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2014年7月7日(月)

【FFXIIIシリーズ後日談小説 #05】「プライベートな質問は勘弁、なーんてな」~スノウ・ヴィリアース

文:電撃オンライン

 スクウェア・エニックスから発売中のPS3/Xbox 360用RPG『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』。その後日談を描く“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”の第5話を掲載する。

 著者は『ファイナルファンタジー』シリーズや『キングダム ハーツ』シリーズのシナリオに携わってきた渡辺大祐氏。今回の作品では、『FFXIII』シリーズ完結後の世界を舞台に、とある女性ジャーナリストを主人公にした記憶を巡る物語が描かれていく。

 今回お届けするのは、スノウに関するエピソード。時を越える旅の終わりに、彼が見たものは?


“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

 海のように広がる緑の草原をまっすぐに割って、埃っぽい幹線道路が地平線の彼方まで続いていた。

 道路脇には、かろうじて風雨をしのげる程度の四阿(あずまや)がある。バスの停留所だ。時刻表の文字はかすれ、赤錆と空白ばかりが目立つ。一日の本数は極端に少なかった。

 私はバス停で彼を待っていた。街で会うこともできたが、彼が好んで走るという、この道で話を聞いてみたかった。

 見渡す限りの草原は雄大な風景ではあったが、変化に乏しい単調な景色とも言えた。“あの世界”で戦い続けた彼だからこそ、少しばかり退屈であろうとも平穏な景色を好むのかもしれなかった。

 緑を揺らす風の向こうから、エンジンの爆音が近づいてくる。

 私は停留所を出て、道の傍らで待った。のんびりと走るバイクが近づいてきてから、かなりの大型だと気づいた。乗っている人物の堂々たる体格のせいで、車体が小さく見えたのだった。

 たたずむ私のそばを少し通りすぎてバイクは止まった。エンジンはアイドリングのまま、ライダーは金髪の大男だ。ごついブーツの片足だけを路面に降ろし、彼は振り向いて私へ言った。

「ここで待ってもバスは来ないぜ。路線はとっくの昔に廃止だ」

 エンジン音にも負けない大声は、朗らかで温かい。彼に間違いない。

 私も声を張り上げた。

「大丈夫です。私は、あなたを待っていたんです」

「ヒッチハイク……でもねえか」

「セラ・ファロンさんに会って、あなたのことを聞きました」

 スノウ・ヴィリアースはエンジンを切った。草原を吹き渡る風のざわめきが戻った。

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

■(5)スノウ・ヴィリアース

 私たちはバス停だった四阿(あずまや)に移動した。スノウにこれまでの事情を打ち明ける。ホープやサッズに会ったこと、ノラのカフェで、私自身もコクーン市民だった過去を思い出したこと、そしてセラとの会話――包み隠さず説明するあいだ、スノウはほとんど口を挟まず、ただ私の目を見て聞き入っていた。

 私が話し終えたとたん、スノウは大きくうなずいた。

「わかった、なんでも聞いてくれ。セラが信じた相手なら、俺が疑う理由もねえや。どこから話せばいい?」

 人懐こい笑顔に白い歯がのぞいた。

「始まりの出来事から――まずは、セラさんのことから」

「プライベートな質問は勘弁、なーんてな。確かに俺の出発点はセラだ。ルシにされたあいつを助けたくて、俺の戦いは始まった」

「恋人のセラさんを救うために、セラさんの姉のライトニングさんたちと旅をすることになった。その……かなり複雑な状況だったと思いますが」

「まあな、ライトニングには嫌われてたし、ホープの母親のこともあった。しかもセラに結婚を申し込んだりして、よけい状況を複雑にしたりな。必死で前に進んでるつもりだったが、だいたいは空回りして迷惑かけた。サッズのおっさんあたりから見たら、体がでかいだけのガキ大将にしか見えなかったんじゃねえかな」

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「それでもあなたは前に進もうとした。倒れても倒れても起き上がった」

「無駄に頑丈だからな。ついでに馬鹿だ。現実を重く受け止めて立ち止まるほど、頭がよくなかったから、あんな大きな敵とも戦えたんだろうな。聖府軍だのファルシだの、常識で考えたら戦わねえよ」

