【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 10】日本だけでウマ娘の夢を終わらせちゃ惜しいよねって話

柿ヶ瀬
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 柿ヶ瀬です。『ウマ娘』3rdイベント楽しかったですね。ライブで歌ってるオリジナルじゃないメンバーの共通点とか歌ってる理由とかを想像したりとか、本来の楽しみじゃないところを考えるのとかもおもしろかったです。正解はないのですがそれがいい。

 さて、競馬というものには夢が詰まっています。もちろんギャンブルですから我々が馬券で狙う一攫千金の夢もあります。それ以外にも関係者たちは勝利の栄誉(もちろん賞金も含みます)の夢をもって競馬に臨んでいるでしょう。最初の1勝、オープン馬、重賞、そしてGI、その中でもダービー……。様々な夢に向かって競走馬は走っています。

 さらには日本を越えて、海外のGIを勝つという栄誉を得る夢を求める人、そして競走馬たちもたくさんいます。

 ウマ娘になった競走馬たちの中にも夢を追った馬が何頭もいます。夢を掴んだ馬もいれば、届かなかった馬もいる。時代が早かった馬もいるし、時代を切り開いた馬もいる。海外で爪痕を残せたからウマ娘になったかもしれない馬もいます。

 今回はそんなお話をしていきたいと思います。

日本初の海外GI勝利馬はみんなの予想の1週間ほど早かった

 今でこそ海外競馬は日本馬出走だけでなく、日本馬が遠征していなくてもメジャーなレースはグリーンチャンネルなどで中継されますが、1998年当時にはグリーンチャンネルは始まったばかりで海外中継はなかったと思います。インターネットでも今のように情報を詳しく受け取れたかというとそうでもなく。少なくとも当時の筆者は新聞か専門誌か、あるいは地上波の競馬中継でタイキシャトルが海外遠征をすると、割と大きめに取り上げられていた記憶がはあります。

 タイキシャトルなら勝つ可能性結構あるんじゃないのかなあ、海外GIを初めて取れるんじゃないかなあと筆者も思っていたのですが……。そんなタイキシャトルが出走するジャック・ル・マロワ賞の1週間前に、海外GI初制覇というニュースが飛び込んできました。

 もちろんそれはタイキシャトルではなく、同い年であるシーキングザパールがフランスのGI、モーリス・ド・ギース賞というレースを勝ったというのです。正直当時の筆者は聞いたこともないレースでした。芝1,300mというJRAのレースには存在しない距離のGIレース。そういえば、シーキングザパールも海外遠征するって話は、確かにあったような……。

 後々知ることによれば、シーキングザパールもジャック・ル・マロワ賞に出る予定でしたが、別のレースも視野に入れていたタイキシャトルが回ってきてしまい、タイキシャトルには勝てないだろうと判断し、勝てそうなGIを森秀行調教師が探してきたとか。

 そして翌週、タイキシャトルは我々の期待通りに勝ってくれました。2週連続の日本調教馬による海外GI制覇は日本競馬界史上に残る大きな出来事でしたが、若干狐につままれた気分になった部分も少しありました。しかしシーキングザパールが最初の海外GI勝利となったのはもちろん事実であり大変な偉業ですし、同じ年に生まれた2頭がほぼ同時に世界へのチャレンジを成功させた――そんな不思議な巡り合わせもおもしろいところです。

 そんなシーキングザパールは日本に帰った後も再びアメリカ遠征をしたと思えばその後アメリカへ移籍するなど、世界へのチャレンジを続けました。そんな姿が、ウマ娘において“世界レベル”を体現したようなキャラクターデザインになっているのは想像に難くないでしょう。

 シーキングザパールが育成ウマ娘として実装されるときには、何かしらタイキシャトルと絡みつつそういう話も出るのではないかと思います。できればジャック・ル・マロワ賞でタイキシャトルと勝負するシーキングザパールが見たいな、と思うんですけどね!

日本競馬最大の夢、凱旋門賞まであと何センチ?

 フランス、パリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞は、世界最高峰のレースの1つとされ、日本からも近年は毎年のように現役トップクラスの競走馬が挑戦する、日本競馬の悲願と言ってよいレースです。『ウマ娘』に登場している競走馬だけに絞っても、シリウスシンボリ、エルコンドルパサー、マンハッタンカフェ、ナカヤマフェスタ、ゴールドシップ、サトノダイヤモンドと、たくさんのチャレンジがありました。

 中でもナカヤマフェスタ、そしてエルコンドルパサーは2着に健闘しています(他にも『ウマ娘』には登場しませんがオルフェーヴルが2年連続で2着に入っています)。ナカヤマフェスタは、現状では最も凱旋門賞に肉薄したと言われる日本馬。エルコンドルパサーは1/2馬身、オルフェーヴルがクビ差の2着でしたが、ナカヤマフェスタはアタマ差での2着でした。その差は約40cmと言われます。

