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2015年2月17日(火)

VR酔い対策との戦いだった『白猫VRプロジェクト』開発秘話。1人称視点のテスト版も存在

文:広田稔

 かぶると映像の中に入り込める体験ができる新しいバーチャルリアリティー用ヘッドマウントディスプレー(VR HMD)“Oculus Rift(オキュラス リフト)”。このOculus Riftに対応したコロプラの『白猫VRプロジェクト』の開発にあたったエンジニアの方にお話を聞きました。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

■2Dから3Dへの変化にともない、UIを徹底的に考え直すことに

――『白猫プロジェクト』をOculus Riftに対応させる点で難しかったことはありますか?

 VRのゲームをリリースするのは『the射的! VR』(2014年8月配信)に続いて2作目だったのですが、スマホゲームとはユーザーインターフェースの作り方がまったく違う部分が特に難しかったです。

――『白猫VRプロジェクト』のインターフェースというと、上を向いてキャラクターチェンジするという方法に驚きました。以前の『the射的! VR』の時よりも、ノウハウがわかって作りやすかったのでしょうか?

 そうですね。前回の『the射的! VR』を開発したことで、 パフォーマンスの上げ方や酔いにくいカメラワーク、Oculus Rift向きのオブジェクトの配置などが掴めてきた実感があります。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

 もともと『白猫プロジェクト』は2Dのユーザーインターフェースでマップから行き先を選択するような感じでしたが、それをそのままOculus Riftに移植してみたら相性があまりよくなかったんですよ。

 その結果、飛行島の上をキャラが移動するような形でのマップ選択に落ち着きました。パーティ選択でも誰が入っているのかがわかりやすいように、プレイヤーキャラの後ろに隊列を組んでついてくるように変えています。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――今回はある程度試作的な意味合いがあると思いますが、仮に製品版にするとしたらどの部分に力を入れて調整したいですか?

 12ステージしかないので、もし製品版として制作するなら、シナリオを進めるとステージがアンロックされていき、多くのステージを遊べるようにしたいです。

 あとはキャラですね。今はステージクリアでキャラが1体ずつ獲得できますが、そこをスマートフォン版に近づけて、ガチャでゲットできるといったゲーム性を持たせていきたいです。

――実際にプレイしてみて、ステージを立体視で楽しめる点がおもしろいと感じました。例えば、この演出や仕掛けを見てほしいというオススメのギミックなどはありますか?

 最終ステージですかね。あまり話すとネタバレになってしまいますが、とにかくデカい敵のボスラッシュが続くところに注目です。途中でドラゴンが出てくるステージがあるんですが、そのシーンはかなりの迫力になっています。

――VR酔いをしてしまうプレイヤーもいると思いますが、そのあたりは意識しましたか?

 基本的に、ユーザーが意図しないカメラワークは入れないようにしています。ユーザーがキャラを動かそうとした、という挙動を判断して実際の映像に反映させています。

 その他にも、パフォーマンスやスキルを発動した時の描画でフレームレートが落ちないように工夫しています。フレームレートの値を保たないとプレイヤーは酔いやすくなってしまいますので。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――VRということで、より没入感を出すために視点の問題があったと思います。『白猫VRプロジェクト』は3人称視点となっていますが、これはなぜでしょうか?

 試作段階で戦闘キャラの一人称視点も試してみましたが、武器を振るだけで目線が動いてしまうので、それだけで酔ってしまいました。結果、見下ろし型を採用しています。

■12ステージのバリエーションを出すことを重視してデザイン

――スマホ版と違ってフィールドを360度見渡せるようになっていますが、グラフィックはスマホ版の流用やブラッシュアップだったりするのでしょうか?

 データは、Unity(さまざまなプラットフォームに書き出せるソフト制作エンジン)で開発したスマホ版のものをほぼ使用しています。もともと『白猫プロジェクト』では、3Dでエフェクトも作っていて、どの角度からも綺麗に見えるようになっています。ただPCなので、シェーダーを強化してより美しい表現になるように調整しています。

――スマホ版ではモデリングデータもかなり細かく作られてる印象がありました。スマートフォンのタッチパネルからOculus RiftのVRに変わったことで、ゲームデザインも変更しましたか?

 アクションを強調した作りになっています。『白猫VRプロジェクト』ではキャラクターの成長要素をなくしているので、アクション性の部分でしっかりと楽しんでいただけることを意識しました。それもあり、全ステージの見栄えがそれぞれ違う形になるように調整しました。

――よりVRに特化したステージ表現がされているのでしょうか?

 例えば、昼と夜と夕方、開けたフィールドと洞窟など、同じようなステージがないようにバリエーションをもうけています。落石などのギミックも、同じものが重なり過ぎないように意識して選びました。

 他にもVRならではの演出として、目の前をふさぐほど大きなものが出てきたり、音が3Dサラウンドに対応していたりします。例えば、ハチに囲まれると羽音が“ブーン”とすごくうるさくなるなど臨場感があるので、ぜひヘッドホンをつけてプレイしてほしいです。

『白猫VRプロジェクト』インタビュー

――『白猫VRプロジェクト』で特徴的なのが、スマホをVR用コントローラにしてしまう“colopad(コロパッド)”です。スマホでの“ぷにコン”に似た操作で、すぐに使い方が覚えられるところが利点ですが、開発で苦労した点などはありますか?

 もともとはスマートフォンの手触りをシミュレーションするというところだったので、開発の完成図からいえば、かなり序盤に決まっていたものをブレずに実現できました。ただ、レイテンシー(遅延)を減らして手触りをよくするために通信方式をいろいろ試すなど、技術的な面で苦労したところはありましたね。

――ちなみに、今まで体験されたVRコンテンツの中で印象に残っているものはなんでしょうか?

 初代の開発キット(DK1)時代に体験した、『RiftCoaster』というジェットコースターですね。初音ミクが目の前に座っているだけの『Mikulus』も経験して、「スゴいな、早く画質がよくならないかな」と周囲と騒いでいました。

――かなり初期の段階からみなさん触られているんですね。

 社内ではDK1の最初から触ってきています。コロプラは今後もVRアプリ制作に注力していくので、ぜひ注目してください。

(C)2015 COLOPL, Inc.

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