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2013年8月27日(火)

2K Gamesで働く日本人ゲームクリエイターが語る日本とアメリカの違い――日本は“遊び”重視、アメリカは“体験”重視【CEDEC 2013】

文:イトヤン

 パシフィコ横浜・会議センターで、8月21日~23日にかけて、ゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2013”が開催された。ここでは、2K Gamesのアートデパートメントでリードアニメーターを務めている、小島研人さんによるセッション“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”の模様を紹介する。

“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”

 講師の小島研人さんは、13歳の時に家族とともに渡米し、大学を卒業後、帰国して日本のゲーム業界に就職した。株式会社ナムコ(当時)で『鉄拳』シリーズや『ソウルキャリバー』シリーズのアニメーターを務めた後、2006年にサンフランシスコのルーカスアーツに入社。『スター・ウォーズ フォース・アンシュリード』シリーズの制作に携わった。そして2013年からは、2K Gamesで勤務しているという。

 ちなみに小島さんは、プレイヤーが操作を入力すると、それに応じてCGキャラが繰り広げる多彩な動きを1つ1作り上げていく、いわゆるインゲームのアニメーターとして活躍しているとのことだ。

 このように小島さんは、日米双方のゲームメーカーで勤務した経験を持っている。その視点から、日米の労働環境の違いや、ゲームにおける表現方法の違い、そしてゲームに対する考え方の違いについて語るというのが、今回のセッションの趣旨である。

“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと” “アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”
▲2K Gamesのアートデパートメントでリードアニメーターを務めている小島研人さんは、SCE、ナムコ、ルーカスアーツと、日米双方のゲームメーカーで働いた経験を持っている。

■アメリカではゲーム業界でも、定時勤務は当たり前! 

 小島さんはまず、アメリカのゲーム業界とはどういう職場なのかについて解説した。

“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”
▲アメリカの職場の長所を紹介するスライドには、『スター・ウォーズ』のゲームを手がけた小島さんならではの、ユーモアあふれる写真が添えられていた。

 アメリカの労働環境の良い点について、まず最初に挙げたのは“ワークライフバランス”だ。

 日本では、会社のためには少々無理をしてでも働くのが美徳とされているが、アメリカでは仕事に対する考え方が根本的に異なっている。人生を自分や家族のために費やすという姿勢がまずあり、それに必要な収入を得るために働いているという。そのため定時勤務が当たり前で、小島さんも朝8時に出社して、午後5時に帰宅する生活を送っている。

 とはいえ、ゲームが完成間際になるとやはり、“クランチ・タイム”と呼ばれる時間外の作業が必要になる。じつは、アメリカのゲーム業界もかつては、残業などが多かったそうだ。ところが大手ゲームメーカーで働く夫を持つ妻が、会社側を法廷に訴えて勝訴したのだという。それ以来、ゲームメーカー側も労働時間には寛大になり、やむを得ない場合のクランチ・タイムには、会社からディナーが支給されるなど、待遇が改善されたとのことだ。

 またアメリカの職場では、日本の人事部にあたるHR(Human Resources)と、社員とが非常に話しやすい環境にあり、パワハラなどの問題について、気軽に相談できるのだという。

 さらに小島さんは、社員が解雇される“レイオフ”も、あえて長所として挙げた。同業種間での転職が比較的容易なアメリカでは、レイオフは会社の現状に合っていない社員が、新たな職場へ移って本来の実力を発揮できるように、その後押しをする役割があるという。その意味で小島さんは、レイオフを「理にかなったシステム」だと評していた。

■仕事を失ったらすぐに、出国しなければいけない!?

 転職が比較的容易だというアメリカの労働環境は、その一方で悪影響が出ることもある。続いて小島さんは、アメリカの労働環境の悪い点を解説した。

“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”
▲ダース・ベイダーの怒りに触れて解雇される小島さん……という写真ではないので、念のため。

 小島さんが働いているサンフランシスコ周辺には、ゲームメーカーの他にもシリコンバレーの大手IT企業が多数存在している。そのためリクルーターが積極的に活動しており、優秀な人材はすぐ引き抜かれてしまうのだという。アニメーターの小島さんが、プログラマーと共同して作業を進めようと思っても、その相手がいきなり退職して別の企業に移ってしまったりするそうだ。

 また、定時勤務の8時間労働では、日本の長時間労働に比べれば、どうしても作業の進行は遅くなる。そのぶん、開発に必要な予算も多くなってしまうという。

 次に小島さんが挙げたのは、不況による生活への影響だ。サンフランシスコのあるカリフォルニア州は、州の財政が危機的状態にあり、生活費が高騰している他、医療や教育を巡る状況もどんどん悪化しているそうだ。そのため「収入は多くても経済的な幸福度は低い」とのこと。

 小島さんのようにアメリカで働く外国人には、ビザの問題もある。ビザの種類によっては、いったん職を失ったら10日間以内にアメリカを出国しないと不法滞在になるというから、これはかなり切実だ。

■自分から意見を主張しなければ、そこにいないのも同然に

 アメリカの職場で働く小島さんが注目したのは、アメリカ人の持つ“組織力”だ。その根本にあるのは、コミュケーションを重視する姿勢だという。

“アメリカのゲームスタジオで働いて学んだこと”

 多種多様な人種が集まるアメリカでは、同じ考えの人はいないのというのが前提だ。そのため、お互いに徹底的に話し合うことによって、物事を解決していく。それぞれが自己主張するのは当たり前で、逆に自己主張しないと、いないのも同然になってしまう。それだけに誰かが話をする時は、聞き手も相手の目を見て真剣に聞いてくれるのだそうだ。

 小島さんの職場でも、ランチやコーヒーブレイクの時間を利用した話し合いや、1対1でのミーティングが、盛んに行われているという。ゲームの開発が山場に差し掛かって忙しい時期でも、1対1でのミーティングが強制的に、スケジュールに組み込まれてしまうのだとか。

 また、職場では肩書きや職種間のヒエラルキー(上下関係)が、日本に比べてずっとフラットだという。小島さんがルーカスアーツにいた時には、『スター・ウォーズ』の生みの親であるジョージ・ルーカスさんも、“ミスター・ルーカス”ではなく“ジョージ”と呼ばれていたそうだ。このフラットな関係も、お互いに顔をつきあわせて、徹底的に話し合う姿勢から生まれるものだろう。

 また小島さんによると、アメリカの職場では優秀な人を職場の仲間が表彰することで、チーム内の士気を高め合うという。ルーカスアーツにいた時は、優秀な人に“ジェダイ・アワード”として、ライトセイバーをプレゼントしたりしていたそうだ。悪いところを見つけて批判するのではなく、良いところを褒め称えるという姿勢も、アメリカ人の組織力を考える上では重要だろう。

→日本とアメリカにおけるゲームの最も大きな違いとは?(2ページ目へ)

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