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2015年2月12日(木)

VR開発メンバーも積極採用中! “VRと言えばコロプラ”を目指す、馬場社長の意気込み

文:広田稔

 近年、ゲーム業界で加熱しているジャンルの1つに、バーチャルリアリティー・ヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)があります。かぶると視界がすべて映像に覆われて、上下左右に頭を振るとその動きに合わせて表示が切り替わるというもので、まさにゲームの中に入ったような体験ができるところが新感覚です。

 具体的な名前をあげると、PC用ではアメリカ・Oculus VRの“Oculus Rift(オキュラス リフト)”、PS4向けには“Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)”、スマートフォンを差し込んで使うタイプでは韓国・サムスンの“GEAR VR”といった具合に、さまざまなプラットフォームで開発キットが登場し、北米を中心に盛り上がっている状況です。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー
▲画像で装着しているのはVR HMDのOculus Rift。

 日本でも、バンダイナムコゲームスが製作した、女子高生と同じ部屋に入り込めるPS4“Project Morpheus”向けのデモ『サマーレッスン』が大いに話題になりました。とはいえ、ビジネスになるかどうかまだわからない分野なので、規模の大きいゲーム開発会社で名乗りをあげるところはかなり少ないのが現状です。

 そんな状況で、2015年1月9日に突如リリースされたのが、コロプラの『白猫VRプロジェクト』。本作は、同社のスマホ用アクションRPG『白猫プロジェクト』の世界観をベースにしたOculus Rift版ソフトです。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

 iOS/Android用アプリ“colopad”を利用すると、『白猫プロジェクト』でおなじみの“ぷにコン”のようにスマホの画面を触って操作できるというアイデアもおもしろく、VR HMD界隈では大きく注目を集めました。それと同時に、コロプラの大ヒットタイトルが投入されたことで、同社がVRにかける本気さが感じられたことも、業界内で話題になりました。

 いったい『白猫VRプロジェクト』はどういった意図で開発されたのでしょうか? そしてコロプラはVR業界にどの程度コミットしていくのでしょうか。いろいろと気になる部分について、同社の代表取締役社長である馬場功淳氏に話を聞きました。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー
▲コロプラ代表取締役の馬場功淳氏。

■『白猫VRプロジェクト』の出来で練習レベル!?

――『白猫VRプロジェクト』は、どういった経緯で立ち上がった企画なのでしょうか?

 もともとOculus Rift向けのソフトをやりたいという話がありまして、第1弾のタイトルとして2014年8月に出したのが、弊社のスマートフォンゲームをもとにした『the射的! VR』です。

 当時、新作ゲームを作るにはまだノウハウがなくて、もともとあるゲームをVR風にリニューアルしたらどうなるのかという意図がありました。じゃあ次に何を作ろうという時に、より本格的なゲーム内容でユーザー様からも好評を得ている『白猫プロジェクト』をVRに対応させたらどうなるのかと考えて、2014年10月ごろから制作に入りました。

――『白猫VRプロジェクト』のリリースは2015年1月なので、かなり短期間での開発だったんですね。

 手元にアセット(3DCGなどのソフト資産)はあったので、あとはどう組み立てるかというところだったのですが、実際に制作してみてVRコンテンツを作るのはやはり難しいということを再認識しました。

 特に3D酔いとの戦いになり、最初に想像していたものとは大分変わりました。やはり作ってみないとわからないことも多いですね。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――大ヒット作である『白猫プロジェクト』を持ってくるというところから、コロプラさんの本気が伝わってきます。

 はい。Oculus Riftには、かなり本気で取り組んでいます。

――今後、完全新作やOculus Rift対応のコンテンツも出そうという予定はありますか?

