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2017年2月28日(火)

『NieR:Automata』のサブクエストはキャラを掘り下げる内容に。開発のPGプランナーチームを直撃!

文:タダツグ

 『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズなどを手がけたヨコオタロウ氏がディレクションを、『ベヨネッタ』シリーズなどを生み出したプラチナゲームズが開発を手がける、スクウェア・エニックスのアクションRPG『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。世界中のファン待望の一作が、ついに発売されました。

『NieR:Automata』

 そこで今回は、プラチナゲームズの開発現場に潜入! プランナーチームのメンバー6人にお時間をいただき、それぞれが手がけた仕事からこだわりのポイント、開発中のおもしろエピソードまでを根掘り葉掘りとお聞きしてきました!

 ちなみに、致命的なネタバレなどは極力除外した内容になっていますので、まだゲームをプレイしていないという方も、安心してお読みいただけます。

『NieR:Automata』
▲左からプラチナゲームズの宮田さん、藤田さん、田浦さん、根岸さん、高田さん、川村さん。

サブクエストにも独自のこだわりが満載! 『NieR:Automata』がしっかりとしたRPGに仕上がった経緯

――今回は、プラチナゲームズのプランナーチームの皆さんにお集まりいただき、お話をお聞かせいただこうと思います。それでは最初に、自己紹介を兼ねまして、どのようなお仕事を担当されたのかを教えてください。

田浦貴久さん(以下、田浦):ゲームデザイナーの田浦です。おもにアクションまわりを担当しています。プレイヤーキャラクターや敵キャラクターがどんな感じで動くのかを中心に、さらりと全体もつまみつつ……というような役どころですかね。

『NieR:Automata』
▲田浦貴久さん。

ヨコオタロウさん(以下、ヨコオ):ちょっと補足なんですけど、田浦さんは本作の企画を固めていた初期段階で、ものすごく政治的に動いてくれました。

 ただ、実際に開発がスタートしてチームとしての動きが固まり“これでうまくまわりそうだな”と感じたのか、いきなり興味を失って“俺がいなくても大丈夫でしょ”感を出してきましたよね。

田浦:興味は失ってないですよ! ただ、任せても大丈夫な人たちが集まったので、これはもう彼らのステップアップのいい機会にしてもらって、僕が出る幕はないんじゃないかなって思った側面はありますけど……。

ヨコオ:それを興味がなくなったというのでは。

根岸功さん(以下、根岸):自然に話に入ってこなくなるんですよね。「あれ、なんか混ざってこなくなったぞ?」って(笑)。

ヨコオ:こっちがビックリするような距離の空け方をするんですよ。

――もしかして、女性と付き合う時もそんな感じなんですか?

田浦:いやいや。女性はもうしっかりと舐めまわすように、後ろから抱きしめるというか。

──うわさの“田浦抱きしめモード”、いわゆるTDMですね?

田浦:いやいやいや(苦笑)。本当のところ、すごくたくさんの作業工程がある中で、さすがに最初から最後まで全部をしっかり見続けるのは負担が大きすぎたので、そのあたりはうまくチーム内で分散して進めていきました。

 いつまでも僕に頼るんじゃなくて、プランナーチームのメンバーそれぞれがちゃんと独立して仕事をできるよう、あえてスパッと線を引いて、陰ながら後輩たちの後押しをさせてもらった形です。

――なるほど。そして、その手綱を引き継いだのが根岸さんである……と?

根岸:引き継いだというか、作業を分担したってところですけど。田浦がおもにアクションを、自分はRPG的な部分を取りまとめていきました。

『NieR:Automata』
▲根岸功さん。

ヨコオ:アクションは田浦さんで、RPGは根岸さん。プランナーチームのメンバーは、ほとんど根岸さんにぶら下がっているんですけど、それはRPGパートが異常にテキストや決めるべき仕様の量が多いからなんです。

 それをみんなで作っていたら、いつの間にか田浦さんが1人でアクション部分を作っちゃったって感じなんですよ。田浦さん、ちょっと普通じゃないんですよね。

田浦:それは褒め言葉と受け取っておきますね。

『NieR:Automata』
▲本作のアクションパートにかんしては、ほぼ田浦さんがデザインされているとのこと。

──では、根岸さんのお仕事はどのような内容になるのでしょう?

