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2014年4月8日(火)

『Oculus Rift』創業者パルマー・ラッキー氏にGDC2014会場で直撃! Facebook買収発表前に語っていた今後の技術展開について

文:電撃オンライン、野生の男

 電撃オンライン読者の皆さんこんにちは。『DK1』が届いてからずっとOculus Rift向けにゲームを作っている野生の男です。

 Oculus Riftの座談会記事Project Morpheusの座談会記事の中にも登場しているため覚えている方も居るかもしれませんが、実は去年の夏にもコミックマーケットで出した日本初のOculus Rift対応の同人ゲームを電撃オンラインさんで紹介していただいてたりもしました。

『Oculus Rift』 『Oculus Rift』
▲筆者が制作したOculus Rift&Leap Motion向けのゲーム『Perilous Dimension』。

 これまで掲載された2回の座談会記事を見て「この男全然喋ってないな」と思われた方も居るかも知れません。実は僕が今年のGDCに参加したのは、『Oculus Rift DK2』と『Project Morpheus』を体験することとは別の目的がありました。

『Oculus Rift』 『Oculus Rift』
▲『Oculus Rift DK2』▲『Project Morpheus』

 それが今回の記事である、Oculus VR社の創業者Palmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏へのインタビューです。座談会で発言量が少なかったのは、インタビューに全神経を集中していたせいで、決して時差ボケで眠かったからではありません!(笑)

 サンフランシスコで日本のOculus Rift界隈の重鎮であるGOROmanさんとNeedleさん、Oculus Riftの記事を各所で書かれている広田さんと合流でき、会場のOculusブースど真ん中のソファーで3対1という、非常に濃密なインタビューが行えました。

『Oculus Rift』
▲GDC2014の会場で常に盛況だったOculusVRブース。

 GDC2014が終了してからこれまでの間に、Oculus VR社がFacebookに買収されるというニュースがありました。しかしインタビュー当時は当然ながらそんな情報はまったく出ていなかったので、インタビュー内容も買収とはまったく被らない内容となっています。

 しかし、Facebookに買収された最大の理由である「Oculus Riftの将来に巨大資本がなぜ必要か」などについて、納得が行く(かもしれない)やり取りもチラホラありますので、ぜひ以下のインタビュー読んでいただければと思います。

 現地での同時通訳・文字起こしを担当してくださったNeedleさん、可能な範囲の自腹額でGDCに行けると教えてくれて、このインタビューの大元のきっかけを作ってくれたGOROmanさん、今回の記事掲載を執り成してくれたライターの広田さんに感謝します。

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――もしKickstarterがなくても、Oculus Riftは現時点でDevelopment Kit 1/2などが完成していたと思いますか?

 絶対にありえません! Kickstarterなどのコミュニティからの多くの支えがなければ今日の状況はありえなかったでしょう。

『Oculus Rift』
▲今回のインタビューの聞き手は野生の男、Needleさん、GOROmanさんの3人。

――日本にもOcufes(Oculus Festival)やそれ以外にも多くのOculus Rift開発者コミュニティがあり、そのようなコミュニティは世界中に存在しています。CCP Gamesの『EVE:Valkyrie』がコンシューマ版の同時リリースタイトルとして発表されていましたが、コンシューマ版の同時発売タイトルはどのようなプロセスで決定されるのでしょうか。例えばインディーゲーム開発者が、自分のソフトをコンシューマ版と同時にリリースするといったことも可能ですか?

 はい、インディーのコンテンツも大企業のコンテンツも、どちらにも興味があります。『EVE:Valkyrie』は、彼らと正式なパートナーシップを結ぶ前に発表していたので特別な例です。

 現在、他のデベロッパーともパブリッシュできるように水面下で話を進めていますし、ローンチにコンテンツが間に合うようインディーデベロッパーに協力を求め始めています。また、極力オープンにしておけるよう考えています。

 多くのゲームコンソールでは同時リリースタイトルは公式に認可を受けなければ開発ができませんが、我々はそのような制約をなくし、コンシューマ版リリースの何カ月も前に発売日などのスケジュールを公開して、どの開発者でも同時リリースのコンテンツを用意できるようにする予定です。

――なるほど。ちなみに、日本ではDK1の時は遅れて出荷されていましたが、コンシューマ版ではそういった国に対しても同時に出荷される予定はありますか?

