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2016年5月7日(土)

『グリムノーツ』シナリオ集“長靴をはいた猫VSファントム”。2人の戦いは意外な結末に

文:イズミン

 スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『グリムノーツ』のキャラクターイベント“長靴をはいた猫VSファントム”のセリフ集をお届けします。

 このキャラクターイベントの開催期間は終了しており、すでにゲーム内では見られませんが、この記事ではそのストーリーを読むことができます。

『グリムノーツ』

 『グリムノーツ』は、世界中のさまざまな童話を題材にした“新解釈”RPGです。与えられた運命を演じることを定められた世界で、演じる役割を与えられなかった主人公たち。

 彼らが“役割を演じる”ことと“役割を与えられない”ということに対して立ち向かう、RPGの意味を問いかけるゲームとなっています。

 イベント“長靴をはいた猫VSファントム”は3月31日15:00~5月2日14:59の期間に開催。童話『オペラ座の怪人』、『長靴をはいた猫』、『ラプンツェル』のキャラクターである、ファントム、クリスティーヌ、長靴をはいた猫、ラプンツェルが登場して、冒険をサポートしてくれました。

『グリムノーツ』

◆ストーリー

 ある想区を訪れた一行。

 そこはオペラ座と呼ばれる劇場が栄えており、人気オペラ歌手クリスティーヌと、オペラ座に潜む謎の男、“オペラ座の怪人”の噂が持ち上がっていました。

 そんな中、一行は一匹の猫に声をかけられます。“長靴をはいた猫”と名乗るその猫は一行に仕事を頼みたいと持ちかけてきます。

 それを断る一行でしたが、その前にヴィランたちが立ちふさがってきました。

猫は美女と長靴がお好き

◆◆◆オペラ座の街(昼)◆◆◆

主人公:―――オペラって知ってる? 舞台にいる女優、男優たちの歌と音楽で物語が進行する舞台劇のことをそう呼ぶんだって。

 僕たちがやってきたのは、そんなオペラを行う劇場・オペラ座がある街だった。

 街の人たちはみんなオペラが好きで、特にひとびとの関心を集めていたのが、絶大な人気を誇る歌姫、クリスティーヌ。

 そしてオペラ座に潜む、謎の怪人ファントムについての噂だった―――

(主人公、タオが登場する)

タオ:オペラ座を影で支配する謎の怪人ファントム…神出鬼没で、誰もその姿を見た者はおらず、時折、お気に入りの歌姫を連れ去ってしまう、か…

『グリムノーツ』

 いいねぇ、こういうの。なんだか冒険心がくすぐられるぜ。坊主もそう思うよな? な?

主人公:もうダメだよ、タオ。そうやって首を突っ込むとまた事件に巻き込まれるよ。

 ほら、買い出しも終わったし、早くレイナたちのもとに戻ろう。向こうも僕たちを待っているはず―――

レイナ:いい加減にしなさいよ! 私たち、先を急いでいるって言ってるでしょ!

主人公:あの声は、レイナ…?

タオ:…やべーな。これ、トラブルの予感しかしねぇぞ。

(主人公とタオが退場し画面がフェードアウトする)

◆◆◆オペラ座近くの草原(昼)◆◆◆

(レイナとシェイン、長くつをはいた猫が話している)

???(長靴をはいた猫):まぁ、まぁ、そう言わずにちょっとだけでも話を聞いてくれよ! 悪いようにはしないからさ。

『グリムノーツ』

レイナ:だ~か~ら~! そっちも少しは私の話を聞きなさーい!

主人公:あの、僕たちの仲間になにか用ですか…―――って、猫?

???(長靴をはいた猫):おや、お連れさんかい? …ふーん、なるほどねぇ。…こっちの兄ちゃんたちも腕っ節は立ちそうだ。

 おっと、ご挨拶が遅れたな。俺はこういうもんです。はい、これ、自己紹介状。

主人公:ああ、ご丁寧にどうも……『フリー相談屋・長靴をはいた猫』? あの、相談屋ってなんですか?

???(長靴をはいた猫):ようするに人様の相談に乗って、そいつが望む方向に才能を輝かせる商売のことさ。ちゃんと実績もあるぜ?

 なにしろその昔、粉屋のしがない三男坊を侯爵にまで出世させたことがあるんだからよ。俺の飼い主、カラバ侯爵のことだけどな。

『グリムノーツ』

シェイン:…この猫さん、さっきからしつこいのですよ。シェインたちに頼みたい仕事があるって聞かなくて…

タオ:頼みたい仕事? なんだ、そりゃ…

長靴をはいた猫:へへ、それはだな―――…っと、邪魔が入りやがったな。

ヴィラン:クルル…クルルルゥ…!

レイナ:ヴィランたち…! ああ、もう、またこのパターンなの! 今回は避けられると思ったのに!

長靴をはいた猫:ん、あんたら、『ファントムの使い』どものこと、なにか知ってるのか?

主人公:『ファントムの使い』? いったい、なんの話?

