2016年3月19日(土)
スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『グリムノーツ』のキャラクターイベント“マッチの勇者伝説・エピソード0”のセリフ集を掲載します。
このキャラクターイベントの開催期間は終了しており、すでにゲーム内では見られませんが、この記事ではそのストーリーを読むことができます。
『グリムノーツ』は、世界中のさまざまな童話を題材にした“新解釈”RPGです。与えられた運命を演じることを定められた世界で、演じる役割を与えられなかった主人公たち。
彼らが“役割を演じる”ことと“役割を与えられない”ということに対して立ち向かう、RPGの意味を問いかけるゲームとなっています。
“マッチの勇者伝説・エピソード0”は2月29日から3月14日まで開催されたキャラクターイベントで、『マッチ売りの少女』、『いばら姫』、『ヘンゼルとグレーテル』より、マッチ売りの少女、いばら姫、ヘンゼル、グレーテルが登場して、冒険をサポートしてくれました。
◆ストーリー
とある想区、寒空の冬の街。お腹を空かせ、寒さに凍えるマッチ売りの少女はマッチに火をともし、夢の世界に浸っていた。
そこへ通りかかった主人公一行は、マッチ売りの少女にパンを分ける。だが、その行為がきっかけで、一行の前にヴィランが現れてしまうことに……。
◆◆◆マッチ売りの街(夜)◆◆◆
マッチ売りの少女:―――わたしはとてもまずしいマッチ売りの少女。きょうもお父さんの言いつけでこの寒い夜空のもと、道端に立ちながらマッチを売っています。
いまにも凍えそうになりながら、通りすがる人に声をかけますが、マッチはいっこうに売れません。けれど、しかたがないのです。
だって、それがわたしの運命だから…こうして誰にも振り返られず、はかないマッチの火のように生きるのがわたしの生き方なのですから―――
マッチ売りの少女:マッチぃ、マッチはいかがですか…? どうしよう…全然売れない…このままじゃお父さんにもしかられる…家にも帰れない…
はぁ…はぁ…手が冷たくなってきちゃった…こうなったら…もう一度マッチを点けてみようかな…
マッチの火を見ているととても安心するもの…ごちそうの夢…あるいは冒険をしている夢…今度はどんな夢が見られるかしら…
…はぁ、あったかーい。心がぽかぽかしてきた…ほーら、またなにかが見えてきたよ…
(マッチ売りの少女のそばに、誰かが登場する)
マッチ売りの少女:誰だろう、この人たち…なんだかとても、いい匂いもする…もしかしてごちそうを運んでくれた天使さんだったりして―――
タオ:こらー! ガキンチョ! こんな夜中に火遊びなんかしてんじゃねー!
マッチ売りの少女:え? え、えっ!?
シェイン:早まってはいけませんよ。そりゃあ、世の中いろいろつらいことがあるのはわかりますが、放火はいけません。ダメ、ゼッタイです。
マッチ売りの少女:ち、ちがうよ! わたし、マッチ売りなの! マッチ売りの少女なの、放火犯じゃないよ! 寒くなったから、マッチをつけて……
(おなかが鳴る音がする)
マッチ売りの少女:うっ……
主人公:マッチの火じゃお腹はふくれないよね。パンもってるけど、よかったら食べる?
マッチ売りの少女:食べる! 食べます! いただきます!
レイナ:ちょっと。カオステラーのいない想区で余計な干渉したらダメだっていつも言ってるでしょ。どこでヴィランが出てくるかわからないんだから…
主人公:わかってるけど、でもさすがにこのまま放っておくなんて…
タオ:そうだぜ、お嬢。ストーリーテラーがしゃしゃり出てくるのは想区の『主役』についてだろ? こんなガキンチョにちょっと関わるくらいで……
シェイン:いえ、そうでもないみたいですね。
ヴィラン:クルル! クルルクルルゥッ!!
マッチ売りの少女:あれ、なにあの黒いの…もしかしてマッチの天使さんたち……
レイナ:天使じゃなくてむしろ悪魔よ! ああ、もう、毎回毎回…!! まずはここを突っ切るわよ!
