2017年5月20日(土)
『仁王』シブサワ・コウからのお願いはもう1つあった!? バランス調整やゲームデザイン、アクションの幅に迫る
コーエーテクモゲームスから、発売中のPS4用ソフト『仁王』。本作を手がけた開発者へのインタビューを掲載する。
『仁王』は何度もやられながら敵の配置やステージ構成を覚えつつ、進んでいく骨太アクションRPG。発売されるや世界中で評判となり、5月2日には有料DLC第1弾“東北の龍”と無料アップデートが実装された。
記事では安田文彦ディレクターに、さまざまな質問にお答えいただいた。開発時のエピソードや発売後の反響、アクションへのこだわりなど、さまざまな話題が飛び出した。
なお、インタビュー後半にはゲーム内のネタバレ的な要素が存在するので、注意してほしい。
プレイヤーに諦めさせない仕組みとは?
――発売されて約3カ月が経過しましたが、発売後の反響はどうでしたか?
非常に高い評価をいただいています。まず海外でいい反応をいただき、国内でも非常に高評価をいただけました。
ゲーム部分については体験版の時に反応をいただいていたので予想通りでしたが、思った以上にオンラインで遊んでいただいています。シングルで40~50時間しっかり遊べるものを作れたと思っていたので、オンラインはあくまでセーフティネットやプラスアルファだと考えていましたが、多くの方が協力プレイをされていて、うれしかったです。
――1作目のタイトルとは思えないほど、丁寧な作りだと感じました。
そう言っていただけると苦労が報われます。皆さまに受け入れていただいた理由としては、体験版を配信したことが関係していると思います。1作目であるうえに、開発としてRPGを作るのは初めてのことで、真摯にお客様の意見を聞き、対応していこうと決めていました。
体験版はできあがったものの序盤を切り出すことが多いのですが、『仁王』では作っている過程でさわってもらい、いただいた意見を検証していくことで品質が向上し、歯ごたえがあるけど過剰なストレスにならない難易度になりました。
――安田さんはこれまでに、どのようなタイトルにたずさわってきたのでしょうか?
テクモに入ってから、ずっと『NINJA GAIDEN』シリーズを作ってきました。海外と作った『YAIBA』を監修しながら、『仁王』のたたき台を作っていました。刀を振るゲームしか作っていませんね(笑)。
――長く眠っていた『仁王』というタイトルを受け持つことになった、開発チームの印象はいかがでしたか?
最初に話が来た時は、まだ私1人のチームでした。そのため、「人数もいないし、(発売日は)また延びるかもな」と思いながら作り始めました(笑)。その時点では“戦国時代に金髪碧眼の侍が活躍する”ことしか決まっていませんでした。
『デモンズソウル』や『ダークソウル』がマーケットで評価されていたこともあり、RPGを作ることになり、開発メンバーが合流してきました。彼らがそういった“死にゲー”をプレイしていたので、これまでになかった和風のタイトルを作ろうと、モチベーション高く挑みました。
――開発中にスクラップアンドビルドはありましたか?
3Dで作り始める前に、私1人で考える時期が長かったうえに、プランニングチームのリーダークラスが入り、企画を練る時間は普段のタイトルよりしっかりとれました。“死にゲー”というジャンルに挑戦すること、Team NINJA(チームニンジャ)として気持ちのいいアクションを楽しめること、RPGとしてのハクスラ(ハックアンドスラッシュ)要素を入れることが決まりました。
実はこれらのゲームの大きな仕様は、以前に私が書いた企画書にもあり、軸はぶれませんでした。
――ハクスラを導入した経緯は?
ゲームデザインの部分で、やられてしまったがもう一回やろうと思ってもらえる仕組みを入れたかったのです。ただやられるだけだと、ストレスにしか感じませんし、時間を無駄に感じることもあります。しかし、アイテムなり装備なり、プレイヤーのノウハウ含め蓄積があることでプラス部分が担保され、投げ出しにくくなります。
また、甲冑は海外でもデザインが人気です。甲冑を揃えるのは楽しいので、ゲームのモチベーションになると思い、ランダム要素を入れて集める楽しみとしました。
――血刀塚のアイコンと武器を見て、「この装備を持っているのでは?」と思い、屍狂い(しぐるい)を呼び出しました。
オンラインでのゆるいつながりは、他のタイトルにもあるアイデアですが、そこで出てきたキャラを倒して武具を入手することはハクスラのサイクルにも関係するので取り入れました。
――本作を作るうえで他の“死にゲー”は参考にされていますか?
