2013年8月22日(木)
ドイツ・ケルンにて開幕した欧州最大のゲームイベント“gamescom 2013”。これに先駆けて行われたSCEのプレスカンファレンスの発表内容について、SCEワールドワイドスタジオのプレジデントを務める吉田修平氏に、現地にてお話を伺うことができた。この特別インタビューの模様をお伝えしよう。
――今回のカンファレンスはちょっとおもしろい始まり方で、吉田さんがPS4を実際に操作して、無言のままデモンストレーションを行うというものでしたね。会場も非常に盛り上がっていましたが、手ごたえはいかがだったでしょうか?
E3を含め、これまではPS4のシステムソフトが動いているところを、まとまった形でお見せすることができていませんでした。そのため、実際にPS4で遊ぶとどんな感じになるのかが、イメージしにくかったのではないでしょうか。そこで、ユーザーさんが実際にやりそうな遊び方を、一連の流れでつなげて見せたというのが、今回の狙いです。
PS4で新しく導入した各ゲームのページに、Facebookのような感じで最新の情報が出てくる様子。あるいはユーザーさんの友だちのアクティビティなどが出てくるところとか、他のプレイヤーがストリーミングでゲーム映像を配信しているところを見て、「おもしろい!」と思ったら途中で参加するところを紹介しました。それで、最後にTwitterを使って、自分のプレイしたスクリーンショットを全世界に公開するという流れをお見せしました。
そういったシナリオを事前に用意したら、「それじゃあ、Twitterのフォロワーが多い吉田にデモをやらせよう!」という感じになったんです(笑)。私はE3の時のように英語でプレゼンするのが苦手なので、「しゃべりナシのデモだったら、喜んでやります」と(笑)。
――大変おもしろいデモでした(笑)。今回の発表全体の印象なのですが、E3に続いてさまざまな発表がありましたが、特にインディーズのタイトルがフィーチャーされていた気がしました。『MURASAKI BABY』や『Rime』、『Everybody’s Gone to the Rapture』などが話題を集めいているようですが、吉田さんがインディーズタイトルに抱いている印象を教えてください。
欧米では今、本当にインディーズのコミュニティがすごく熱いと言いますか、どんどん増えていますね。
直接われわれが一緒に仕事をしているインディーズレーベルの方たちもそうですし、自分でセルフパブリッシュをされている方たちもそうなんですが、けっこうゲーム開発の経験の長い方が多くて、「これまで、いくつものスタジオで仕事をしていました」とか、「契約でいろんなプロジェクトに参加していて、10年やっています」というような方ばかりなんです。
今は、ゲームを作ればデジタル配信を使って世界中で販売できるので、「それだったら、大きなスタジオやパブリッシャーにいる必要はないよね」ということで、「自分の作りたいゲームをやっと作れる」といった流れになってきています。そのため、インディーズと言えど、ものすごくクオリティが高いんです。
特にゲーム性の部分では、非常に作り込んでありますね。やはりパブリッシャーを通してではなく、クリエイターが自分で経営者となってやっていますから、納得するまで作り込むんでしょう。そういったクオリティの高さとか発想のおもしろさに、ユーザーさんも敏感に反応しているようです。
われわれがサポートしている新しいタイトルも、そうでないものも含めて、これからインディーズタイトルを世に出していくことに対して非常に期待感が高くいですね。カンファレンスでも次のタイトルを発表するごとに拍手がわいていましたが、すでにインディーズの世界でも“スター”がいるようですよ。
――あの歓声には驚きました。「ボクたちは知らないタイトルだけれど、いったい何が起こっているんだろう?」と。
知らないですよね(笑)。ですけれど、彼らが出した以前のタイトルがすごくよかったなどの理由で、一部では有名になっているみたいです。そのせいか、彼らの次のタイトルというだけでも「うぉー!」となるわけです。
そういう意味では、今のインディーズは非常におもしろい分野になっています。この傾向は、これからもっと大きくなっていくのでしゃないでしょうか。モバイルもPCもそうですが、コンソールでもやっと“デジタル配信で自分でパブリッシュしてお金を稼ぐ”という仕組みが、だんだん充実してきています。
インディーズでゲームを作る方たちも、それぞれのゲームの“タイプ”によって、いろいろな持っていきようがあると思うんです。各プラットフォームで違ったユーザー層の傾向があると思いますので、ゲームのタイプが合うところを探して、見つけて、発売していくということができるので、これからもますますインディーズタイトルが増えていくでしょう。
――今回発表された中では、『Rime』の雰囲気が『ICO』に似ているということで、日本でも注目を集めているようです。欧州で発表されたこれらタイトルの、日本での発売・配信は期待できますでしょうか。
私としては「ぜひぜひ」ということで、どんどん出てきてほしいのですが、実は日本ならではの障壁がいくつかありまして、そこは業界全体として取り組んで解決していかなければと思っています。例えば、レーティングの問題。CEROのレーティングは、CEROのメンバーでしか取れませんが、仮にスペインのディベロッパーがCEROのメンバーになれるかと言えば、そういうワケにはいきません。そこをどうやって解決するか、などですね。
理想はやはり、世界のどこで作られたゲームであっても、世界中のあらゆる場所で発売できるということです。そうしないと、日本のユーザーさんが置いてきぼりを食ってしまいます。北米のアカウントをわざわざ取って、PS Networkのカードを輸入してダウンロードする、なんてことをするユーザーさんも出てきているくらいなので、「これはちゃんとサポートしなければ」と思います。
――SCEもファーストパーティとして、そういった部分をきちんとバックアップする体制を作っていくということでしょうか。
われわれは自身がパブリッシャーですから、SCEが海外で作っているデジタル配信のゲームは、ほとんどすべて日本でも出していると思います。問題は、独立系のスタジオですよね。
われわれ自身がパブリッシャーとなる場合は、レーティングの取得も翻訳も全部自分でできるのですが、海外のディベロッパーが現地で仕事を全部やり上げて、日本でどうやって発売するかは、プラットフォーム側として解決しなければと思います。実際、PS Mobileでは現時点でも、そういったことが実現できています。日本のインディーズタイトルも全世界で配信していたりとか。なので、「もうできてるじゃん!」みたいなところはあるんですが(笑)。
→気になるPS4の日本での発売日! 発表のタイミングは?(2ページ目へ)