◆◆◆バトル終了後:マッチ売りの街(夜)◆◆◆
マッチ売りの少女:もうダメです、走れません…おなかがすいてしまって…
タオ:ちょっと無理をさせすぎたな。ヴィランどもはひとまず振り切ったが…これからどーすんだ、お嬢。
レイナ:わざわざあのタイミングでヴィランが現れたってことは、この想区にとって、そのマッチ売りの女の子はとても重要な存在だっていうことね。
たとえばこの子を助けずに放っておくことが、本来のその子の運命だったとか…
主人公:そんな! あのまま放っておけっていうの!
レイナ:あくまで推測よ。まずはこの子に事情を聞いてみないと、なにもわからないわ。もっともいまはそれどころじゃなさそうだけど…
マッチ売りの少女:寒い、寒い…こんなときにはマッチを…わたしに残された最後の一本のマッチをつければ…
はぁ、なんてあったかいのかしら…あら? そこにいるのは天国のおばあさん? どうしたの? わたしになにか話したいことがあるの?
タオ:…なぁ、あのガキンチョ、マッチの火に向かって話しかけ始めたぞ。ほんとに大丈夫なのか?
主人公:そうだね…ちょっと声をかけてみようか。ねぇ、マッチ売りちゃん、いったい誰と話して―――
マッチ売りの少女:…え? なんですって!? 世界に大いなる危機が迫っているって!?
レイナ:ちょっと待って。天国のおばあさん、孫になんの話をし始めてるの?
シェイン:よくわかりませんが、どうやら怒涛の展開のようですね。
マッチ売りの少女:そう、そうなのね…まもなくこの世界には大きな災厄が目覚める。そのために勇者が立ち上がらないといけないんだね…
勇者マリーに導かれし勇気ある仲間たち、迷子の森にいる勇敢な兄妹、いばらの城の眠り姫を集めて立ち向かえ…わかった、わかったよ…
ああ、けれどもマッチの火がもうすぐ消える…この火が消えたらわたしの命も燃えつきて…まだ、こんなところで、眠るわけには…
誰か、誰かどうか、わたしの代わりに仲間を…この世界を救う仲間たちを…集めて…―――ぐふっ。
主人公:マッチ売りちゃーーーーん!! 起きて! 起きるんだ!
レイナ:早く医者のもとに連れて行ったほうがいいわね。しばらく安静にさせるほかないかも…
タオ:で、お告げのほうはどーする? 戯言と片付けることもできるが…たぶんこれマジなやつなんだろううな…
シェイン:勇者マリーに、迷子の森の勇敢な兄妹、あとはいばらの眠りについた姫、ですか。これ、明らかにこちらに任された感じでしたし…
主人公:結局、僕たちがやるしかない、ってことか…
主人公:―――こうしてマッチ売りの少女からお告げを託された僕たちは、勇者マリーとその仲間たちを探す旅に出た。
はたして勇者たちを見つけ出し、無事にこの想区の運命をもとに戻すことができるのか。先行きはちょっと不安です…―――
◆◆◆迷子の森◆◆◆
グレーテル:―――わたし、グレーテル、8才。お兄ちゃんといっしょに森にすてられちゃったの。
そこでとってもあまいかおりがするおかしの家を見つけたんだけど、そこにはコワイまじょさんが住んでいたの。
そこでまじょさんに食べられそうになったんだけど、お兄ちゃんといっしょにたくさんたくさんガンバってわるいまじょさんをやっつけたんだ!
それであとはお兄ちゃんといっしょに、本当のおうちへ帰るはずだったんだけど―――
グレーテル:お兄ちゃーん! お兄ちゃーん! ねぇ、どこにいるのー!? どうしよう、やっぱりはぐれちゃったんだ…
全部、わたしの『運命の書』に書いてあるとおり…ええとたしかこのあと、勇者マリーって人に会って、お兄ちゃんもそのあとで見つかるんだよね…
だから大丈夫なはず、なんだけど…でもやっぱりこわいよぉ、さびしいよぉ…おにいちゃーーん……
主人公:ええと、いまの呼び声は君かな?
