『青ブタ』振り返り。咲太を純粋に想う、翔子と麻衣の優しさとあたたかさに涙腺が…【第6回】

ハチ
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 6月23日から公開されている劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』。本記事ではTVアニメ『青春ブタ野郎』 シリーズの内容を振り返っていきます。

 今回は翔子と麻衣に軸を置いた物語『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』、『青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』をお届けします。

※小説『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』、『青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』は、2019年に 劇場アニメとして公開されました。

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翔子と翔子の謎がついに明らかに⁉

 麻衣が咲太の家でご飯を作っていると、翔子さんが「今晩泊めてもらえないかと思って」と訪ねてきて修羅場に⁉ 麻衣は「どういうこと?」と言い、思わず包丁を持ったまま玄関へ向かいます。彼氏の初恋相手が泊めてくれないかと来たら、怒るのは当たり前ですよね。

 しかしここで、長らく謎に包まれていた“翔子が2人いる”理由が判明します。

 中学生の翔子と大人の翔子さんは、同一人物。思春期症候群によって、ときどき大きくなるそうで、この姿じゃ家に帰れない、と困っているようでした。“できればずっと、咲太の家に居候したい”という翔子さんに、麻衣は「だめです!」と反論。

 翔子さんは「麻衣さんとのお付き合いに満足していれば、ヘンな気なんて起こしませんよね?」と言い、さらに「何かあっても問題ありません。私咲太くんのこと好きですから」と続けます。さらっと好意を伝えられる、ある意味小悪魔な翔子さん……とても可愛いんですが、麻衣のことを思うと気が気ではありません。結局、翔子さんだけでなく麻衣も咲太の家に居候することに! これは波乱の予感が……!

 次の日、咲太が花楓の検査の付き添いで病院へ行くと、そこで中学生の翔子を発見します。翔子さんは咲太の家にいるはずなのに、何故……。同一人物ではありますが“中学生の翔子が大きくなっている”わけではないようですね。翔子は身体が弱く、入退院を繰り返しているとのことです。

 家に帰り、咲太は翔子さんに“翔子”に出会ったことを伝えます。すると、翔子は心臓の病気のため移植手術が必要で、医者から中学校を卒業するのは難しい、と言われていたことを教えてくれました。そして、翔子さんは翔子が“大人になりたい”と願う、小さな私が思い描いた未来の姿なんだと思うと語りました。翔子さんは翔子には会ったことがないそうなので、翔子は自分の思春期症候群を知らないようですね。

 咲太と理央が翔子の病院にお見舞いに行くと、翔子から宿題の相談をされます。その宿題とは、小学生4年生のときに出題されたもので“将来のスケジュール”と書いてあるプリントでした。当時、病気のことで将来のことを考えられず、宿題を残したまま卒業してしまったそうです。プリントを見るとそこには“海の見える高校に入学!”や、“運命の男の子との出会い”などが書かれていましたが、翔子は「私、書いてないんです」と言います。

 理央が“このスケジュールの続きを、今ならどう書く?”と尋ねると、“大学へ行って素敵な恋人と出会って、そのまま結婚できたら最高”と、翔子はニコニコしながら答えました。両親も学生結婚だったそうで、憧れを持っているみたいですね。

 この不思議なできごとから理央は“翔子さんはこの将来のスケジュールを実行するために現れたのではないか”と推測していましたが、目的はまだハッキリしていません。咲太は少しでも自分にできることをしようと、ドナーカードを持つことを決めていました。

 この話を聞いた麻衣は「それで咲太はどうするつもりなの? 翔子さんとの結婚」と、咲太にじとーっとした視線を送ります。“咲太と出会ったときの翔子さんは高校生、そして今回は大学生で、咲太と結婚するために現れたのではないか”と話します。

 あぁもう! 強がってはいますが、きっと麻衣はすごく心配で不安だと思うので、“咲太! 翔子さんと結婚はしないよ、麻衣さんとするから安心してって抱き締めろ!”と心の中で叫んでいました(笑)。