 練習は終わったかなという感じで、現在鋭意制作中です。

――本当ですか!? 『白猫VRプロジェクト』のレベルで練習とは……。

 『白猫VRプロジェクト』の出来は、VR専用としてはまだまだだと思っています。

――いやいや、“colopad”の操作性ともあいまって、非常に楽しく遊べましたよ。

 もちろん、一定のクオリティには達していますが、Oculus Rift専用として作ったわけではないので、歪みが生じている部分があります。

 例えばハチに囲まれる場面などは、見た目的にも音響的にもなかなかの臨場感を出せたと思うのですが、もともと『白猫プロジェクト』はスマートフォンゲームから始まっているので、VRに完全対応させるという意味ではもう少し工夫が必要だと感じました。

 そういった部分も踏まえて、現在はゼロからOculus Rift対応のものを作っていて、さらにゲーム以外のコンテンツも制作中です。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――ちょっとVRの話から外れてしまいますが、“colopad”とVR HMDの親和性の高さに驚きました。VR HMDは手元が見えなくなるので、マウス操作などが難しい部分もあったのですが、“ぷにコン”をベースにした“colopad”の操作方法は非常に直感的で、誰でもすぐになじめると思います。

 Oculus Riftが抱える問題の1つがUIで、これはまだ解が出ていません。VR HMDの構造上、手元が見えませんからね。そのため、各社とも有用なデバイスが開発されるのを待っている状況だと思います。

 そう考えた時に、スマホを使えばいいじゃないかと思い立ったんですよ。今の時代、誰でもスマホを持っているので、そこにコントローラアプリを乗せればよいのではと。そこで“ぷにコン”を使ってみようと考え、“colopad”ができあがりました。

――VR関連の開発者に取材をすると、まだ規格的に統一された入力デバイスがないので大変そうですからね。ちなみに“colopad”はスマホベースということで、振る動作などを感知してゲームに反映することも可能なのでしょうか。

 技術的にはできます。スマホを振ることでゲーム内のキャラが剣を振るような仕組みは実現可能です。

■プラットフォーム選びは柔軟に対応。将来的にはOculus以外のVR HMDも視野に

――現状、VR HMDはいくつかリリースされていますが、なぜOculus Riftをプラットフォームに選んだのでしょうか?

 深い理由はなくて、Oculus Riftが唯一手元にある端末だったからです(笑)。でも、最初に対応させるならOculus Riftでしょうね。一度はなくなりそうになったHMDの概念を再発明し、世の中に広めた存在であり、なおかつ当時、開発向けのサポートが進んでいたのがOculus Riftでした。

 ですが、Oculus Riftのみで開発するというわけではなく、いろいろなところがプラットフォームを作っているので、その中で一番いいところに乗っかると思います。

――最近では1月末に登場したマイクロソフトのHMD“HoloLens”が話題になりましたね。

 あれはAR(実際の風景に映像を重ねる“拡張現実”)ですよね。PC本体なども全部HMDに内蔵しているのはいいと思いますが、本当の意味でのARを今の技術で作るのはかなり難しいと思います。技術の進歩の速さを加味したうえでも、自分が考えるARを最大限生かすソフトというものは、まだまだ実現が難しいと判断しています。

 少なくとも現時点においては、我々はARよりもVRのほうが“地つながり”で見せられる分、現実味があるなと考えていますし、VRならではのメリットを生かしたソフトを実現できそうだと思っています。

――VR HMDというとPS4の“Project Morpheus”も存在感がありますが、参入の可能性はありますか? また、“GEAR VR”などのスマートフォン用のVR HMDにも展開する予定はあるのでしょうか。

 ありえますね。我々はデベロッパーですので、いいものがあればそこで展開するという感じです。どれも基本的な概念は同じなので展開できると思います。ですが、それよりも今はVR用のゲームとはなんなのか、というのを一生懸命見つけていかなければなりません。

――たしかにVRにおける表現は難しいですね。

 まだVRという概念は始まったばかりです。その中で我々としても“何を作っていくのか”ということがもっとも重要だと思っています。VRは、少なくとも1~3年ぐらいは収益化ができないと思いますが、将来を見すえた時、会社として現段階でどれくらい力を入れて行くのかということが、各企業に問われると思います。

――コロプラも力を入れていきますか?