長靴をはいた猫:ふーん、なるほどね…ひとまず、こいつらを切り抜けたら、俺の城に来てくれ。まずはそこで話をしようぜ。

『グリムノーツ』

◆◆◆バトル終了後:カラバ侯爵の城(夜)◆◆◆

主人公:―――ヴィランたちを追い払った僕たちは、長靴をはいた猫の案内で、猫の飼い主であるカラバ侯爵のお城にたどり着いた。

 そこで僕たちは、長靴をはいた猫からあのヴィランたちが『ファントムの使い』と呼ばれていることを知った―――

(主人公、レイナ、タオ、シェイン、長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:あいつらが現れるようになったのは、一ヶ月くらい前からだな。急にあちこちで現れるようになってなぁ。

『グリムノーツ』

レイナ:一ヶ月前…私たちがこの想区に来る前ね…

主人公:どういうこと? この想区にカオステラーはいないはずだよね?

レイナ:ええ、それは間違いないわ。あのヴィランは私たちの存在に反応したみたいだけど…ヴィラン発生の原因はほかにある…

 ねぇ、どうしてあのヴィランたちは『ファントムの使い』と呼ばれているの? さっき私たちに頼もうとしていた仕事と関係が?

長靴をはいた猫:よくぞ聞いてくれた! じつは嬢ちゃんたちにな、俺が相談に乗っている歌姫の警護を頼みたいんだよ。

 いまクリスティーヌと人気を二分する新人のオペラ歌手、ラプンツェルの警護をな。

『グリムノーツ』

◆◆◆オペラ座(夜):回想◆◆◆

(ラプンツェルが登場する)

長靴をはいた猫:俺が相談に乗っている娘――ラプンツェルっていうんだけどな、いまそいつが次の公演の主演に選ばれそうになっているんだ。

 だけど、そのラプンツェルに最近、脅迫状が届いてよ。舞台を降りなければ、その命を奪うとまで言ってきたのさ。

 脅迫状の送り主は自らを“オペラ座の怪人”、ファントムと名乗っていやがる。オペラ座に伝わる怪談に自分をなぞらえてきたのさ。

『グリムノーツ』

◆◆◆カラバ侯爵の城(夜)◆◆◆

(ふたたび主人公、レイナ、タオ、シェイン、長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:ファントムが実在するのかはわからん。オペラ座を影から支配しているとも、地下で暮らしているとも、いろんな噂があるようだが…

 あの化け物どもが現れたのも、ラプンツェルが脅迫されたのとおなじ頃。いまんところ大した被害は出てねーみたいだが…

タオ:だからって見ず知らずのオレたちに、なんでそんな仕事を頼もうとするんだよ?

長靴をはいた猫:商売柄、人を見抜く目には自信があってな。あんたら、相当修羅場をくぐり抜けてきたクチだろ? さっきの戦いを見ても間違いはない。

『グリムノーツ』

 なぁ、頼むよ。俺もなにかと忙しいから手が回らねーんだ。この猫に手を貸してくれよー。

レイナ:…もうひとつ、確認させて。あなたのその行動はどこまでが『運命の書』に記されたとおりのものなの?

長靴をはいた猫:ははは、なーに言ってんだ? もちろん全部予定どおりだとも。決まってんだろ、そんなの。

レイナ:…………そう、わかったわ。

 この想区ではなにかが起きている…調べる必要がありそうね。この話、引き受けさせてもらうわ。

長靴をはいた猫:本当か!? へへ、ありがとな、嬢ちゃんたち。恩にきるぜ…

『グリムノーツ』

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

(クリスティーヌが登場する)

クリスティーヌ:♪天におわす輝ける天使たちよ――どうか私の魂を遥かな天まで運んでください――

『グリムノーツ』

???(ファントム、声だけ):…見事だ、クリスティーヌ。なんと素晴らしいソプラノの歌声…先日のコンサートからさらに磨きがかかっている…

クリスティーヌ:その声は…“音楽の天使”さま…ありがとうございます…すべてはあなたが…私をここまで導いてくれたおかげ…

???(ファントム、声だけ):次の公演のプリマドンナはお前のものだ。お前の『運命の書』の記述どおりにしてやる。

 きょうはおやすみ、クリスティーヌ…なにも心配するな。お前はただ、最高の歌声を奏でることだけを考えればいいのだ…

(クリスティーヌ、キョロキョロする)

クリスティーヌ:ああ、まただわ…またあの声に支配されて…あの人を止めることができなかった…

 “音楽の天使”さま…あなたのおかげで、私はこんなに高らかに歌うことができるようになった…

 だから…もうこれ以上はやめて…私はそれ以上を望んでいない…

 お願い…エリック…

◆◆◆暗闇◆◆◆

(ファントムが登場する)

ファントム:私が育てあげた最高の歌姫、クリスティーヌ…彼女を導くことこそが私の運命…そのためなら私はいくら汚れようとも構わない…

『グリムノーツ』

 ラプンツェルに、私の使いと称される化け物ども…どれも『運命の書』の記述にない出来事ばかりだが…なんであろうがどうでもいい…

 クリスティーヌの妨げになる者はすべて闇に葬ってやる…

(ファントムの代わりに長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:ファントムか…なにがお望みかは知らんが…こっちにはこっちの都合ってもんがあるんだ。ラプンツェルの邪魔はさせねーぞ。