大成功を収めているタイトルなので、もちろん意識しています。そのジャンルに我々が挑んで、どのような結果を出せるのか、考えました。
――そのうえで、意識して差別したことがあれば教えてください。
ハクスラの要素とアクションは本作のアイデンティティなので、大事にしました。“構え”もそこから出てきたアイデアです。
開発で意識したのはプレイの“幅”
――先ほどあがりました、武器の“構え”はアクションの幅を感じる部分で爽快でした。
アクション部分では侍の要素を取り入れようと決めていました。また、装備を集める楽しさと、アクションとの間(あいだ)が欲しいと思っていました。
――“間”ですか?
武器や防具はバトルが始まる前に決めると思います。敵の動きを見て、反射でアクションを出すなかで、その中間要素が欲しかったんです。
装備品ほど事前に決めて挑むのではなく、反射ではないうえに、自由に変えられるのが構えです。もちろん、最初はバトル中にこまめに切り替えることは簡単ではないのですが、慣れてくれば状況に応じて変えることができて有利になる要素です。
また、構えには侍らしさを表現する一面もあります。最初は武器の個性で、刀だけの要素と考えていたのですが、切り替えるのはアクション的におもしろいため、すべての武器に搭載しました。
――開発で人気の武器はなんでしょう?
時期によりますが、今は鎖鎌が人気です。武器はその人の特徴が出るので、開発メンバーには槍しか使わない人もいます。個人的には刀が好きですね。
ただ、武器はアクションだけでなく、育成要素にもかかわってきます。1つの武器だけを使ってクリアしてしまうのはもったいないので、いろいろ試していただきたいです。
――いい武器が入ったので、それを使うのか、成長させているパラメータを考えた武器を装備するのか、悩みました。
先ほどの構えにも言えますが、プレイヤーが楽しんで迷えるような、選べる“幅”は意識しました。アクションゲームはあまり成長の幅がないことが多いのですが、プレイヤーの腕や知識でクリアするだけでなく、ミッションやボスに挑む準備の段階から、いろいろと考えられるような作りにしたいなと。
――確かにボスにやられてから、装備やアイテムを見直すことが多かったです。
ボスはハードルであってほしいと思ったので、どんな倒し方をするにしても、プレイヤーが工夫する必要があるデザイン、難易度になっています。
――飛縁魔、海坊主はハードルだと感じたのですが、開発段階から想定していましたか?
飛縁魔は、操作に慣れてきた序盤で登場します。そこまでに習ってきたことを出せないと勝てないようにしています。勝てない時に装備を集めたり、育成したりすると楽になりますし、何度も戦ううちにクセを覚えていくことで倒せるようになるデザインになっているかと。
海坊主は、レベルデザインでかがり火をつけると楽になる要素を入れています。何もせずに入った場合、かがり火がついているものといないものがあるので、そこでプレイヤーに考えてもらうように、視野を広くしてもらうようになっています。
実はあの2体にトロフィーが設定されているのは、プレイヤーの動向を見たかったからです。あまりに低かったら調整も考えたのですが、高い割合でクリアされているようです。
――かがり火をつけると武器に炎をエンチャントできて強化されるのですが、かがり火が消えて小海坊主が出てしまう。アイテム“火まといのお札”を使うと、やられてしまった際にアイテムが減ってジリ貧になっていくという葛藤があり、また悩みましたね。
実は、小海坊主は当初出てこなかったんですよ。ただそうなるとかがり火をつけるだけで終わってしまうので、出現させました。
どこでつけるのか、もしくはつけないのかは先ほども出た“プレイの幅”だと考えています。このように誰かと話をした時に、そういった話題が出るのは、戦いの最中に考えたため印象に残っているからだと思います。ボスを制作する中で、記憶に残ることは大事にしました。
――かがり火にしっかり近づかないとアイコンが出なかったので、気がつかなかった人もいるようですね。
開発する中で、ゲーム中どこまで攻略方法を教えるのかは非常に悩みました。100%教えてしまうと、それをなぞるだけの作業になってしまいます。苦労して考えた結果、達成した時のうれしさが増すので、あまり過度に説明しすぎないようにしました。
――電撃オンラインのゴローも24時間放送の時に、クリアするまで気付かず、倒してからギミックに気付いていました。
SNSや動画配信を介して盛り上がってもらうような展開もゲームの豊かさだと思うので、密かに狙っていた部分でもあります。終わってから「実はこういう使い方ができるんだよ」という。
一方で、海外の方はもちろん、武将に明るくないお客様の場合、戦国武将が出てきてもわからないので、そこは丁寧に説明することを徹底しました。
『仁王』でのカギとなった意見の吸い上げに迫る
――達成感を得る難易度は人によって異なりますが、本作ではどのようにして落とし所を決めているのでしょう?
