『トゥームレイダー』国内発売目前レビュー！ ファンの不安を称賛に塗り替えた圧倒的“ララ・クロフト”感【春のレビュー祭り】

文：イトヤン

■“邪馬台国”は太平洋のど真ん中に!?　数百年の歴史が堆積した神秘の島に注目

　ここまで、ララの旅の目的とララたちが漂着する島の設定についてはあえて触れてきませんでした。実は、若き考古学者であるララ・クロフトが調査していたのは、西暦2～3世紀の日本に存在したとされる“邪馬台国”で、海の難所“ドラゴントライアングル”の中にあるこの島こそ、かつて邪馬台国が存在していた場所だとララは主張しているのです！

　九州にあった、いや近畿地方にあったと、現在でも専門家たちの間で激しい論争が繰り広げられている邪馬台国が、よりにもよって太平洋のど真ん中にあるなんて、さすがに海外製のゲームはいい加減な設定になっている……と思うかもしれません。しかし、歴史ファンでもある筆者としては、あえてその点に切り込んでみたいと思います。

▲船が遭難する前に記録されていたビデオ映像には、ララとホイットマン博士の会話が記録されています。邪馬台国の位置を巡る2人の目の前には、日本近海の地図が置かれており、そこにはララが邪馬台国の場所だと考えている“ドラゴントライアングル”と思われる位置が示されているのです。

　ここで注目したいのが、島へ向かう航海の間にララと先輩考古学者のホイットマン博士が繰り広げる、邪馬台国の位置を巡る会話です。

　ララは「ドラゴントライアングルの中に邪馬台国がある」と主張していますが、彼女が指さしている地図を見るとその位置は、現実の地理で言うと小笠原諸島のあたりになっています。それに対してホイットマンは、「そんな東にあるわけがない」と反論しているため、ホイットマンはもっと西、ちょうど沖縄あたりに邪馬台国があると考えていることが読み取れます。

　実は、邪馬台国について書かれた唯一の文献である『魏志倭人伝』に記載されている、中国から邪馬台国へ向かうルートの距離と方角を正確に再現すると、邪馬台国の位置は沖縄からさらに南の海上になってしまうのです。この記録の解釈を巡って、邪馬台国の実際の位置はどこなのかという論争が現在も続いているわけなのですが……。

　つまりこの会話でホイットマンは、『魏志倭人伝』の記述が指し示す位置そのものに邪馬台国が存在すると主張しているわけです。このことから、本作の制作スタッフが『魏志倭人伝』の内容とそれにまつわる論争をきちんと把握したうえで、本作の設定を作り上げていることがわかるのです。エキゾチックなジャパンのファンタジーとして、決していいかげんに制作されているわけではないということが理解してもらえたでしょうか？

▲レリックが入っている箱を開けるララ。“トゥームレイダー＝遺跡の探索者”にふさわしい姿が見られる、本作ではわりと貴重な瞬間です。		▲レリックとして収められていたのは……般若のお面!?　邪馬台国が存在していた弥生時代には、いくらなんでもこんなアイテムはなかったのでは……と思うかもしれませんが、実はこれにもちゃんと意味があるのです。

　ちなみに本作では、ゲームのストーリーには直接関係ないものの、“レリック”と呼ばれる過去の遺物や、“ドキュメント”と呼ばれる書物を収集することができます。特にドキュメントでは、『魏志倭人伝』を残した中国の使節団の日記（もちろん創作です）など、この島の歴史にまつわる記述を読むことができます。それ以外に、遭難したララの仲間たちが書き残したメモによって、物語の裏に隠された意外な真相を知ることができるなど、かなり興味深いものがあるので、ぜひ集めてみてください。

▲上でフォローしているそばからアレですが、この島には邪馬台国というより、戦国時代のお城にしか見えない建物も存在しています。これに関しても、ある程度は合理的な説明が可能なのですが……。

→鎌倉、江戸、昭和……さまざまな時代の遺物が存在する理由とは？（5ページ目）

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データ

関連サイト

• 『トゥームレイダー』公式サイト