「つまり、あなたは馬鹿だったからこそ、神にも等しい存在だったファルシに挑むことができた?」

「はっきり言うのな……でも、そんなところだ。セラを助けたくて無我夢中で、何も考えねえで敵に突っ込んだんだ。みんなが助けてくれなかったら、俺なんかあっという間に死んでた。ったく、我ながら世話の焼ける野郎だな」

 ごつい拳の太い指で、すまなそうに顎を掻く。

 彼が仲間たちのあいだでどんな役割を果たしてきたのか、この短い会話でわかった気がした。確かに彼は思慮深いとは言えない。だが無茶でなければ一歩を踏み出せないこともある。乗り越えるのは無理だ、挑んでも無駄だと、最初から諦めてしまうような障害にぶちあたる時もある。けれどそんな時、彼は何も考えずに――よく言えば常識にとらわれずに、真っ先に困難に立ち向かったのではないか。だからこそほかの者たちも、彼の無謀さに呆れながらも、その大きな背中を追いかけて走り出せたのではないだろうか。

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

■時を越える旅の終わりに

 そしてコクーンをめぐる戦いが終わる。スノウはセラと再会したが、ライトニングは消えてしまう。

 ライトニングは死んだ――誰もがそう考えていたが、セラだけは姉の生存の望みを棄てていなかった。

「セラのかわりに俺が旅に出て、行方不明の義姉(ねえ)さんを――ライトニングを探すことにした。

 AFの時代になってから、普通の人間が急に魔法を使えるようになったり、世界に妙なことが起きてるのはわかってた」

「そのあとセラさん自身も旅立ったわけですね。その経緯はセラさんから聞いていますが、さぞ心配だったでしょう」

「そりゃあな。ノエルがついてなかったら、絶対止めたよ」

「ノエル・クライス――彼を信頼していたんですね」

「出会ってすぐわかったよ。俺より真面目でしっかりしてたし、それに人を見る目もあった。初対面の俺のことを一発で見抜いたんだぜ? 無茶な奴だって説教された」

「そこは誰でも見抜けるような……」

「……へいへい。とにかくノエルが一緒なら大丈夫だと思えたし、何よりセラが強くなってた。あれは驚いたな、それまで戦ったこともなかったのに、魔物をばたばたやっつけるんだもんなあ」

「さすがはライトニングさんの妹、といったところでしょうか」

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「セラはもともと心のほうは人一倍強いんだ。コクーンで暮らしてたころからそうだった。呪われてルシにされて、普通の子なら泣きわめいてもおかしくないのに、セラは静かに恐怖に耐えた。強かったから途中で逃げだしたりしないで、旅を最後までやり遂げた。その結末に……ああなった」

 最後の一語を搾りだして、スノウは言葉を切った。快活だった彼の沈黙は、ひどく重く感じられた。

 時を越える旅の終わりに、セラは命を落としたのだ。今でこそ彼女は甦っているが、スノウにとっては思い返すのも辛い記憶だろう。話を変えることにした。

「サッズさんから聞きました。あの戦いで女神エトロが滅び、混沌(カオス)の侵蝕が始まった。あふれる混沌(カオス)の力が、世界を崩壊させていったと……」

「そうだ、あれから世界は壊れ始めた。500年もかけて、ゆっくり死んでいったんだ。そして世界の命が尽きる、いまわの際になってようやく、ライトニングが帰ってきた」

「聞かせてください、滅びの時代のことを」

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

■混沌の時代の人類

「混沌(カオス)の侵蝕が始まったころ、人類の拠点はコクーンにあった。昔ファルシが作ったコクーンとは違って、人間の科学で作られた人工コクーンだ。いざという時に人類全部が避難できる、空に浮かぶ箱舟だな。建造を計画したのはアカデミーって組織で、その中心人物がホープだった。あいつには人望があったから、滅びの時代が来ると自然にリーダーになった」