アクションゲームは難易度を変えることで対応できますが、本作はそうではありません。そのため、1つ目のセーフティネットとして、装備品やプレイヤーのレベルアップで、戦えるようにしました。
2つ目として、オンラインの協力プレイで挑めるように“まれびと招喚”を用意しました。その2つを用意することで、つらいけど投げ出さずにゲームを続けられるように心がけました。
――チェックはどのような体制で行っているのですか?
社内と社外でチューニングを行い、チェックを重ねました。プレイヤーによって得手不得手が異なるので、まったく同じ傾向にはならないのですが、気になるところは社内外ともに似ていました。問題についてはおおむねつぶせたと考えています。
また、チーム内でも別の担当の場所をチェックする、クロスチェックを行いました。同じパートをずっと作っていると慣れてしまい、難度が上がっていくんですね。そこで別の担当がさわることで気づくこともある。「このかがり火の場所はわかりにくいから、移動させよう」といった意見がいくつも挙がり、それを踏まえて調整を重ねました。
――配置場所は簡単に変えられないようなイメージですが、すんなり可能なのでしょうか?
いや、ものすごい反対されますよ(苦笑)。それこそ、ライティングから敵の配置、視線誘導など、さまざまなものを調整することになります。「頑張って作ったのに、なぜ変えるんだ」って。
ただ、ステージデザインやレベルデザインのメンバーと話していて、“この方がしっくりくる”という場合は、最終的に納得してくれます。
――なるほど。
体験版を含めて、意見を吸い上げてよりいいタイトルにする認識がチーム全体にあったので、そういう答えが出た場合は真摯に向き合いました。
――お客様の意見を聞いて調整したもので、一番印象的だったものはなんでしょう?
一番大きかったのは、昨年のゴールデンウィークの時期に実施したα体験版を受けての調整です。死んだり、ダメージを受けたりしたら、武器の耐久度が減るというリアリティベースのシステムをいれていたのですが、何度も死ぬゲームで苦しさに苦しさをかけていたうえに、ハクスラとのバッティングもあり、反応はよくありませんでした。
2016年8月に配信したβ体験版で耐久度をなくしたのですが、ただなくすだけだとおもしろくなかったので、使いこむと性能を引き出せる“愛用度”として、マイナスからプラスの方向にしました。その結果「これならおもしろい」という反応をいただけたのが印象的でした。
それ以降はシステム面で大幅な変更は行わず、細かい不具合や不要なストレスを感じる部分をつぶして、成長やパラメータの調整に時間を割きました。
――修正点の項目をかなり細かく伝えられていますね。
それぞれの体験版の時から、修正の方針は事前にしっかりお伝えすることを決めていました。無料とはいえ、時間を割いて遊んでいただき、ご意見をいただいた以上、調整する項目はちゃん示すべきだと。
発売後も、プレイヤーの方々が確立している戦略にもかかわる可能性もあるので、しっかり情報を出して共有していこうと考えています。
シブサワ・コウからお願いされたことはもう1つあった!?
