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2013年11月27日(水)

【スクウェア・エニックス安藤の召喚★アプリ神】また1人、アプリの神を発見! セガ『チェインクロニクル』松永純氏

文:電撃ゲームアプリ

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■今後の業界に必要なのは“作り手の顔が見える”ゲーム

安藤:松永さんはスマートフォンのゲームはどれぐらい作られたんですか。初めてなんですか?

松永:『戦国大戦G』というタイトルに軽く入らせてもらって最低限のノウハウを学びました。

安藤:ソーシャルゲームを制作する上で、主力商品、つまりマネタイズを何にするか決めるターンがあったはずなんです。『チェンクロ』はキャラクターがキモだからキャラを徹底的に売る。だからキャラをどれだけ魅力的にしたらいいか、そのあたりが一気通貫しています。でも主力商品をキャラに振る、これはできそうでできなくて、そういうコンソールの人はいまだになかなか出ていないんです。

松永:なるほど、そうなんですね。

安藤:だからおもしろいけれど売り上げがあまりない、というゲームも多いんです。でもチェンクロ』はマネタイズもきちんと着地しています。それは最初から松永さんがデザインしたんですか?

松永:はい。とにかくキャラに価値を持たせる、というのが趣旨なので、最終的にはマネタイズもキャラにつながるように設計しました。それとRPGを感じてもらうために酒場のシステムを入れたり。

安藤:ちょっと深いところにいきますけど、松永さんはどのような方法でキャラを立てられているんですか? 例えば見た目はかわいいけど、しゃべると老けているロリババァとか、まじめそうに見えても変態だとか、ギャップを作ってプレイヤーの思いがドライブするように作るキャラの立て方もありますよね。

松永:キャラの設定をまず自分で書いて、今おっしゃられたようにギャップを生かしたり、ユーザーさんの琴線に触れるような種を1つ入れるんですね。で、イラストレーターさんやシナリオライターさんに振って、みなさんのクリエイティブやエゴをちょっとずつ調整させていただく感じです。それぞれ作り手のよさが入ることが大事で、設定書も作り手の人の特性が生きるように人に合わせて設定を作り起こしています。その上で僕が埋めた種がキャッチーな中心部分として残るよう、各要素をいかに最適化できるかという感じで微調整を続けます。地道な作業ですね

安藤:その目標地点は松永さんが積み上げてきたものとか残し方とかで形作られるもので、きっとすごく感覚的なものなんでしょうね。

松永:感覚的ですね。

安藤:でも感覚的じゃないとできないから作り手の顔が見えるんですよね。例えば堀井雄二さんにしか書けないテキストってありますよね。『ドラゴンクエスト』ファンの人は堀井さんのシナリオが好きなわけですが、『チェンクロ』にも松永節というのがあって、ビジュアルもセリフも松永さんの経験や直感的なもので構築されている。だからこそ作る意味があるんですよね

松永:そういう意味では今のスマホゲームの規模というのは作る側にとって、とても魅力的だと思います。大きなタイトルになって、枝葉の部分に手が及ばない規模になると、おもしろいゲームにならないんじゃないかと。つまりスケールが大きくなるにつれて、作り手の独りよがりがあまり入っていないゲームになっていく。PS3のような大きいパッケージにも興味はありますが、作り手のエゴを感じられるスマホのゲームっていいと思いますね。

安藤:いいですねー。以前、尊敬しているアニメのプロデューサーの方とお話した時に同じことをおっしゃっていました。「お前、アプリを作って売っているけど、それってちゃんとおもしろいのか」と。「俺はこれからも一方的に俺の考えを押しつけるような作品を作って売るけど、お前の作るものはそういうものになっているのか」と。そう言われた時に、最近あまり押しつけてないなーって。コンソールをやっていた時はバカゲーを作ってさんざん押しつけてきましたけど、今やっていることは、僕が今まで一番嫌っていたものになりつつあるんじゃないかと。『ミリオンアーサー』や今作っている新作で、離脱を防ぎたいとか、ユーザービューを上げたいとかいう気持ち。で、その方に「エゴがないとダメ」と言われて、その通りだと思ったんです。このゲームを誰が作ったのか、それがわかるとすごくいいし、その人の次の作品も楽しみになりますよね。やっぱりクリエイターの顔が見えるゲームを作っていかないといけない。『チェンクロ』もそういうところがありますし、松永さんとお話ししてさらにそう思いました。

松永:ぜひやっていきましょう! 今回、王道RPGというフワッとした言葉を使っていますけど、ここにエゴがなかったらただのファンタジーなんだろうなって思うんです。『チェンクロ』は最終的にはシェアードワールド(※3)のような、いろんな作家さんが入って物語を描ける世界にして、そこでまたコンテンツの可能性が広がるといいなと思っているんですが、だからこそ他の作家さんが参加した時に『チェンクロ』という世界観に、ぶれない芯が残っていないとダメなので、そういうタイトルに今後もしていきたいです。同時に、これからもとにかくキャラを大切にしていきたいと思っています。楽しんでくださるユーザーさんがいてこそのキャラ立ちなので、彼らの会話をたくさん拾っていただけるとうれしいです。今後も、さらに魅力あるキャラクターを作っていきますので、ぜひお付き合いいただければと思います。

※3……フィクションの創作物において、複数の著者が同一の世界設定などを共有して創作する作品群のこと。

安藤:実はまだみんな、セガに松永純という濃いクリエイターがいることを知らないと思うので、これをきっかけに「これは俺が作ったものだ」って打ち出してもいいと思うんですがどうですか?

松永:自分のキャラを立てることにはあまり興味が持てなくて。なのでなにかとババを引くことが多いです(笑)。

安藤:いやいや、松永さんならじょうずにご自身のキャラ立てができると思うので、ぜひ!

『召喚★アプリ神』

■対談を終えて。求ム、松永さんのような色の濃い作り手!

 お話を聞いて衝撃的だったのは、相当したたかに狙い打ちをしているということです。システムやキャラの立て方、またマネタイズも狙って着地させていて、これで一気にスマホゲームのデザインが進化したなって思います。感覚的とおっしゃっていましたけど、その感覚にどれだけの濃さと裏付け、試行錯誤の歴史があるかということですね。2年や3年では到達できない領域にいっているんです。松永さんのような色の濃い作り手にどんどん出てきてほしいです。今って人の作ったアプリに、なかなか興味がわかなかったりするんですけど、それは作り手の色が薄いからだと思うし、濃くするものを作っていかないとただ消費されて終わるなと、改めて感じました。(安藤武博)

(C)SEGA (C)SEGA Networks

データ

▼『チェインクロニクル』
■メーカー:セガ
■対応機種:iOS/Android
■ジャンル:RPG
■配信日:iOS版 2013年8月1日/Android版 2013年7月26日
■価格:無料(アイテム課金)
 
『チェインクロニクル』App Storeでのダウンロードはこちら(iTunesが必要)
 
『チェインクロニクル』Google Playでのダウンロードはこちら

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