グレーテル:ひゃっ!? ダレ? ダレなの!? もしかしてユーカイハン!?
主人公:ちがうよ! ええと、ちょっと聞きたいんだけど…もしかして君にはお兄さんがいたりする?
グレーテル:お兄ちゃん? うん、いるよ。お兄ちゃんはヘンゼルっていうの。わたしは妹のグレーテルだけど…あっ。
もしかして勇者マリーさんたちですか!?
レイナ:というよりもその代理人、かしら。あなた、勇者マリーのことを知っているの?
グレーテル:は、はい。お兄ちゃんといっしょに、その人の仲間になるって、『運命の書』に書いてありましたから…
タオ:となると、マッチ売りが言ってた話は本当だったってことか。肝心の勇者が見つからないのがアレだが…
シェイン:ちなみにお兄さんのほうはどちらに? 先ほどから探していたようですけど。
グレーテル:そうだ! お兄ちゃん…お兄ちゃんが…さっきまでいっしょだったのに…気がついたら、どこにもいなくなってて…
あとでまた会えるはずなんだけど…でもやっぱり不安で…どこ探せばいいかわからなくて…だから…だから…だからぁ…
う、ううう、びえええええええええええん!! お兄ちゃあああん! どこへ行ったのおおおお!!
主人公:ああ、泣かないで、泣かないで。僕たちもいっしょに探すから。ね?
グレーテル:ひっく、うぅ、ありがとうございます…よろしくおねがいします…ひっく。
◆◆◆バトル終了後:迷子の森◆◆◆
レイナ:最後にヘンゼルを見かけたのは、このあたりだったのね。
グレーテル:はい、そうです…いっしょにおうち帰ろうって、お兄ちゃんがのこした砂利をたどってたんだけど…
主人公:ああ、この道に落ちている砂利がそうなんだね。これがグレーテルたちの家まで続いてるのか。なにかほかに手がかりがあればいいけど…
タオ:この森じゃ簡単に見つかりそうにはないな。ほら、見ろよ。このあたりの地面なんか、蟻がうじゃうじゃ行列を作って…
シェイン:いや、待ってください。この蟻さんたち、なにかに集まってますね。…これは、クッキーの欠片でしょうか?
グレーテル:お兄ちゃんのだ! おかしの家でひろったんだよ! ずっとお兄ちゃん、わたしに分けてくれて…
レイナ:ねぇ、このクッキーの欠片、砂利とはちがう方向にどんどん続いていってない? 蟻が群がってわかりづらいけど。
主人公:自分の居場所を知らせるためにヘンゼルがわざわざ残したってこと? もしそうだとしたら…
グレーテル:お、お兄ちゃん、なにかあぶないことにまきこまれているの? だ、大丈夫だよね? またお兄ちゃんと会えるよね?
シェイン:まずはこのクッキーの欠片をたどっていきましょう。泣くのも心配するのもそのあとです。妹としてお兄ちゃんを信じてあげてください。
グレーテル:ぐすん。う、うん、わかったよ…!
◆◆◆いばら姫の城(夜)◆◆◆
ヘンゼル:―――妹といっしょに家へ帰る途中だった。僕は突然、人さらいに連れ去られてしまったんだ。
どうやら奴らはそのまま僕を奴隷として売り払うつもりだったらしいけど、僕はなんとか隙を見て、人さらいたちから逃げ出すことに成功した。
けど、人さらいたちはしつこくて追ってきて、逃げ込める場所はこのお城しかなかったんだ。ある伝説が残る、この呪いの城しか…
あとでグレーテルたちが来れるよう手がかりは残しておいたけれど、本当にこんなところへ来てもらって大丈夫なのかなぁ…―――
ヘンゼル:『運命の書』によれば、もうすぐグレーテルを連れて、勇者マリーさんがここに来るはずだけど…
ああ、心配だぁ、心配だぁ…。クッキーなんかじゃなくて、もっと違う手がかりを置いてくればよかったかな…あれじゃあ誰かに拾い食いされるかも…
グレーテル:お兄ちゃん!
