうまくいっていないときの展開もそうだ。住宅問題であれ宗教であれ不満が高まると、住民たちはマップ上で実際に抗議集会を催し始める。大統領の政策に決定的に失望した住民は、山林にこもって“反逆者”となり、国の財源である農場や鉱山を襲撃したりもする。また、軍の内部で不満が高まるとクーデターが起きて大統領府が襲撃され、運が悪ければそのままゲームオーバー。退任時点でスイス銀行の秘密口座に裏金をたっぷり貯め込んでいない限り、最終得点も低くなる。気楽に箱庭感覚を楽しんでいるだけではダメなのだ。

『トロピコ3』 『トロピコ3』
▲教会の前に集まって、抗議の気勢を挙げる人々。不満はよくわかるのだが、問題解決のためにも先立つものはお金だったりするわけで。▲住民が“反逆者”に転じた瞬間。頭の上に赤い旗がひるがえっている。軍隊による鎮圧が必要になりそうだが、軍隊もまた、政情不安の種になる。

 また、ゲーム開始時の設定にもよるが住民は定期的に選挙の実施を求めてくる。プレイヤーはなにしろ独裁者だから、選挙に合わせて人気取りの政策を実施できるし、それでも負けそうなら得票数の操作すらできてしまう。そもそも選挙の実施を拒む(!)ことさえ可能だが、そうした強硬策だと住民からの支持は確実に低下するし、不満分子は増えていく。

 だがそこは南米の独裁者、不満分子を片っ端から秘密警察にしょっぴかせることもできるし、国外追放も可能だ。とはいえ、そうした対応はだいたい次の悪い事態を呼び起こす結果になるわけで。ああ、これが独裁政権末期の、まるで坂道を転げ落ちるかのような不幸の連鎖なんだなあと、ゲームに負けながら深くうなづいたりする……。ここが他の作品にない『トロピコ3』ならではの魅力だったりするのだ。

『トロピコ3』 『トロピコ3』
▲“選挙実施せず”という選択肢があるあたりが、並のゲームじゃない。▲そして、側近たちが平気で不正選挙を勧めてきたりもするわけでして……。

 選挙に勝ったら勝ったで、その後に続く道も決して平坦ではない。民主化を求める要求はますます強まっていくし、その後の不正選挙や選挙の拒絶に対する抵抗感は高まっていく。そもそも自由社会では、独裁者という存在そのものが不自然なんだから仕方ない。プレイヤーは片手で国庫からちょろまかしたスイス銀行の預金残高を数えつつ、反対の手でいつか恐怖政治に転じる可能性をしっかり握り締めたまま、政局を運営する。そうであってこそ、南米の独裁者らしいのである。

『トロピコ3』 『トロピコ3』
▲施設建設の許認可権にワイロを絡ませる、国立銀行に不正な資金操作を命じるなど、私腹の肥やし方はいろいろ。どれだけお金をつまめたかも、勝利得点の集計ではすごく重要。

Copyright (C) 2010 Kalypso Media Group. All rights reserved. Published by Kalypso Media Group. All other logos, copyrights and trademarks are property of their respective owners. Tropico is a registered trade mark of Take-Two Interactive Software, Inc. used under license by Kalypso Media GmbH.

データ

▼『トロピコ3』
■メーカー:ラッセル
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:SLG
■発売日:2010年5月20日
■価格:7,140円(税込)
 
■『トロピコ3』の購入はこちら
Amazon

関連サイト