ファントム:私の…

長靴をはいた猫:俺の…

ファントム長靴をはいた猫:―――邪魔するやつは容赦しない。

『グリムノーツ』

亜麻色の髪の歌姫

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

手紙:―――『拝啓 ラプンツェル様。私が幾たびも警告を送ったのにも関わらず、貴女はそれを無視し、舞台に立とうとしている。

 私は貴女のその無謀さに賞賛を送ろう。今夜、オペラ座2階5番ボックス席に来るがいい。どうか私に貴女の覚悟を示してくれ。

 もしも来られなかった場合、死よりも恐ろしい運命が貴女に訪れる。オペラ座の怪人より』――

長靴をはいた猫:それがファントムから送られてきた手紙だ。死よりも恐ろしい運命っていうのがなにかは知らんが…まぁ、ろくでもないことだろうな。

主人公:それでもラプンツェルは行くって言ってるんだね…。なにも起きないように、僕たちの力で守り抜かないと…

レイナ:話はわかったけれども…私たち、ラプンツェルが待っているオペラ座へ向かっているのよね?

 どうしてオペラ座の裏側へ回っているの? 入り口は反対側でしょ?

『グリムノーツ』

長靴をはいた猫:オペラ座はペット禁止なんだよ。正面から入ったら、俺が劇場の管理人に追い出されちまうだろうが。

シェイン:あ、長靴さん、ペットって扱いになるんですね。なるほど、なるほど。となると裏口からこっそり入るのですか?

『グリムノーツ』

長靴をはいた猫:見ていればわかるさ。おっと、聞こえたぞ…

 どうやらうちの小鳥は、今晩も「王子さま」の歌に夢中みたいだな…

◆◆◆オペラ座・2階通路(夜)◆◆◆

ラプンツェル:♪かつてのわたしは鳥かごの鳥だった…高い塔の上でさえずるだけの小鳥 だけどあるとき、あなたが現れたの…

 ♪名前も知らないあのひと わたしの歌声を愛してくれたあのひと…あのひとこそ、わたしが待ち望んだ王子さま!

『グリムノーツ』

 ♪けれどあのひとは去ってしまった…自分にはなすべき運命があると言って…そして、わたしにこう約束したの…

王子さま:君の歌が“最上の音楽”に至ったとき、もう一度、私は君を見つけに行く。必ず、必ずだ…

ラプンツェル:♪だからわたしはこの舞台の鳥になったの…オペラで喝采を浴び、高らかに歌う鳥に…あの人が愛した歌を響かせ続ける…

 ♪だから運命の王子さま…どうかふたたび、わたしを見つけ出して…

長靴をはいた猫:ラプンツェルー、ラプンツェルー、そろそろ歌はやめにして髪を垂らしてくれないか?

ラプンツェル:あの声は…猫のおじさま!? はいはい、待ってください、ただいま!

(画面フェードアウト、主人公たちと向かい合う、長靴を履いた猫とラプンツェル)

タオ:まさか髪を伝ってよじ登るなんて…おっそろしく長い髪をしてんだな…あんなふうに登って平気だったのか?

『グリムノーツ』

ラプンツェル:ふふ、慣れていますから平気です。初めまして、ラプンツェルです。おじさまから話はうかがっております。

長靴をはいた猫:ラプンツェルの髪は特別だ。金を紡いだような輝きを放つ、蔦のように長い髪…こんなに宣伝しやすい逸材もないときた!

 ちなみにこのラプンツェルはな、もともと森の奥にある塔に住んでたんだが…

シェイン:あ、さっきの歌でだいたいのプロフィールは把握したので大丈夫です。

レイナ:昔出会った王子さまを探すために、オペラ歌手デビューしたっていうことね…そこをファントムにつけ狙われたと…

主人公:怖くはないの? これからゆくボックス席で、どんな罠が待っているかわからないんだよ?

ラプンツェル:…正直にいうと怖いです。けれど、このまま脅しに屈して、あの方に会えなくなることのほうがもっと怖い…

 わたしはもう塔に閉じ込められた小鳥じゃないから…それに、みなさんと猫のおじさまも一緒に来てくれるんですよね?

長靴をはいた猫:もちろんさ。それじゃあ、急ぐとしよう。このメンツなら、いくらファントムでもネズミ同然―――

(画面が点滅する)

主人公:なんだろ、明かりが…

???(ファントム、声だけ):愚かな者ども…この“オペラ座の怪人”から逃れられると思ったか…

ラプンツェル:この声…もしかして、ファントム!?

『グリムノーツ』

レイナ:どういうこと…? ボックス席で待っているんじゃなかったの…!?

