2015年4月3日(金)
スクウェア・エニックスとDeNAから配信中のiOS/Android用RPG『ファイナルファンタジー レコードキーパー(FFRK)』の開発者インタビュー第2弾をお届けします。事前に電撃Appで読者の皆さんから募集した質問を中心にお話をお聞きしてきました。
“『FF』らしさとは何か?”とテーマにお聞きした第1回のインタビューに引き続き、スクウェア・エニックスの間一朗プロデューサーとDeNAの佐々木悠プロデューサーにお話をうかがいました。
今回は『FFRK』が本格RPGとして目指したことや、今後の展開に焦点をあてた内容となっています。この記事の前に、第1弾のインタビューを読んでもらえるとより楽しめること間違いなし!
【関連記事】『FFRK』インタビューPart 1:『XI』『XIV』『零式』の参戦も検討。開発者が目指す『FF』らしさとは?
▲スクウェア・エニックス間一朗プロデューサー(左)と、DeNAの佐々木悠プロデューサー(右)。 |
――最初に、きのこさんからいただいた質問です。「バトルシステムにアクティブタイムバトル(ATB)を採用した理由を教えてください」
佐々木:お客様にひと目で『FF』だと思ってもらえるバトルシステムはなんだろうと考えた時、開発チームで最初に出た案がATBでした。
バトルシステムは細かいところを含めると初期の企画書から変わっている部分が多いのですが、ATBをベースにしていることは当初から貫き通しています。
▲スーパーファミコン以降の『FF』らしさの代表的な要素でもあるATB。バトル中のキャラクターのかけ合いも加わり、より追体験に磨きがかかります。 |
――ユーザー側としてもATBだからこそ『FF』をプレイしている感覚がありますし、RPGとしてもおもしろいシステムだと思います。
間:作品にもよりますが、『FF』のバトルは、いかに攻撃を受けず、相手を倒せるかという部分が強いように思います。
そういう意味では、いかに早く相手を倒せるか、どれだけ早く、正確に対策を考えるかがキモになっているのかなと。
なので、ATBでやりたいという話を受けた時は『FF』を追体験するというコンセプトにもピッタリだと思いました。ただ、ATBを使ったバトルを作るのは、そう簡単じゃないだろうなーとも思いましたね。(笑)。
――バランス調整が大変そうですね。
間:追体験を目指し、『FF』らしさを強めていくことで、自分たちのハードルを上げているなと感じましたね。
佐々木:単にATBを使うと言っても、アクティブモードとウェイトモードのどちらにするか、ゲージがたまる速度はどうなのか、魔法の詠唱のようにコマンド選択後の待ち時間があるのかないのかというように、どれが一番『FFRK』に合うのか何パターンも試しましたね。
――バトルスピードの調整も配信後のアップデートでできるようになりましたね。
佐々木:オートバトルを使って格下の敵と戦う場合、以前のバトルスピードでは長く感じてしまうというお客様からの要望が多く、開発チームもその認識はあったので追加実装しました。
ちなみにオートバトル自体も、クローズドβテストのフィードバックを受けて実装したという経緯があります。
▲現在、オートバトルのスピードは5段階に調整できます。 |
――ということは、オートバトル機能が配信開始時にはなかった可能性もあるんですね。
佐々木:クローズドβテストを終えてから1カ月の開発期間で制作し、正式サービス開始時に実装しました。
間:余談ですけど、オートバトルを実行したつもりだったのに、そのまま全滅していることがたまにあります(笑)。
佐々木:開発陣でも、夜にベッドでプレイしてそのまま寝落ちする人間が何人かいますよ(笑)。ATBならではのハプニングですね。
▲バトルスピードを5にした状態でオートバトル機能を使えば、格下の敵が登場するダンジョンならば画面をほぼ見なくともクリア可能です。 |
――続きまして、いくじなしさんからの質問です。「キャラクターの性能はどのような流れで決まっているのでしょうか?」
佐々木:基本的に原作を準拠して性能を決めていますが、登場させる順番や全体のゲームバランスも考慮しています。
アップデートでも細々とした性能調整は行っていて、例えば『X』の主人公・ティーダは原作だとブリッツボールの選手だったので、ボール系の武器も装備できるように変更しました。
――必殺技もオリジナルのものを含めてかなりの種類がありますが、これはどう決めていったのでしょうか?