――アクション、ハクスラに加えて、グラフィックにもこだわって作っていることを感じました。
グラフィッククオリティについては、ステージ担当が尽力してくれました。当社が手がける戦国タイトルは、マルチプラットフォームが多いのですが、本作はPS4オンリーだったので技術的な制約は少なく、こだわって作ることができました。
マップデザインについては、1つの行き方だけではなく、他のルートでも攻略ができるように工夫をしています。『ダークソウル』や『Bloodborne(ブラッドボーン)』がすばらしいので、正直そこにはたどりつけていないのですが、試行錯誤しながらステージ攻略が楽しめるよう、可能な限り精一杯作らせていただきました。
――和テイストで刀を振るゲームということで、『NINJA GAIDEN』でのノウハウの蓄積はゲーム制作に影響したのでしょうか?
『NINJA GAIDEN』にかかわっているメンバーも開発に参加していますので、アクションや絵作りのノウハウのいいところは吸収しつつも、『仁王』ではそのうえで、さらにち密なゲームデザインを目指して開発していったのを覚えています。
――生放送でもネタになっていましたが、佐和山は迷いやすいマップになっていると感じました。
佐和山は後半のステージなので、あまりに簡単にクリアできてしまうと印象に残らないデメリットも考慮し、意図的に難しくした部分でもあります。ただ、ステージの見た目上の変化が少ないことに加えて、アイキャッチとなるものがないこと、地下と地上で構造が複雑なことなど、もう少し調整できる余地が残っていたと感じています。
――佐和山で詰まっている人にアドバイスをいただけますか?
敵が強いと感じている方でしたら、オンライン協力プレイ“まれびと招喚”で手助けを得ながら、乗り越えていただきたいです。
ステージで迷っている方でしたら、地下と地上とを行き来して、覚えながら進む必要がありますが、クリアした時は、その分より一層、高い達成感が感じられると思いますので、ぜひ試行錯誤を繰り返してほしいです。
――ややネタバレになるのですが、信長の描かれ方には驚きました。あちらは当初から想定されていたのですか?
……初めて言いますが、シブサワ・コウからは先ほどあった“戦国時代に金髪碧眼の侍が活躍する”という設定の他に、オーダーがもう1つありました。それは信長のイメージです。
信長には戦国の魔王という、悪役のイメージもあると思います。ただ、当社には『信長の野望』というIPがありますし、これまでに歴史をテーマにしたタイトルを開発し続けてきたということもあります。
そのため、最初にシナリオのプロットを出した時、シブサワ・コウからは「信長を大事に扱ってほしい」とリクエストを受けました。それを踏まえて、信長の設定やセリフはブラッシュアップを重ねています。
――ただの悪役にするのではなく、信長の持つ芯の強さを出したわけですね。その甲斐あってか、シブサワさんもお気に入りのタイトルになっていると聞いています。
本当にお気に入りのタイトルになったようで、楽しんでプレイしているようです。
――シブサワ・コウさんと言えば、序盤に血刀塚があって驚きました。
遊ばれた方の中でも話題になっていましたね。「開発メンバーはシブサワ・コウを倒したいのでは?」と思われている方もいるようですが、まったくそんなことはなく、開発チームの遊びごころです(笑)。
当社は開発中のバージョンを社内で確認するのですが、その時点からすでにこの要素は入れていました。「怒られるかな?」と思っていたのですが、笑って楽しんでいたようで、そのまま実装しました。イベントなどで社外の方に見ていただく際にはプロデューサー・鯉沼の血刀塚を置くこともありました。
――あくまで遊びで深い意味はないんですね。
はい。血刀塚は他にもいろいろなネタが入っています。名前が赤字になっているものはこちらで用意したものなので、いろいろと探してみてください。
――市村正親さんと武井咲さんを起用されたのはどのような経緯からでしょうか?