長靴をはいた猫:…兄ちゃんたち。悪いがこの子を連れて、先にボックス席のほうへ向かってくれ。

タオ:ちょっと待て。猫のおっさん、あんたはどうするんだ。

長靴をはいた猫:俺は俺でやることがあるんだよ。その子を頼んだぜ。

シェイン:ざわざわした気配がします。どうやら、ヴィランたちがいるみたいですね。長髪姫さん、案内お願いします。

ラプンツェル:…はい! みなさん、こちらに!

◆◆◆バトル終了後:オペラ座・2階通路(夜)◆◆◆

(ファントムが登場する)

ファントム:かわいい かわいい ラプンツェル…お前はいったい どこに隠れている?

『グリムノーツ』

 お前の美しい髪を刈ってやろうか お前の可憐な歌声を枯らしてやろうか お前は永遠に私の影から逃れられない…

???(ラプンツェル):♪かつてのわたしは鳥かごの鳥だった…

ファントム:哀れな…恐怖のあまり歌にすがるか…やはりお前はクリスティーヌには遠く及ばぬ…

???(ラプンツェル):♪高い塔の上でさえずるだけの小鳥…

ファントム:その程度の才能と覚悟で…彼女の邪魔をするな!!

(ファントムが左から右へ移動し、ファントムが驚く)

ファントム:ちがう…これは…箱か…??

長靴をはいた猫:そいつは蓄音機っていう、世に出たばかりの発明品さ。声まで記録できるんだぜ、すげーだろ?

(画面が真っ白になり、ファントムがあたりをきょろきょろする)

ファントム:これは煙があたりに…!? それに…この匂いは…うっ…!?

(長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:いい具合に身体が痺れてきただろ? 人間専用の麻酔ガスに、蓄音機。あちこち伝手を頼って集めた甲斐があったぜ。

 お前がラプンツェルを狙ったときから、いろいろ準備していたんだよ。うまーく引っかかってくれて助かったぜ。

『グリムノーツ』

ファントム:…そうか、お前か。ラプンツェルを導いた者は…

長靴をはいた猫:そういうお前はずいぶんクリスティーヌにご執心のようだな。なーるほど、すべてはクリスティーヌのためにか。

 ボックス席で待っているとか脅迫状で、書いておきながら、いきなりうちの歌姫に襲いかかるとは、いい度胸してるじゃねーか?

ファントム:ボックス席? 脅迫状? なんの話だ? そんなもの、出した覚えはないぞ。

『グリムノーツ』

長靴をはいた猫:なにっ?

ファントム:私はお前たちが来たのを見て、動き出しただけ―――

 ん? なんだ、お前は…!?

長靴をはいた猫:っ!? どうした、ファントム!

(ファントムが消え、長靴をはいた猫は、きょろきょろする)

長靴をはいた猫:消えた!? くそ、あの身体で動けるはずがないんだが…

主人公:長靴をはいた猫! 大丈夫!?

(主人公、タオが登場する)

長靴をはいた猫:おお、兄ちゃんたち…俺は平気だ。しかし、ファントムを逃がしちまったぜ…ラプンツェルの様子はどうだ?

タオ:お嬢とシェインがついているから大丈夫だ。けど、ボックス席のほうには誰もいなかったぜ。

主人公:ファントムはどこに行ったんだろ?

長靴をはいた猫:わからん…だが、なんだか妙なことが起きているようだな…ファントムも知らないなにかが…

◆◆◆オペラ座の地下洞窟(夜)◆◆◆

???(声だけ):素晴らしい…! オペラ座の地下にこんな洞窟があったとは…!

 あの脅迫状を使って、君と猫をぶつけたのは正解だったよ。おかげで尻尾がつかめなかった君を、こうして捕まえることができた。

ファントム:貴様…何者だ…

???(声だけ):ふふふ、私は君だよ、ファントム。これから君の運命を貰い受ける者さ。さっきの麻酔のせいで、君はしばらく動けまい…

 クリスティーヌにこだわっているようでは、最上の音楽にはたどり着けないよ…だから、きょうから私が新しいファントムとなる…!

ファントム:やめろ…なにをする…私の仮面を取るな…取らないでくれ…

 やめろおおおおおおおおおおおおお!!

『グリムノーツ』

音楽の天使

◆◆◆暗闇◆◆◆

長靴をはいた猫:クリスティーヌについて調べたんだが、いろいろ面白いことがわかったぜ。

 クリスティーヌがその才能を開花させたのは、ここ半年。それまではまったくの無名だった彼女は一気にトップの階段を駆け上がった。

 で、その理由だが…どうやら本人は“音楽の天使”が自分のもとに来たからだと話しているらしい。

 “音楽の天使”とファントム、どこまで関わりがあるかわからないが…ちょっと彼女を張り込んでみてくれないか?

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

シェイン:…ってな感じで、長靴さんに体よく面倒な仕事を押しつけられたわけですが…いくら忙しいからってなんでシェインたちが…

『グリムノーツ』

 ああ、夜の街は寒いです…ふかふかのベッドでひと眠りしたいです…

レイナ:我慢しなさい、シェイン。あれからファントムも動いてない…手がかりはもうクリスティーヌしかないんだから…

タオ:しっかし、クリスティーヌってたしかオペラ座のトップにいるんだろ? きょう、稽古を聴いてたけど、ラプンツェルのほうが上手くなかったか?