 ホープ・エストハイムを中心に、人類再誕評議会(コンセィユ・ド・ルネサンス)なる組織が立ち上がり、混沌(カオス)の脅威に対処したという。

「俺とノエルは、ホープの支えに回った。ホープが社会を広く見渡して人々をまとめ、俺とノエルは前に出て人々を守るって分担だ。混沌(カオス)から魔物が湧いて出ることがよくあったからな、戦える奴が戦う必要があった。サッズの飛空艇であちこち飛び回って魔物退治さ。

 だが魔物よりも、もっとまずい脅威があった。人の寿命が消えたんだ。歳をとって死ぬことがなくなった」

「人は老いることがなくなった――そんな現象が、本当に起こったんですね」

「不思議だろ? 初耳じゃなさそうだが」

「推測はしていたんです。これまでに集めた証言の中に、ひとりの人間が何百年も生きたとしか思えないケースが何件も。でもまさか、不老不死だなんて」

「違うな、不老であっても不死じゃねえ。事故や病気で死ぬし、食わなくても死ぬ。それに子どもが生まれなくなったんだ」

 新しい命が生まれなければ、人間は数を減らしていくしかない。少しずつだが確実に迫る、人類絶滅の危機――その事態に立ち向かうことが、人類再誕評議会(コンセィユ・ド・ルネサンス)の役割だったというが。

「状況は悪くなる一方でな。混沌(カオス)の濁流で、人の住める土地が減っていったし、空中の“ブーニベルゼ”にもダメージがあった」

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「“ブーニベルゼ”――何度か聞いたことがあります。何を意味する言葉なのでしょう?」

「ああ、人工コクーンの名前だ。それに神様の名前でもある。俺たちの最大の敵だ」

「えっ……?」

「あとで話すよ。ともかく人工コクーンが傷んできて、いつまでも暮らせないことがわかった。そんなタイミングで、ファルシ=パンデモニウムが現れたんだ。人工コクーンの外の大地で、すげえ勢いで活動を始めた」

「いったい、どんな活動を?」

「そいつは物を造るファルシだった。誰に頼まれたわけでもねえのに、海沿いの土地を開拓し、人が暮らせる建物を建て始めた。あっという間に街らしいものを築いて、少し離れた場所にもうひとつ作った。最初のほうは、あとでルクセリオと呼ばれる街になった。次のはユスナーンの基礎になった」

「では人工コクーンに住んでいた人々は、ファルシが築いた街に移住したんですね」

「しばらくは怪しんで近づかなかった。ファルシは信用できねえし、なんのメッセージもなかったしな。警戒しながら様子を見ていたら、ファルシは次の行動を始めた。ユスナーンにプラントを建てて物資を作り始めたんだ。食糧やら燃料をな。ファルシは何も言わなかったが、どう考えても人間を誘ってた――人工コクーンから出てきて、こっちへいらっしゃいってな」

 それは苦渋の決断だったという。数年の議論を経て、人類再誕評議会(コンセィユ・ド・ルネサンス)は地上への移住を決めた。

 人工コクーンは混沌(カオス)の侵蝕で傷み始めていた。このまま大勢の人間が暮らし続ければ、それだけ早く寿命が尽きる。人工コクーンは当時の科学技術の中核で、急に機能を停止すれば社会全体が崩壊する危険があった。人工コクーンを長持ちさせるために、内部の住民を地上に降ろし、外界での生活に慣れてもらう必要があったのだ。ファルシ=パンデモニウムが生産する物資を利用することで、人工コクーンの負担を減らす狙いもあった。

「ファルシがくれる食い物に頼るなんて、人がファルシに飼われていた時代に逆戻りするようなもんだ。一応は安全だった人工コクーンから、外の世界に人を送り出すなんて、まるでパージじゃねえかとも思った。それでもほかに方法はなかったんだ。俺たちは人々の先頭に立って地上に降りた。ファルシに頼りすぎねえように、できるだけ自給自足しながら混沌(カオス)と戦った。来る日も来る日も……終わりの見えねえ戦いが、何年も続く日常になった」