プロデューサーである鯉沼の意向もあり、早矢仕や私も含めた開発チーム一同、武将たちの魅力をより深く伝えるため、出演をお願いしました。アクションゲームですので、各武将の生き様を事細かに伝えるのは難しいのですが、素晴らしい俳優さんに演じてもらうことで、そういった部分を補完することができると考えています。
さらに、家康が纏うカリスマのオーラ、お勝の可憐さを際立たせて描くことができただけではなく、武将の見た目にも反映することができたので、大きなプラスの要素になったと思っています。
――お勝を含め、女性キャラのビジュアルクオリティが高く、かなりこだわっていると感じました。
コーエーテクモのTeam NINJAのタイトルということで、期待は感じていました。ダークな世界観を持つ和風のゲームですので、過度に女性キャラを登場させる必要はないと考えていましたが、少ないからこそ、登場するキャラクターのビジュアルにはこだわることができました。
――お勝のふとももや、福のふとももに目を奪われましたが、デザインチームに安田さんがオーダーされたのでしょうか?
先ほどのエピソードとも少しかぶりますが、セクシーな女性が登場するという側面のみで評価をいただけるゲーム性ではないと考えていたのですが、ユーザーの90%以上は男性。そのため、そういった一面があってもいいのかなと。
ただ、デザインが上がってきた段階からすでに魅力的に仕上がっていたため、そこから特別なオーダーはしていません。
――ちょっと話が異なるのですが、海坊主に『デッド オア アライブ』の“やわらかエンジン”は使われているのでしょうか?
アハハハ! プルプルさせてはいますが、残念ながら使っていません。
“やわらかエンジン”は名前と見た目とは裏腹に、高度な技術を使っているので、1つの要素のためだけに搭載するものではないです。そのため今回は使っていません。普通の答えですみません(笑)。
――こちらこそ、普通ではない質問で申し訳ありません。
武器種は増やしたい! DLCについて語る
――ダウンロードコンテンツが3回配信されます。当初から長くやるつもりでスケジュールを組んでいたのですか?
家康とウィリアム(三浦按針)の関係を大事に描きたかったので、関ヶ原をクライマックスにしたいと当初から思っていました。ただ、戦国時代ということで、伊達政宗や真田信繁(幸村)も描きたい。そこで、DLCに含めて展開することになりました。
――DLCのタイトル名は当初、“日本一の兵”、“天下泰平”と出ていましたが、途中で変更された理由は?
まず英語から決めて、そこから翻訳したのですが、その際に差異が出てしまいました。とはいえ、内容についてはそのままです。
――“東北の龍”では新たなステージがありましたが、今後もステージは新たに用意されるのでしょうか?
メインミッションについては新規で作ります。ぜひ楽しみにしてください。
――“東北の龍”の反響は?
伊達政宗が登場するストーリーは人気です。あわせて、新たにご用意させていただいた武器の大太刀や守護霊は、全体的にいい評判をいただいています。
――武器種は今後も増えるのでしょうか?
個人的にはもっと入れたいと思っているので、DLCでまだ追加しようと考えています。
――無料アップデートの対戦モード“仕合”は最初から入れようと思っていたのですか? それとも要望が多かったのですか?
半々ですね。長く遊んでいただくには、対戦はあったほうがいいと思っていました。ただ、製品版については、まずはシングルプレイ、協力プレイに注力したため、少し遅くなってしまったのですが、配信いたしました。
“仕合”では防具1つとってみても、普段のミッションの装備とは変わってきます。さらに武器、術も考えることになり、普段とは違う楽しみがあります。すでに遊んでいただいている方もいらっしゃいますが、至らない点があることは把握していますので、アップデートで調整していきます。
――守護霊を2つ付けられるようにした理由をお願いします。
これは私のほうで、当初から決めていました。属性を重ねあわせると、敵が大幅に弱体化する混沌状態になります。“まれびと”を呼んだ時に守護霊を2種類装備していたら、相手の守護霊を見てどちらを使うのか、選ぶことができます。そこで拡張したいと思っていました。
ただ、ゲームのシステムを把握していない段階から2つ持てても混乱してしまうので、ひと通り遊んでいただいてから解放するようにしました。
――ステージや武器、プレイスタイルにもよるのですが、開発でオススメの守護霊はありますか?