 まだ分かりませんが、そうしたいとは思っています。結果的にそうならなかったとしても、それは開発上の判断ではなくビジネス上の判断になるでしょう。

 というのも、全世界同時に出荷するための供給体制を整えるということは非常に困難な上に、税金など各国によって異なる事務的作業も必要になってしまうからです。ですが、極力多くの国でローンチしたいとは思っているので、作業を進めています。

※4月7日に開催されたUnite Japan 2014基調講演にて、DK2の日本優先オーダーが明らかにされている。

――SCEからProject Morpheusが発表されたことで、OculusVRの戦略が変わるという可能性はありますか?

 いえ、まったくありません。彼らは私達とかなり似たやり方で物事を進めているので、私達が方向性を再考するということもなく、むしろ正しかった事を立証してくれています。ちなみにブースのMorpheusデモはPS4ではなくハイエンドPCで動いていたようで、ブースでデモがクラッシュしてWindowsが出てきたという報告がありましたよ。

※SCEの吉田修平氏のTweetいわく、『The Deep』と『The Castle』はPS4との事。残りがPCだと思われる。

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■スタンドアローン版のOculus Rift構想も

――光学式のポジショントラッキングだとOmniなどの立ちながら使うデバイスと併用しづらくなると思うんですが、将来的には光学式から別の方式に移行していくのでしょうか?

 いずれはやりたいですね。現状では製造物責任法の問題ですが、法的問題がすべて解決したとしても、ユーザが快適なプレイ体験を得られる技術を提供できるようになるまでは、立ちながらのプレイを想定した物は出さないと思います。

 もちろん、将来的に技術が解決して快適に立ちながら遊べるようになったとしたら対応したいと思っています。いずれはできるはずです。

 私達の長期的なビジョンは、プロセッサを内蔵してスタンドアローンで動く、よりスリムで軽いRiftを出すことです。その時はARにも使えるようになるでしょう。5年先か10年先かわかりませんが、その時は快適に歩きまわったりといった事も可能なはずです。

 今も実験は行っており、例えば社員の1人がやった実験では、フットボールコートのような広い空間内でノートパソコンを背負い、ヘッドマウントディスプレイと高精度GPSなどのワイヤレス位置認識システムを装備して自由に動き回れるようにしたというものがありました。

 Redirected walking(実際に歩いている方向とややずれた方向をVR内で提示することにより、直進しているつもりのユーザを気付かせずにカーブさせ、現実側の空間を実際より広いと錯覚させるテクニック)の仕組みを使っているので、どこまでも歩き続けられるんですよ。夜に大学の運動場で変なサイボーグの格好をして走り回ったんです。こういった事を実現したいですね。

 例えば、世界中各地に存在するテニスコートやフットボールコートを繋いで、各々の会場には数人しか居ないように見えるのに、VR空間上では世界中のプレイヤーがゲームに参加しているといった試みを出来たりすると素晴らしいと思います。

『Oculus Rift』

――Oculus Rift自体にステレオ(立体視)カメラを付ける予定はありますか?

 動画録画用としては、再生時に視聴者が酔ってしまうため難しいと思っています。視聴時に自由な方向を向ける全天球撮影のほうが向いているでしょう。

――確か撮影した映像にSLAMを行ってモデリングして、酔わずに視聴可能にする技術がありました(東大暦本研究室のJackInの事)。

 SLAMをするか、もしくは別のデプスカメラを搭載して、そちらでモデリングする手もありますね。ただ、Kinectを1台使うような方法だと頭を移動させた時にデプス情報の抜けが黒く表示されてしまうので、それを防ぐためには色々な角度を撮影できるように複数のカメラを取り付ける必要があります。