主人公:うん。クリスティーヌのほうは元気がないというか、心ここにあらずって感じだったね。歌のことはよくわからないけども…

レイナ:彼女のほうでもなにかあったのかしら…事情を聞ければいいのだけど…

 ―――あ、待って、みんな。隠れて!

(クリスティーヌが登場する)

クリスティーヌ:………………

(そのままクリスティーヌが退場する)

主人公:こんな夜中にどこへ行くんだろ?

レイナ:ついていきましょ!

◆◆◆オペラ座の地下(夜)◆◆◆

(クリスティーヌが登場する)

クリスティーヌ:…このオペラ座の地下に来るのも、二度目になるわね。あの人が育った、仄暗い故郷…

『グリムノーツ』

 エリック、まだあなたはここにいるの? あなたはいま、どんな運命を歩もうとしているの?

 エリック…私を導いた、恐ろしい天使…

レイナ:エリック、それが怪人ファントムの名前なのね。

クリスティーヌ:あなたたちは…!? 私をつけていたの!?

タオ:悪いな。ラプンツェルの護衛を仰せつかっててな。ちょっとファントムに用があんのさ。

シェイン:それにしてもオペラ座の地下に、こんな洞窟があったなんて驚きです…無駄に広いとも言えますが。

主人公:教えてください。オペラ座の怪人――ファントムのことを。僕たち、いまなにが起きているのか知りたいんです。

クリスティーヌ:そう、ラプンツェルさんの……わかったわ。なら、私と一緒に来て。

 一緒にエリックを…ファントムの暴走を止めて欲しいの…! 

『グリムノーツ』

◆◆◆バトル終了後:オペラ座の地下(夜)◆◆◆

クリスティーヌ:昔、父が語ってくれたわ…純真な心を失わない者には、“音楽の天使”さまが来て、素晴らしい才能を授けてくださるって…

 だから私は半年前、あの「声」が聞こえたとき、“音楽の天使”さまが来てくれたのだと思ったの…お話の中の小さいロッテのように…

『グリムノーツ』

主人公:だけど、それは天使じゃない…オペラ座の怪人(ファントム)だったんですね?

クリスティーヌ:…ええ、そうよ。彼の本名はエリック。恐ろしい素顔を仮面で隠し、このオペラ座の地下で孤独に暮らしていた男…

 エリックはあらゆる芸術に長けていて、それを見抜く目も持っていた…

 そして彼に見込まれた私は、エリックの音楽を体現する楽器として、彼に磨かれ続けたの…すべて『運命の書』に記されたとおりにね。

 …けれどもラプンツェルさん、彼女の存在は私の『運命の書』に記されていなかった…ファントムも彼女のことを気にしているようだった…

 彼がどう行動するのか、私にはわからない。だから、私は…

レイナ:…なるほど。ラプンツェルはもともと、オペラ歌手になる運命にはなかったってことね。だいぶ話が見えてきたわ…

『グリムノーツ』

主人公:レイナ、なにかわかったの?

レイナ:ええ。この想区でヴィランが発生している理由、それは…

???(ファントム):こんなところになにしに来た、クリスティーヌ。

(ファントムが登場する)

シェイン:ほほー、これはまた濃いーかんじの仮面さんが来ましたね。あれが噂のファントムさんですか?

『グリムノーツ』

タオ:そうだろうぜ。ここで会ったが百年目だ。さっさとそのむかつく仮面ごと殴らせて―――

クリスティーヌ:違う!

 あの人の…エリックの声じゃない…あなた、いったい誰なの!?

???(ファントム):…ふふ、さすがは“音楽の天使”に愛されたクリスティーヌ。だいぶ本物には近づけたつもりだったが…すぐにばれてしまったか。

主人公:どういうこと!? あの人はファントムじゃないの!?

偽ファントム:いいや、私はファントム、“オペラ座の怪人”さ。このオペラ座の伝説にして、影。この世界に最上の音楽をもたらす者だ。

主人公:最上の音楽…あれ、それってラプンツェルの歌にあった…

『グリムノーツ』

◆◆◆オペラ座・2階通路(夜):回想◆◆◆

(ラプンツェルが登場する)

王子さま:君の歌が”最上の音楽”に至ったとき、もう一度、私は君を見つけに行く。必ず、必ずだ…

◆◆◆オペラ座の地下(夜)◆◆◆

レイナ:そういうこと…あなたがすべての歪みの原因だったのね。

 あのファントムはこの想区のファントムじゃない。ラプンツェルが話した”王子様”、そして…

 ―――私たちとおなじ、外の世界から来た『空白の書』の持ち主よ。

『グリムノーツ』

虚構の仮面

◆◆◆オペラ座の地下(夜)◆◆◆

主人公:あの人が、僕たちとおなじ…『空白の書』の持ち主?

偽ファントム:おや? 君たちも私とおなじ外から来た者だったか。もしかしてこの想区の運命を書き換えに来たのかな?

『グリムノーツ』

レイナ:そんなわけないでしょ…! あなたのせいでこっちはいい迷惑よ。

 ラプンツェルをそそのかし、こんなふうにファントムの仮面まで奪って…この想区をめちゃくちゃにするつもり!?

タオ:…そもそもあんた、なにが目的なんだ。ラプンツェルと再会の約束をしてんだろ? なんでさっさと会いに行ってやらねーんだ。

偽ファントム:彼女が“最上の音楽”を実現したら…私はそう言ったんだ。

 この想区には素晴らしい歌姫が二人いる。クリスティーヌ、そしてラプンツェル。この二人がおなじ世界にいるのはまさに奇跡だ。

 ふたつの異なる才能をきちんと導いてやれば、両者は互いに影響しあい、ぶつかり合い、やがて“最上の音楽”へと昇っていくだろう。

 だがこの想区のストーリーテラーは…クリスティーヌにしか歌姫としての運命を与えなかった…だから私は運命に介入したのさ。

シェイン:あなたのくだらない理想はどうでもいいですけど、ここにいてもずっとヴィランに追い回されるだけですよ? そこんとこ、わかっているんですか?

偽ファントム:想区を統治するルールたる超越者、ストーリーテラーは想区の住民を個人ではなく、その想区で割り振られた役割で認識しているという。

 ならば“オペラ座の怪人”という役が維持されれば、私はヴィランに脅かされることなく、この想区で生きられる…そうは思わないか?

『グリムノーツ』

主人公:そのために、ファントムの仮面を…そんなことができるの?

レイナ:わからない…そんな都合よくいくとは思えないけど…

クリスティーヌ:…あなたがなにを言っているか、私にはまったくわからない。そんなことはどうでもいいの。

 エリックは…? あの人はどうしたの…? あの人はいま、どこにいるの…! 

『グリムノーツ』

偽ファントム:まだ生きているさ…彼もまた素晴らしい音楽の才能の持ち主だからな。この地下で作曲でもしてもらうよ。

 もう君は運命から解放されたんだ。私のやり方はもっと穏便だ。君のために、なにもかも破壊するあの化け物とは違う。

 これから先、君はやつが犯す罪について苦しむ必要はない…もっと嬉しそうな顔をしたら、どうなんだい?

主人公:あいつ…!

長靴をはいた猫:おおっと、カッカすんな、兄ちゃん。そんな怒ってたら、相手のペースにはまるだけだぜ?

(長靴をはいた猫が登場する)

レイナ:長靴をはいた猫! あなた、いつのまにここへ!?

『グリムノーツ』

長靴をはいた猫:つい今しがた来たところだ。猫の察知能力をなめてもらっちゃ困るぜ。

 …俺のヒゲがビンビン言ってる。この向こうに泣いている誰かがいるぜ。それを助けられるのは、あんただけだ。

クリスティーヌ:………エリックがあの向こうに!? わかったわ、ありがとう!

(クリスティーヌが退場する)

偽ファントム:…理解に苦しむな。これだから、『運命の書』に縛られた者は…

長靴をはいた猫:他人の運命を奪おうとしているやつよりはずっと上等だと思うぜ。覚悟しな、仮面野郎。兄ちゃんたちも来てくれるだろ?

主人公:もちろん! 偽ファントム、お前の仮面をいま剥いでやる!

◆◆◆バトル終了後:オペラ座の地下(夜)◆◆◆

偽ファントム:なぜ、私の邪魔をするんだ…

 私はただ…“最上の音楽”を実現するために…すこし運命を変えようとした、だけなのに…

(ヴィランが登場する)

ヴィラン:クルル…クルルウゥ…

偽ファントム:や、やめろ…来るな…いまの私はファントムなんだ…この想区の住民…だから…!

ヴィラン:クルルルウウウウ!!

(偽ファントムにヴィランたちが接近し、暗転する)

偽ファントム:ぎゃあああああああああああああああ!

(画面がフェードアウトする)

(主人公たち一行と、長靴をはいた猫が登場する)

主人公:仮面と服だけ残されている…あの人はいったいどこに?

『グリムノーツ』

レイナ:…消されてしまったのね。あの男はこの想区のストーリーテラーに罰を下されてしまったのよ。

長靴をはいた猫:へっ、好き勝手やっておいて、自分の蒔いた種のせいでくたばっているようじゃ、世話ねーわな…

タオ:お、おい、大丈夫か、猫のおっさん! 汗だくじゃねーか!?

長靴をはいた猫:ああ…年寄りが無理しすぎた…あいたた、腰が…俺のことはいいから、ちょっとアレを持って行ってもらえねーか?

主人公:あれって、仮面と服のこと?

長靴をはいた猫:そいつを誰より必要としてる奴がこの向こうにいる…そいつに返してやってくれ…

『グリムノーツ』

◆◆◆オペラ座の地下(夜)◆◆◆

クリスティーヌ:エリック! どこにいるの、エリックー!