根岸:各キャラクターとの会話とか、クエストの企画を固めていくお仕事ですね。内容の具体的な作業については、ここにいるメンバーたちがコツコツ積み上げてくれました。

 最初のころはネタとかもすべて自分で書いていたんですけど、プロジェクトが進むにつれて、誰かがまとめなきゃいけなくなったので、自分は書く側から確認してまとめるポジションにシフトした、という感じですね。

――ありがとうございます。では女性陣にもお話をお聞きしたいと思います。

藤田真理さん(以下、藤田):プランナーチームの藤田です。このプロジェクトには、チームが発足してちょっとしたタイミングで加入しました。

 チーム全体はおもに根岸がまとめてくれているので、私たちは細かい部分……たとえばアイテムであれば、パラメータであったり、それをどうやって手に入れるのかといったフローだったりを実装していきました。そこは根岸さんの手足となり、といった感じです。

『NieR:Automata』
▲藤田真理さん。

田浦:このプランナーチームの頭脳と言っても過言ではないですね。まさにブレーン。彼女には根岸がつけたあるあだ名がありまして。

根岸:我々は藤田のことを、親愛の情をこめて“高知能生命体”って呼んでいます。面倒くさいことを全部やってくれました。

――さながら、おかん的な立場なんですかね。

田浦:姐さんみたいな?(笑) システム的な部分に精通しているというか、プログラム関連の知識にも強いので、頼りになるんですよ。

 プランナーって、けっこう大雑把な感じでプログラマーたちに指示を出したりすることも少なくないんですが、藤田はプログラマーとしっかり会話したうえで、ちゃんとシステムを構築してしてくれました。

 ちょっとSっ気があるというか、彼女の線引きで難易度が上がっているところもあったりします(笑)。ヨルハ部隊のプラグイン・チップの数に影響する、ストレージ容量の調整とか。

藤田:それを決めたのは根岸さんですよ?

根岸:いやいや、最終判断は僕ですけど、チップのコストとかはあなたが決めた部分ですよね?(笑) なかなか厳しいというか……チップは考えなしにつけると破綻する手ごたえになったとは思います。

『NieR:Automata』
▲アンドロイドである2Bたちは、プラグイン・チップをセットすることで性能を変化・向上させることができる。

――じつは、僕も記事制作のために開発中のROMを触らせていただきましたが、チップに関してはもう少しストレージ容量があるとうれしいなとは思いましたね(笑)。

藤田:ゲームバランスとして、お金やアイテムを稼ぐのが大変だなと思ったら、そこは私のせいなのですみません。

ヨコオ:藤田さんは、経済大臣とも言われていましたから。ちなみに、田浦さんは彼女のことが好きですよね?

田浦:そうなんですよ。今、藤田は自分のせいって言いましたけど、そんなことはないです。藤田のところは全部僕のせいです。責めるなら僕を責めてください。

──田浦さん、そこは乗っかってくるんですね……(笑)。じゃあ、続いて宮田さんにお聞きします。宮田さんはこのプロジェクトに加わってどれくらいになるのでしょう?

宮田真帆さん(以下、宮田):プランナーの宮田です。このプロジェクトには、だいたい半年ほど前に加入しました。

『NieR:Automata』
▲宮田真帆さん。

根岸:彼女は開発の終盤に加わってもらったこともあり、外の開発チームとのやりとりやデバックチームとのやりとりの窓口や、細かい資料の制作をお願いしていました。

 ゲームの部分で言えば、アイテムや宝箱の配置とかを担当してくれています。フィールド歩いていて何かうれしいことがあったら、そこはだいたい宮田のおかげといえるのかなと。

――ここに宝箱があるとうれしいだろうな、とか。そういうことをデザインされたのが宮田さんである、と。では、引き続き川村さんと高田さんにも自己紹介からお願いしたいと思います。

川村和秀さん(以下、川村):ゲームデザイナーの川村と申します。ヨコオさんからいただいたテキストベースのシナリオを読んで、ゲーム内に実装する仕事を担当しました。

 たとえば、とある村にこれだけのキャラがいて、こんなことをしている……みたいな下書きをもらったら、プログラマーと相談して“こんな仕様を実装したいので、こんな仕組みを作ることはできますか?”と詳細を詰めていく作業がメインですね。

『NieR:Automata』
▲川村和秀さん。

──詳細はお話しいただけないかもしれませんが、具体的にはどのへんになるんでしょう?

