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2017年10月14日(土)

【ディバインゲート零:前日譚】ルーニ編・4話“すべてはその願いのため”~仮説の実証へ

文:電撃オンライン

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントがサービス中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』の新章『ディバインゲート零』。そのキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。

 今回お届けするのは、ルーニ編・4話“すべてはその願いのため”。魔力界は理力界と同時間軸にある“対の存在”という仮説を導き出したものの、証明できずに悩んでいたルーニ。そこへ一筋の光が……!?

ルーニ編・4話“すべてはその願いのため”

テキスト:team yoree
イラスト:藤真拓哉

 あれから数年の時が流れた。

 まもなく10歳になろうとしているルーニは、この数年の間に様々な理論を発表していた。

 まずは世界中を驚かせた『超越理論』。

 これは、世界の森羅万象である『理力』を全事象において統合させた理論で、様々な分野に応用され、理力界の文明レベルを一気に向上させる画期的なものだった。

 この理論によりエクステの開発はさらに進み、世界中の人々が魔影蝕に対抗する武器を得ることが可能となった。

 また、ルーニは、これらの研究と同時に、『共時世界理論』も発表。

 これは、魔影蝕は理力界と時間軸を共有する平行世界のものだと結論づけた理論で、魔影蝕を起こしている力を『魔力』と名付けたことから、この平行世界を『魔力界』と呼ぶことになった。

 さらに、共時世界理論を発展させ、相克理論まで完成させたルーニは、理力界と魔力界は本来一つの世界であり、双方が同一化しようとする現象が『蝕』、そしてこの『蝕』を魔力界が人工的に起こしているのが『魔影蝕』であると結論づけた。


 そして、時間軸を共有していたため、理力界を構成する存在が魔力界にも存在するという仮説を立てたルーニは、理力界と魔力界には対の存在がいるとし、理力界の人々が魔影蝕に覆われて消失するのは、共時世界である魔力界の対となる存在と融合した結果であり、最終的には世界はどちらか一方に飲みこまれる、という仮説を導き出した。


 ここまでの理論や仮説から、ルーニは、まずは対の存在の証明に取り組むことにした。

 ある晩。研究所の近くにある現在の自宅でルーニはノートにペンを走らせていた。

 ふと手を止めてため息をつく。

「……でも、実際に対の存在を見てみないと、ルーニもこの理論が本当に正しいのかわからない」

「どうしたのですか? ルーニが自信なさげに語るのは珍しいですね」

 夜食用にとお茶と軽食を運んできたメルティが言った。

「だってね、メルティ。理論上は確かに理力界と魔力界は対の世界で、自分の世界ではないもう一方の世界に対の存在がいることは証明できるのよ。でも、対とはいえ別の世界なんだよ? 自分に、別の世界で生まれた対の存在がいるなんて、現実的に考えたら不思議じゃない?」

「まあ、言われてみれば……」

「どうやったら対の存在をこの目で見られるかなあ……。見てみないと、どこまで進めても仮説のままだなあ……」

「どうすれば対の存在は確認できるのですか?」

「それはやっぱり、向こうの世界に行ってみることかな」

「行けるのですか?」

「……その研究はまだできてない」

「では、今すぐには難しいということですね」

「うん……」

「ルーニ。焦りは禁物です。急ぎ過ぎず、ゆっくりでもいいので前進すればよいのです」

「うん。ありがとう、メルティ。一つずつ頑張っていくよ」

「ええ」

 ルーニはメルティが用意してくれた夜食をつまむと、今後の課題をノートにまとめてその日は早々に眠りに着いた。


 それからルーニは研究所であらゆる記録を確認して回った。対の存在が実際に存在するのかどうかについて、少しでも何か手がかりを得られないかと。そうしていると不思議な記録が書かれた書類を見つけた。

 それは、魔影蝕の跡地で発見され、財団に保護された少女の記録だった。

 少女の名前はリアン。

「ここからかなり遠い地域で発見された子なのね……」

 記録を確認すると、印象的な一文が目に留まった。

『まるで別の人格かと思うほど印象が異なる』

 これは、リアンという名の少女が、研究所へ保護されてからまもなくの頃に書かれた記録だった。

 記録を要約すると、以下のような内容だった。

『我々の言葉を理解している時と、全く理解できずに身振り手振りのみで会話を済ませようとする時がある』

『感情を全く表に出さない子だと思われていたが、ある時、まるで別人かと思われるほど感情豊かな時があった。別人格のような振る舞い。またこれは、交互に起きている』

『リアンが書いているノートを確認すると、不思議な文字が書きこまれていた。その後、文字は書かなくなり、絵を描くようになった』

そして、

『二重人格かと思われる事象がとても多く感じられる』

 この一文を読んだ時、ルーニの脳裏に明滅する光が現れた。

【ディバインゲート零:前日譚】

 ルーニの心臓が早鐘を打っている。

「このリアンっていう子……もしかして……」

 ただの勘でしかないが、ルーニは強すぎる勘に囚われてしまった。

「対の存在を感じている……?」


 次の瞬間、ルーニは少女が保護されていた研究所に向かって走り出していた。その研究所はマグダネル財団の研究施設の中でも、ルーニのいる場所とそう遠くないところにあった。