「時間の感覚をなくしそうですね……サッズさんの話を思い出します。目を覚まさないドッジ君のことで絶望して、長年さまよっていたと聞きました」

「おっさんの力になりたかったが、打つ手がなくてな……。俺も似たようなもんだった。世界の先が見えねえ上に、セラを助ける方法も、ライトニングの行方もわからなくて、やりきれねえ毎日さ。ノエルも思いつめていた。あいつは、セラのことや世界の混乱は、自分のせいだと悔やんでいた。あいつが悪いんじゃないのにな」

「ホープさんは、どんな様子でしたか?」

「あいつは立派だったよ。弱音ひとつ吐かずに、混沌(カオス)を止める方法を探していた。あいつが希望を捨てなかったから、俺も負けずに頑張ろうと思えた。親にもらった名前のとおり、あいつは“希望”そのものだった。俺たちにとっての――いや、大げさなようだが、人間全部にとっての希望だったな。だからあいつは……消されたんだ」

「消された、というのは……ホープさんが“神隠し”に遭って、行方不明になった件でしょうか? サッズさんによると、ホープさんがいなくなったのをきっかけに、世の中が変わり始めたそうですが」

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「あいつが突然いなくなって、人類再誕評議会(コンセィユ・ド・ルネサンス)は混乱した。議論ばかりで何も決められなくなったんだ。俺もまとめようとしたが……ホープのようにはいかなくてな。派閥争いが始まって、世間のいざこざがみるみる増えた。みんな心の余裕をなくしていたんだ。そのころ、俺はユスナーンの生産プラントの責任者で、物資の奪い合いが起こらないように抑えるのが精一杯だった」

 混沌(カオス)の侵蝕が始まってから、すでに330年ほど経っていた。長すぎる歳月を生きた人々の心に蓄積していた負の感情が、ホープ・エストハイムの失踪で一気に噴出したのだという。ファルシが生産する貴重な物資をめぐる対立も起きた。生産プラントの番人だったスノウが、物資の公平な分配につとめていなければ、殺し合いが起きたかもしれない。

 こうした混乱の中、人類再誕評議会(コンセィユ・ド・ルネサンス)は信頼を失っていき、かわりに“教え”が広まっていったという。

「輝ける神の教えってやつだ。世界が滅んでも神様が助けてくれる、新しい世界に導いてくれる――そんな教えを唱える連中が現れた。“救世院”だ」

「“救世院”という言葉は、取材のあいだに何度も聞きました」

「信者の数がどんどん増えて、社会を支配する組織になったからな。連中が拝んでいた神様の名前……当ててみな」

 答えはすぐにわかった。

「……ブーニベルゼ、ですね」

 神の名、そして人工コクーンの名。スノウは「最大の敵」と呼んでいた。

「ホープがいなくなったせいで不安が広がり、希望をなくした人々は、救いを求めてブーニベルゼの教えにすがりついた。

 “神隠し”のからくりが見えてきたろ? ホープを消したのは、ブーニベルゼだ。

 人々の心をとらえるために、神は“希望”を奪ったんだ」

■太守と解放者

 やがて救世院は絶大な権力を握った。スノウは救世院からユスナーンの“太守”に任命され、引き続き生産プラントの管理を任されたが、その裏では紆余曲折があったという。

「救世院は物資を独占したがっていた。そんなこと許す気はなかったが、人間同士で戦うわけにもいかない。表向きは救世院の権威を認めたふりをして、太守の称号を受けたんだ。そのかわりユスナーンの自治は守る、プラントは救世院の勝手にさせないって条件付きでな」

「かなり政治的な工作をなさったようですね」

「昔の俺らしくないだろ? 何百年も生きてれば、馬鹿でも少しは知恵もつくさ」

 ユスナーンの太守として、スノウは救世院との微妙な駆け引きに忙殺された。サッズやノエルたちと会う機会も減り、やがて連絡が途絶えたという。

 時は瞬く間に過ぎていった。ホープが消えてから150年以上が過ぎたころ、クリスタルになって眠っていたヴァニラとファングが甦り、救世院に保護された。

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「それもブーニベルゼの仕業だろうな。ファルシ=パンデモニウムの出現、ホープの失踪、何から何まで“神の計画”ってやつだ。その締めくくりが解放者だ」