ハツコイの思い出は甘く切ない

 ある日、咲太は翔子さんにデートに誘われます。どこに行くのかとおもったらまさかの結婚式場! 翔子さんは、本当に結婚するために咲太に会いに来たのでしょうか。

 翔子さんはここでウエディングドレスを着るのですが、すごく美しいんです。そして……胸に傷がありました。それを見た咲太は「手術受けられたんだ。翔子さんは未来から来たんですね」と一言。

 そして、翔子さんは咲太に「クリスマスイブの夜、江の島のイルミネーションを観に行ってください」と告げます。麻衣と翔子さん、どちらと過ごすのかを選ばなければならない咲太が答えを言おうとしたとき、翔子さんは「言わなくてもいいです。私は待ってますから。午後6時に弁天橋の入り口にある竜の灯篭の前で。」と笑顔で言いました。ですが、翔子さんは未来をすべて知っているので、どうなるかわかっているはずですよね……。

 その夜、咲太は麻衣にクリスマスイブのデートに誘われます。「江の島のイルミネーションに行かない?」と。咲太は翔子さんのことを考え「水族館のくらげがいいな」と言い、待ち合わせは午後6時に水族館になりました。

咲太の胸の傷と翔子さんの胸の傷の衝撃の事実

 咲太は翔子のお見舞いに毎日通っているのですが、ある日、翔子から「もう来ないでください」と言われてしまいます。

 それを聞いた咲太が「いやだよ。毎日来る」と翔子の頭を撫でると、翔子は「私だって生きたいんです!」と泣きじゃくります。翔子の想いが痛いほど伝わってくる描写です。

 そのとき、容体が急変し翔子は集中治療室へ。そして、咲太の胸の傷からはたくさんの出血が……「心の傷も胸の傷も、私が治してあげるから」と、翔子さんに言われたことを思い出します。病院のベッドで目を覚ました咲太の前には、翔子さんが座っていました。そして 咲太は「翔子さんの胸には僕の心臓があるんですね」と言います。このセリフを最初に読んだとき、背筋がゾクッとしたのを思い出します。咲太がいなくなることへの恐怖をすごく感じました。

 麻衣も病院に到着し、咲太と共にこれから起こることを翔子さんから聞きます。“咲太はクリスマスイブに麻衣とのデートに向かう途中、交通事故に巻き込まれる。”と。最後に翔子さんは「なので、今年のクリスマスは大人しくおうちデートにしてくださいね。」と言って、病院を去っていきました。

 咲太にはもちろん生きていてほしいですが、その交通事故がなければ、翔子は……と思うと、どうしていいかわからなくなりますね。翔子さんは本当に、咲太の“心の傷も胸の傷も私が治す”という約束を果たしに来てくれたようです。その想いに涙が止まりません。

翔子と麻衣……咲太が幸せにしたいのは?

 家までの帰り道、麻衣は「私との未来を選んでほしい」と、自分の精一杯の気持ちを伝えます。麻衣はこれまでいつも冷静で大人でしたが、このときばかりは耐えられず、自分の気持ちを泣きながら咲太にぶつけます。「勝手に諦めないで1人で決めないで! 一緒に翔子ちゃんの命を背負う」「お願いだから、このまま一緒にいて」「仕事なんてどうでもいい」「咲太がいなくなることに比べたらどうでもいい」と。それを聞いた咲太は「ずっと麻衣さんが好きだから」と麻衣を抱きしめます。

 咲太は家に帰ると、翔子さんに「僕は生きたい。麻衣さんとずっと一緒にいたい」と伝えます。翔子さんは「謝るのは私の方だよ。こんなつらい選択をさせてごめんね。咲太くんは悪くない、よく頑張りました。よく言えました。だから麻衣さんを幸せにするんですよ」と言って、抱き締めてくれました。

 自分が死んでしまうことがわかっているのに、こんなに優しくできるなんて。ずっとずっと頑張って病気と闘って、やっと自由になれたと思ったのにその未来を手放そうとするなんて……と、読みながら胸が締め付けられるようでした。

