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2014年9月15日(月)

PS『夕闇通り探検隊』15周年記念。伝説の隠れた名作ホラーゲームの思い出を語る【周年連載】

文:城 イドム

 あの名作からの発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として連載中の“周年連載”。第4回は、1999年10月7日にスパイク(※現スパイク・チュンソフト)から発売されたPS用ホラーアドベンチャー『夕闇通り探検隊』の15周年を記念する思い出コラムをお届けしよう。

『夕闇通り探検隊』画像 『夕闇通り探検隊』画像
▲シチュエーションから恐怖がにじみ出る、“ジャパニーズホラー”ならではの魅力を感じさせられる『夕闇通り探検隊』。洋モノが得意とする“スプラッタ系”とは異なる、静かに心に広がっていく恐怖を堪能できる。

■怪異とは知らずして隣にあるものなのか……?

 夕闇が街に接吻するとき、いつも見知った場所が不可思議な空気をはらむことがある。そして、それはけっしてゲームだけに限った話ではないのかもしれない。本稿でこれから語る私の体験談は、嘘も誇張もない実話であることを明記しておく。

 2014年の初夏のことだった。深夜、日課のジョギングをしていた私は、不意に「タスケテ」という若い女性の声が聞こえた気がして、思わず立ち止まった。その声が発せられたとおぼしき場所は、4車線道路の県道をはさんだ反対側、私から20mほど離れた位置である。道路の向こうには菜園がたたずみ、そこを突っ切った奥には大きな川が流れ、さらにその奥には林木生い茂る畑が広がっている。

 近くに民家のない寂しい場所だけに最初はソラ耳かと疑ったが、約10秒ほど間を置いて再び、今度はハッキリと「タスケテ」という声が聞こえた。抑揚こそなかったが、その声質には他者に向けて発した意図が感じられた。不審に思って道路を横断した私の耳元に、またもや30mばかり先の川沿い付近から「タスケテ」という声が届く。さらに声を追いかけ、川べりの土手にたどり着いた私は、大声で「何かあったんですか?」と周囲に問いかけた。すると今度は川の対岸、30mほど先から「タスケテ」と、声の主からの返答があった。近辺に橋はなく、対岸へ渡るには大きく迂回するしかない。

 女性が危険な目に会っていると判断した私は、県道まで取って返すと通りがかりの車を止めて事情を説明し、警察への通報を要請した。警察の到着を待たず、私は遠方の橋を経由し、現場と思われる場所へと駆けつける。しかし、街灯のない畑は漆黒の闇に包まれ、謎の声もまた暗闇に溶け込むように消えてしまい、それ以降は私の問いかけに2度と答えることはなかった。

『夕闇通り探検隊』画像

 ほどなくして、数名のおまわりさんを乗せたパトカーが到着し、私といっしょに周囲を見回りするも、何も変わった様子はない。誤報かと懸念して謝罪する私におまわりさんは、「怪しいと思った時点で、すぐ通報してくれていいんですよ。それに対応するのが本官の仕事ですから」と言ってくださった。

 そのあと、「規則ですので」ということで、私の住所・氏名・連絡先を聞かれたのち、「本官はもう少しパトロールを続けます。もうお帰りいただいて結構ですよ」と指示を受け、私は改めてジョギングに戻った。「事件じゃなかったんだから“よし”としよう。イタズラか何かだったのかも」と思っておくことにした。

 しかし、しばらく走っているうちに、この1件には奇妙な点があったことに思い当たった。読者の皆さんは、もうお気づきになっただろうか。

 今回紹介する『夕闇通り探検隊』は、私のそんな体験にも相通じるゲームデザインが光る、PSの名作ホラーゲームだ。今も私は思うのだが、この作品は練られたエピソードといい、凝ったゲームシステムといい、世にあふれる“隠れた名作”のなかでも別格のオーラを放つ、稀有な1本である。

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▲今では手に入れることが難しい『夕闇通り探検隊』のパッケージ。初めて見た人も多いのではないだろうか?

■世紀末、時代が求めていたのは恐怖だった

 1990年代後半、世を静かに席巻したのがホラーブームであった。1998年初頭に公開された映画『リング』が大ヒットしたり、ノストラダムスの予言を根拠に人類は1999年に滅亡するとささやかれたりと、世相にどこかオカルトを追い求める風潮が漂っていたように思う。

 ゲーム界ではPSをはじめ通称“次世代機”が円熟期を迎えたころで、グラフィック表現や演出法が劇的な発展を遂げていた時期でもある。そんな開発環境はホラーブームとうまく融合し、恐怖をテーマにした名作が次々と生み出されていった。『夕闇通り探検隊』は、そんな時代の申し子の1本と呼べる作品である。

 本作からさかのぼること約3年前、1996年3月1日にヒューマンから『トワイライトシンドローム 探求編』という作品が発売された。オカルト好きの女子高生3人が、自分たちの通う学校や近所にまつわる怪奇現象を調査していくホラーアドベンチャーだ。

 実地調査の舞台となるフィールドは2Dの横スクロールアクション形式で構成されており、一見するとシステムはシンプルそのものだった。それでいて、“遭遇した心霊現象を撮影したり録音したりできる”とか、“危険な目に会うと恐怖心を示すゲージが上がり、MAXになるとゲームオーバー”といった小ワザの利いたシステムが功を奏し、十分な遊びごたえを実現。そして何よりも「いかにも、ありそう!」と思わせるシチュエーション作りが巧みで、ホラーゲームに求められる怖さと興味深さを兼ね備えていた点が本当に素晴らしかった。

 その約4カ月後には、1作目から続く物語が完結する『トワイライトシンドローム 究明編』が発売され、こちらも大人気に。そして、このシリーズの流れを組むホラーアドベンチャーとして1999年にリリースされたのが『夕闇通り探検隊』だ。

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 『夕闇通り探検隊』の主人公は、好奇心旺盛な3人の中学生だ。主人公たちは身近に潜む噂(都市伝説)を聞きつけては、興味にかられて調査に乗り出し、その真相に迫っていく。フィールド上での移動は、過去のシリーズ作品と同じく、2Dの横スクロールアクション形式で行われるのが特徴だ。調査の舞台となるのは、主人公たちが住む街・陽見(ひるみ)市で、日本のどこにでもありそうなステレオタイプの新興住宅街として描かれている。

 陽見市には商店街や駅、病院、工事現場、森などを内包した、広大な空間として作中に構築。そして、この街の地図はゲーム中で閲覧できるほか、ゲームソフトにもA4大サイズの全体マップが添付されている。紙の全体マップを用意することで、あたかも陽見市が実在するかのような臨場感がかもし出されており、マニュアルを紙媒体で提供するパッケージ版ならではの“演出”が、心憎く私の心に届いた。

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▲主人公は同じ中学に通う3人組。内気な男の子・ナオ、天真爛漫な“不思議少女”のクルミ、性格が少し屈折した女の子・サンゴという個性派ぞろいの3人が、ナオの愛犬・メロスをお供に(?)嘘とも本当ともつかない噂を調査していく。
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▲ゲームのパッケージに添付されている、陽見市の全体マップ。街の機能性や都市計画の進行例をうまくマップに落とし込んであり、町並みが現実味にあふれている。もちろん、探索時の資料しても役立ってくれる。
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▲写実的なグラフィックが、一種独特のリアル感を演出している。学校での他愛ない会話をはじめ、1日の調査を終えたあとには、各登場人物が帰宅したあとの様子を描写。さりげない演出で“平凡な日常”をプレイヤーに強く印象づけ、よく見知った世界の隣に不思議な世界が重なっている状況を巧みに見せていく。
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▲この街では、ゲームの本筋とは無関係の不可思議な現象もそこかしこで発生する。学校の窓からは、飛行機ともUFOともつかない飛行物体を目撃できることも! また、戸外を散歩していると、道に捨てられたゴミ袋があたかも意思を持っているかのように踊っていることがある。開発者の遊び心にあふれたイタズラが、なんとも微笑ましい。

 続いて、プレイヤーが具体的に噂を解き明かしていく流れをチェックしていこう。

 3人組の調査は大きく分けて、学校での“噂収集パート”と街中での“調査パート”という、2つのパートで構成されている。それぞれのパートに着手する前に、プレイヤーは3人のなかから、誰をプレイヤーキャラにしてゲームを進めていくか選択可能だ。特定のキャラを選ばないと調査が進まないことは少なくないし、キャラによって話の展開や結末が変わることもあるので、いろいろ試してみたくなれる。

 学校での“噂収集パート”では、5分間の休み時間を使って校内を回り、生徒たちから噂を聞き出すことになる。3人組は周囲から変わり者と思われているため、必ずしも友好的な対応をされるとは限らない。それでも足しげくあちこち回っていると、トイレで密談中のグループの噂話を立ち聞きできたり、友だちのほうから「こんな変なことがあってさ……」と相談を打ち明けられることもある。

 こうして聞き出せる噂話の例を、1つ紹介しておこう。陽見市の高台には、坂上地蔵という名のお地蔵様がひっそりと祭られている。夕暮れ時、その地蔵の前で目を閉じて待ち、背後に人の気配がしてから振り返ると、不思議なことが起こるという。

 もし左から振り返ると、将来結ばれる異性に出会え、逆に右から振り返ると、遠い未来の自分に会えるというのだが……。ただのデタラメっぽく思えるいっぽうで、「もしや本当では?」という期待を抱かせるシチュエーションが実に見事で、誰もがとりあえず試してみたくなれること、ウケ合いだ。

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▲校内で聞き込みをしていると、意外な場所でおもしろい噂をゲットできることがある。うまく情報を聞き出せると、ゲーム画面に“坂上地蔵の噂を入手した”などと表示され、噂のネタが手元のノートにストックされる。これ以降は、そのネタを調査対象にすることができる。

 街中での“調査パート”では、広大な陽見市を散策しながら実地調査を行うことに! 実地調査は放課後から日没後まで行われ、リアル時間で約10分間が当てられている。噂の情報を元に、いわくつきの場所を直接訪れて○ボタンで調べるのが基本だが、噂の内容によっては森など広い範囲を探索しながら、怪しい場所を探すこともある。

 また、夕方など特定の時刻にならないと怪現象が起こらないこともあるし、街の住人に話を聞かないと調査が進まないことも少なくなく、いろいろなやり方でアプローチしていくおもしろさがある。こうして噂の真相を確かめると、「なーんだ、ただの○○だったのか」というオチになる場合もあるが、その過程で奇妙な現象に出会うことも少なくない。

 不思議な世界を一瞬かいま見れたりしたかと思えば、ときには正真正銘の心霊現象に遭遇し、恐ろしい経験をすることも……。ちなみに“調査パート”では、△ボタンで“相談画面”を呼び出して、ノートに書き留めた噂について、3人で意見を交換し合うことも可能だ。みんなで話し合うことで調査方針が再確認されることは多いし、場合によっては新情報が洗い出せることも! こういった細かい工夫が功を奏し、飽きの来ないプレイを楽しめる。

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▲怪しい場所には直接足を運ぶのが調査の基本だ。なお、ときどき特定の場所で、愛犬メロスが頑として進もうとしなくなることがある。メロスは、強い力を持つ霊の存在を敏感に感じ取り、霊障を受ける可能性がある場所への進入を強く拒む。一種の霊感センサーとして、主人公たちに警告を発する役目も担っている。
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▲相談画面で3人の意見をぶつけ合うと、思わぬところから調査のヒントが見つかることも。また、噂になった現場を調査していると、いつもは見かけない人物と出会えることも多い。その人物は何かを知っているのだろうか。そして、その人物は一見すると普通の人に見えるが、もしかしたら……ということも考えておく必要が?
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▲特定の場所では、ゲーム画面がパノラマ画面モードに切り替わり、周囲360度を自由に見渡せられるようになる。“背後に気配を感じて振り返ったら、幽霊が……!”といった、心臓にドキリとくるシーンも多い。

■解き明かすことになる膨大な噂の数々

 驚くなかれ、本作に収録されている噂の数は、なんと44種類にもおよぶ。1周(ゲーム時間で100日間)ですべての噂の存在を学校で聞き出して、なおかつ究明まで導くのは、まず不可能と思っていいだろう。

 しかも、ひと口に噂といっても、そのカテゴリーは、怪談、“おまじない”、特定の商店の動向など、いろいろなタイプがひしめいており、調べ応え満点だ。ここでは、そんな噂の一部を紹介していこう。


【花子さんのお墓の噂】

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▲都市伝説で有名な花子さんのお墓が陽見市にあると耳にした3人。わずかな情報を頼りに多摩川にかかる陽見橋を調べていると、この橋に隠された秘密が判明。それを手がかりに調査を進めていくと、不思議な女の子と出会うことになるのだが……。

【ガード下の幽霊の噂】

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▲陽見駅西口のガード下で交通事故があり、あの場所は「ヤバいらしい」という情報をキャッチ。現地を調査していると、青白い顔をした女性と出会う。はてさて、彼女の願いを聞き届けることはできるのだろうか?