ヘンゼル:…グレーテル? その声、グレーテルなのかい!?
グレーテル:よかった、お兄ちゃん…また会うことができて…
ヘンゼル:ほらほら、泣かないで、グレーテル。ちゃんと僕たちは再会できるって、『運命の書』にも書いてあっただろ?
…もしかして、そこにいる人たちは、勇者マリーさんたちですか?
主人公:ううん、実は僕たちも勇者マリーを探しているんだ。ちょっとマッチ売りの女の子からお告げを託されて…君がヘンゼルなんだね?
ヘンゼル:ええ、そうです。そっか、『運命の書』とちがうことも起きるんだ…。みなさん、妹をここまで連れてきてくれて、ありがとうございます。
タオ:…それにしてもずいぶん辛気臭い城だな。なんなんだ、ここは。
ヘンゼル:ここはいばらの城です。ご存知ありませんか? 百年の眠りについているいばら姫が、この城にいるって伝説があるんですけど。
シェイン:いばらのお城、ですか。…その割にはいばらなんて影も形も見当たりませんけど。
レイナ:ちょっと待って。いばらの城ってマッチ売りのお告げにあった、あの城のことじゃない?
主人公:いばらの城の眠り姫…勇気ある仲間の一人だね。その人さえ見つかれば、仲間は全員集まるか…相変わらず勇者マリーの行方はわからないけど…
タオ:だがそれなら話は早い。どうせ仲間は集めないといけないんだ。この機会に、とっとといばら姫とやらにも会ってみようじゃないか。
ヘンゼル:あ、あの、僕たちもお手伝いします! これは僕たちにも関わってくることですから。グレーテル、それでいい?
グレーテル:うん、お兄ちゃんたちといっしょなら、わたし、へーき!
シェイン:それでは会いに行くとしましょうか。百年間眠りっぱなしのお姫さまとやらに。
◆◆◆バトル終了後:いばら姫の城(夜)◆◆◆
レイナ:どうやらいばら姫がいるのはこの部屋のようね。でも、百年眠り続けているお姫さまをどうやって起こせばいいの?
ヘンゼル:たしか伝説によれば、姫は真実の愛によって目覚めることができるのだそうです。姫を愛する者が口づけをすれば、目を覚ますと…
主人公:姫を愛する者か、じゃあその人を見つけないといけないんだね…。やっぱり王子様とか?
シェイン:いえ、待ってください。相手は百年眠っていたのですよね? つまり姫を知っている人はもういまは生きていないんですよね?
顔も、性格もわからない相手をどうやって愛せるっていうんですか? それで愛をほざける奴がいたら、それこそ胡散くさいと思いますけど。
ヘンゼル:そ、そんなこと言われても…伝説はそうなっているんだし…
レイナ:…たしかにシェインの言うとおりね。私が姫だったらそんな相手、絶対にお断りだわ。
タオ:おい、もうなんでもいいだろ。要はキスすればいいんだろ? オレたちの誰かがキスすればそれでいいじゃねーか。
レイナ:なに言ってるの! キスすればなんでも解決って発想自体間違ってるわよ! ファーストキスを甘く考えるな!
グレーテル:ねぇ、《主人公》さんたち、なんのお話をしてるの?
ヘンゼル:うーん、さぁ……?
主人公:ちょ、ちょっと待って、みんな。小さい子供だっているんだから、そういう話は…
シェイン:だったら新入りさんがキスしてください。
主人公:なんで僕が!?
タオ:いいじゃねーか。目覚めなかったら目覚めなかったで相手には気付かれないし、目覚めたあとで謝ればたぶん許してくれるよ。な?
レイナ:タオ! あなたさっきから発言がゲスすぎるわよ! それに、わざわざキスの相手に《主人公》を選ばなくても…
???(いばら姫):うるさーーーーーーーーーーーーい!! 人がぐっすり眠っているところに、なにを騒いでるの! ここは私の城なのよ!
主人公:あなたは…もしかして…!
???(いばら姫):ええ、そうよ。私がいばら姫よ。騒がなくてもとっくの昔に目覚めているわよ…
◆◆◆いばら姫の城(夜)◆◆◆
いばら姫:―――とある呪いによって、私は百年の眠りについていた。そして百年目のある日、運命の王子様が私のもとを訪れ、目覚めのキスをしたの。
そこで私は王子様と結ばれて、めでたしめでたし…なんてところで、私の運命は終わってくれなかった。
百年の時とともに、世界には私の知らないものがあふれ、私には理解できない信条が尊ばれるようになっていた。
時間の流れはあまりに残酷。私はその流れについていくことができなかった。だから私は…―――
シェイン:この城に一人で引きこもるようになった、と。だからこの城、いばらの姿がなかったのですね。もう呪いが解けてしまっているから。
いばら姫:王子様は何度も私を愛していると言ってくれた…きっとその愛は本物だと思うけど、世の中には愛だけではどうにもならないこともあるのよ…
グレーテル:ふーん。よくわからないけど、お姫さまもタイヘンなんだね。アメ、あげるから元気出して。
いばら姫:…ありがとう、いただくわ。
ヘンゼル:いばら姫さま。あなたの『運命の書』にも書いてあったと思います。僕たちと一緒に、世界を救う旅に出てくれませんか?
いばら姫:それは無理ね。私がついていくのは勇者マリーよ。それ以外の人間についていけなんて、『運命の書』には書かれていないわ。
ヘンゼル:そんな…たしかにこの人たちは勇者じゃありませんけど、でも旅に出るのが、僕たちの運命のはず…!
いばら姫:ふぁ~、久しぶりにおしゃべりしたら眠くなってきたわ。また勇者マリーが来たら、起こしてちょうだい。それじゃあ…
タオ:びびる必要なんかないぜ、いばらの姫さん。
いばら姫:びびる? 私がなにをびびっているって言うの?
タオ:あんたの気持ちが全部わかるとは言わない。けどよ、百年も経てば見知った風景も変わっちまってるよな。そいつを怖いと思うのは、自然なことだと思うぜ。
でもよ、百年経ったくらいじゃ、案外肝心なとこはなんにも変わってなかったりするからよ。どうだい。オレと一緒に外の世界を見てみないか?
いばら姫:………………あなたと、一緒に。
レイナ:…ねぇ、なんか納得いかないんだけど。さっきはさんざんゲス発言を繰り返してた奴がなんでお姫さまといい雰囲気になってるのよ。
シェイン:奇遇ですね。じつはシェインもいま、おなじことを思ってました。
主人公:二人とも、顔が怖いよ…
いばら姫:…ヘンゼルとグレーテル、だったわね。
ヘンゼル:は、はいっ!
いばら姫:あなたたちは私の寝室で待っていてもらえる? どうしても確認しておきたい場所があるの。
グレーテル:えー、なんで!? グレーテルたちも行きたいよ!
ヘンゼル:こ、こら、グレーテル…わかりました。城の留守は僕たちが守ります。
いばら姫:ありがとう、いい子たちね…
タオ:わざわざ兄妹を置いていくってことは、そんだけ危険な場所ってことか?
いばら姫:ここから北にある洞窟…そこに行けば私たちの戦うべき相手の正体がわかるかもしれない。私と一緒に、来てもらえる?
タオ:ああ、もちろん!
主人公:―――いばら姫の説得に成功した僕たちはヘンゼルとグレーテルに城で待ってもらい、北の洞窟へ向かった。
その洞窟に眠るという、滅びの龍の存在を、確かめるために…―――
◆◆◆バトル終了後:封印の洞窟◆◆◆
主人公:―――いばら姫の案内で、僕たちは北の洞窟の奥底へと辿り着いた。
そこで目にしたのは、無残に破壊された祠の残骸だった―――
いばら姫:そんな…なんてこと…龍たちの封印が破られている…!
タオ:なぁ、その龍ってのはいったいなんなんだ? そいつが世界を襲う災厄ってやつなのか?