『グリムノーツ』

エリックの声:…クリスティーヌか?

クリスティーヌ:その声…エリック、無事だったのね…!

エリックの声:帰れ。ここは君のような人間が来る場所じゃないっ。私は仮面を失った…もう私はファントムではなくなったのだ…

 君だって知っているだろ…私のおぞましい素顔を…私がこれから君のために犯す罪の数々を…

 どんな結末を迎えるかわかっていても…私は君を求め続ける…だからこのまま消えるのもまた報いなのだ…

クリスティーヌ:…わかっているわ、エリック。あなたがこれから犯す罪で、私もまた消えることのない苦しみを背負わされる…

(主人公たちが登場する)

クリスティーヌ:けれどもあなたのおかげで、私は素晴らしい景色を見ることができた。あの舞台での高揚が色褪せることは決してない…

 だから私はあの舞台にこれからも立ち続ける…あなたが…“音楽の天使”が導いてくれた、歌姫クリスティーヌとして―――

主人公:これ、エリックさんの仮面と服です…あの偽物はもういなくなりました。運命はこれでもとに戻るはずです。

エリックの声:…ふ、愚かだな。せっかくこの怪物を消し去る機会が訪れたというのに…まったく、つくづく愚かだよ…

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

シェイン:これで一件落着ですかね。あとはラプンツェルさんがオペラ歌手を諦めてくれればいいですけど…

『グリムノーツ』

タオ:だけど、やりきれねーな。ラプンツェルはずっと騙されていたわけだろ? あの偽ファントムも消えちまったし…

レイナ:そうね…いったいなんて伝えてあげればいいのか…

長靴をはいた猫:あー、ラプンツェルは次の公演まで引退させるつもりはねーぞ。

主人公:え、なに言ってるの? そんなことしたら、まだヴィランは現れ続けるんだよ!?

長靴をはいた猫:いいんだよ。これは運命をもとに戻すための大芝居なんだ。

 なぁ、兄ちゃんたち。これが最後のわがままだ。俺のこの大芝居に付き合ってくれねーか?

『グリムノーツ』

猫と仮面のラプソディ

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

ラプンツェル:いよいよ、わたしの舞台が始まる…いまのわたしに”最上の音楽”を歌うことなんてできるのかな。

『グリムノーツ』

 どうかわたしを見守っていてください、王子さま…

クリスティーヌ:ラプンツェル、いよいよね…

ラプンツェル:クリスティーヌさん! あ、あの、わたし…

クリスティーヌ:そんなに緊張しないで…クリスティーヌでいいわよ。

 …オーディションでのあなたの歌、素晴らしかったわ。ラプンツェルは私とはちがう、あなただけの輝きを持っている。

 あなたと共演できること、誇りに思うわ。さぁ、行きましょう。私たちの舞台へ―――

ラプンツェル:…ええ、クリスティーヌ!

長靴をはいた猫(声だけ):―――ほんとはな、ラプンツェルと結ばれる運命にあったのは、俺の飼い主、カラバ侯爵なんだよ。

◆◆◆オペラ座の街(夜)◆◆◆

(主人公たち一行、長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:塔に閉じ込められていたラプンツェルの歌に聞き惚れた俺の飼い主が彼女を見初め、そして結ばれる。そういう筋書きだったんだが…

 …どこでトチ狂ったのか、ラプンツェルはこの街でオペラ歌手になろうとやってきていた。

 偶然、彼女を見つけたときには、心底驚いたぜ。おかげで、相談屋なんてガラでもねー商売を始めるハメになっちまった。

『グリムノーツ』

主人公:そういうことだったんだ…けれどもそれなら、ラプンツェルか侯爵に直接教えてあげればよかったのに。

長靴をはいた猫:恋は人を盲目にさせる。ニセの王子に心奪われたあの子に、真実を聞かせたって無駄さ。

 うちの飼い主もずっと視察の仕事に追われて、あっちの城を留守にすることが多かったしな。

 だから強引に『運命の書』の筋書きに手繰り寄せることにしたんだ。

 知ってるか? 今回の演目、高い塔の上からプリマドンナが独唱する場面があるんだよ。

 この公演は俺の飼い主も観に来ている。もともと『運命の書』に記されたのとそっくりのシチュエーションを用意してやれば、おそらくは…

『グリムノーツ』

レイナ:なるほど。つまり今回の公演さえ乗り切れば、無事にこの想区の運命は元に戻る可能性が高いというわけね。

(シェイン、タオが登場する)

シェイン:街の様子を見てきました。やっぱりヴィランたちがわらわら来てますね。みんなオペラ座のほうを目指してます。

タオ:いよいよ、雌雄を決するときが来た、ってことだな。

長靴をはいた猫:…となるとボチボチ最後のお勤めを果たさないとな。ああ、くそ…まだ身体が痛みやがる…

タオ:おいおい、無理すんなよ。あとはオレたちに任せておけって。

長靴をはいた猫:年寄り扱いするな! 例のヴィランって化け物はたくさんいるんだろ? だったら、頭数は多いほうが―――

???(ファントム):ネズミも狩れない猫の手を借りる必要がどこにある?