 いずれにせよ実写映像を撮影できるようにはしたいですし、そのための実験をしていますが、カメラをRiftに付けるのが最適解かはわかりません。またARに関しては、あまねくユーザーがそのAR機能の恩恵を享受できるほどハードやソフト、またユーザ体験が整備されたら搭載することはあると思いますが、かなり先の話になると思います。

――コンシューマ版が出た後にもDevelopment Kitは出るんでしょうか? DK2にはUSBポートなど、かなり開発者寄りの機能が含まれていると思うんですが。

 セッションで発表した通り、コンシューマ版が出た後はDevelopment Kitを出す予定はなく、その後はコンシューマ版で開発が可能になります。何か別の製品を出すとしたらその製品のDevelopment Kitを出す事はあると思いますが、だいぶ先の話になるでしょう。仰るとおり、現在はハックしたい人のためにUSBポートをつけてありますが、一般人があまり使わないと思われる機能は、コスト削減のために廃止する可能性はゼロではありません。

『Oculus Rift』
▲Oculus Rift DK2などの開発キットにはUSB端子を搭載。コンシューマ版でも搭載されるかどうかは今のところ不明。

――Google Tangoのような3Dスキャンデバイスが普及してくると、部屋をスキャンして障害物を考慮できるVRを実現できると思うんですが、それについてはどうお考えですか。

 Google Tangoのベータ版を既に持っているのですが、非常におもしろいです。ただ、まだまだプロ向けのデバイスとは比べ物になりませんが、広く手に入るようになるのは良いですね。

――リアルタイムでスキャンしてVR内に表示することで、ポジショントラッキングの製造物責任問題を解決出来るかもしれません。

 現在はリアルタイムでVRに使うにはスピードが追いついていませんが、例えば事前に部屋をスキャンしておいて後で入る、などには使えると思います。

――いずれスピードが追いついたら出来ると思いますか?

 (現在の固定カメラのような外側からではなく)内側からSLAMして障害物を検知するのはできるでしょうね。

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■日本の力強いOculus Riftコミュニティは重要

――日本ではPCゲームの人口がかなり少ないですが、Oculus Riftを日本市場に出す場合の勝算といったものはあるでしょうか。

 開発中のモバイルAndroid版の品質はだんだんよくなっていますし、また将来的にスタンドアローン版が完成すれば、それも市場に投入できます。日本のPCゲームの市場が小さいとしても、出すにこしたことはありません。

――それでは、日本も含む、Oculus Riftの開発コミュニティについてメッセージはありますか?

 はい! まず開発コミュニティ全体について。コミュニティなしには私達の活動は成り立ちません。私達はハードウェアとプラットフォームの会社で、少なくともまだコンテンツは作っていません。もし作り出したとしても、全体のほんの一部のはずです。

 そして日本の開発コミュニティについて。私達があまりサポートできていないにもかかわらず、あれだけの力強いコミュニティが生まれている事に魅力を感じます。(サポートできていないのは)わざとではなくて、大量の作業に追われている中で漏れてしまっているのが理由なのですが、多数の新しいコンテンツを作ってくれているコミュニティとはより強い繋がりを作っていかなければならないと思っています。

『Oculus Rift』

――日本では非公式のドキュメント翻訳が盛んですが、これを公式に載せられませんか?

 非公式翻訳を公式化するか、自社で正しさや一貫性を担保した公式翻訳を作成するかどうかというのは考えているのですが、なにぶん日本語を話せるスタッフがまだ社内に居ないので、遅れているという状況です。

――では、Oculus VR Japanの計画などは?

 Oculus VR Japan……はい、計画はあります。どういった形になるかはまだわかりませんが、計画はあります。

――そういえば、キャリアセンター(企業側の求人活動を目的とした出展エリア)のOculus VRブースで今朝、Tシャツを受け取るために日本人名が書かれた名刺をブースの女性に渡したら、「ぜひOculus VR Japanオフィスに!」といった風に言われたんですよ。

 えっ? それは誰に言われたんですか!? Oculus VRキャリアセンターで!? 本当に?