川村:そうですね。パスカル関連のところは僕が……と覚えておいてもらえれば。

──なるほど。では、高田さんはいかがですか?

高田翔平さん(以下、高田):ゲームデザインを担当した高田です。どうぞよろしくお願いします。僕はおもにステージ担当をさせてもらっていて、体験版でもプレイしていただいた廃工場などは自分がデザインさせてもらったものです。

 あと、森林地帯などもそうですね。僕はプラチナゲームズに入社してちょうど2年目なんですけど、初めて入ったのがこのプロジェクトなんですよ。ちょうど立ち上げの時期に入れて、そのころからステージ部分はずっとやらせてもらえた感じです。

『NieR:Automata』
▲高田翔平さん。

――森も廃工場も、嫌~なイベントが起こったりしますよね……。

田浦:彼はそういう鬱になるところを、だいたいニヤニヤしながら組み込んでました。

高田:いや、そんなキャラじゃないですよ!?

――見た目からは、いつもニコニコしているナイスガイなイメージありますけど。

田浦:そこに、ちょっとダークな一面を孕んでいるっていうね。

高田:ないです、孕んでないです(苦笑)。そこはヨコオさんのシナリオどおりに組んだだけですから。

――実際、自分でシナリオを組んでいて「うわー、きっついぞこれは」みたいなことを思ったりしていたんですか?

高田:そうですね……正直、組んでいる最中は“きつい”って感じることはなかったですね。

根岸:そんなことより、ヌケを潰さなきゃっていう使命感のほうが強かっただけかもしれませんけど(苦笑)。まさにオートモードになっているようなものですね、ここは。

田浦:作業中は、あえてシナリオに感情移入しないっていう側面はあるかもしれません。実際に組み上がったものを自分でプレイしてみると“あ、こんなにきついことになっていたんだ”って感じるのは、よくあります。

──うーん、ゲームデザイナーあるあるなんですかね……。

ヨコオ:今回のサブクエストは、最初はプランナーの皆さんにアイデアを出してもらったんですよ。それをベースに僕が構成を修正しつつシナリオにして、それを戻して実装してもらって……って形でやっていたんです。

 その過程で、シナリオの内容を変えることもあったんですが、そういう時は総じてヒドい話になるように心がけました。

──「俺、いいことした~」みたいな空気でとんでもないことをおっしゃる(苦笑)。ちなみにサブクエストってどのくらいの量があるんですか?

根岸:サブクエストは……だいたい70くらいあると思います。コンプリートしようとしたら、かなり大変かもしれませんね。あえて難易度を高めに設定したクエストもたくさんありますので。

 先ほどヨコオさんもおっしゃっていましたが、プランナーとヨコオさんでサブクエストのシナリオをやり取りしていくうちに、ゲーム内に落とし込もうとするとすごく大変な仕様になっていることもありました。

 サブクエストと一口で言っても、よくある行って帰ってくるだけのお使いにはなっていません。たとえば、対象を護衛しながら強敵とバトルするといった趣向が入っているなど、ゲームとして少し変わった味付けになっているんじゃないかと思いますね。

『NieR:Automata』
▲ストーリーに直接は影響しない、いわゆる“サブクエスト”は約70種類も存在!

――プランナーチームの皆さんが、サブクエストのアイデアを出す時って、物語に沿って生み出していくものなんですか? それとも、自身のアイデア重視で作っていくものなのでしょうか?

藤田:みんなそうだと思うんですけど、基本的には物語の細かいところを埋めるというか、自分自身が“ここってどうなっているんだろう”って思ったところを入れていきました。

──おお、それは少し具体的に教えてもらっていいですか?