(ファントムが登場する)

主人公:ファントム…なにをしに来たの?

『グリムノーツ』

ファントム:つれないことを言うな。私は誰よりもオペラ座の音楽を愛している。

 クリスティーヌが主演でないのは業腹だが、私の舞台を他人に汚されるのは、虫酸が走る。ともに戦わせてもらうぞ。

長靴をはいた猫:…へ、へへ。よぉ、ファントムさん。ずいぶん芝居がかったご登場だな。

ファントム:芝居が過ぎるのは貴様のほうだろ。貴様の三文芝居のせいで、私の運命もずいぶんかき乱されてしまった。

 お前はおとなしく舞台を鑑賞していろ。2階5番ボックス席、私の特等席を用意してやった。ありがたく思え。

長靴をはいた猫:ケッ、お前に振り回される劇場支配人も大変だな。わーったよ、あとのことは頼んだぜ?

レイナ:任せなさい、長靴をはいた猫! 絶対に公演は守りきってみせるわ! ファントムも、いいわね!?

ファントム:ああ、“オペラ座の怪人”の恐ろしさを、骨の髄まで教えてやる。

『グリムノーツ』

◆◆◆バトル終了後:オペラ座・会場◆◆◆

ラプンツェル:終わった…わたしの舞台が…わたしにできること…全部、出し切った…

(クリスティーヌが登場する)

クリスティーヌ:おめでとう、ラプンツェル! 最高の歌唱だったわよ!

『グリムノーツ』

ラプンツェル:クリスティーヌ…ありがとう…ありがとう…なんだかいま、すごく心が熱くてなっていて…

クリスティーヌ:舞台ですべてを出し切ると、そういう気持ちになるのよ。その感覚が忘れられなくて、私たちは舞台に立ち続けるの。

ラプンツェル:…そうか、そうだったんだ。わたしが探していたのは、王子さまなんかじゃなかった…

 あの塔から見えた外の光景…果てしなく広がる外へ飛び出していきたかったんだ…

 わたしはこの歌で外へ飛び立てた…本当に欲しかったものは…とっくにわたしの中にあったのね…

『グリムノーツ』

クリスティーヌ:あら? ラプンツェル、あなたのほうに手を振っているお客さんがいるわ。カラバ侯爵じゃないかしら?

ラプンツェル:…カラバ侯爵?

 …なぜかしら、あの人とは初めて会った気がしない。ずっと前から、知っているような…

クリスティーヌ:行ってきなさいよ。彼、あなたに興味があるみたい。

ラプンツェル:え、ええ…カラバ侯爵、はじめまして…

(ラプンツェルが退場する)

クリスティーヌ:エリック、きょうの私の唄声はどうだったかしら。

 いつかあなたの孤独と哀しみが癒えるときまで、私はここで歌い続ける…だからどうか、見守っていてね、“音楽の天使”さま…

◆◆◆オペラ座2階・通路(夜)◆◆◆

(長靴をはいた猫が登場する)

長靴をはいた猫:やれやれ…これでやっと収まるべきところに収まったか…猫をこんなに働かせやがって。

『グリムノーツ』

 さぁ、ようやくこれで俺も気楽な隠居生活だ。金持ちの侯爵様と美人の奥様に飼われる、夢のセレブ生活、うーん、わくわくするねぇ。

 兄ちゃんたちにもなにかお礼をしとかねーとな。へへ、よく働いてくれたよ、ほんとに。

ファントム(声だけ):連中ならもう出発したぞ。これ以上、この想区の運命に干渉するわけにはいかない、ってな。

長靴をはいた猫:…ファントムか。いきなり話しかけるな、びっくりするだろ。姿を見せたらどうなんだ?

ファントム(声だけ):“オペラ座の怪人”は亡霊のようなもの…簡単に姿をさらしたりはしない…そういうものだ…

長靴をはいた猫:…あー、はいはい、そうですかい。しかし、そうか、兄ちゃんたち行っちまったのか。せめてうちの歌姫の名演技を聴かせたかったが…。

ファントム(声だけ):ふん、ラプンツェルなど…クリスティーヌの足元にも及ばん…獣風情に真の芸術は理解できん。

長靴をはいた猫:おやおや、言ってくれるぜ、ストーカー仮面が。安心しな。もうすぐラプンツェルは引退だ。あとはあんたが好きにやればいい。

ファントム(声だけ):そうか。お前の顔を見ずに済むと思うと、せいせいするな。

長靴をはいた猫:そいつはこっちの台詞だよ。オペラ座の仕事なんざもうこりごりさ。

 …けどな俺は獣風情だが、あんたが用意してくれたあの席、最高だったぜ。それじゃあ達者でな、ファントムさんよ。

『グリムノーツ』

(長靴をはいた猫が退場し、ファントムが登場する)

ファントム:ああ、さらばだ…我が宿敵、長靴をはいた猫よ…

『グリムノーツ』

※画像はゲーム画面をキャプチャーしたものです。
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