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2013年6月25日(火)

『ファイナルファンタジー』シリーズで培った経験が生きる! 『千年勇者』でデザインワークを手掛ける伊藤龍馬さんにインタビュー!!

文:万札

■デフォルメキャラクターが生まれたワケは? ブラウザゲームならではの苦心も

――『千年勇者』の世界観について、第一印象としてどんなイメージを抱かれましたか?

 『千年勇者』というタイトルを聞いた時に、「何が千年なのか?」がわからなかったんですが、だんだんストーリーを知っていくうちに、「なるほど!」とつながっていく感じがおもしろかったですね。

――デザインを担当されるにあたって、細かな指定などは受けましたか?

 キャラクターごとの設定はいただいていて、そこから練って、ブラッシュアップして、最終的に確認していただく形で作業しています。

――伊藤さんからキャラクターの設定について、何か提案することはあったのでしょうか。

 デザイン的な面で、「大きさを全部そろえない方向にしたほうがいいよね」とか、「今はユーザー的にこういうのが流行だよね」とか、いわゆる既存の文法で描けるようなキャラクターでない場合などでは、こちらからの逆提案があったと思います。

――『千年勇者』のキャラクターについてはデフォルメパターンとそうでないパターンがありますが、頭身の低いデフォルメパターンを用意した理由を教えてください。

 『ファイナルファンタジーIX』や『ファイナルファンタジーX』の時、ボクはもともとキャラクターのアニメーション、モーションを付けるパートの担当でした。『ファイナルファンタジーXII』ではNPCのデザイン担当に移ったんですが、その時に、アートディレクターの吉田さんや皆葉さん、皆川裕史さんたちに、まずはデフォルメしたキャラクターのデザインを持っていったんです。もともとボクは、等身の低いキャラクターを描くのが得意なので。

 吉田さんが「いいじゃん!」とほめてくださって自信がついたんですが、実は『ファイナルファンタジー XII』のキャラクターデザインって、基本的に等身が高いんですよ。「これはマズい……」と思ったんですが、ボクのデッサン力が素人に毛が生えた程度だったのもあって、等身が高いキャラクターを全然描けなかったんです。

『千年勇者』

 デッサンの勉強はしたものの描けないし、でもまわりは皆、ものすごいものを上げてくるしで、ストレスがたまってたんですね。本当はよくないんでしょうけれど、提出するラフにちっちゃなラクガキをいっぱい描いていたんです(笑)。それらのラフのチェックの過程で、皆葉さんたちに「こっちのテイストで描きなよ! 等身を高くして」と言われたんですが、「いや、それが難しいんですけど……」と(笑)。そうやって、すごくほめていただいたことがあり、いつか作品として世に出したいなという思いが強くありました。

 それだけではないんですが、『千年勇者』では全体に“Live2D”を使うということと、制作人数、物量、ツールの特性などを加味したうえで、等身はあれくらいがいいだろうと考えました。最初のコンセプトで、川和さんがボクの等身の低い絵を気に入ってくれたのもあって、「ここだよね、落としどころは」となり、今の等身に決定したという経緯です。

――Live2Dのお話が出ましたが、このシステムが導入されたことで、何か作業上の変化などはありましたか?

 ボクは3Dのキャラクターデザインやモーションもやっていたので、関節まわりのデリケートな部分の扱いには慣れています。それと、ゲームが動作するベースとなるFLASHについても、少しかじってはいたので、これらの知識をもとに、「これならできるんじゃないかな」と考えていました。

 それでも、Live2Dの担当者に素材を渡した時に、どうしてもリテイクは入りますね。なので、その辺の部分は丸投げにはなってしまっています。Live2Dならではの特性があるみたいで、その辺はこれから覚えていかなければとは思っています。基本的には、“昔取った杵柄”ではないですが、これまでの知識が生きているかなとは思います。

『千年勇者』

――Live2Dもそうですが、デザイン面で難航した部分はありますか?

 ほぼないんですよね。キャラクターデザインをするにあたって、普通は設計図みたいなものを描かないといけないんです。横を向いたデザイン、前を向いたデザインというように、ある程度はこういうものを用意するといったテンプレートがあるんですが、今回は斜めのデザインを1つ描いただけで、ボクが描いていないはずの真正面の絵が出来ていたりするんです。「あれ!? ボク、描いていないのに!」という不思議なことが起こっていて、逆におもしろいですね。

――ブラウザゲームであることに関して、意識した点はありますか?

 ブラウザゲームに限りませんが、容量の面はやはりシビアであるなということを意識しました。ローディング時間が長くなるとか、「動かなくなってしまうから、ここは切らないといけないよ」と言われてしまうだとか。デザイン的に「こういうふうにしたいんだけれど」というものが実現できないというのは、やはりありますね。

――あまり凝ったデザインが描けないといったことでしょうか。

 デザイン自体は1枚絵なので問題ないのですが、やはりギミックの部分ですね。関節の部分ですとか、「1枚絵だとさびしいからイラストを動かしたいね」となった時に、容量的に厳しくなってしまいます。そういった意味での取捨選択というか、プライオリティをどう判断するかというせめぎ合いはありますね。

――パーツの数だとか、ユーザーを驚かせる仕掛けといったものですか。

 そうです。アイデアとしてはあるんだけれど、それをすべて入れ込むとすごくロード時間が掛かってしまうので、断念するしかない部分が出てきますね。

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※画面は開発中のもの

データ

▼『千年勇者~時渡りのトモシビト~』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PC
■ジャンル:RPG(オンライン専用)
■サービス開始日:未定
■プレイ料金:基本無料(アイテム課金制)

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