藤田:たとえば機体生命体って、彼らの中で他の機械生命体に対してどういう気持ちを抱いているのかとか、気になりませんか? そういうところを感じられるサブクエストを作ったりしましたね。

――つまり、メインストーリーでは触れられないような細かい部分を掘り下げていくっていうスタンスですか。

藤田:そうですね。

ヨコオ:ふ~ん、初めて知りました。

──そんなわけないでしょう?(苦笑) では、サブクエストをすべてプレイしないと、物語の細部がわからないってことでしょうか?

田浦:いいえ。メインのストーリーはあくまでメインストーリーの中で完結しています。サブクエストは物語というより、キャラクターを掘り下げるほうがメインですね。

 2Bをはじめとする各キャラにより愛着がわくような形に仕上がっていると思いますよ。中にはサブクエストでしか出会わないけど、かなり特徴的なキャラクターが存在しています。そういうのは、メインストーリーとはまた別のベクトルで楽しめるんじゃないですかね。

『NieR:Automata』

──なるほど、やはりサブクエストも遊ばないとですね。僕はメインストーリーのみを追いかけて、25時間くらいでクリア直前まで進めたのですが、サブクエストとかのやり込み要素を含めると、さらに倍くらいは遊べそうな気がしました。

根岸:サブクエストはプランナーチームの情熱が詰まっていますよ。川村とかがやっていたんですけど、キャラを勝手にふくらませて、モデリングチームと勝手に相談し、ある日突然新しいキャラクターがゲームに実装されていたりするんです。

 今でこそすごい個性があるんですけど、当初はサブクエストのNPCって、あんまりそんなに差異をつけない予定だったんです、それが、開発スタッフがノリに乗ったこともあって、いろいろなネタが盛り込まれ、結果、かなりバラエティに富んだ内容になったと思いますね。

田浦:仲間キャラクターだけじゃないんですよね。敵にも一風変わった感じの奴が出てきたりして。それがいつの間にか追加されていて。

 そういうものをポーンと出されて、こういうの追加したいんで調整してもらえませんか? っていわれるんです。モデルももう完成している状態で見せられるので、こっちとしてもそれならぜひ入れ込もう……ってなりますよね。

川村:あとはハンコを捺してください、みたいな。

――そういうやり方なんですね。

田浦:そうですね。なんか勝手に作って持ってきて入れてしまいます。まぁ、僕もヨコオさんに対してそういうやり方をすることは多いんですけど。了承を得る前にとりあえず入れてみて見せるという。

『NieR:Automata』

――田浦イズムがしっかり継承されているってことでしょうか。となると、最終的なゲームボリュームってどれくらいになるんでしょうか? 先ほども言いましたけど、僕はストーリーだけ追いかけて25時間くらいだったわけですが。

田浦:そうですね。ストーリーだけを駆け足で進めれば25時間くらいで結末に辿り着けるかと思いますが、サブクエストを進めたり、武器を集めて強化したりするとなると……55時間くらいはかなるんじゃないですかね。

ヨコオ:いろいろなことがわかっている田浦さんが55時間ってことですよね? じゃあ、攻略情報を調べたりしながら進めるプレイヤーさんは、もっと地獄のようにかかるんじゃないかと。

──地獄ってなんですか、地獄って(苦笑)。

本作の結末はハッピーエンドなのか? プランナーチームのこだわり

――では、皆さんがこの作品にかかわるにあたって、“ここだけはブレずに作りましたよ”みたいなところってあったと思うんですけど。そういった各々のこだわりについて教えてもらっていいですか。

田浦:とにかく操作して受ける印象を前作の『ニーア』に近づけたいってところがあって。最初、ヨコオさんと2人で話している時にはポッドみたいな存在はいなかったんですけど、やっぱり白の書のような存在がいてこその『ニーア』だろうというところで、後から追加したりしました。

 まったく新しいものを作ろうというわけではなく、ちゃんと前作ファンにも『ニーア』の空気を感じてもらえるものを作るということには配慮しています。

 あとは、難易度EASYの“オートモード”もそうですけど、アクションが苦手な方でも楽しんでもらえるものにしたいというのは最初から最後まで貫いていますね。

『NieR:Automata』

――遊ばせてもらった感じですと、シナリオを早く進めたかったこともあり、最後のほうは“オートモード”に頼りましたね。あれはめちゃくちゃ便利でクセになりました。

田浦:正直、終盤は“ちょっと難しいかもな”と思うところもあったりするかもしれませんが、プラグイン・チップで2Bを強化したり、サブクエストをこなしつつレベルを上げてもらったりすれば、クリアできるバランスに仕上げたつもりです。

