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【イース35周年・振り返り企画】“アドル”という存在が刺さってしまった『IX』編

江波戸るく
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最終更新

 日本ファルコムの人気ARPGシリーズ『イース』は今年で35周年! それを記念して、ライター陣が思い出を振り返ります。

 本企画では、ライター陣が選んだタイトル順に掲載を行っていきます。今回は『イースIX -Monstrum NOX-』をお届けします。

※本記事には『IX』の重大なネタバレが含まれます。

振り返り企画・バックナンバー

“アドル”という存在が刺さって抜けなくなってしまいました。(江波戸るく)

 『イースIX -Monstrum NOX-』の発売から今年の9月で3年が経過してしまう、という時間の流れの速さには驚くしかありません。監獄都市バルドゥークで忘れられないあの冒険をしたのが、いつまでも新鮮な思い出として自分の中に残っているからでしょうか。


 怪人が持つ“異能”を駆使した、縦方向にも広がりがあるアクションでバルドゥークという広大な都市を駆け回るのが楽しく、クリアしても時々戻ってきて遊んでしまうくらいには『IX』が推しタイトルの中に食い込んでいます。

  • ▲探索できるのは都市の中だけと思いきや、中盤あたりである程度は外へ出られるように。BGMも相まって開放感がありました。

 バルドゥークを蝕むラルヴァたちと戦う“グリムワルドの夜”は『VIII』の迎撃戦を思い出しましたが、総力戦なのでパーティに参加していない仲間も戦ってくれるのが嬉しいポイントでした。

 本作が記憶に強く残ったのは、そういったシステム面が自分の中でカッチリはまったのもあるのですが、物語が“ツボ”を的確に刺激してきたのは確実にある、と言えます。

 “もう1人の自分”や“アイデンティティ”というものが物語に強めの要素として組み込まれている作品に弱いのですが、この見せ方はずるいなあ、と。終盤あたりまでプレイヤーが見て動かしていた“アドル=赤の王”はホムンクルスではありましたが、そこに本物も偽物もなく、彼もまた“アドル”であることに間違いはありませんでした。

 ホムンクルス故に、身体に限界が訪れてしまった《赤の王》。まだ冒険は続いている、僕を連れていってほしい――という彼の声に応えて手を伸ばしたアドルのシーンは、自分の中で屈指の名シーンとなりました。





 《赤の王》と魂を融合させたあと、サラディとの会話で「今ここにいる自分とその意思こそが全てで、そこには本物も偽物もない――今ここにいる自分ももう一人の自分も紛れもない真実だ」と言う場面も印象的です。心にキャラクターが刺さるというのはこういう瞬間なのではないか、とさえ思ってしまいました。

 アドルは行く先々で何かと事件や大きな使命・宿命に巻き込まれ、ある意味特異点のような存在になりつつありますが、根っこには冒険が好きな心があります。24歳でもキラキラと目を輝かせるその純粋さを、いつまでも失わずにいてほしいですね。


  • ▲コミカルなところも好きです。

記憶に焼き付いたあのキャラクター

 本作を語るうえで(個人的に)外せないと感じているのが、彼です。

 アドルが監獄で出会った謎の青年、マリウス。記憶喪失、という設定を見た時は真っ先に「このキャラはでかい設定を背負っている気がする……」と思ってしまったのですが、その予感を裏切ることなく、心にグッサリと傷を残していきました。

 彼の正体はロムン皇帝――ではなく、そのホムンクルスという真実。それがパークス(リンドハイム枢機卿)の口から語られ、マリウスが望む“遺品処理”へと繋がるあのクエストは、しばらく引きずりました。いや、今も引きずっていないとは言い難いのですが……。



 アドルが優しいと知っているからこそ、彼が本気になるよう殺意を向けたマリウス。そんなマリウスに剣が刺さった瞬間のアドルの表情。

 「君の冒険の答えを、本当の僕に見せてやってくれ」という願いを託してマリウスが消えてしまったあと、コントローラーを握ったまま、渦巻く感情を数分かけて整理したことを覚えています。

 ということもあり、彼の出番は(作品全体から見ると)決して多くはないと思うのですが、サブキャラクターの中では特に強く印象に残っていますね。ダンデリオンの面々もなかなかに個性的なので、記事を書いていたら会いに行きたくなりました。

 アドルが“皇帝マルクス”に会えるのはいつ頃になるのか。マリウスの言っていた“冒険の答え”が描かれる日を楽しみにしつつ、引き続き、シリーズを応援していきたいと思います。


江波戸るく:永遠に新米のライター兼編集者。業が深いと判断したキャラクターを“海溝”と定めて沈むことに生きがいを見いだす。



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