2013年12月30日(月)
米Oculus社が開発したヘッドマウントディスプレイ『OculusRift』。以前にもこれに対応した『Perilous Dimension』を紹介しましたが、低価格かつソフトウェアライブラリが無償提供されていることから、インディーズデベロッパたちから多くの注目を集めている様子。幾つか対応ソフトが出展されていた中から、今回は2点をお伝えします。
『OculusRift』に、同デバイスを標準でサポートする“Unity”、Unity上で“MikuMikuDance”環境を再現する“MMD for Unity”、セルシスが販売する人型入力デバイス『QUMARION』を組み合わせて開発されたのが、MCFさんの“OcumaRion”です。
これで“何ができるか”と言えば、“触って動かす初音ミクを立体視で見られる”だけです。ただし「だけ」とは言っても、目の前に広がる仮想空間のオブジェクトを触感のある中で動かせるという体験は、なかなか他では味わえません。
NCFさんは『OcumaRion』について、「販売予定はありません」と公式サイトに記載しています。また、例え販売されたとしても専用のハードウェアが必要なため、環境の再現は難しいところ。こういったハードとソフトの組み合わせを体感できるのも、イベント会場ならではです。
▲各種ガジェットやミドルウェアによって、“初音ミクと触れ合う”体験が実現。ただし、その様子は極めてシュール。 | ▲同ブースにて出展されていた『EYERESH』。スマートフォンでサイドバイサイド方式の立体映像を楽しめます。 |
これもまた、タイトル通りの“木造校舎を歩く”だけというソフト。『ギアーズ オブ ウォー』シリーズに知られるEpic Games提供の“Unreal Development Kit(UDK)”で表現された、雰囲気たっぷりの仮想空間を体感できます。
もともとはiOS向けのタイトルとして開発していたものを『OculusRift』に後から対応させたそうですが、大きな障害もなく成功したとのこと。UDKも『OculusRift』をサポートしているのでその結果とは思われますが、コンテンツの仕様を簡単に切り替えられるのは驚きです。
▲放課後特有のうら寂しさを思い起こされるほどのリアリティ。 |
さまざまなゲームジャムにおいて、理解のしやすさ、開発の簡便さから広く用いられているのが、統合開発環境“Unity”です。商業タイトルではKONAMI『メタルギアソリッド ソーシャルオプス』やセガネットワークス『デーモントライヴ』など、スマートフォン向けタイトルを中心に活用されています。
“Unity”を提供するユニティ・テクノロジーズさんも、“東京ロケテゲームショウ”と“デジゲー博”に出展されていました。Unityはルールが簡単なパズルやSTGなら比較的すぐに構築できる他、無料版が提供されていること、そして無料版の商用利用が認められていることから、インディーズゲームに広く利用されています。
スタッフの方に伺ったところでは、ユニティ・テクノロジーズさんとしてもインディーズゲームは重要な市場と捉えているそうです。また無料版は有料版を単純に機能制限したものであり、家庭での学習を業務レベルにそのまま持ち越せるので、ゲーム開発者を志す方が勉強を行うにも向いているとのことでした。
▲先日、“ユニティちゃん”というブッ飛んだ展開を発表したUnityさん。ちなみにユニティちゃんは、3Dモデルデータが来春以降に無償提供される予定です。 |
さまざまなタイトルで皆さんも見かけたことがあるでしょう、CRI・ミドルウェアさんのロゴマーク。CRI・ミドルウェアさんは、サウンドエンジン『CRI ADX2』の無料版である『CRI ADX2 LE』を出展し、実演デモを行っていました。イベント会場はこのように、ミドルウェアメーカーの方から直接のプレゼンを受けられる重要な機会でもあります。
『CRI ADX2 LE』にはゲームに多用されるサウンド演出が多数実装されていて、同梱のサウンドオーサリングツール“CRI Atom Craft”から、多彩なゲームサウンドのデザインが可能です。公式サイトでは、銃声や薬莢の落着音を合成させたサウンドエフェクトの作例や、ヘリコプターの状況に応じて変化するローター音の作例などが公開されています。
▲CRI・ミドルウェアさんのブースでは、同社マスコット“りんご”も来場者をお出迎え。 |
2014年初頭のリリースを目指して、PlayStation Mobile向けの『HOStram』を開発しているのが、SkillshotJPさん。本作は、市長となってLRT(次世代型路面電車システム)を運営していくパズルシミュレーションゲームとなっています。
PlayStation MobileにはSLGタイトルが少ないので、貴重な1本と言えます。また、交通シミュレーションゲームは自動車や鉄道など各種ありますが、路面電車をフィーチャーするのはなかなか珍しいところ。こういった“隙間を突く”ような視点は、実にインディーズゲームらしさを感じられます。
▲モノトーンを基調としたシンプルなグラフィックが印象的な『HOStram』。 |
PS Vita/Android向けの“PlayStation Mobile SDK”や、Xbox 360/Windows向けの“Microsoft XNA”を利用して開発を行う4サークルによる合同出展のチームが、“CS GameEngine Alliance Tokyo”。こちらの方々が展示されているゲームは、一部がすでに“PlayStation Moblie”や“Xbox LIVE インディーズゲーム”にて配信されています。
個人開発でコンシューマゲームをリリース……と言うとなかなかのハードルにも感じられますが、出展者にお話を伺ったところ「できたらコンシューマゲームにてリリースしたい」という“ゆるさ”の上で、さほど気負わずに開発を続けているとのこと。昨今におけるPCの性能向上や開発ソフトウェアの低価格化もありますが、開発者を受け入れるプラットフォーム側の柔軟な姿勢も感じられます。
▲PS Vita『すくみゅ』やXbox 360『REVOLVER360』は、各プラットフォームにおいて各100円にて配信中。低価格で楽しめることも、インディーズゲームの特徴のひとつ。 |
コンピュータの技術が発達するたびにプロジェクト規模やゲームの開発費も高騰し、開発に柔軟さが失われていったのは周知の事実です。ですが、昨今はさらに技術が進歩したことによって、逆に小規模での開発が容易となってきています。
また、クラウドファンディングの一般化によって、予算の獲得といった面でもハードルは徐々に下がっています。邦人で資金獲得に成功した例としては、黒川文雄氏や飯田和敏氏などによる『モンケン』、稲船敬二氏による『Mighty No.9』が有名です。こういった風潮は、作品を世に贈ることを望む開発者、そして独自色の高いゲームを求めるユーザーにとって、大きなチャンスでしょう。
その他、ゲームマシンがPCベースとなりマルチプラットフォームが容易となる中、各ハードメーカーは独自タイトルの確保に熱を入れています。SCEがPS4のカンファレンスでインディーズゲームのリリースを推していたのも印象的でした。個人やサークルでのゲーム開発者、あるいは小企業にとっては、今こそがコンシューマ参入のチャンスかも知れません。
▲ブレインストームさんのサウンドツール『Graph Arpeggiator 3』、team.Drakujiさんのメダルゲーム『P.Cube2』、SIETさんの『ドラゴンシーカー』や『HERA 破滅の女神』、PLAYISMさんが配信している各国のインディーズタイトルなど、話題にしようと思えばいくら時間があっても足りないほど。興味を持った方は、ぜひ次の機会に参加してみてください。 |