――ゲームデザイン的には、田浦さんが思ったところに仕上げていくことができたわけですね。

田浦:いわゆる“ジャスト回避”のタイミングとか、これまで弊社が作ってきたゲームの中ではかなり緩かったりします。かなり適当に押しているだけで敵が倒せたりとかして、それでも気持ちいい動きをするようには作っているつもりです。じつのところ、果たしてそれで楽しんでもらえるのか……みたいな気持ちもあるんですけど。

――もっとシビアにした方がよかったと思っていることですか?

田浦:ええ。ちょっことだけそんな気持ちもありつつ。ちなみに、おかげさまで体験版を遊んでいただいた方からはご好評をいただけたのですが、あれにはいい意味で驚きました。やっぱりここらへんは、ユーザーさんに遊んでもらわないと答えが出ない部分ですね(苦笑)。

『NieR:Automata』
▲決まると気持ちいい“ジャスト回避”。これまでのプラチナゲームズ作品と比較すると、アクションはやや緩めに作られている模様。

――では、根岸さんはいかがですか?

根岸:『ニーア』というコンテンツはファンの方ありきのものだと思うので、まずは前作をプレイした人が喜んでもらえるような、前作の匂いを一部でもかぎとれるような内容を目指しました。

 入っていたらファンの方に喜んでもらえる要素をいろいろと吸い上げ、実装したつもりです。フィールドひとつとっても、いつものプラチナゲームズ作品とは違って、広くてふわっとした敵の配置にしています。

 あとは、やはりサブクエストも含めたRPG的なところを、どれだけうまく作れるかって部分には、ものすごく力を入れました。

――今できあがったものを遊んでいらっしゃるところだと思うんですけど、手ごたえとしてはいかがですか?

根岸:最近、いろいろな調整が施されて、ようやく最後までまともに遊べるようになりまして。『ニーア』とは関係ないスタッフが勝手に、しかも長いこと遊んでいたりするところを見ると、うまくいったのかなと自信につながりつつはあります。

――ユーザーさんの感想も気になるところですね。では、藤田さんと宮田さんも“ここにこだわりました”って部分をお願いします。

藤田:バトルに勝利した時、敵が欲しかったものを落とした喜びをしっかりと感じてもらえる調整にしたつもりです。……が、ドロップ率が厳しいって思われたら申し訳ありません。

 プラグイン・チップを使いこなせば、戦闘はかなり有利になると思うんですけど、それらのチップのドロップに関しても、地域ごとに特色を考えて配置しました。

 たとえば砂漠だったらこういうチップを落とす……といったテーブルを考慮して、何度も調整をかけていますので、ぜひじっくりとプレイしてもらえれば。

『NieR:Automata』

――ザコとの戦いにもちゃんと意味がある……そういうところを目指したってところですかね。

藤田:はい、その通りですね。

田浦:個人的に、かなり神がかった調整をしてくれていると思いました。あれを厳しいっていうやつは、もう僕が全員ビンタしてまわります。

――田浦さんは本当に藤田さんがお気に入りなんですね(笑)。正直、若干ドSなドロップ率だと感じましたけど。

田浦:いや、あれがいいんですよ。これがもし、高田が調整してこうなっていたら「高田、ぶっ飛ばす!」って感じですけどね。

高田:ひどすぎる!(苦笑)

田浦:まぁ、それだけ藤田ががんばってくれたといいますか。

ヨコオ:田浦さんは後ろから「がんばれ」って言っているだけでしたからね。

田浦:むしろ、「いいよ、いいよ」って言っているだけでしたね。

――これは楽しみですね。“チップ、思ったより手に入らねぇ!”って話題になるのか否か。

藤田:敵のレベルが上がると、手に入るチップの能力も上がります。物語の終盤になるとけっこういいチップをポロポロ落としたりするので、最初から盲目的にチップを集めるよりは、詰まったときにちょっと集めてみる……くらいの感覚でいいかもしれません。