 ルーニは研究所に着くと、記録を付けていた研究員、つまりリアンを担当していた研究員との面会を申し込んだ。

「お願いします!シェイル研究員と今すぐ会ってお話がしたいんです!」


 シェイルとはすぐに会うことができた。

 しかし……。

「リアンはすでに出国してしまったんです」

「えっ!」

 シェイルから聞かされた言葉にルーニはショックを受けた。

「どこに行ったんですか?」

「真行寺財閥の養女として引き取られていきました」

「どうして……!」

「理由は詳しくは聞かされていないんです……。海守学院に入学するため、としか」

「海守学院って……。確か、魔影蝕についての研究が盛んなところですよね?」

「ええ。うちの財団ともつながりがある、優秀な施設です」

「そこに連れて行ったということは……彼女には何かあると思ってもよいでしょうか……?」

「何かというのは?」

「私は……彼女は魔力界の対の存在を感じているのではないかと、そう思っています」

 ルーニがそう言うと、シェイルは驚いた顔をして問いかけてきた。

「対の存在?なんですか、それは……」

「理論上でしか証明できていませんが、私たちにはそれぞれ、魔力界に対の存在がいるんです。あなたの記録を見て、リアンはその対の存在を感じていたのではないか、と。そう思ってここに来たんです」

「そうでしたか……」

「あの、記録の中にあった、リアンが毎日書いていたというノートは残っていますか?よければ見せてほしいのですが」

「ノートは、リアンが大切にしていたものなので持っていってしまったのですが、スキャンしたデータなら残っています。少々お待ちください」

 シェイルはルーニにタブレットを渡した。

 画面に一冊のノートが表示されている。

「これが、リアンが毎晩書いていたノートのスキャンデータです」

「拝見します……!」

 ルーニはタブレットを操作し、リアンが書いたというノートを読んでいった。

 読むというより見るに近かったが、ノートにはさまざまな絵がかきこまれていた。

 その中に度々、おかっぱの少女のイラストが出てきた。

 そして、リアンとも思われる少女のイラストもあった。リアンの写真データから、そのイラストはリアンの自画像のように思われた。

「このおかっぱの女の子も、こちらにいたのですか?」

「いえ……。誰なのかは私にもわかりません。リアンの姉妹か何かかと思っていました」

「……それか、彼女の頭の中で創られた人物か……。でも……」

 ルーニにはそのおかっぱの人物がリアンにとっての対の存在なのではないかと思われた。

 一つの身体を共有し、交互に自分のことをノートにしたためたのではないかと。

 さらにデータを見て行くと、ルーニはあるものが目に留まった。そこには不思議な文字がびっしりと書いてあった。

「この文字は……!」

 ルーニは自身のIDでクラウドデータにアクセスする。魔影蝕の跡地で撮影した写真だ。

「あった……!ここにも、このノートに書かれているこの文字らしきものと同じものが書かれてる……!」

 いくつかの写真とノートに書かれてある文字をルーニは何度も見比べた。魔影蝕跡地で撮影された写真の中で見られるものと、ノートに書かれてある文字は一致するものが多かった。

「彼女には魔影蝕の跡地にある文字が書けた、ということ……」

 ルーニは記録を読んでいたとき以上に、リアンに対して強烈な興味が湧いていた。どうして出会えなかったのか。こんなに近くにいたというのに……!そんな後悔がルーニを襲っていた。

「ルーニ研究員。もしかすると、このこともお伝えしておいたほうがいいかもしれません」

「なんですか?」

「リアンの目の色のことなんですが……」

「えっ?」

 そう言ってシェイルが続けた言葉によってルーニは確信に近づいた感覚を覚えた。

 リアンは間違いなく、魔力界にいる対の存在を感じている。いや、感じているどころか、融合している可能性がある。


「ルーニ。どうしたのですか?そんな荷物をまとめて、どこかに旅行でも?」

「違うよ、メルティ。ルーニ、行かなきゃいけないとこができたの」

「え?」

「見つかったんだよ!対の存在をその身で感じているかもしれない人が!」

「えっ」

「まだ記録を見てそう思っただけだから何にも保証はないんだけど。でも、だから、会いに行かなきゃいけないの。じっとなんかしてられないの!」

「わかりました。私もすぐに支度をします。……といっても、いつでもどこにでも出かけられる体制ではいるのですが」

「メルティ。ルーニ、今、すっごく満たされてる」

 やることはまだまだ山積みだ。しかし、ルーニの目は輝いている。

「行こう、メルティ。ネオハネダへ。まずはリアンって子に会わなきゃ……!」


 翌日、ルーニはメルティとともに空港にいた。

「もう。突然、海外に行くなんて決めちゃって、びっくりしたよ」

 フローネが見送りに駆けつけてくれていた。

「ごめんね、フローネ。ずっと家を見てもらってるのに、まだまだ長くなりそう」

「それはいいよ。アトリエにして使わせてもらってる。きっとルーニが帰ってくる頃にはぬいぐるみでいっぱいだよ」

「あはは。楽しみにしてる!」

 フローネがルーニの手をそっと握った。

「気をつけてね、ルーニ」

「うん。フローネも。元気でいてね」

「寂しくなったらいつでも言ってね。また新しいぬいぐるみを送るから」

「ありがとう!大丈夫だよ。ルーニにはラビィとルリィがいるから」

 ルーニが背負っている大きなリュックからはラビィとルリィが顔を出していた。

「フローネ。ルーニね、絶対この研究をあきらめない」

 ルーニがフローネの目を真っすぐ見た。

「パパとママにもう一度会うまで……そのためだったらルーニ、何だって出来るの!」

 ひたすら前に向かう理由はただ一つ。消失した両親を取り戻す。

 それは、ルーニが研究所に来て魔影蝕と向き合った時からの願い。

 ルーニは強い願いを持って空へと飛び立った。

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