2013年11月27日(水)
――ここからは、過去に影響を受けたゲームについてお聞きします。先ほど、齊藤さんはRPGをよく遊んでいたとおっしゃられていましたが、特にお好きなタイトルと言えば?
齊藤:RPGは相当な数を遊びましたね~。その中でベストと言われると毎回悩むのですが……。本当に、どれも好きなんですよ。でも、自分が子どもの時にもっともハマったゲームだとするならば、『エストポリス伝記』シリーズですね。
CMを見て気にいった『エストポリス伝記』を誕生日に買ってもらい、それがおもしろくて。その後に『エストポリス伝記II』が出ると知り、それもプレイしたら初代よりもかなり手の込んだ作りで。あまりにおもしろかったので、プレイタイムの記録がカンストするまで遊びました。物語が深くて、ダンジョンの謎解きやバトルが楽しくて、新たな発見があって、出会いがあって、カプセルモンスターの育成などができて……と、当時のRPGでは、あまりできていなかったことがすでに実装されていたのが、すごくインパクトがありましたね。
RPG以外では、ADVですね。特に、当時のチュンソフトが出していた『かまいたちの夜』。それまでは、ゲームのプレイスタイルって、友だちを家に呼んでみんなでワイワイ楽しむというものが多かったのですが、そうではなく、1人で鬱屈した時間を快適に過ごせるんですよ(笑)。友だちと盛り上がるのは学校についてからで、家で遊ぶ時は1人で完結するジャンルがすごい好きだったので、何度も読める『かまいたちの夜』にはハマりました。
――今の齊藤さんから受ける印象からすると、子どものころに友だちがいなかったというお話はすごく意外に感じます。
齊藤:家がギリギリ学区内で、クラスで一番学校から遠かったんです。子どもって、学校の帰り道にある人の家に集まるじゃないですか。でも、僕の家は遠すぎて誰も来てくれないんです(笑)。
近藤:私もそうでしたね。「近藤の家は学校から遠いからヤダ」とよく言われましたよ。
齊藤:だから、RPGが好きになりました(笑)。浅野さんはどんなゲームが好きでしたか?
▲浅野さんが手掛ける『BDFF』の新作『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』。 |
浅野:そうですね、それではわりと最近の作品ですが、衝撃を受けたと言えば『バイオショック』です。また、スパイクさんのローカライズも素晴らしくて、あれは名ローカライズだと思います。
齊藤:お褒めいただき、ありがとうございます!
浅野:自分の作品は、物づくりの仕方として元ネタが存在していることが多いのですが……実は、『ブレイブリーデフォルト』はだいぶ『バイオショック』を参考にさせてもらっています。
――えぇっ? いったいどのあたりが!?
浅野:『バイオショック』は世界観が魅力的で、物語に没入させるためのつかみもすごく上手で、ゲームシステムもよかったのですが、何よりも終盤のどんでん返しがすごいんですよ。ゲームならではのストーリーテリングに成功しています。近年のゲーム体験でこれを越える衝撃は、今のところ味わえていないですね。
近藤:私は原体験で言えば、もろに『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』の世代ですね。ですが、自分で作品を作ってみたいと意識させられたのは『白き魔女』になります。当時、『DQ』や『FF』の影響を受けたRPGが大量に出ていた中で、『白き魔女』はちょっと違っていたんですよ。
例えば、街にいるモブの住人全員に名前がついています。しかも、フラグが1つ立つごとに、街にいるすべてのキャラクターのセリフが変わるんですよ。そして、主人公のポジションが勇者ではなく、本当にどこにでもいる少年と少女というのも斬新でした。当然、彼らは弱いのですが、いろんな出会いの中で大人たちに助けられたりしながら、最終的に世界滅亡の危機に立ち向かうんです。
しかし、そこで彼らが強くなっているのかと言えば、別に強くなっているわけではない。ただ、立ち向かうことを諦めないことで、周りの大人たちも力を貸してくれるようになり、その結果が最終的な解決につながるというのが、すごく優しいなと思ったんですよ。そういった愛情のある描き方をしているシナリオに当時すごく感動しまして、そこからゲーム業界に入ってみようかと思い始めました。
――ファルコムのゲームは、細かくセリフが変わるという部分がファンの間でも好評ですよね。
近藤:そこまで細かくやり始めたのは『白き魔女』からですが、時間が許す限りこの方針は引き継ごうと考えています。最新作の『英雄伝説 閃の軌跡』でも、サブキャラクターにまで全部フローチャートを用意しています。そうした細かいこだわりが『英雄伝説』から始まり、次は『イース』にフィードバックさせてと、新作を出すたびにどんどん自分たちのクビが締まっているのですが……。そのせいで、開発内部では冗談まじりに“悪しき習慣”なんて言われています(笑)。
→RPGのデキを大きく左右するレベルバランスの調整(3ページ目)
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