田浦:あとは重要なこととして、物語が進んでいくと物価もちょっと変わるんですよ。なので、じつは同じアイテムでも後半で売ったりしたほうが、ちょっと利率がよかったりします。それも含めて、しっかりといろいろなアイテムを収集したりするのは、後半のお楽しみにに取っておいてもいいかもしれません。

――行き詰まるまで、取りあえずそのまま行けばいいんじゃない、と。

田浦:そうですね。前半からすべてを細かくやろうとする必要はないんじゃないかと。

藤田:じつは隠しショップみたいなのがいくつかあって、お金を貯めるとそこでいいことがあるんじゃないかと思います。素材アイテムとかを取り引きすることもできますので、ぜひ探してみてください。

――ありがとうございます。宮田さん的なこだわりはどうですか。

宮田:私がゲーム業界に入って初めての仕事だったので、皆さんにいろいろなことを教えてもらいながら手探りでやってきました。

 『ニーア』って雰囲気がすごく重要なゲームだと思うので、自分的にも宝箱とかを配置いる時に、ここに置くと景観が壊れるから置きたくない……でも、わざわざこんなところまで来たのに、何も手に入らないのも寂しいし……といったジレンマにかられることがありました(苦笑)。

 小さなこだわりかもしれませんが、宝箱を背景のひとつとしてピッタリと違和感なく配置できるよう、ものすごくがんばっているつもりなので、ゲームを遊ぶ際にぜひ注目してもらえるとうれしいです。

『NieR:Automata』

――最初にかかわったのがこの作品っていうのも、なかなかオツなものですね。

宮田:そうですね。じつを言うと、私、ずっとヨコオさんのゲームのファンだったのでうれしいです。

ヨコオ:え、そうなんだ!?

田浦:え、そうなの!?

根岸:今明かされる衝撃の事実!

宮田:じつは、手がけてこられている作品は全部やっています。『ドラッグ オン ドラグーン3』なんて、スクウェア・エニックスe-Storeの限定BOXまで買っちゃいました。

ヨコオ:そうなんだ……。それは本当に申し訳ない。

──なぜ謝るんですかそこで(苦笑)。でも宮田さん、『ニーア オートマタ』にかかわれてよかったですね!

宮田:ものすごく好き過ぎて……でも、だからこそいろいろな情報がプレイ前にわかってしまうことが苦痛で……いっそ、このチームに配属ならなければよかったのに、と思ったこともあります。

ヨコオ:当然ながら、全部ネタバレしちゃいましたからねぇ。

宮田:イチユーザーとして遊ぶことはできなくなってしまいましたけど。もちろん、携わったからにはやれるだけのことを全力でやりました。

ヨコオ:しかし、すごい弾を放ってくるね宮田さんは。根岸さんも驚愕ですよ。

根岸:ビックリしました。

ヨコオ:そんなオーラ、仕事中は一切出してきませんでしたよね。

宮田:わざわざ言うことでもないのかなと。

田浦:いやいや、それは言っても損はないと思うよ?

ヨコオ:本当、プラチナゲームズのプランナーたちはみんなおもしろ弾を持っていますね(笑)。

『NieR:Automata』

――では、川村さんはいかがですか?

川村:今の宮田の話の後に、どんな話題を持ってくればいいのかアレですが……。今回の『ニーア』はバトルとシナリオが密接にかかわっているので、バトル中でもシナリオが流れているシーンがあります。

 カメラワークとか、かなり凝ったものが流れてくるので、それがバトルを阻害しないよう、シナリオの進行にはこだわって作っています。やればやるほどスムーズに物語の中に入って行けるんじゃないかな、と。

──そういう細かい部分にこだわれるかどうかが、ゲームの評価に密接にかかわってくる気がしますね。

川村:あと、村の中での会話とかはいろいろ任せてもらえたので、好き勝手に全力全開で書かせていただきました。ここらへんに注目しつつ楽しんでもらえたらうれしいです。

――では、高田さんにもこだわりのポイントを教えてもらってよろしいですか?