 ヴァニラたちの覚醒から13年後、“解放者”ライトニングが帰還する。救世院の教えによれば、解放者とは人々の魂を浄化し、新しい世界に導く存在のはずだった。

「魂を浄化するとは、どういう意味ですか?」

「きれいさっぱり忘れろって意味だ。死んだ人や過去の想いは忘れて、新しい世界に生まれ変わりましょうってな」

 忘却――その言葉で閃いた。

「だとすれば……私たちが“あの世界”のことを思い出せないのは、魂を浄化されたせいですか? コクーンがあったあの世界から、この星に生まれ変わる時に、解放者が――」

 スノウは私の言葉を待った。私は核心に迫る。

「ライトニングさんが、人々の想いや記憶を消したのでは?」


 スノウの眼が一瞬だけ鋭くなって、すぐに緩んだ。見守るような眼差しだった。

「それは違うな。義姉(ねえ)さんは、人の想いを消さないために、ブーニベルゼと戦った――あんたがその証拠だよ」

「私が?」

「あんたの記憶は消えてなかった。はっきり思い出せなかっただけで、俺たちにインタビューするあいだに、あの世界での記憶を取り戻したろ」

「それはそうですが……余計わからなくなってきました。自分の中にあった曖昧な記憶の正体を突き止めたい、それだけで始めた取材でした。でもあなた方に会って、あの世界で体験した記憶を取り戻すうちに、別の疑問が生まれてきたんです――私が今生きてるこの世界ってなんなんだろう、なんのためにこうなったんだろうって。その答えを出すことが目的なんじゃないかって、今はそう思うんです」

「なーんだ、自分でもわかってるじゃねえか。疑問があるなら、その答えを自分で見つける――それがあんたの道なんだろうさ」

 スノウは立ち上がり、道の先を見渡した。風に揺れる草原を一直線に貫いて、道は地平線まで続いていた。

 その道の彼方でどこにたどりつくのか、私にはわからない。背を向けているスノウの瞳に、何が映っているかもわからない。

「ライトニングに会えばわかるさ」

「……居場所を教えていただけるのですか?」

 スノウは振り返り、にっと歯を見せた。

「無理無理、順序ってのがある。あんたがいきなり義姉(ねえ)さんのところに押しかけて、質問攻めにでもしてみろよ。怖いぞ、間違いなく追い返される」

 わざとらしいしかめ面で、大きな体をすくめてみせる。私もつられて笑った。本当はライトニングの行方を知らないのでは、との疑いも頭をかすめたが、彼がつまらない嘘をつくとは思えなかった。

“ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories- 追憶 -記憶の追跡者-”

「ご忠告、ありがとうございます。なかなか難しい方みたいですね。もし会えたとしても、話を聞いてくれるかどうか」

「大丈夫さ。ただ質問するだけじゃなくて、あんたの想いを伝えてみな。必ず応えてくれる」

「想い……ですか?」

「俺もそうだったんだ。解放者として帰ってきたライトニングを、素直に信用できなかった。

 だから自分の想いをぶつけた。それでわかりあえたんだ」

 私は胸の内を省みた。ライトニングに聞きたいことはたくさんある。だがどんな想いを伝えたいかは、まだ言葉にはできなかった。

 ライトニングの行方は突き止められなかったが、スノウは新たな人物を紹介してくれた。私が話を聞きたがっていることを伝えて、段取りをつけてくれるという。スノウやホープらと力を合わせて混沌(カオス)と戦い、世界が滅ぶ最期の13日を見つめていた狩人――ノエル・クライスに会えるのだ。

→#6 ノエル・クライス&パドラ=ヌス・ユール

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データ

▼『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』(ダウンロード版)
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PS3
■ジャンル:RPG
■発売日:2013年11月21日
■希望小売価格:7,000円(税込)
▼『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』(ダウンロード版)
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:RPG
■発売日:2013年12月3日
■希望小売価格:7,000円(税込)

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