 当然やります。本気です。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――今年や来年の東京ゲームショウあたりには、何かVR対応製品を出している可能性もありますか?

 今年は難しいと思いますが、来年にはあるかもしれないですね。

――VRの分野は北米では盛り上がりを見せていますが、国内はまだ静かです。なぜそういった状況にあると思いますか?

 結局、お金の問題が大きいと思います。儲かるとわかれば日本の会社は動きが早いんですけどね……。米国などはベンチャー企業に対して投資するエコシステムがしっかりしているため、“3、4年ぐらいは売り上げゼロでもいいよ”という価値観があります。なので、米国流に果敢にチャレンジできます。

 一方、お金を持っている日本の会社がそれをできるかといえば、経営判断として難しい面もあると思います。コロプラは幸いなことに会社として投資に向かう体力がある程度あります。なので、本気でVRに先行投資をしていくつもりです。

■VRの現状は日本でiPhoneが発売された時に似ている。馬場社長がVRに可能性を感じたポイントとは?

――馬場社長はVRのどこに注目されていますか?

 VRはすでに解決する課題が見えていて、しかも今の技術で実現可能です。あとは誰かが作るだけなので、近い将来に高い確率でプラットフォームとして確立する点に注目しています。この点から言うと、ARはまだ技術的に難しいと思っています。

――やはりVRで最初に波が来るのはゲームですかね?

 ゲームは遅れて来ると思います。別の観点からVRが広まって、そのうえでゲームはどう作っていくのかという話になると思っています。

 ゲームデバイスとして有効なのはもちろんですが、ゲームだけではない分野にも広がっていくはずです。むしろ、ゲーム以外のほうが用途がありそうだと感じています。それぐらい、VRの先にはいろいろな世界が広がっていますよ。

――VRに興味を持ったきっかけを教えてください。

 数年前にとあるイベントでVRに出会い、“なるほど……”と感じたのがきっかけです。当時見たのはOculus Riftの初代開発キット(DK1)だったので、正直そこまでたいしたものではなかったのですが、これがそのまま高性能になった先にどんな未来があるのかということはずっと気になっていました。

 そして、2014年末に“これは絶対に波が来る。もしかしたら世界が変わるかもしれない”と確信を持ちました。具体的な名前は伏せますが、“これはスゴい。やるしかない!”と感じさせてくれたものを体験する機会があったんです。

――それがきっかけで『白猫VRプロジェクト』が動き始めたのでしょうか?

 いえ、『白猫VRプロジェクト』自体はそれより前から動いていて、その開発中にVRへの興味が深まり、今はより本格的なプロジェクトを動かすための準備をしているところです。

――ちなみに『白猫VRプロジェクト』の開発規模はどのくらいでしたか? スマホ版の開発スタッフが兼業で作り上げたような感じなのでしょうか?

 いえ、専業のメンバーが数人ほどついて開発を行いました。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――今後はVRを担当する1つの事業部を設立するほど力を入れていくのでしょうか?

 そうですね。コロプラが本気で投資するということになれば、今後50人や100人と状況を見ながら増やしていきたいですね。

――大規模ですね! とても楽しみです。

 一部の会社は“これは世界を変えるものだ”と気付いているんですよね。遠くない未来、今の我々が思い描いている以上のことが起こると思っています。今のタイミングで早いか遅いかはわかりませんが、とにかくやっておかなければいけないと考えています。

――しかし経営のトップがVRに積極的なのがスゴいですね。VR関連の取材をしていると、開発現場の熱量はすごいのですが、ビジネス的な部分を含めて社内を説得するのにすごく苦労したという話も耳にします。

 コロプラは上の立場どころか、経営陣全員が賛同しています。

――すごいですね。どうやって説得したんですか?

 「VRの波が来るよね?」「じゃあやろうか」という感じで、説得はしていません。VRの可能性が見えているので、やっておくべきだという考えが自然と浸透しているのだと思います。

 ただ、重ねて言いますが、1、2年ではビジネスになりません。とはいえ、3~5年後を考えると、今からやっておかないと波に乗れないと感じています。

――個人的には、iPhoneの出始めに近い感じがしています。

 それはおっしゃる通りですね。我々はスマホゲーム開発に舵を切るのが早かったと思っています。その感覚と似ていて、“このままいけばスゴいことになる”という可能性をVRに感じました。

 今では爆発的に普及しているiPhoneについても、国内で初めて発売されたiPhone 3Gは当初は“本当にどうなるんだろう……”というような完成度でした。解像度やタッチの感度はお世辞にもいいとは言えなくて、ユーザーインターフェースもちょっと……という感じでしたが、写真を見る際には便利で、“このままいったらすごいことになるんじゃないのか”という可能性は当時から感じていました。

 その時はまだ会社が小さかったので、その波には乗れませんでしたが、その経験を生かしてスマートフォンゲームの制作にはいち早く着手しました。もちろん、かなり前からスマートフォンでのゲームが流行るという確信もありました。

――取締役の方々もスマートフォンの事例があるからこそ、VRにも賛同してくれたということですね。

 はい。ちなみに現在制作中のOculus Rift用のアプリは、非常に出来がよいと思います。

――そのアプリのリリースタイミングは、いつごろを考えていますか?

 もう少し精度を高めれば十分発表できるので、2015年中にはリリースするかもしれません。

――精度というと、作ったのでとりあえず出すという感じではなく、結構高いレベルを要求しているんですね。

 そうなりますね。ただ、今の時点で発表したところで売れるわけでもありません。現時点ではまだHMDを使うユーザーも少ないのに、あえて発表する意図はあるのかと考えると、経営的にはなんとも言えません。

――下世話な話ですが、他社に企画のアイデアを与えるだけになってしまうと微妙ですしね。

 そういう判断もあるかもしれませんね。逆に、せっかくいいものを作れたんだから世に出そうという判断になるかもしれません。今は何をやってもビジネスにはならないので、逆に思い切った取り組みができるんだと思うんですよね。

――なるほど、確かにそうですね。

 今は、おもしろいことに全力で取り組める非常にいい時期です。将来VRのマーケットが花開いた時に、技術や考え方がきちんと会得されているかどうかということを見すえています。

 大作を1本作るというよりは、いろいろな角度からVRにアプローチをかけて、どれが一番合うのかというのを調べていきたいです。

――そういった話を聞いていると、社内の開発メンバーも楽しんでやっているのかなと感じます。

 現時点では、VR開発の専任メンバーはまだ少ないのですが、ここから社内公募や外部からの採用で増やしていければと思います。

 VR系の採用にも積極的ですので、VRの開発に携わりたい方は、ぜひ弊社を選んで入社してください。コロプラには好きなだけOculus Riftの開発ができる場を提供できる環境があります。今のところ日本では、そんな会社はそうそうないはずですから。

――iPhoneと似ているという話に戻りますが、Oculus Riftも最初の製品版がリリースされて、世代を重ねるごとに広まっていくような印象ですかね。

 デバイスとしての魅力が増えて、ユーザーの母数が増えるタイミングがどうなるかですね。最近、世の中の流れが早いのでもしかしたら2年、広まるまでと考えれば3、4年かかるんじゃないかと考えています。

――最後に、これからはアプリの他にVRにも注力していくと思われますが、今後の目標があれば教えてください。

 “VRと言えばコロプラ”と皆さんにイメージしてもらえるようになっていきたいですね。これは国内だけではなく、VRは世界で広がっていくべきものなので、できれば“世界のコロプラ”になっていきたいと考えています。

 コロプラはVRに本気なので、今後もぜひ注目してください。そして、VRに興味がある開発者の皆さん、ぜひ弊社に入社して一緒にVRの未来を作っていきましょう。

――本日はありがとうございました。

(C)2015 COLOPL, Inc.

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