高田:地域ごとの特色については、けっこうこだわったなと思っています。本作はオープンワールドで作り上げられていることもあって、いろいろな地域に行けるんですけど。今回、シナリオがその地域ごとに独特の色を持っているんですよ。

 たとえば、砂漠の敵は仮面をつけていたり、森の敵は中世風の隊列を組んでいたり……ってところですね。そういったシナリオのエッセンスを吸収して、うまいことゲーム内に実装できたのではないかと自負しています。

根岸:あと、高田は動物をもう延々といじっていましたね。彼、動物担当だったんで。イノシシとかハトとか、ああいうところは全部高田です。

高田:イノシシは前作ですごくインパクトがあって好きだったこともある、ちょっと強くしたいなと(笑)。軽い気持ちで殴ったら痛い目にあうぞ、みたいなところは、ちょっとがんばったつもりです。

『NieR:Automata』
▲イノシシやシカといった動物たちにも、プランナーチームのこだわりが詰め込まれている。

ヨコオ:プラチナゲームズのプランナーさんってすごいなと思ったのは、こっちが言った仕様に対して、1.5倍くらいのものを返してくるところなんですよ。

 「なんかすごい増やしてくるな……なんでここをこうしてくるんだろう」って思って誰かに聞いてみたら、「それがプラチナゲームズの流儀だ」みたいなことを説明されたんですよね。

田浦:そういう教えがあったような気がします。

ヨコオ:それで僕が、1.5倍で返ってきたものをいっさいボツにせず戻したりすると、まぁたいへんですよ(笑)。1.5倍の量のままにみんなを苦しめていくわけですからね。特にRPGパートの川村さんや高田さんは、物量的にすごく苦しんでいた気がします。

川村高田:(苦笑)。

ヨコオ:ちなみに、藤田さんだけは能力がちょっと特殊で。僕がスケジュール表を見ていたら、サブクエストの半分以上を藤田さんが受け持っていたんですよね。

根岸:結局のところ、そうでしたね。

田浦:誰かのところで出たバグを彼女が発見したら、彼女がその人を怒りに行く、っていう。あれはおもしろい図式でしたね(笑)。

――いわゆる“プラチナイズム”っていうのが脈々と受け継がれてきていて、結果、今回はそれがすごくいい方向に転んだんじゃないでしょうか。

田浦:そうですね。みんな本当にがんばってくれました。

『NieR:Automata』

――では、最後に田浦さんと根岸さんからファンに向けてのアピールをお願いします。

根岸:体験版をプレイされた方にはご理解いただけると思うのですが、今回、とても爽快で遊びこめるアクションを盛り込んでいます。

 しかもそれだけにとどまらず、本編では広い広いオープンワールドが待っていて、そこで前作の『ニーア』らしさというか、独特のヨコオ節が楽しめるシナリオがしっかりと構築されていて、かつ、エグ気持ちいいRPGの調整も入っております。

 開発スタッフも楽しんでプレイしており、僕としても自信を持って世に送り出せる作品になったと思うので、ぜひご期待いただければうれしいです。

田浦:根岸に完全同意ということで……。

──その投げっぷり……田浦さんがちょっとヨコオさんに似てきた気がします。元々そうだったのかどうかはわかりませんけど(苦笑)。

田浦:いやいや(笑)。ただ、体験版で触ってもらった部分というのは本当にアクションをバッと詰めただけのものでしかありません。実際に本編をプレイしてもらったら、ちゃんとしたシナリオがしっかり展開され、なおかつ前作の雰囲気もしっかり味わえるようになっていると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

根岸:あ、あと僕は、本作の結末はハッピーエンドだと思っています。

――急にぶっこんできましたね。ヨコオさんやプロデューサーの齊藤陽介さんもそうおっしゃっていましたけど……。

根岸:みんな疑っているようですし、なんだか誰も信用してないみたいですから、つい(笑)。ぜひ、結末までしっかりと味わってもらって、そこらへんの感想も教えてもらえればと思います。

──本日はどうもありがとうございました!

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 ディレクター・ヨコオタロウさんによる短篇小説、小説家・映島巡さんによる書き下ろし小説2篇も読める『NieR:Automata』ファン必携の1冊です。

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