2017年9月16日(土)

【ディバインゲート零:前日譚】日常編・“ルーニの思い出”~未来のために

文:電撃ゲームアプリ

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』。2017年夏開始予定として期待が高まる新章、『ディバインゲート零』のキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。

 今回お届けするのは、日常編・“ルーニの思い出”。ルーニとメルティがぬいぐるみを持ち寄ってリアンの屋敷で遊ぶハズが、予定を変更して着せ替えごっこに。その最中、ルーニの悲しい過去の記憶が……。

日常編・“ルーニの思い出”

テキスト:team yoree
イラスト:藤真拓哉

 今日はルーニがメルティと共にリアンの屋敷に行き、お気に入りのぬいぐるみで遊ぶ日だ。リアンも大切にしている人形を持っているため、一緒に遊ぶことでルーニは子どもの気持ちに戻ることができ、楽しみにしているひと時だった。

 ルーニが持って行くのは子どもの頃から大切にしているうさぎのぬいぐるみのラビィとルリィ。年季が入っており、ふたつとも少しだけくたびれてきた感がある。一方、リアンの方は洋風でゴシックな作りの人形だ。真行寺家の屋敷に住むことになってから出会った人形で、着せ替えをしては椅子に座らせたり、窓際でアンニュイなポーズを取らせたりと、リアンなりの楽しみ方で遊んでいる。

 ルーニとメルティはリアンの屋敷に着くと、部屋へと通された。

「今日はこの子たちで何する? この前はファンタジー世界で冒険をしたけど」

 ルーニがラビィとルリィを両手で抱えながらリアンたちに尋ねた。前回はメルティを語り部にしてファンタジー世界をイメージし、その世界でラビィたちが冒険をしている風のままごとをして遊んだのだった。

 なので今回もそういった方向で遊ぶのかなとルーニは思っていた。

「それなのですが、ルーニ。この遊びはもうルーニの年齢に即していないと思われます」

「え? どゆこと、メルティ」

「少し幼すぎるかと。いえ、少しではなく、だいぶ」

 リアンも頷き、メルティのあとに続いた。

「そうね。もう少し年齢に合った遊びにしましょう」

「年齢に合った遊びって何? 遊びに年齢も何も関係ないと思うんだけど」

「ちゃんと代案も用意してあります」

「そうなの? なになに?」

「こちらです」

 そう言ってメルティが取り出したのは洋服だった。サイズはルーニの身体に合いそうなもの。

「これって……?」

 ルーニがぽかんとしながらメルティの持っている洋服を見る。

「ルーニ。今日はルーニを着せ替えしましょう」

「え……。えええええっ!?」

「驚くことはないわ。私とメルティは着せ替え友だちよ。普段はメルティを着せ替えて楽しんでいるけれど、ルーニのことも着せ替えしてみたいなって思ったの」

「そんな淡々と言われても……。でも、うん。わかった。やってみるの。何でもやってみるのがルーニの信条だから!」

 ルーニがそう言うと、メルティとリアンは早速ルーニにその衣装を着せはじめた。

「わ……」

 普段とは違う服を着て、鏡の前に立ったルーニが驚いた顔で笑った。

「すごーい。かわいい~。こんなお洋服初めて着たの~」

 ルーニが鏡の前で一回転する。スカートがふわっと翻る。

【ディバインゲート零:前日譚】

「どうですか、ルーニ。たまにはこういった明るい色の洋服もいいでしょう?」

 メルティが尋ねる。

「うん! 他にもあるの? どんどん着せて!」

「わかりました」

 メルティとリアンは次から次へと洋服を取り出し、ルーニに着せていった。

「はーー。お姫さまみたーーい!」

 一層ルーニのテンションが上がったのは、フリフリのレースがたくさん付いたドレスを着たときだった。

「喜んでもらえてよかった。これはいつもメルティのために洋服を選んでいるショップでルーニに合うものを見繕ってみたものなの。そのお店でも人気の、『プリンセスセレクション』シリーズよ」

「リアン、それはコスプレがお好きな方なら誰もが飛びつくシリーズですね? ルーニの年頃の女性が着ているところを見たことがあります。どれもかわいくて素敵なシリーズですね」

「ふふ……。あなたにもまた似合うものを用意しておくわね、メルティ」

「ありがとうございます。また今度着させてください」

 いつもはプライベートな交わりなど誰ともしないメルティだが、リアンとだけは着せ替えを通して仲が良いのだった。着せ替えといっても、着せ替えられるのはメルティなのだが、人形で遊んでいるうちにリアンがメルティのことも着せ替えたくなり、またメルティもコスプレのような遊びが楽しいと感じたことで、ふたりは意気投合したのだった。こちらも定期的に集まっている。