 あとわずか40cm、されど40cm。

 ギャンブル好きなウマ娘のナカヤマフェスタ。凱旋門賞アタマ差の2着というのは確かにレースには敗れたのですが、ギャンブルには勝ったのではないかな……とも思います。その結果が、もしかしたら今のウマ娘となったナカヤマフェスタなのかもしれません。

 エルコンドルパサーは『ウマ娘』にも登場予定のシリウスシンボリ以来、13年ぶりの凱旋門賞遠征となりました。しかしエルコンドルパサーは凱旋門賞が行われる半年前からフランスへ遠征し、途中怪我もありましたがフランスで3戦(2勝、2着1回)し、ヨーロッパの競馬に適応させた上で凱旋門賞に臨みました。そこまでしても結果は2着。本当に壁の高いレースであると思い知らされました。

 ちなみにその時の凱旋門賞に勝ったのがモンジュー。その年のジャパンカップに出走し、同世代のライバルであるスペシャルウィークが日本総大将として打ち破り、エルコンドルパサーのかたきを討つのです。アニメ1期のくだりですね。

 史実でのエルコンドルパサーはクラシック年にジャパンカップを勝利し、古馬(シニア級)になってからは遠征へ行っていしまいます。一方ウマ娘の育成シナリオではシニア級でジャパンカップが目標になるなど、いわば日本時代を引き伸ばす形になり、エンディングでフランス遠征へ旅立つという形になっています。とは言えやはりエルコンドルパサーの凱旋門賞を見た競馬好きたちは、ウマ娘で凱旋門賞を走る、そして勝つエルコンドルパサーを、そしてナカヤマフェスタを、もちろん他にチャレンジしたウマ娘たちも、見たいのではないでしょうか。

アクシデントあり、エピソードありのあのウマ娘の海外遠征

 ウオッカはURAの育成シナリオ中に、海外挑戦の描写が2度あります。しかし現実のウオッカは、なんと4度も遠征計画(実際の遠征は3度)がありました。

 1度目はクラシック年の3歳時。ダービーを勝ち、宝塚記念で敗れたあと、凱旋門賞を目標としたフランス遠征の予定でした。が、URAの育成イベントと同じように、軽い怪我をしてしまい遠征を断念しました。2度目は4歳時。ドバイデューティーフリーを出走するために今度はドバイへ遠征し、4着に敗れます。

 3度目は翌年5歳時。再びドバイデューティーフリーを目指し遠征しますが、前哨戦、本番ともに結果は出せませんでした。4度目はさらにその翌年6歳時。三度ドバイへ向かったウオッカは前哨戦を敗れたあと、鼻出血を発症し、目標であったドバイワールドカップに出走することなく、引退します。

 これだけの海外遠征をしながらも、日本で牝馬でダービーを勝つなどGI7勝もしているウオッカ、やはりとんでもなくかっけえ馬だったとご理解いただけると思います。

 さてそんなウオッカのエピソードを……いや、正確にはウオッカのエピソードではありません。これはウオッカ最後の遠征となった2010年のこと。一緒に遠征することになった2歳下の牝馬がいました。前年に桜花賞2着、オークス2着、秋華賞優勝、ジャパンカップでウオッカの3着という堂々の成績を上げたレッドディザイアという馬です。

 このレッドディザイアという馬、ウオッカと一緒にドバイに滞在している間にウオッカにとても懐いてしまったそうです。しかし前述の通りウオッカが鼻出血で帰国してしまいます。するとレッドディザイアはとても寂しがってしまったそうなのです。困った関係者、悩んだ末にとんでもない解決方法を編み出します。

 なんと、ウオッカがいた向かいの馬房の入り口にウオッカの写真ポスターを貼ってあげたのです。まるでウソのような本当の話。実際に効果の程がどうだったのかはわかりませんが、ともあれウオッカがああいうイケメン女子にキャラクターデザインされたのは、さては牝馬なのにダービーに勝ったからというだけじゃないのではないか? と筆者の妄想は止まらなくなるわけです。

 怪我をして取りやめになったり、鼻出血で帰国したりとアクシデントも多かったし、勝つことも出来なかったウオッカですが、レッドディザイアとのエピソードを聞いたら皆さんもウオッカの海外遠征編を見たくなったのではないでしょうか。その時にはレッドディザイアも実装されたりしないかな~! どうですかね~! アニメからでもいいですよ!

というわけでやっぱり

 海外編シナリオ、見たいんですよね! 実装済みの育成ウマ娘は仕方ありませんが、シーキングザパールやナカヤマフェスタは海外での活躍があってのこともあるので、海外レースがないのは勿体ない! 海外編シナリオじゃなくてもいいので、海外の競馬場と海外のレースをどうにかURAにでも入れ込んで……! ついでに大井以外の地方競馬場とレースもなにとぞ……!

 先日開発者レターにより、“アオハル杯”の次のシナリオモード実装も示唆されましたし、次は難しくてもいずれ何かしら海外レースに出られるようになるとますます楽しくなるんじゃないかなと夢想しています。皆さんも過度に期待しない程度に待ちましょう。

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!



【コラム】ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話

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