間:最初に各キャラクターに対応した必殺技一覧表が送られてきましたね。それを原作と照らし合わせて問題がないか、逆にもっと適した技があるんじゃないか、といった確認をこちらでさせていただきました。
それを軸にしてお互いで相談しています。とはいえ、シリーズ好きの方でチーム内を固めていらっしゃったおかげで、最初の案のから大きくズレているものはありませんでしたね。
ただ、人それぞれの思い出があるので、「俺のティーダはそうじゃない」「いや、俺のティーダはこうだ」っていう議論が始まることもあります(笑)。なので、そうなる前に決めています。
佐々木:『VII』のリミット技のように明確な必殺技がある作品はよいのですが、そうでない作品はそれらしく見えるものを考えることが大変でしたね。
セフィロスにも必殺技はありませんでしたが、そこは『ディシディアFF』の必殺技を採用したりもしています。
――サンタさんからいただいた質問です。「ゲームの難易度ですが、コアユーザー向けとライトユーザー向けのどちらを意識して調整されましたか?」
佐々木:ダンジョンには“ヒストリー”と“フォース”の2つの難易度を用意して、どちらのユーザー様にも楽しんでいただけるようにしました。
ただ、サービス開始当時は私たちも手探り状態で運営していたため、あのころに開催したイベントは難しすぎましたね……。
▲ヒストリーとフォースでは、約2倍ほど難易度が変わります。 |
「このキャラクターが仲間になるから、イベントも難しく」という形では作っていなかったのですが、超絶難易度に設定しすぎたと反省しています。当時はお客様もほぼ初期のパーティ構成だったので、余計に調整が難しかったのもありますが……。
最近はそのあたりのバランスもとれるようになってきた実感はあります。
――確かに今はかなり遊びやすいですよね。キャラクターを仲間にするだけならわりとあっさりクリアできますし、そこから“記憶結晶(キャラクターの限界突破に必要なアイテム)”を取ろうとすると歯ごたえのあるバトルを楽しめます。
佐々木:最近だとイベントが開催されてしばらくした後に“エクストラバトル”を追加しているので、より難しい難易度に挑みたい方はぜひそちらに。そこまでプレイしてくださる方はメンバー構成やアビリティの選択をガチガチに固めて挑んでいるので、そういったお客様の攻略法を見るのも楽しいです。
▲フォースダンジョンに登場するモンスターは通常と比べて段違いに強くなっています。 |
――こちらはジュネッスブルーさんからの質問です。「現在のレベル上限は65となっていますが、ここからさらに上限開放をする予定はありますか?」
佐々木:『FF』といえばレベル99まで上がるだろうという認識をお持ちの方は多いと思うのですが、今はそこまでする予定はありません。このゲームのひとつの楽しみ方として、複数のキャラクターを育てるというのもあるので、お客様全体の状況を見つつ検討していきます。
とはいえ、いつの日かは開放しますよ。ほとんどのキャラクターがレベル65になっているのに、いつまでも上限開放をしないのはおかしな話ですからね。
――ストーリーといえば、えるこんさんから鋭い質問が寄せられました。「今あるダンジョンは原作のエンディングまでというゴールが見えていると思うのですが、その後に何か用意しているものはありますか?」
佐々木:それについてはまさにスクウェア・エニックスさんと相談しているところです。ゴールを先延ばしにすることはありえない話なので、原作のエンディングまではしっかりと再体験していただくつもりです。
そのうえで他作品とのコラボレーションだったり、ナンバリングではない『FF』のダンジョンを追加したりしていきたいですね。それ以外にも、お客様が楽しめるエンドコンテンツのようなものを用意しないといけないとも思っています。
▲2月に行われた『エンペラーズ サガ』とのコラボは大好評でした。 |
――これに付随する形となります。カラコルさん他多数からの質問です。「『FFRK』自体のオリジナルストーリーを展開していくことはあるのでしょうか?」
間:自分としてはデシというキャラクターにものすごく愛着があるんです。ゲームの舞台になっている世界でどのような事件が起きているのかという設定は、ちゃんと用意をしています。
となると、ストーリーの始まりがあれば終わりもあるわけなので、そこを含めてデシを主人公としたオリジナルの展開についても、いろいろとやっていきたいですね。
▲こちらは『FFRK』で編集を担当する喜一のデシ。名前も変えられ、オールラウンダーとしても活躍してくれる頼れる分身とのこと。 |
そういえば、初期のころはわりと重厚なメインストーリーが存在していました。一時期はダークファンタジー路線も考えていたんですよ。