いばら姫:…何百年も昔、世界を滅ぼしかけたと言われる存在よ。私の先祖が必死の思いで、この洞窟の祠に封印したと言われているのだけど。
龍たちは封印されたあとも、眷属である魔女たちを残し、子孫である私にも呪いをかけたわ。そしてゆっくりと自分たちが目覚める準備を整えていたの。
私は目覚めたとき、世界はまだ平和だった。だからまだ龍たちも封印されたままだと思っていたけれども…
シェイン:そういえばグレーテルさんたちも、お菓子の家の魔女に会ったと言ってましたが、もしかしたら、その魔女も眷属だったのかもしれないですね。
いばら姫さんがどうしてここへ連れてきたのか、わかりました。それはそれとして、ひとつ聞いてもいいですか?
タオ兄にくっつきすぎじゃないですかね?
いばら姫:あ、あら、そうだったかしら…ごめんなさい、タオ。
タオ:はは、いいってことよ。外に出るの久しぶりだもんな。オレで良ければ、手を貸すぜ。
いばら姫:もう、タオったら…
シェイン:いらっ
レイナ:落ち着きなさい、シェイン。いまはイラッとしてる場合じゃないわよ。
主人公:そうだね。世界の運命がかかってるんだ…その龍とどうやって戦えばいいのか…
レイナ:ちがうわよ。勇者マリーのことよ。私たち、まだ肝心の勇者を見つけ出せていないじゃない。
龍たちが暴れる前になんとしても、勇者マリーを見つけ出さないと…それこそ想区の運命はもう収拾がつかないことに…
ヘンゼル:みなさん、大変です!
主人公:ヘンゼル、グレーテル! どうしたの? 城で待ってたんじゃなかったの?
グレーテル:それどころじゃないの、タイヘンなの! ドラゴンが、とーってもおおきなドラゴンたちがまちであばれているの!
ヘンゼル:ちょうどこの洞窟の方角から飛び立ってきたって! だから、みなさんになにかあったんじゃないかと思いまして…!
いばら姫:まさかちょうど私たちと入れ違いに…? こんなところにいる場合じゃなかったわ! 早く街に向かわないと!
タオ:お嬢!
レイナ:仕方ないわね…!
◆◆◆マッチ売りの街(夜)◆◆◆
主人公:―――僕たちが街にたどり着いた時、あたりは燃えさかる炎に包まれていた。
暴れまわる龍たち。さらにそれにつられるように、ヴィランたちの姿もまざっていた。
いったいどこまでこの想区の運命のとおりなのか、もう僕たちにはわからない。
はっきりしているのは、いまここでなんとかしないと取り返しのつかない破局が訪れるということだけだった―――
グレーテル:お、お兄ちゃーん…
ヘンゼル:僕から離れないで、グレーテル。…いばら姫さま、僕たちはあれと戦わなくちゃいけないんですよね?
いばら姫:ええ、勇者マリーと一緒に。でも、その勇者はまだここにはいないわ…
主人公:どうする、レイナ。僕たちが戦えば、あの龍たちを倒すことはできるかもしれないけど…
レイナ:ダメよ。あの龍たちを倒すのは勇者マリーたちの役目なんだから。それを私たちがやってしまったら、この想区の歪みはきっと永遠に戻らなくなる…!
タオ:だからって、オレたちがここで黙って見てるわけにもいかねーだろ。とにかくこの街の連中だけでも助けねーと…うん? どうした、シェイン。
シェイン:…この街、たしか最初にマッチ売りさんに会った場所でしたね。いまもこの街のお医者さんのもとにいるはずです。早くあの方も助けないと…
???(マッチ売りの少女):それには及ばないわ!
レイナ:あなた、もう起きていて大丈夫なの! よかったわ、だったらすぐにこの街から逃げて。もうこの街にはドラゴンやヴィランたちが……
マッチ売りの少女:…わたしはとてもまずしいマッチ売りの少女。誰にも振り返られず、はかないマッチの火のように生きるのがわたしの運命だった…そう、これまでは。
だけど、マッチ売りの少女はきょうでおしまい! 天国のおばあちゃんのお告げを聞いたいま、きょうからわたしは新しい運命を生きるのです!
