2013年8月24日(土)
8月21日~23日にかけて開催された、ゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2013”。ここでは8月23日に行われたセッション“専門職必見! これからのクリエイターに必要な力とは ~バンナムで8年間行われたリーダー育成研修~”の様子をお伝えする。
本セッションを行ったのは、バンダイナムコスタジオ ET開発本部 エンターテインメントテクノロジー開発部門 アニメーション部 アニメーション課 課長補佐の河野紀子さん。河野さんは、2012年に行われたCEDEC 2012においてもセッション“ユーザーに中二キャラクターとしての認知に成功したアニメーション・メソッド ~ゴッドイーターから贈るフィジカル中二論~”を行っている。
▲セッションの講演を行ったバンダイナムコスタジオの河野紀子さん。 |
本セッションは、CEDECという場で行われるということで、クリエイターを対象とした事例で解説がされているが、セッションの内容を見てみると一般の仕事にも当てはまる事が多い。これからリーダーとして自分のチームを持つ、あるいは持っているような場合ならもちろん、それ以前の段階でも必ず参考になる講演内容になっていた。
まず議題として河野さんは“専門能力があればこの先もやっていけると思うか”、“責任ある仕事を任せてもらうにはどうすればいいと思うか”、“周りから必要とされる人間になるにはどうしたらいいと思うか”という3つの問いかけを行い、その上で河野さんは10個の問題を提示した。
以上のような問題が起きた時は、自身が持つ専門能力だけでは問題を解決することができない。
ここで必要となるのは専門能力ではなく、あるもう1つの能力であると河野さんは語る。専門職をやってきたクリエイターが陥りやすいのは、このもう1つの能力が必要であるのに気づきにくいことだという。
また、会社に勤める人の多くは、ビジネス書を読んだり社会人研修を受けたりといったような研鑽を重ねている人が多い。しかし、本を読むことについては“よいものを読んだ”という満足感で終わってしまうことが多いという。研修についても“研修を受けるということが目的”になってしまったり、“研修を受けた”という事実だけで終わる場合が多いとのこと。
以上のことから、気づきにくいことの2つめとして、“必要な能力を学んで身に付けることは難しい”ということが挙げられた。
ではどうすればよいのだろうか。と、その前に過去のゲーム業界と現在のゲーム業界において、開発者として求められる人材についての紹介が行われた。
コンピューターゲームが一般的に登場し始めた1980年前後から1990年代半ばまで、それぞれのクリエイターはゲームが作りたいという思いでメーカーに入社をした。まだ開発規模が小さかったために、自分の役割は大きく、自分が何をすればゲームが完成するかというのはわかりやすい時代だった。河野さんはこの世代を“ゲームを作る世代”として定義した。
一方、その後から近年にかけては、プレイステーションやセガサターンなど、大容量のメディアを持つ家庭用ゲーム機が登場したことで、開発が大人数になり業務も細分化。クリエイターはゲームに使われる素材作りを行い、ゲームとして作るのは誰かの仕事という時代になった。この世代を“ゲームの素材を作る専門家世代”として定義した。この世代のクリエイターはゲームを作るというよりも、専門能力を活かすことが目的となっているという。
こういった世代の移行により、専門家世代は専門能力以外の能力が足りないということに気づかないまま、ゲーム開発の中心的な存在になってしまっているという。現在のゲーム開発においては、“専門技術に特化したエキスパート”と“責任のある開発の推進役”といった2つの役割が必要となっていると河野さんは語る。