佐々木:そのころのタイトルロゴは今とまったく違っていて、黒字に赤の配色になっていましたね。しかも、ロゴの後ろには『I』のラスボスであるカオスがいたり(笑)。
間:歴代の『FF』シリーズの世界をめぐりわたって再体験をするというコンセプトともマッチしていたのですが、いかんせん話が重すぎました。
もっとたくさんの人が気軽に楽しめるものにしようと野村に相談をしまして、一転してDr.モグとデシの方向性で進めることになりました。
佐々木:当時はタイトル案で“ジェネシス(創世記)”というものも出ており、本当に重厚でシリアスなイメージでした。野村哲也さんのネーミングセンスは本当に秀逸だと思うのですが、特にデシというキャラ名は大好きですね。
間:打ち合わせをしている時に「デシくんがさ」みたいな感じで呼び始めて、そのまま定着しちゃいました(笑)。
▲Dr.モグの弟子であり、本作の主人公となっているデシ。確かにそのままカタカナにしただけなのですが、妙にしっくりきますね。 |
――今後、『FFRK』自体のオリジナルストーリーが発展していくのを楽しみにしています。
間:ただ、『FF』の名前を冠した作品のストーリーを作ることはかなりハードルが高いことだと思っています。なかなか簡単にできることではないので、しっかりと準備をしていきたいと思います。
――次の質問も多くの人が気になったことのようです。ダニエル太郎さんからの質問です。「唯一セフィロスだけが敵サイドでありながら仲間に加えることができますが、他にも敵キャラクターをパーティに加えられる可能性はありますか?」
佐々木:可能性の話でするなら“ある”と思いますが、パーティにいて違和感がないかどうかが重要ですね。セフィロスは『VII』のストーリーでも一瞬だけパーティキャラクターとして、仲間になるタイミングがあったので採用しました。
間:ストーリー重視でお客様に楽しんでいただくのを考えた時、例えば『II』の皇帝がパーティにいるのはおかしいんですよね。
セフィロスを仲間にできることに納得できた理由として、一瞬だけでも動かせるシーンがあったことと、まだ英雄だったころのセフィロスと一緒に旅をしているとするならば、それは問題がないと考えたからです。
絵画に眠る記憶全体を見た時、まだ仲間になる可能性があった場面からやってきているなら、設定的に無理はありませんからね。
▲現在、セフィロスはスペシャルクエストの報酬で仲間にできます。初心者の人でもプレイしていけば、パーティに加えられるのもうれしいですね。 |
佐々木:多分、敵キャラクターで仲間にしたいという要望が多いのはギルガメッシュでしょうね。
間:ギルガメッシュなら、『V』のストーリーとは別の場面から彼の記憶がやってきているとするなら全然ありだと思いますね。
佐々木:でも、全員敵キャラクターでパーティを組むのもおもしろそうですよね。ドット絵を見たいという人も多そうですし。
▲3月のイベントで『IV』のゴルベーザもパーティキャラクターとして登場。セシルとの兄弟パーティも楽しめます! |
――RPGにおいてインターフェースはとても大事になる部分だと思われますが、その部分の制作はスムーズに進みましたか?
佐々木:インターフェースの改修は開発の後期まで続いていましたね。コマンド欄が表示されるタイミングだったり、スキップした後にどう次のキャラクターに切り替わるかだったり、ヒットエフェクトなど細かいところまで修正していました。
コマンドアイコンの大きさにも気を遣いましたし、HPバーの位置もできるだけ目の動きを最小限に抑えられるように配置しました。
――スマホだと、アイコンのサイズはとても重要になりますよね。押す時に大きすぎると邪魔になるし、逆に小さすぎても押しづらくなってしまいます。
佐々木:コマンドアイコンに描かれているイラストも、どうすればアビリティっぽく見えるかは工夫した部分です。
――プレイ前はコマンドがアイコンでの表示になったため、これまでの『FF』とは違った手触りになるのかと思いきや、そんなことを感じさせないうえに遊びやすい印象を受けました。
佐々木:スマホのゲームなので、従来の『FF』のように階層式のコマンドはあえてやめました。コマンドが何個も並んでいると手軽さを損なう危険性がありますからね。
――最近追加されたフレンド召喚のおかげで、バトルもだいぶ楽になったと思います。
間:あれには僕も助けられています(笑)。
▲他のプレイヤーが育てたキャラクターを呼び出し、その必殺技をバトルで使えるフレンド機能。これには自分も非常に助けられています。 |
――ああいった新しいシステムは具体的な内容も含めて、次のものを考えていらっしゃいますか?