炎の勇者マリー:聖なる炎を宿した勇者、マリーとして!
一行全員:……………………
お前が勇者なのかよっ!!!!
レイナ:…ああ、でもたしかに冷静に考えたら、『マッチ売りの少女』って名前でもなんでもないわね。マリーでもおかしくないのよね…
タオ:おい、勇者。お前が勇者ならなんでオレたちにあんなお告げを託した。仲間を集めるのは、お前の役目のはずだろうが。
炎の勇者マリー:ごめんなさい。みなさんいい人だから、ああいうふうに頼んだら引き受けてくれるかなと思いまして。わたし、風邪ひいて体調崩してたし…
シェイン:確信犯ですか。たちが悪いですね。けれど、まぁ、これで…
主人公:うん。ようやく僕たちも心置きなく戦えるね!
ヘンゼル:やっと会えましたね。僕たち、ずっとあなたに会える日を夢見ていたんです。
グレーテル:わたし、勇者ってもっと王子さまみたいな人だと思っていたけど、わたしとおなじくらいの女の子だったんだね…うん、こっちのほうが全然いい!
いばら姫:勇者マリー…あなたが宿しているという聖なる炎で私たちの運命を照らし出してくれますか?
炎の勇者マリー:もちろん。そのためにわたしはここにいるんだから。さぁ、みんな、いくわよ。いまこそ、伝説を始めるために!
◆◆◆バトル終了後:伝説の草原◆◆◆
主人公:―――龍たちを倒したマッチの勇者たち、マリー、グレーテル、ヘンゼル、いばら姫は世界を救った小さな英雄としてみんなから称えられた。
このあと彼女たちはお菓子の魔女が遺した怪物チョコレートゾンビとの死闘や、いばら姫を育てた妖精たちの国で巻き起こる陰謀とか、ほかにも数え切れないほどの冒険を彼女たちは繰り広げることになる。彼女たちの冒険はまだ、終わることはないのだ―――
いばら姫:ねぇ、タオ。本当に行ってしまうの? 私、あなたさえよかったら、いつまでもあなたのことを待って…
タオ:…………
シェイン:はいはーい、ストップ。ストップですよー。タオ兄には大事な使命があるのですから。ですよね、タオ兄。
タオ:…そうだな、シェイン。せっかくのお誘いだが、オレにはもったいなさすぎるわ。あんたはあんたで幸せになってくれよ。なぁ、いばら姫さん。
いばら姫:…そう。まったく馬鹿な人。いいわよ、べつに。あなたに言われてなくても、幸せになってやるわよ…ぐすん…
グレーテル:ねぇ、《主人公》お兄ちゃんたち、ほんとにもう行っちゃうの…?
ヘンゼル:そうですよ。こんなにお世話になったのに…それに僕たち、まだお礼だって全然できてない…
主人公:この世界での僕たちの役目はもう終わったんだ。大丈夫、君たちならこの先、なにがあっても切り開いていける。
レイナ:そうね。この想区にはなんといっても、頼れる勇者さまもいることだし。
炎の勇者マリー:…わたしがマッチ売りの少女だった頃、よくマッチに火を灯しながら夢を見ていたんです。
いろんな場所で仲間と冒険を繰り広げている自分、あんな寒空じゃない、あたたかい日のもとを歩いている自分の姿を。
けど、もうわたしはマッチに火を点して、夢を見なくてもいいんですよね…。やっと、この足で、あの頃夢見た場所に一歩踏み出せたのですから。
わたし、頑張りますから…これからも勇者として、みんなに夢を届けていきますから!
主人公:うん。頑張ってね。炎の勇者さん。
主人公:―――そして僕たちは彼女たちに見送られながら、彼女たちの想区をあとにした。
ヘンゼル、グレーテル、いばら姫。そしてマッチ売りの少女、もとい炎の勇者マリー。
小さな勇者たちの伝説はまだ、始まったばかり―――
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