『サクラ大戦』未公開プロットの存在も明らかに。広井王子氏が明かした『サクラ大戦』への愛と、田中公平氏との名曲誕生秘話

文:ことめぐ

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 株式会社セガによる往年のIPの新たな魅力を発信するプロジェクト“SEGA UNIVERSE”。


 1日限りのリアルイベント“SEGA UNIVERSE PLAYGROUND”が2026年8月8日(土)に渋谷PARCOにて開催されました。

 本イベント内で実施されたプログラム“広井王子氏が登壇! 『サクラ大戦』30周年記念スペシャルトークショー”の2部のレポートをお届けします。

田中公平さんと何度も壁打ちしてできた名曲たち


 1996年にセガから発売されたアドベンチャーゲーム『サクラ大戦』は、プラットフォームや時代を超えて愛され続けている作品です。太正浪漫あふれる世界観、アニメやコミックなどのメディアミックス企画、そしてゲームの枠を大きく超えた歌謡ショウ(舞台)等を展開。

 今回のトークショーには、『サクラ大戦』原作者の広井王子さんが登壇。司会の内田敦子さんの問いに答える形で、 第2部は「サクラ大戦 ―太正桜に浪漫の嵐―」として、発売後にはゲームの枠を超えて社会現象となり、多くのファンを熱狂させたブームの裏側を紐解いていきました。


▲今回もお客さんに飴のプレゼント!
▲後ろの方にもお客さんがびっしりでした。後方にもしっかり手を振る広井さん。

 『サクラ大戦』といえば、オープニング曲「檄!帝国華撃団」をはじめとした音楽が非常に重要な要素。広井さんは、なぜ歌からゲームを作ろうと思われたのでしょうか。
 
 「企画を立ててキャラクターを作り、世界観をスタッフに説明するのはすごく難しいんですよね。プロデューサーやスポンサーに向けて、何十ページもの企画書に絵を何枚か入れて説明する手法を40年近くやってきました。

 でもある日突然、“いや、歌詞を書いて、それが世界観を表現すればいいじゃん”と思ったんです。」と、広井さん。


 そう思わせてくれたのは作曲家の田中公平さん。

 「田中さんが「お前が作詞をやれ」と言ってくれて。「いやいや、そんなのできないよ」と断ったら、「『サクラ』は広井さんの頭の中にしかないから、それを叩き出せ」と。

 どうやって書けばいいのか悩んで何ヶ月もカラオケに通って、そこであらゆる歌を出して、詩を読んでましたね。ていうか書いてましたね。リズムみたいなものを。例えば“北へ帰る人の群れ”。あれ? 3文字ずつで繋がってるんだ! それでこの人はそれを“6”にしてるんだ、“北へ帰る(きたへかえる)”と。でも“3”なんだって。

 こういう数字を見つけていって。で、偶数にするとポップスになるなとか、奇数にすると、あれ、演歌になるなとか。そういうのをずっと書きながら見つけていったんです。」と、独学で作詞を学習。

 音楽理論を勉強するよりも前に、ご自身で発見されていった理由は「人に教わるのは嫌い。学校も嫌い。教えてくれるな。自分で発見したい。自分で見つける喜びみたいなのがあって。だから人に教えてもらうことは一切ないです。自分でこう失敗しながら見つけていく。」というスタイルだから。


 最初は、歌詞を書いても田中さんから「詩になっていない」と何度も突き返されたそうです。なので当時は「ふざけんな! 作詞家じゃないんだから! お前がやれと言ったんだろう!」と腹を立てて、原稿を叩きつけたこともあったとか。

 しかし、田中さんは壁になり、そのぶつかり合いを何度も受け止めてくれたと、広井さんは語ります。例えば、歌詞の1番と2番の展開方法、結論を先に言って2番で掘り下げるやり方、問題が起こって解決に向かう構造などを教えてもらう中で、広井さんはある瞬間にハッ! と閃いたそうです。

 「俺、やれるかもしれない」

 と思い、一気に書き始めた広井さん。

 そして……「公平さんから「できたね。作詞家だよ」と言われて。家で泣きましたね、本当に。」と、当時を懐かしみながら語ってくださいました。

 このように作詞をこなしていき、『サクラ大戦』だけで450曲くらいを作詞。作詞で物語を作っていくスタイルが自分の中に定着し、他の仕事をしてもすぐに作詞から入るように。曲をつけてもらい、その曲を聴かせながらスタッフに世界観を説明するスタイルになったといいます。

 内田さんに「詩を書かれるとき、すでにゲームの全体像やキャラクターはクリアになっているのでしょうか。」と聞かれると、頭の中にすべて浮かんでおり、キャラクターが浮かばないと作詞はできないと断言。

 広井さんの頭の中には常に絵が見えていて、その絵を追いかけているだけ。パソコンの画面の中に顔を突っ込んで、その中の絵を見ながら書いているようなイメージとのこと。

 『サクラ』を作っている時はずっと彼女たちが頭に浮かんでいて、奥さんとご飯を食べているときでさえ、消えることはないのだそう。

 『サクラ』のキャラクター達は広井さんにとって「全員が自分の恋人みたいな感じ」とも語っていました。


 常に彼女たちに寄り添いながら生きていかなければならず、それはすごく大変で、自分の世界に入り込んでいるから周りの人間には迷惑になっていると感じることも。なので、すごく孤独になる時もあるけれど、それを分かってくれたのが現場のスタッフさん達だったと断言。

