【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 14】この馬たちを知るとバクシンオーたちの理解がより捗るぞってお話

柿ヶ瀬
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 柿ヶ瀬です。天皇賞秋は3強による素晴らしいレースでした。コントレイルの勝利を願っていましたが、負けるならエフフォーリアだろうなと思っていました。しかし負けてなお強し、無敗の三冠馬としての姿はしっかり見せてくれました。引退レースとなるジャパンカップ、有終の美を飾ってほしいと個人的には思っています。枠連1点でしっかり馬券は取りました。

【2023年12月20日追記】12月19日に“???”としてサポートカード実装が発表されたウマ娘の名前が、本コラムにて紹介しているロイスアンドロイスだと明らかになりました。
【2023年9月17日追記】本コラムにて紹介しているノースフライトが、ウマ娘として登場すると発表されました。

 今回はちょっと上級編。『ウマ娘』のストーリーには、ウマ娘として名前は出ないけど“存在している”ウマ娘がおり、そのモデルとなったであろう競走馬の話を以前このコラムでお話しました。そこから進んで、別にストーリーで仄めかされたりもしていないけれど、知っておくと捗るぞ、という競走馬の話をしたいと思います。

 そろそろ皆さん、『ウマ娘』をプレイしていて、実際の競走馬ってどんな馬だったんだろう、って思うことも多くなってきたと思うんですよね。過去のレース結果や映像だけでは伝わらない他の競走馬との関係性をぜひ知ってほしいなあ! と思う競走馬がたくさんいるんですよね。今回はその中から筆者の独断と偏見で何頭か紹介させていただきます!

この馬がいたから、サクラバクシンオーは最強スプリンターになったのかもしれない

 サクラバクシンオーは以前もお話しましたが、短距離路線が今のように整備される以前に登場した純正のスプリンターでした。

 その強さは今でも通用したのではないかと思う人も多く、歴代最強スプリンターが誰かという話になると当然名前が上がる一頭であります。『ウマ娘』のゲームにおいて、サクラバクシンオーの最終戦はマイルチャンピオンシップ。最後にスプリントから、マイルの壁を越え、さらなる先へ向かう……というストーリーでした。

 しかし、現実のサクラバクシンオーはマイルの壁を越えられませんでした。立ちふさがったのは、1つ年下の牝馬・ノースフライト。バクシンオーは1400mのスワンSでは彼女に勝ちましたが、マイルチャンピオンシップで2着に敗れ、マイルの壁を破ることができませんでした。当時はその後にスプリンターズステークスが行われており、バクシンオーは5馬身差の圧勝を見せつけ、現役に幕を引いたのです。

 逆に言えば。ノースフライトがいたから、サクラバクシンオーは“最強スプリンター”の名を得られたのかもしれないのです。もしもマイルチャンピオンシップで勝っていたら、短距離からマイルでGI3勝を上げた快速逃げ馬、くらいだったかもしれません。ノースフライトが壁になったことで、短距離でしか勝てなかった事実を背負ったことで、“最強スプリンター”という称号が長く長くクローズアップされたのではないか、そうも思うのです。

 さて、そんなサクラバクシンオーを“最強スプリンター”にしたノースフライト。クラシックシーズン(当時4歳、今で言う3歳)の5月という遅いデビューから、夏にぐぐっと頭角を現し、当時の牝馬3冠最終戦エリザベス女王杯で2着に入ると、そこからはマイルを中心に勝ちまくり。マイル(1700mのレース含む)7戦7勝、特に94年の安田記念ではサクラバクシンオー以外でもスキーパラダイス、サイエダティ、ザイーテンなど海外の強豪を相手に圧勝する強さ、そして強さ以外にも、JRAで初の女性厩務員によるGI制覇という快挙、そしてその厩務員の方が愛称として呼んでいた“フーちゃん”というニックネームも、ノースフライトの魅力となっていました。

 筆者はこのノースフライトを、マチカネタンホイザと同じくらい大好きでした。このコラムで紹介出来てよかったです。密かにウマ娘になってくれないかなあと願う1頭です。もしも登場したら筆者はアグネスデジタルのような声を上げて倒れます。よろしくお願いします。

きっと繋がる未来がある

 前項でノースフライトを紹介しましたが、この世代の牝馬はタレント揃いでした。その中でウマ娘になっている馬がいます。ストーリーイベント“晩秋、囃子響きたる”でフィーチャーされたユキノビジンです。

 ユキノビジンはその言葉遣いからも察せられる通り、東北は岩手競馬の出身です。岩手には盛岡と水沢の2つの競馬場があり、そのうち盛岡には(ユキノビジンがいた頃にはありませんでしたが)地方競馬で唯一芝コースがあります。そんな岩手でデビューして中央にやってきたユキノビジン、名前や見た目もあいまって、大変人気のある馬でした。重賞を勝つより前にぬいぐるみになっていたことからもその人気はうかがい知れると思います。そもそも現役8戦、重賞1勝の馬がぬいぐるみになることはあまりないでしょう。

 そんなユキノビジンで知ってもらいたい競走馬――それは桜花賞、そしてオークスで、ユキノビジンを2着に下しGI制覇を阻んだ二冠馬・ベガです。名前でピンと来た人も多いでしょう。そうです、『ウマ娘』に登場するアドマイヤベガのお母さんなのです。顔の流星にまだらな斑点があり、それが星のように見えたところからベガと名付けられたと言います。

