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2014年2月21日(金)

『ガルパン』で黒森峰の主力となった超重戦車に思わず身震い!? 『World of Tanks』での実力も解説! 【めざせ! 戦車道免許皆伝 第20回】

文:田中尚道

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■遅すぎた超重駆逐戦車【Jagdtiger】(Tier IX)

 【Tiger II】と同時に開発がすすめられたのが【Jagdtiger】です。他の駆逐戦車と違って、既にある戦車をベースに改装されたわけではなく、まず3,000mの距離からあらゆる敵戦車を撃破するというコンセプトが先にあって、【Tiger II】とコンポーネントを共有する形で開発されました。ただし、車体をそのまま使うことはできず、砲のサイズに合わせて伸長してあります。主砲は圧巻の12.8cm。

『World of Tanks』

 アウトレンジで敵を撃破するなら、防御を捨てても問題ない気もしますが、機動力を犠牲にしても防御を固めるのが当時のドイツ流? 日本だったら、絶対に装甲を紙にして砲撃力と機動力を残すところです。【Jagdpanther】の前面装甲は250mmと、【Tiger II】よりもさらに厚くなっています。これは、第二次大戦中のいかなる火砲をもってしても抜けないという硬さでした。それ以外も側面80mm、背面80mmと大変厚くなり、おかげで重量も75tと、【Tiger II】より5tほど重くなっています。もうここまで来ると、5tくらい誤差の範囲の気もします。日本軍の軽戦車と同じくらいの重さなんですけどね。

 さてこの12.8cm砲は、もともと【Maus】の主砲になる予定だった12.8cm Kw.K. 44 L/55です。弾頭口径が12.8cmにもなると、砲弾のみで28kgもの重さになり、炸薬と弾頭を分割する方式を採用。それに伴って、装填手も2名になっています。12.8cm対戦車砲は、第二次大戦中で最強の対戦車砲と言われており、攻撃力は当初のコンセプトから申し分ない性能を発揮しました。

『World of Tanks』
▲驚異の威力を誇る12.8cm砲。こんなので狙われたら、ちびってしまいます。
『World of Tanks』
▲砲身長が7mを超えているので、接近し過ぎるとすると攻撃できません。これが唯一の欠点?

 走行性能については車体が【Tiger II】がベースとなっているので、決してほめられた出来ではありません。機構の故障についてはさておき、1日の移動距離も30から40kmと超鈍足。さらに、重く長い砲を固定するトラベリングクランプを移動中にかまさないと、移動の振動で砲を支えるギアが摩耗したり、照準が狂ったりと、すぐに使い物にならなくなってしまうありさま。また、このトラベリングクランプを外すのが容易でなく、敵が見えてから誰かが車外出てこれを外すという泥縄状態です。結局、【Jagdtiger】が戦線に投入されるころには戦車兵の損耗も著しくなっており、ほとんど活躍の機会もないまま終戦となりました。

『World of Tanks』
▲戦車は急に止まれない! 75tの車重で限界まで加速していれば、急制動は不可能です。

●『WoT』での【Jagdtiger】

 【Tiger II】の車体を流用しているのだから機動力はもっさりかと思えば、駆逐戦車として考えるとそんなに悪い操作感でもありません。射角も左右10度ずつと、【Ferdinand】ほどでないにしても、そこそこ左右に振ることが可能です。ただし、射界の外の敵を狙うために車体を旋回させようとすると、これが結構遅くてストレスに……。

 正面250mmの装甲があるので、敵を正面に捉えて砲弾を装甲で受けるという手も使えます。でもTier Xの戦車が持つ砲には抜かれてしまうので、相手選びは慎重に。また、最終砲は【Maus】のものより強力な12.8 cm PaK 44/2 L/61になるので、Tier Xの戦場でもそこそこの活躍が期待できます。

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▲砲の下にある三角形のフレームみたいな物が、問題のトラベリングクランプです(※画像は英語版のもの)。

■“史上最重”の超装甲戦車【Maus】(Tier X)

 ソビエトが後から開発した【T-34】と【KV-1】、そして【KV-2】にショックを受けたドイツですが、「ボケボケしていると、さらに強力な戦車が投入されるに違いない!」というほとんど強迫観念に近い形で、1942年に超重戦車【Maus】の開発をスタートします。

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 この【Maus】がどれくらい重いかというと、驚きの188t! 重い重いと散々書いた【Tiger II】で70t、【Jagdtiger】でも75tですから、もう何考えているのかと問い詰めたいレベルです。ちなみに現在に至るまで、【Maus】以上に重い戦車は開発されておりません。

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▲圧倒的な装甲を誇る【Maus】。戦車道全国大会に参加した戦車で、この正面装甲を抜ける砲を持つものは理論上いません。