 「広井さん、おもしろいじゃないですか!」「『サクラ』は次どうなるの?」「こうしようよ」とスタッフが言ってくれて、私が「うわ、それいいね!」と返すと、「任せてください」と動いてくれる。

 そして、「これが自分の生きている場所。自分の居場所を作るために、自分は企画するしかない。頭の中に映像やキャラクターを作って持ち込むと、そこに居場所ができて、スタッフが集まってきてくれるんです。

 ここが自分の生きている場所なんだよね。自分の居場所を作るために、どうしても自分は企画するしかない。いつもいつも頭の中に映像を作ってキャラクターを作って、それを持ち込むと居場所ができてスタッフが来てくれて。だから友達が全然いないんだよね(笑)。」と、苦笑い。

 感謝の気持ちを込めて現場のスタッフさんへの愛を語る姿に、涙が出そうになりました。

お客様が未来をつないでくれた

 
 歌謡ショウはずっと1公演ごとの契約だったといいます。続くかどうかわからない、まさに一回一回が勝負。ですがたくさんのお客様が詰めかけてくれたおかげで、「じゃあ次もやろう!」と続いていき「お客様が未来をつないでくれたんです。」と、笑顔。


 内田さんに「当時、ゲームファンがリアルの歌謡ショウまで足を運んでくれるという確信はありましたか?」と問われると「ありませんでした」とキッパリ。

 ですが、不安はあっても「『サクラ』ファンなら絶対におもしろがってくれるという変な確信はあった」といいます。

 「本物のエンターテインメントはこういうものだ」と見せようと思い、フルオーケストラを導入。当時はゲームを舞台化することは前代未聞で、ワイヤーを使った宙乗りまでやった公演も。いろんな業界の方や歌舞伎役者さんまで観劇しに来て、「なんだこれ!?」と驚いていたのだそう。

 他にも画期的だったのは、コスプレOK、ワーワー騒いでOK、“舞台観劇は声出し禁止”と言われていた時代に、「いやいや、声を出していこうよ。江戸歌舞伎だって客席からわんわん言ってたはず。そういうの再現しようよ」というスタイル。

 そして、賑やかな客席に煽られ役者もどんどん動いてノッていく“共犯関係”みたいなものが生まれるというのが、広井さんが考える“舞台”だと語りました。


 この他にも、大変印象深いお話を聞かせてくださいました。
 
 トークパート後には、1部に続き質問コーナーが。その中でも特に印象に残った質問と広井さんのコメントをご紹介します。

Q.物作りをするにあたって、絶対に譲れない一本の柱は何でしょうか。

A.(広井さん)常に目の前に“小さな自分”がいるんです。その子(自分自身)が喜ばないものは絶対に作らない。例えば、女の子のスカートをめくって下着を見せるような表現は、その子が喜ばないから僕は絶対にやらない。そこだけはどんなことがあっても。


 最後に「広井さんの頭の中に、『サクラ大戦』の続きはありますか?」と問われ、「ナンバリングタイトルの『6』ですね。当時に書いた『6』のプロットはそのまま残してあります。今の時代に通用するかはわかりませんし、私がやるかどうかもわかりませんが、もしまたそんな時が来たら、その時はきちんと仕事をします!」とコメントし、今日イチの拍手に包まれました!


 トークショーの締めくくりで広井さんは「セガ公式の場に立つのはすごく緊張します。でも、何十年ぶりに立って、セガのスタッフや昔の仲間たちに囲まれて、本当に幸せです。『サクラ』を作ったのは私一人ではなく、スタッフ全員の力です。」と、改めてスタッフさんへ感謝。


 病気で3度の手術を経験し“自分は無敵じゃなかった”と気づいた広井さんは、現在毎日6000歩以上歩くことを日課にし「めちゃくちゃ元気になった!」と笑顔で語り、最後に深々と一礼してからステージを後にし、トークショーは幕を閉じました。

 今でも新たな物作りを夢想し、『サクラ大戦6』についても「もし話が来れば必ずやる」。

 日々アップデートを続ける広井さんのクリエイターの姿に、夢中で聞き入ってしまいました。

 筆者は“ものづくり”をされている方、特に大好きな“ゲーム”を作られている方のお話が大好きなので、終始クリエイティビティあふれるお話を聞け、大満足でした。

 今回現地参加が難しかった方々にも、広井さんの素敵なお話が届いていましたら幸いです。

 これからもクリエイター・広井王子さんのご活躍が楽しみでなりません。

▲8月30日まで開催されていたPOPUP STOREには、広井さんのサインも展示されていました。

「SEGA UNIVERSE PLAYGROUND」開催概要

■会場 :渋谷PARCO 10F PBOX STND(東京都渋谷区宇田川町15-1)
■開催日時:2026年8月8日(土) 13:00~21:00
■入場料 :入場無料(一部コンテンツは有料となります)
■主催 :株式会社セガ
■企画 :株式会社GEKI

「SEGA UNIVERSE POPUP STORE」開催概要

■会場 :渋谷PARCO 6F ポップアップスペース(東京都渋谷区宇田川町15-1)
■開催日時:2026年8月7日(金)~ 8月30日(日) 10:00~21:00

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