 ベガには脚が曲がっているというあまり良くない特徴がありました。なので走らない、あるいは走れないのではとも言われていたのです。しかしその前評判を覆すようにベガは走りました。前述の通り春のクラシックで二冠、三冠最後のエリザベス女王杯では「ベガはベガでもホクトベガ」という名実況が残っている通り、同じベガの名を持つホクトベガの3着に敗れます(前述の通り2着はノースフライトでした)。

 その後はやはり脚が曲がっていたことが影響したのか、故障がちで結果を出せぬまま引退しましたが、繁殖牝馬としてアドマイヤベガの他にも朝日杯フューチュリティーSやフェブラリーS、JBCクラシック3連覇の名馬アドマイヤドンなどを排出し、繁殖でも名牝となったのです。

 ユキノビジンもアドマイヤベガもまだ育成ウマ娘としての実装はありません。それどころかアドマイヤベガはサポートカードもまだです。ですが実装された時、仮にこの2人が並ぶことがあったら……その2人の間に皆さんはきっと、ベガを見てしまうことになるでしょう。

“3着”を際立たせたかもしれない馬

 ナイスネイチャと言えば? そう、3着です。有馬記念3年連続3着という記録は永久不滅の珍記録。ワイド馬券が始まった際のJRAポスターに登場したことも有名で、そりゃあウマ娘になっても3着ネタが擦られるのは当然というもの。そんなナイスネイチャを語る上で知ってもらいたい競走馬は、ロイスアンドロイスと言います。

 ロイスアンドロイスはナイスネイチャの2つ下の世代、つまりBNWと同世代の馬でした。ロイスアンドロイスは勝ち上がるまでに8戦を要します。2,2,3,2,2,2,3,1。これが勝つまでの着順です。なんともあと一歩足りない結果です。しかも7戦目の3着は、当時オープン特別だった青葉賞を未勝利で出走してのものでした。

 そんな彼がさらに注目されたのは94年の秋、オープン馬となったロイスアンドロイスは重賞未勝利の身でありながら、秋の王道ローテーションであったオールカマー、天皇賞秋、ジャパンカップにおいて、見事に3戦連続3着を成し遂げます。ナイスネイチャが有馬記念3年連続3着を達成したのは93年のこと。それに続くような珍記録に筆者のような一部の競馬好きは沸いたのです。そしてロイスアンドロイスの記録を見て「ロイスアンドロイスもすげえけど、やっぱナイスネイチャの有馬3年連続3着もすげえわ」と再確認したのです。

 こんな同時期に3着で注目を集める馬が立て続けに出て来るのはおもしろいと、この頃から“ブロンズコレクター”という言葉が某競馬評論家や某競馬漫画を中心に、競馬界で広がったのではないか……と、筆者は記憶しています。

 ロイスアンドロイスは重賞未勝利ながら天皇賞秋やジャパンカップで連続3着したこともあり“最強の3勝馬”などとも言われましたが、こういう“最強の○勝馬”という言われ方もロイスアンドロイスからだったような……これは筆者がそれ以前を知らない可能性もありますので、ご存知の方がおられましたらお教えいただけると幸いです。

 ロイスアンドロイスは残念ながら現役中に病気で亡くなりました。GIを、いや重賞すらも勝ったわけではない、どこにでもいるような馬と言えなくもないのですが、当時を見ていた競馬好きからすると、ナイスネイチャの話をするときに高確率で名前が出てくる馬ではないかと思います。GI制覇みたいな華やかな記録は残らなくても、記憶には残る馬だったのではないか。そして、ナイスネイチャの記録をより際立たせ、ともに盛り上げることになった馬だったのではないかと思います。

 余談ですが、ナイスネイチャと同世代で同じナイスダンサー産駒のナイスナイスナイスという京都記念などを勝った馬がおり、ロイスアンドロイスも合わせてなんとなく連想ゲームのように繋がる3頭だったのは筆者だけでしょうか。

このネタだけでずっとやることもできますが……

 というわけで今回は、ウマ娘のモデルとなった馬を知る上で覚えておくと、更にウマ娘がおもしろくなるかもしれない競走馬の話をしてきました。少し上級編だとは思いますが、そろそろウマ娘から現実の競馬、そして現実のモデル競走馬を調べ出す方も少なからずいらっしゃるはず。そんな皆さんがキャラクターの解像度を上げていくのに役立ってくれたらいいなと思う次第であります。

 ともあれこの手の馬は当然たくさんいるわけで、単純に現実でライバルだった馬ならそれこそ全ウマ娘に存在するわけです。今回はその中でもウマ娘のキャラクターやストーリーに強く影響を与えた、あるいは与えるだろうと筆者が考えた、そして筆者の思い入れの強い馬を紹介することにしました。本音を言えば、ベガやノースフライトだけでなくホクトベガの話をもっともっと話したかったです!

 この手の話は延々と続けることもできるわけですが、それでは書く方も読む方も飽きてしまいますので、いずれまた忘れた頃にできたらなと思います。

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!



【コラム】ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話

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