全員を見ているわけではないのですが、唐獅子が多いと思います。個人的には、猫又を最近追加したので、使っていただきたいですね。2種類装備できるので、選択の幅は広がっています。
本作は「この守護霊でないとクリアできない!」というようにはしていません。動物をモチーフにしているのが多いので、見た目で選ぶというのでもアリだと思います。
お客様同士が共感するために難易度はそのままに
――このゲームが軌道に乗ったと感じたところは?
β版を出した時に、評判が上向きになったところが手ごたえとしては一番大きかったです。α版の時はバラツキがありましたが、β版では全体的に高い評価をいただきました。
海外ではα版の熱狂的なファンがいらっしゃって、武器の耐久度をなくした際に「あのハードコアな仕様がよかったのに、なぜなくした!」とおしかりを受けることもありました。ただ、お客様からいただいた意見全体と開発内で目指す方向性を擦り合わせて判断しました。
一方で新規IPだったので予約が思ったようには伸びず、営業サイドはヤキモキしていました。発売前に2日間限定の最終体験版が配信され、国内外のレビューがあがってきたくらいから、一気に注目していただけるようになりました。
――最終体験版が配信されたころに、ニュースも伸びたと感じました。
これはあとになってふと思ったことですが、“死にゲー”は評判がないとなかなか手が出しづらいですよね。ゲームを始めた最初で死んだ時に、プレイを続けるモチベーションが落ちても「このゲーム、皆がおもしろいって言っているからもう少し続けてみよう」というのも大事なのかなと。
――プレイしていると、やられた場所までは行けると思いこんでしまう。そうすると落とし穴が待っているんですよね。
今までやっていなかったことを急に試してみたり、派手なプレイを見せようとして余計な色気を出したりするとやられます。油断しないつもりでも、どこか気がゆるんでしまうんですよね(笑)。
欲を出すとやられるというのは、ゲームデザインの根本にはしています。ボスの気力が尽きているので一方的に攻撃していると、逆に自分の気力がきれて痛い目にあう(笑)。
――スキを見て1、2、3って攻撃している最中に「あ! 3はダメだ!!」って(笑)。
そうですね(笑)。2で止めておけば、気力もあるし、残心する余裕もある。でも攻撃に夢中になってしまう人には死んでもらうような調整にしています。侍らしく、クールに、でも熱く戦ってください。
――日本と海外でクリア状況は違うのですか?
進捗の参考になるトロフィー取得率は海外を含めた全体の割合しか見えないので、正確には把握できていません。ただ、遊ばれた方は3割くらいがクリアしています。
――海外のユーザーは妖怪に対してどのように反応しているのでしょう?
実は私も不安だったのですが、「YOKAI」と言って受け入れられています。カワイイのもいれば、強いのもグロテスクなものもいて、スピリチュアルな存在くらいの認識なのかもしれませんね。ぬりかべとかは「なんだ、これは?」と思われているかもしれませんが(笑)。
日本人にとっても妖怪は、化け物でもないし、精霊でもない。さらに言い伝えもあるし、概念が難しいんですよね。海外の方は“mythology”……神話や民話がベースになっていると納得されているのかもしれません。
――ボスなどでやられ続けると、回復アイテムが出やすくなるような印象があったのですが、調整はされているのですか?
そこはあえて調整を行っていないので、単純にリアルラックでアイテムが出ただけです。
2000年代にあった“いいアクションゲーム”は、クリアできたことが勲章になっていたと思うんですね。いまは配信でうまい人のプレイを参考にしたり、SNSで感情を共有できたりします。そういったことを踏まえると、開発側が過度に配慮しすぎない方がいい側面もあると考えています。
――というのは?
