News

2010年8月27日(金)

【経営者は語る第9回】縮小するPCゲーム市場の可能性に着目するSi-phon

文:電撃オンライン

■Webメディアを使う60代と使わない40代

谷村氏:PCを情報端末として日常的に使っている人は、40代であれ50代であれWebの情報に敏感に反応します。しかし、PCをかつてと同様に作業機器として使っている人、会社の仕事で使うから自宅にも持っているという人が、実はそれなりに多いのです。こうなるとWeb発の情報は届きませんし、Web通販を利用してゲームを買おうという気にもなりません。これは単純に世代の問題ではなくて、例えば60代で仕事を引退すると、逆にWeb通販を利用するようになるということが知られています。

――現在の60代で、すでにそういう逆転現象が見られるというのは興味深いですね。

谷村氏:ですので現在40代、50代で、学生時代に通販でゲームを買ったことがない、PCを情報端末として使っていない、こうした人が現在の市場と切り離されたまま、取り戻すべきターゲットとして存在し続けているわけです。

 そうした人にどういうチャネルで情報を届けるか? 『空母決戦』のときは模型雑誌や歴史読み物の雑誌に、広告を出したりしてみました。ただこの方法も、訴えかけられる範囲が細分化されすぎていて、費用対効果の点でなかなか見合わない。

 それでもこの世代には、紙媒体に対する安心感が大きい人も多いですから、『Si-phon Game Club』という、それなりに読み物の充実したハンディなカタログ冊子を独自に作ることにしました。

石川氏:いまPCゲームはお店の売り場スペースも決して広くないですから、大判のチラシは置いてもらいづらいですし、ただのチラシだとあまり関心を持ってもらえないわけです。

 『Si-phon Game Club』に限った話ではありませんが、いままでのPCパッケージゲームの売り方を前にして、我々はもう一段階工夫しなければならないのです。一口にゲームそのものの市場があるかないかと言うよりは、潜在需要のあるところに届ける仕組みのほうを根本的に考えていかなければなりません。

 『空母決戦』で無償バージョンアップにこだわったのも、いわばそういう認識の結果です。PCゲームがルートセールス的に売れていた時代とは違うのだと。会社の収益を最大化するよりも、新しいPCゲームの発売を歓迎してくれる層をきちんと形成することに重きを置いています。市場へのアプローチ方法をいったんリセットして、いまの現実に合った方法を新たに模索する。そういう時期に来ていると思います。

『【経営者は語る第9回】Si-phon』

――いまあるメディアでターゲットに届かないなら、小冊子という自前のメディアを作ってでも、届く方法を考えなければならないと?

石川氏:そうです。Webサイトを見に来てくれないからと諦めるのではなくて、今度は小冊子からWebサイトに誘導する仕掛けを考えていくとか。良いゲームを作りさえすれば売れるという時代は、とっくに終わっているのですから。

――MS-DOS時代であれば、まずPCとはアプリケーションソフトのプレイヤーで、そこから生じるソフトの購買需要をショップが満たしていて、PCユーザーはショップに新作を求めて定期的に足を運びましたが、現在はこの三要素がどれも代替わりしていますよね。PCはネットワークでつながってメディアになりましたし、例えばオンラインゲームならパッケージの店頭販売は一種の販促活動であって、主たる収益源ではなくなっています。

谷村氏:告知接点が広がらないと、販売接点は確保できません。既存型のパッケージゲームの売り方で、大なり小なり不良在庫に苦しめられた経験のある販売店さんは、そもそもPCの国産ストラテジーゲームがいま売れるかどうかについて、非常に懐疑的になっています。そのイメージを改めていく必要もありますから、どうしても時間がかかりますね。時間をかけてでも、製品を知ってもらうしかないのです。

――なるほど、製品について知ってもらうための新しい情報の流れから、作っていかなければならないわけですね。

石川氏:既存のやり方にさらなる工夫を重ねる、新しい方法を考えて試してみるなど、とにかくできることをいろいろやっていかないと、容易でない市場であることは認識しています。

(C) 2006-2010 Si-phon Co.,Ltd. All rights reserved.