 はてさて、当時の機甲総監だったハインツ・グデーリアンには、閲覧式で「重すぎて接近戦能力の低い戦車で何する気だ」とこき下ろされ、軍需資材の管理をしている軍需大臣であるアルベルト・シュペーアには「そんなことよりほかに資材を回すべき」と、まぁ至極当たり前なことを言われております。

 そんな逆風の中、それでも男の浪漫とばかりに開発が進められましたが、他にも作らなければならない戦車が多数あるために開発は遅々として進まず。なんとか試作車を2両作ったところで目が醒めたのか、すべての超重戦車の開発中止命令が出ました。これが1944年11月のこと。ところが、ドイツの敗色が濃厚となると、1945年に入ってから「折角だから使おう! 急いで生産しろ!!」との命令が下されます。ここら辺の混乱を見るにつけ、負けフラグが立ちまくってますね。

 そんなこんなで、なんとか出撃は果たしたものの、試作2号車は機関の故障と燃料不足で立ち往生。目の前に敵がいるので直す時間もなく、よしんば直せても燃料がないので動かないと判断され、爆破処分の憂き目にあいました。なお試作1号車は、試験場にうち捨てられた状態で発見・鹵獲されました。

 爆破された試作2号車は、車体から砲塔部が外れた状態で発見されたのですが、この砲塔を運ぶために6台の18tハーフトラックが必要になったとか。それもそのはず、この戦車は砲塔だけで55tもあるのです。【Tiger I】と同じくらいの重さだよ!

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▲【Maus】の砲塔と、バレー部チームの八九式中戦車による力比べ。八九式中戦車は12tほどなので、【Maus】の砲塔よりも圧倒的に軽い……。

 【Maus】の搭載砲は、【JagdTiger】と同じく12.8cm Kw.K. 44 L/55。当初の計画案では、後々15cm砲や17.4cm砲を積む計画もあったとか。また副砲として、36.5口径の75mm砲が搭載されています。この半端な口径の副砲は、短砲身24口径75mm砲だと砲煙が冷風器を直撃するからという理由で【Maus】のために開発されました。

 まぁこれだけの重装備ですから、駆動系はさぞかし悲惨なことになっているだろうと賢明な諸兄はお考えでしょう。実際、悲惨なものだったのです。なにせ最高速度は時速20km。この重さになると、通常のトランスミッション式では重量に耐えられないため、ポルシェ博士お得意のガス・エレクトロニック方式(エンジンで発電してモーターで駆動)を採用。動かすのに1,500~1,800hpが必要と事前に見積もられていたのに、実際に搭載できたエンジンでは1,200hpがせいぜいと、かなり力不足のままになっていました。

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▲「あんな図体でなにがマウスよ!」と、『ガルパン』の劇中でそど子殿が怒っておりますが、もとはマムート(Mammut、ドイツ語でマンモス)という名前が考案されていたそうで、計画を秘匿するためにあえて反対の意味の名前をつけたとか。

 ちなみに、【Maus】はあまりに重いため橋を渡ることをそもそも想定しておらず、渡河の際は潜水することが前提となっていました。そのために水密化が施され、2両一組で行軍しつつ、渡っていない側の1両が発電して電力を供給するという風変わりな運用方法が考案されました。

●『WoT』での【Maus】

 正面200mm、側面185mmで背面160mmと、全周が分厚い装甲に包まれた【Maus】。しかも見た目通りの“ほぼ箱状態”で、特に弱点となる個所もありません。とても硬いのが特徴ですが、Tier Xの戦場では200mmくらいの装甲を軽く抜いてくる戦車がひしめきあっているので、注意が必要です。個人的な意見ですが、敵の【Maus】はよく弾を弾くのに、自分の【Maus】はよく抜かれる印象があります。つまり敵に回すと厄介なものの、自分で使う分には思ったほど強くない戦車の典型ということです。

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▲橋を渡ることを想定していなかった【Maus】ですが、『WoT』では普通に乗り越えることが可能です。逆に水密化は再現されておらず、水に落ちると10秒で大破に至るのは他の戦車と同じです。

 最高速度は20km/hと自走砲並なので、陣地転換は難しく、自走砲に見つかった時には真っ先に狙われます。そのため、開けた地形にも注意! 攻撃力については、Tier Xとしてはやや物足りない感じの12.8cm Kw.K.44 L/55を搭載。重装甲という特徴のみが突出しているので、活躍するにはそれなりのコツが必要になります。

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▲ちなみに【Maus】は、開発時はVIII号戦車と呼ばれていました。VII号は欠番というわけでもなく、計画段階で終わってしまった【Lowe】に振られていました。『WoT』における【Lowe】は、ゴールドを使って購入することが可能です。

(C) Wargaming.net

データ

▼『World of Tanks(ワールド オブ タンクス)』
■メーカー:ウォーゲーミングジャパン
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月5日
■価格:無料(アイテム課金)

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