「すごいなー、リアンもメルティも。ルーニ、どの服も気に入ったよ!」

「ふふ。まだまだたくさんあるから好きなものを着てみて」

「じゃあ、こっちにあるのも着てもいい? なんだか今までのより、衣装っぽいというか……」

「ああ、それは、同じお店の『ミュージカルセレクション』ね。有名なミュージカル作品の衣装を真似て作られたシリーズなの」

「えっ、ミュージカル?」

 ルーニは少しだけ身体が強張った。メルティもわずかに表情が曇る。

「ふーん。そっか、ミュージカル。どんなのがあるのかな」

 ルーニは一か所にまとめられている服を見ていった。世界的に有名な作品から、古典、最近上映された新作のものまでいろいろと揃っている。

「すごいね、ルーニでもわかる作品の衣装ばっかりだよ」

「どれか気になるのものがあったら着てみて」

 リアンが、早く着替えたルーニが見てみたい、という感じで促す。

 ルーニは一つ一つ、“衣装”を手に取って見ていた。

「これ……」

 そう言って取り出したのは、襟の部分が白い、子どもサイズの赤いワンピース。

 ルーニがその“衣装”を手に取ったのを見て、メルティがあっと声を漏らした。その隣でリアンは嬉しそうに手を打つ。

「それは、小さな女の子が主人公の作品のものね? きっとルーニにも似合うわ。着てみて」

「うん……」

 ルーニは先ほどまでの楽しげな様子が消え、静かにその“衣装”に着替えた。そんな様子をメルティが心配そうに見ている。

「ルーニ……あの、大丈夫ですか……」

「え?」

 リアンがメルティを振り返る。メルティは心配そうにルーニを見ている。そこでリアンはふたりの様子が変わっていると気づいた。

「どうかしたの、メルティ。大丈夫なのですかって……」

「リアン、その……あの服は、ルーニは……」

「え……?」

「大丈夫だよ、メルティ。心配しないで。だってルーニが着たいから選んだんだよ?」

「そうですが……」

「どうしたの? 何か、私、悪いことをしてしまった?」

 申し訳なさそうにリアンが言った。事情がわからないのに、何かしてしまったのだと察した顔をしている。

「ううん、大丈夫だよリアン。何でもないから」

「本当に……?」

「うん。ルーニね、この作品大好きだから」

 それぞれ不安そうに見てくるメルティとリアンの前で、ルーニは赤いワンピースを着た。

「懐かしいな……。あの日、ルーニもこれを見るはずだった……」

 ルーニはワンピース姿の自分を鏡で見た。自然と鼻歌がこぼれる。主人公の女の子が明日への希望を歌った歌だ。そして、ルーニが幼い時、街でこの歌を鼻歌で歌っていたら、人生で一番悲しいことが訪れた。

「ルーニにはパパとママはいたけどね」

 鼻歌を終えると、ルーニは寂しげに笑って言った。全く事情のわからないリアンでも、『いた』という過去形に瞬時に事情を飲み込む。

「ルーニ……」

 リアンがそっとルーニを抱きしめた。同時に、メルティもルーニを抱きしめる。

「えっ、えっ、なに? ふたりとも」

「ごめんなさい、私、何も知らなかったわ。あなたにも辛いことがあったんだってこと……」

「リアン……。ありがとう。でも平気! だってルーニは一人じゃない。メルティがいて、リアンがいて、みんながいて。みんなと一緒に未来に向かって頑張ってる。だから平気なの!」

 ふたりの手に、そっとルーニが自分の手を重ねる。

「いつかまた会える日が来るから……。その時は、ちゃんと成長した姿を見せないとね……」

「いつまでもお供します」

「私も。一緒にいるわ、ルーニ」

 ふたりにそう言われて、鏡の中のルーニが笑う。ルーニが笑顔で自分を見つめている。笑えない日もあったのに、今では毎日笑うことができている。そんな未来があるなんて、あの時のルーニには全く思えなかった。それが今は希望を持って生きている。それもこれも、全て、未来のために。

「ありがとう、ふたりとも。さてと! 次は何を着る? リアン、メルティ、じゃんじゃん持って来て!」

「わかりました」

「任せて、ルーニ」

 そのあともルーニは二人にたくさんの服を着せてもらった。

 笑顔でルーニが呟く。

「いつか成長したルーニを見てね。パパ、ママ!」

カズシ編・第一章

日常編

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