敵が弱くなった状態を倒したとしても、同じ状態で倒さないと感情を共有するのが難しいからです。古い考えかもしれませんし、難易度が下がるゲームがあってもいいのですが、今回の『仁王』が目指す高い達成感が得られるというコンセプトとは異なると考えました。
お客様からは「課金してもいいから、強い武器が欲しい」とか「倒され続けたら、弱くしてほしい」といった意見もいただいています。ビジネス的にもそのようなスタイルがあることは知っていますし、個人的に遊ぶ時に利用することもあります(笑)。
ただ、『仁王』をPS4で遊んでいただく人には、しっかりとクリアして、達成感が感じられるものを提供したいと考えました。
続編は前向きに考えたい!
――生放送でも話題にあがったのですが、トメはどれくらいの金額を集めているのでしょうか?
すごい金額を持っていますね! 江戸どころか、日本を簡単に買えるくらいはあるかと。オンラインサーバーで管理しているわけではないので、金額はわからないのですが……家康以上に莫大な富を築いているのは間違いありません。
▲先日のアップデートで、プレイヤーの姿を変更して遊べる“姿写し”にトメが追加された。 |
――24時間でクリアに挑戦した、ゴローのプレイはいかがでしたか?
すみません、全部は見れていないのですが、チョクチョク拝見させていただきました。こちらの生放送の準備中に他のメンバーと見ていたのですが、単純にアクションがうまいですよね。「24時間でクリアできるのでは?」と思ったのですが、探索をじっくりやられたり、道に迷ったりしていたので、「シメシメ」と思いながら見ていました。
――先ほどの攻略の表示ともかぶるのですが、コメントをどこまで拾うのかも難しいところですね。
ギミックや攻略をすべて指示してもらえれば、クリアできるかもしれません。あとは、サブミッションをやっていないのもハードルが上がった理由だったかもしれませんね。急がば回れということもあるので。
ただ、見事クリアされていましたし、視聴者の方も盛り上がっていたようなので、こちらとしてもうれしかったです。
――血刀塚を使って装備を集めるのは正しい遊び方なのでしょうか?
遊んでいるとお目当ての装備が出ないことも多々あります。すべての血刀塚を呼び起こしていると大変ですが、詰まった時に活用してもらうのは、先ほどのセーフティネットの意味もあります。
あと、血刀塚が多いところは危険度を示す信号にもなっています。
――今後、『戦国無双』や『NINJA GAIDEN』、『デッド オア アライブ』とのコラボはありますか?
お客様のご意見やリクエストに沿ってではありますが、『NINJA GAIDEN』や『戦国無双』は検討したいと思っています。『DOA』は人気キャラがいるのはわかっているのですが、あまりにも世界観が違うので難しいかもしれませんね。
――DLCを開発されている最中に聞くのは失礼だと思うのですが、新規IPにもかかわらず『仁王』はかなり高い人気を得たと感じています。続編の開発はあるのでしょうか?
たくさんの方から意見をいただいていますし、会社としても新規IPでここまで受け入れられることもあまりないので、展開していきたいとは思っています。
今は、DLCの第3弾でウィリアムの話は完結させたいと思っています。そのため、次回作があるとしても、別のキャラ、別の時代になるのかなと。
――戦国時代でも武将はまだたくさんいますし、武将という意味では他の時代にもいますしね。
個人的には侍にはこだわりたいと思っています。戦国時代にもまだまだ魅力的な武将は多数いますし、源氏平家や平安時代の陰陽師であれば、源頼光とか……。
ただ、今は本当にDLCの開発中なので、まったく決まっていません!
――2作目があるとしたら、また10年待つことは……ありませんよね?
すでにゲームデザインがあり、試行錯誤した経験があるので、そうならないことはお約束できるかと(笑)。もし2作目を作るならば、より精度があがった、完成度の高いものにしたいと思います。
――まだ購入していない人、楽しんでいる人にそれぞれメッセージをお願いします。
購入されていないお客様は、間違いなく“お死に”になると思いますが(笑)、楽しんでいただけると思います。評判がいい点も含めて、“死にゲー”ということを恐れず、ぜひチャレンジしていただきたいです。
遊ばれているお客様には、まずはありがとうございます。今後も機能拡張や追加、調整を続けていきます。引き続き、DLCの第2弾、3弾を楽しみにしていただければと思います。
(C)2017 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
データ