――そうです。

 誰が言ったのか後で確認しておきますが、よいことです。会社が大きくなるのが速過ぎると物事が色々な所から起こりすぎて、自分でも把握しきれていないことが結構あるんです(笑)。

 日本によい形で参入できるよう、そして将来的にも大きくしていけるよう、強いチームを作っていかないといけません。大きくなっていくにつれて、長期にわたってコミュニティをサポートしていくには数人では足りませんからね。

※4月7日に行われたUniteJapan2014基調講演にて、Oculus VR日本法人の立ち上げがパルマー氏から明らかにされた。

――若い会社にしてはOculus VRオフィスの数が多いのは何か理由があるんですか?

 OculusVRとして一番規模が大きいのはアーバイン本社で、次に大きいのはダラスの10人程度、その他のオフィスは3人程度で現在運営しています。

 例えばサンフランシスコにオフィスがあるのは、Webの開発拠点としてWebエンジニアを多く集めるためですし、韓国オフィスはハードウェアパートナーが韓国に多く集中しているからと言う理由があります。目的に合わせてオフィスを立地しているんです。

――Oculus Riftがオープンで誰でも開発できるようにしたのは、意図したものなのでしょうか? それともたまたまそうなったのですか?

 両方です。メリットとしては非常に多くの開発者が色々なソフトを作れる所があります。デメリットとしては、ソフトをダウンロードできる場所が多すぎて中心的なサイトがまだ存在しない所ですね。これは解決しようと考えていますが、それができた後もオープンなままにはしていきたいと思っています。

――ソフト配信といえば、Oculus VR Shareの審査プロセスはもう少し早くなりませんか? 1カ月くらい待たされたこともあるんですが……。

 Oculus Shareの審査は1人で行っていて、それが主な原因の1つです。特に異言語のものについては、私達のサイトに置いてよいものかどうかを綿密に確認する必要があるため、時間がかかる傾向にあります。例えば、かなり初期に投稿された日本語ソフトで3Dメイドのゲームがありましたが、しばらく進めた後に性的なシーンが含まれていたものがありました。また、例えばドイツ語のソフトに……。

――ナチス要素が含まれていたり?

 まさに。それらなど問題のあるシーンがないかを、英語しか分からないスタッフで隅々まで調べているため、非常に時間がかかってしまっています。

 Oculus VR Japanなどの新しい支社を作るとしたら、そうした審査も業務内容に含まれると思います。しかし現在は確かに仰る通りで、審査プロセスは容認できないほど遅く、改善が必要だと考えています。今でもリジェクトする時もただリジェクトするのではなく、頭部モデルが間違っているとか、ステレオがおかしいとか、何がまずかったかの理由付きで返すようにしています。

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■OculusVRのベンチャー精神についても聞いてみた

――日本では「若い内に起業をするな」という言説も多く、それらは主に若者は経験や資金面が乏しいからという主張です。それについてどう思われますか?

 何故起業するなという意見が出るのかわかりません。若い時というのは、エネルギーがあり、長時間働くことができ、社会生活や家族に気兼ねすることもなく、起業するには最適な時です。

 ビジネスを始める人は、自分が一生懸命に労力を注ぎ、仕事を最優先のプライオリティにしなければならない事を理解せねばなりません。それを一番のプライオリティにしたくないのであれば誰かのために働く方がいいかもしれません。

 それにしても、日本では何故起業を勧めないのでしょうか? アメリカの人はまったく反対で、起業するに見合う力を持っていない人というのも沢山いると思いますが、それでも構わず起業を勧めるくらいです。起業は若い時にできる最高の事という風に考えられています。たとえ、失敗したとしても。

――恐らく日本でそういうことを言う人の中には、リスクや失敗に対する過剰な恐れがあるんだと思います。失敗したらもうおしまいだ、といったような。

 こちらの国だと失敗というのは学習のプロセスの1つとして織り込み済みで、失敗があって当然という考えが根付いています。それが起業しない理由にはなりません。

――ありがとうございました。

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