【森の宝物の噂】

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▲陽見市の北西に広がる森に宝が隠されているという話を元に、情報収集・推理・探索を駆使して真実に迫る。誰もが子どものころに遊んだ、宝探しを興じるような気持ちで調査に臨めるのが特徴だ。想像したような財宝こそ見つけられなかった3人だが、桃源郷のような光景をかいま見る機会に恵まれる。

【河原の幽霊の噂】

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▲夕暮れ時、河原に女性の幽霊がたたずむという噂を聞き、3人は話の真相を確かめることに。その噂話にはいくつか間違いが含まれていたことが明らかになっていくが、ちょっぴり不思議な存在と触れ合うことになり、結果的には事態を進展させるためのお手伝いをすることに……。

【黄色い傘の噂】

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▲ある場所に黄色い傘を置くと、呪われるという話から調査は始まる。興味本位に調べ始めた3人に忍び寄る、不気味な気配。わずかな情報から、見えない存在とその意思に触れていくことになる。

 とにかく感心させられるのが、シチュエーション作りのセンスのよさだ。どの噂も最初に情報を耳にしたとき、「ああ、いかにもありそうだよね!」と思わせる説得力に満ちている。しかも、ベタな都市伝説をそのまま持ってくるのではなく、1つ1つのエピソードにオリジナリティがあるのも驚きだ。

 また、噂を解き明かしていく過程で、真実と謎が巧みにからみ合うことで、プレイヤーの好奇心をくすぐりながら、同時に恐怖心を芽生えさせることに成功している。これこそ、心に静かに染み渡っていく、本作ならではの恐怖の正体にほかならない。

 私見だが、近年のホラー作品では、ショッキングなシーンを「これでもか!」とばかりに画面いっぱいに描き出し、視覚効果で怖さをたたきつける手法が主流になっている。ある意味では分かりやすいホラーと言えるが、どこか深みに欠けると常々感じていた。シチュエーションの妙で勝負する本作のスタイルは、今の時代に真の意味で渇望されている怖さと言えるかもしれない。

■自分の体験から思う真の恐怖の姿

 冒頭では、私の体験談を記した。

 当初は20mばかり先から聞こえたはずの不審な声は、私が追いかけるたびに常にその先へと遠ざかっていった。私の足より早く、その場から離れていったのだろうか。しかし、いくらなんでも土手を除いても川幅10m以上はある川を渡って、対岸から最後の声を私に投げかけたとは考えにくい。

 では、初めから対岸の畑付近に潜み、そこから発していた声を、私が近くから聞こえたものと錯覚していたのだろうか。位置関係を考え、すぐにそれはないと直感した。ちなみに後日、私は改めて地図を調べ直し、最初に声を耳にした地点から、声がかき消えた畑までの距離を割り出している。優に100m以上は離れていた。

 深夜の街を熟知している私は、静寂に包まれた空間では、驚くほどよく音が通ることを知っている。だが、それを踏まえても、抑揚のない女性の声がそんな遠方から耳に届くことなどありえない話だ。そこまで思いいたって初めて、あれがこの世の声ではなかった可能性が脳裏をよぎり、背筋に冷たいものを感じた。

 今でもときどき、「あれはなんだったのか」と考えることがある。声の主が何者であれ、私に何かを伝えたかったのか、それとも別世界へ誘おうとしたのか。この体験談は、理屈で説明できそうで無理があり、怪異なようでその確証はなく、メッセージ性がありそうで、その意図は皆目見当がつかない。

 現実と幻想の狭間(はざま)をゆれ動くシチュエーションが想像力を刺激し、私に静かな恐怖と未知への興味を駆り立てさせているのかもしれない。得てして都市伝説もまた、そんな“ゆらぎ”をはらんでおり、それが人々を惹きつけているように思われる。

 そんな都市伝説の持ち味を最高の形でゲームに落とし込んだのが『夕闇通り探検隊』だと言える。本作を含め、このシリーズがゲームアーカイブスに名を連ねていないことが、ホラーゲームファンとして残念でならない。ただ、これらの名作をプレイする機会に恵まれなかった読者にも、これだけはぜひ伝えたい。

 真の恐怖とは、ゆっくりと心に浸透していくものなのである。

『夕闇通り探検隊』画像

(C)1999 Spike

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