佐々木:そうですね。現在は、より各キャラクターを育てたくなる要素を開発中です。
――レコードマテリアのような方向性ですか?
佐々木:実際にどういう仕様にするかは検討中ですが、レコードマテリアを実装した時のようにそれぞれのキャラクターを再評価してもらえるようにしていきます。
▲各キャラクターを限界突破するとレコードマテリアが手に入ります。キャラクターそれぞれの特徴をとらえた能力が用意されています。 |
――自分のお気に入りキャラクターを、より扱いやすくできる形でしょうか?
佐々木:そうなりますね。他にも『FF』らしい遊びを追求していくと、“盗む”や“青魔法”などのコマンドも避けては通れない道だと思っているので、ひとつずつ実現していきたいです。
ただ、かなり特殊なシステムとなるので、『FFRK』のシステムに落とし込むことは大変ですけどね。
間:そういう意味だとバトルの演出もまだまだ改良の余地はあると思っています。それこそバックアタックやサイドアタックは『FFRK』にはありません。
他にもダンジョン自体に時間制限やカウントダウンの仕組みを設けられないかどうかというのも考えています。『FF』らしさを追求することは『FFRK』を続ける以上、手を抜くことはできないことですから。
佐々木:少し話がそれますが、お客様にゲーム性と関係ないところで不便を与えている部分がまだあると思っています。そういった点の改修は随時行っていきます。
▲3月31日にはパーティを保存できる“パーティセット”が近日実装予定と発表されました。かなり便利そうです! |
――アップデートの実施やイベントの開催といったスケジュールは先々まで組まれているのでしょうか?
佐々木:全部がキッチリと決まっているわけではありませんが、だいたい数カ月から半年先までは検討しています。
といっても本当にざっくりとしていますし、新機能が追加されるような大型アップデートなどは、この時期に入れられたらいいよね、くらいの目安です。
間:ただ、イベントの開催スケジュールは現時点で決まっているものはありますね。
佐々木:特にコラボレーションイベントはコラボ相手のゲームに登場するキャラクターをゼロからドット絵にしなければいけないというのもあり、かなり先を見て計画しています。
▲先日行われた『エンペラーズ サガ』とのコラボでは、『ロマサガ』のデスやサルーインが登場しました。 |
――いちプレイヤーとして楽しみです! 最後に、RPG好きの読者に向けたコメントをお願いします。
佐々木:とっつきやすさと気軽に遊べることを維持しつつ、パーティ構成やアビリティ選択、装備の重要さといったRPGらしい底の深さを味わえるゲームになっています。
昔のゲームらしく、強くなった自分のパーティを見て1人でニヤニヤしながら楽しんでもらえればと思います。今後もまだまだバラエティに富んだアビリティや必殺技が増えていくので、そちらもお楽しみに!
間:佐々木さんがおっしゃった“1人でニヤニヤ”というキーワードは、実は最初に聞いたテーマの1つなんです。スマホアプリではフレンドと一緒に遊べるソーシャル的な要素が重視されがちですが、あえて真逆にいこうとする姿勢に驚きましたね。
でも確かにファミコンやスーパーファミコン時代って、1人で遊ぶことが基本でありながら、友だちと一緒に遊んでいる感覚もありましたよね。遊んでくれた方が学校や職場にいって「どこまでいった?」という会話をするところまで含めて昔のゲームの再体験にしたいという話をされた時は、とてもおもしろいと感じました。
▲筆者の仲間内でもTVCMが話題にあがりました。『FF』の音楽と映像ってずるいですよね(笑)。 |
今ではネットでの攻略情報も一般化していますが、自分でじっくり考えてやってみて、どうしてもわからない時だけそれを見るという古きよき文化が残っているアプリだとも思います。なので、RPGが好きな人にこそ楽しんでもらいたいタイトルですね。
佐々木:『FFRK』で実現したかったことの1つに、当時ターゲット層の人たちが原作をプレイしていた時の話を、今は居酒屋でしている光景を見てみたいという目標もあります。
今後も『FFRK』をより楽しんでいただけるような仕掛けを考えていますので、ぜひご期待ください!
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