『青ブタ』シスコンアイドルの苦悩と願い。麻衣とのどか、ワケあり姉妹の絆が感じられる物語を振り返り【第4回】

ハチ
公開日時

 6月23日から公開されている劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』。ここでは小説をベースにしつつ、TVアニメ『青春ブタ野郎』の内容を振り返っていきます。今回はシスコンアイドルこと豊浜のどかの物語をお届けします。

『青ブタ』振り返り記事バックナンバー

麻衣がのどかでのどかが麻衣で……⁉

 小説『青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない』の内容は、TVアニメでは第9~10話で見ることができます。

 夏休みが終わり、2学期がスタート。夏休み中の麻衣は芸能活動が忙しく、所属事務所からも“デート禁止令”が出されていたため、咲太はなかなか彼女に会えなかった様子。そのため、咲太は久々に麻衣に会えるとワクワクしていました……が、学校に麻衣の姿は見当たりません。

 咲太がとぼとぼと家へ帰ると、真向いのマンションから麻衣が出てくるのを発見します! もちろん声をかけますが、麻衣からの返事は「あんた、誰?」というものでした。咲太が自己紹介をすると「こんな目の死んだ男がお姉ちゃんの彼氏なわけあるかっつーの」と一言。

 咲太のこと忘れちゃったの⁉ しかも、お姉ちゃん……って何⁉ と思っていると、「その子は、豊浜のどか」という声が。それは“のどかの見た目をした麻衣”でした。

 実は、のどかは麻衣の母親違いの妹。昨日、母親と喧嘩をして麻衣の家に泊まりに来たところ、見た目が入れ替わってしまったそうです。どうやら、これも思春期症候群みたいですね。

 のどかは第9話が初登場ではなく、すでにちらっと登場していました。それはTVアニメ第8話で、麻衣がアイドルのインタビューをテレビで観ていたシーン。「好きなものは?」と聞かれ「女優の桜島麻衣さんです」と答えていたアイドル、それがのどかだったんです!

 小説では漫画雑誌の巻頭グラビアのプロフィールとして、同じ内容が記載されていました。のどかが“好きなものは桜島麻衣”だ、と嬉しそうに話しているところを観ることができて、なんだか嬉しくなりました。出演しているテレビ番組をチェックしたり、インタビューで名前を出したり……麻衣はのどかを、のどかは麻衣を、いつも気にかけていることがわかりますよね。

 翌日、麻衣とのどかは入れ替わったまま学校へ行くことになります。

 麻衣(見た目はのどか)は電車で横浜の学校へと向かうのですが、別れ際、咲太に「のどかになにがあったか聞いておいて、その原因私かもしれない」と告げます。“国民的知名度の姉を持つこと”と“母親同士のプライド”――麻衣の母親は、麻衣とのどかの父親とのどかの母親へのあてつけで麻衣を劇団へ入れ、それを聞いたのどかの母親も、対抗するように娘を劇団へ所属させています。なにやら複雑な事情がありそうですね。

 学校へ到着すると、のどか(見た目は麻衣)は完璧に麻衣を演じていました。子供の頃、よく麻衣の真似をしていたそうで「私の自慢で……憧れだった」と話します。“だった”ということは、今はそうではないということなのでしょうか。のどかの本当の気持ちを知りたいですね。

 放課後、咲太はのどかにいくつかの疑問を投げかけます。“麻衣さんの前ではなぜお姉ちゃんと呼ばないのか”、“なぜ中途半端に敬語なのか”、“なぜ家出した先が麻衣の家なのか”……それは咲太だけでなく、視聴者である私たちも気になるところでした。

 そして、「麻衣さんになにか言いたいことがあるんじゃないのか? たとえば『お姉ちゃんなんて大嫌い』とかさ」と言うと、のどかは「違う!」と大声を上げますが、きっとその通りなのでしょう。ここで、普通は「お姉ちゃんなんだから、そんなこと言うなよ」とか言いってしまいそうですが、咲太はのどかの気持ちを否定しないナイスな対応をします。

 この、達観しているようで底抜けに優しくて、どうでもいいようにふるまいながらも1番わかってくれている部分……そんな咲太の魅力が物語が進むごとに増していきますね。

 2人が話していると、のどか(体は麻衣)がやってきます。麻衣の家にいるのが気まずくなったのどかは咲太の家へ泊まりたいというのですが、その理由を尋ねると“ずっと、比べられてきたこと”や“麻衣が芸能活動休止後、デビューしてやっとお母さんが褒めてくれたこと”だと語ります。

 そして、のどかは「お姉ちゃんなんて大嫌い」と麻衣に告げます。すると麻衣も「よかった。私ものどかのこと嫌いだったから」と言うのですが、もうこれはお互いに嘘だろうな、と察しがつきます。本当に嫌いだったら、咲太にのどかのことを聞いたり、番組をチェックなんてしないですよね!
 
 しかし、姉妹喧嘩がはじまってしまい、のどか(体は麻衣)は咲太の家へ居候することに。そのあいだ、連絡は取っていなかったものの麻衣はのどかの、のどかは麻衣の仕事を懸命にこなしていました。

“お姉ちゃん”になりたくて……。のどかの本心が零れ落ちる

 そして、スイートバレットのライブの日。もちろん咲太とのどか(見た目は麻衣)も様子を見に行ったのですが、麻衣(見た目はのどか)は完璧にアイドルをこなしていました。ちなみに、のどかの担当カラーは黄色! 元気なイメージののどかにぴったりですよね。TVアニメでも、黄色のサイリウムを振るファンの姿が映っていました。

 ライブの最後には、次の曲のセンターがのどかであることが発表され……たですが、のどか(見た目は麻衣)はどこかうかない表情。のどかのお母さんは涙しながら喜んでいましたが……。その様子を見てのどかは “やっぱり、お姉ちゃんがいいんだ。誰も私のことなんて必要としていない”と感じてしまったようで、のどかは自暴自棄になってしまいます。

 そこで咲太は、“麻衣がのどかのことを嫌いと言ったのは嘘だ”と話し、麻衣の家に大切にしまわれていた手紙を見せます。それは子供の頃、のどかが麻衣に送った手紙でした。手紙を見て涙するのどかに、麻衣は“のどかはお姉ちゃんすごいっていつも手紙をくれて、勇気をもらえていたこと”や“おかげで仕事が好きになったこと”を話し、「妹になってくれて、ありがと」と本当の気持ちを伝えます。

 のどかも「いつもお母さんが怒ってるから、喜んでほしかったんだよ! お姉ちゃんのことばっかり言うから、あたしだって褒めてほしかったんだよ! お母さんに笑ってほしかったの!」とやっと本心を出すことができました。

 そして2人は元に戻り、のどかの“お姉ちゃんになりたい”と願う不安定な精神が引き起こした思春期症候群は終わりを告げました。姉妹がお互いを想いあう気持ちの強さを感じたエピソードでしたね。

 物語の最後には、のどかは麻衣を「お姉ちゃん」と呼ぶことができるようになって敬語も抜けているんです。どこから「お姉ちゃん」と本人に向かって言えるようになったか、ぜひ探してみてくださいね。 

 さて、第10話ではかえでも、小さいけれど彼女にとっては大きな1歩を踏み出していました。なんと学校の制服を着ていたんです!

 この嬉しい変化に咲太も「押入れの臭いがするな」とか「なんか中学生っぽい」とか言いつつ、感動していました。

 かえでと花楓の物語については、小説『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』を振り返る記事で紹介できればと思います。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら