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2013年4月22日(月)

『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズ座談会、佳境へ。ヨコオタロウが暴く『DOD2』安井ディレクターの心の闇&『ニーア』反省話

文:タダツグ

■『ニーア』という作品で思い知った自らの限界

松下:でも、やりたいことを好き放題やるって意味では、すでに土壌は作ってあるわけじゃないですか。『DOD』があって『ニーア』があって、ある種の“ヨコオイズム”みたいなものはもう認知されているというか、そこは柴プロデューサーだって認めてていると思いますが。

ヨコオ:『DOD1』を作って、すごい暗いものを作ったと言われて、だったら『ニーア』はまったく違うものを作ろうと思ったんですけどね。いわゆる『週刊少年ジャンプ』っぽいものを作ろうと思って。

野村:前にもお聞きしました。

ヨコオ:僕、『ニーア』を『ジャンプ』っぽいものに仕上げようと思って、一生懸命『ジャンプ』を読みながらシナリオを書いて。『ジャンプ』作品って、ピンチになると仲間が助けにきてくれるじゃないですか。だからそういうのをがんばって入れたりとか、ものすごく意識を改めた作品なんですよ。

松下:仲間が助けに……砂漠の王のことですかね。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲砂漠の王とのエピソードなど、『ニーア』には少年マンガ的な演出がいくつも用意されている。いくつも用意されているはずなのに……。

ヨコオ:そうそう。王道少年マンガっぽく盛り上げたつもりだったんですけど、いざでき上がってみたら、やっぱり『DOD1』と似てるって言われたんですよね。どこかしら通じるものがあるそうで。

松下:それは、ヨコオさんの作家性なんじゃないですか?

ヨコオ:いや、作家性というよりは、自分でも気づかなかったところに隙があって、そういうのが漏れ出たっていう認識ですね。穴があった。

松下:でも、それをみんな愛しているわけじゃないですか。極端な話。

ヨコオ:だけど、それは失敗なんですよ。

松下:そうですかね? だって、作品を作る時って自分の色を出したいと思うんじゃないんですか? 特にディレクターって。

ヨコオ:僕はあまりないですね、そういう感覚。遊んだお客さんが「わーっ!!」ってなる瞬間が好きなのであって。

松下:それがある種、ヨコオさんの持っている色じゃなくてもいいってことですか?

ヨコオ:すごく暗い商品が売れたとして、それの続編を作れって言われた時、すごく意見が分かれると思うんです。だって、暗い商品を作った後に、また単純に暗いものを作っても、そこに驚きはないじゃないですか。

松下:それはたしかに。え、でもちょっと待ってください。『DOD1』ってすごく暗い話でしたよね? その理屈でいくと、『ニーア』は明るいお話ってことになるわけですが。

ヨコオ:『DOD1』は暗い話です。一転、『ニーア』は僕の中では明るかったんですよ。けっこう明るい方向でがんばった。でも、コスト的な理由で周回プレイを用意して、2周目は敵側の視点も見せるっていうのをやった結果、暗くなっちゃっただけなんですね。

松下:暗いのは結果論なんですね。まあそうですよね。斬られる立場の話を描いたら、そりゃあいろいろ暗くもなります。あ、安井さん、ビールもう1杯いかれます?

安井:いや、僕はまだ大丈夫です。おかまいなく。

ヨコオ:それ、もうぬるいんじゃない? 飲む気がないの?

安井:いやいや。

ヨコオ:基本ね、安井さんはこういう場ではあまり飲まずに、みんなを冷静な視点で観察しているので、こんな量なんですよ。実にいやらしい。

安井:いやいや。適度に飲んでるって(笑)。どうしてすぐ、人をおとしめようとするんだ、君は。

ヨコオ:(ニヤリ)

松下:でも、そうなってくると『DOD3』のストーリーはどうなるんでしょうか?

ヨコオ:『DOD3』はまったく暗くなくて、そういう意味では『DOD1』ファンの人を裏切ることになるんですけど……。たぶん、このお話でも暗いと感じる人はいるかもしれませんね。そこは『ニーア』同様に。僕の能力の幅が狭い結果、世の中全体で比較すると、暗い物語しか書けないんだなって思っています。ある意味、自分の限界を知った作品だったんですね、『ニーア』は。

松下:なんかいい感じにまとめていただきました(笑)。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲ちなみに、こんな格好をしているものの、ファンからの愛され度はナンバー1の実験体7号。明るい彼(?)の性格が、ゲームから受ける暗いイメージを大きくやわらげている印象もある。

→ヨコオタロウはブレイクスルーできない!?(6ページ目へ)

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データ

▼『ニーア ザ・コンプリートガイド+設定資料集 GRIMOIRE NieR -PROJECT GESTALT & REPLICANT SYSTEM-』
■発行:アスキー・メディアワークス
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■定価:1,955円(税込)
 
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