誰も予想していなかったクリスマスイブ

 クリスマスイブの日、咲太は麻衣のいる水族館へ向かいます。そしてそのとき、咲太は気づきました。翔子が最初から咲太は自分のところに来ないとわかっていたから、江の島のイルミネーションを見に行こう、と言っていたことに。

 咲太はこのままでは終われないと、翔子さんのいる弁天橋に走り出しました。すると、雪道で暴走した車が咲太へ向かって突っ込み――麻衣が咲太をかばって車に轢かれてしまいました。え……? 読んでいて、頭がまっ白になりました。こんなことって、と、呆然としたのは私だけではないと思います。麻衣は翔子さんの考えも、咲太がそれに気が付いたときどう行動するのかも全部わかっていたんですね。

 麻衣を目の前で喪った咲太は、ショックで抜け殻のようになっていました。こんな咲太、もう見ていられません……。

 すると、突然翔子さんが現れました。この翔子さんは、咲太の心臓を移植されたのではなく、麻衣の心臓が移植された身とのこと。そこで、翔子さんは“麻衣を救いに過去へ行こう ”と、咲太を学校へ連れていきます。

 そのためにはベッドが必要ということで、保健室へ。翔子は大人の梅ソーダを咲太に飲ませます。咲太は翔子さんに“麻衣さんを幸せにしたい”こと、“翔子さんに生きていてほしい”こと、“でも、なにもしてあげられないこと”を伝えます。翔子さんは「それでいいんですよ」と涙を流しながら優しく言います。もしかしたら、翔子さんと会うのはこれが最後かもしれないですね。

※小説版の翔子と咲太の「だからもう諦めて幸せになってください」「『かわいいお嫁さんを、世界一幸せにしろ』って」という一連のやり取りもとても良いので、未読の方はぜひ。

自分を好きでいてくれる人のために、自分も大切にできるようになった咲太

 翔子さんは、麻衣が事故にあう前の世界にたどり着いたら 「まず、咲太くんを見つけてくれる人を探してください」と助言をしてくれます。そして、大人の梅ソーダの影響で咲太の意識が遠のき……本当に事故が起こる前の時間軸へ!

 しかし、国見も理央も周りの人は咲太を認識できない様子。まるで麻衣の思春期症候群みたいですね。咲太もそう思ったのか、麻衣がバニーガールの衣装を着ていたように、咲太のことが見えている人を見つけやすいウサギの着ぐるみを着て駅へ。

 誰も自分を見つけられないのではないか、と絶望する咲太に「先輩、なにやってるの?」と声をかけてくる人物が。それは、プチデビル後輩こと朋絵 でした! 朋絵の明るさと見つけてくれた安心感、すごくホッとしましたね。

 朋絵の協力を得て、この世界の自分にこれから起こる出来事を伝えますが、 翔子のことを見殺しにするくらいなら自分が事故に遭う、と言って電話を切られてしまいます。

 そこで、咲太はのどかに電話し、麻衣にサプライズ訪問がしたいから手伝ってほしいとお願いします。

 そして、ついに麻衣に会うことに成功! 着ぐるみのウサギでしたが、麻衣は中身が咲太であること、麻衣が事故にあった世界から来たことを見抜きます。麻衣は「よかった。私はちゃんと咲太を守れたんだね」と優しく微笑みました。麻衣は最初から咲太を助けることを決めていて「咲太が思っているより、私は咲太が好きなのよ」と……。純粋かつ優しすぎる想い、どうか救われてほしいです。

 クリスマスイブのデートへ向かおうとする麻衣を咲太は止めるのですが、麻衣は“咲太が翔子さんの未来を奪うだけでなく、私が交通事故に遭うと知ったら、もっと自分を犠牲にしようとする”と叫びます。

 今までは確かにそうでしたね。咲太は自分がいなくなればいいと考えるでしょう。でも、麻衣を泣かせてしまったことや、麻衣を亡くした未来を通じて、咲太は変わりました。

 自分も大切にしなければ、好きな人を幸せにできない。そのことに気が付いた咲太は、自分で自分を救うことを誓います。それが翔子の未来を奪うことだったとしても――咲太は“麻衣を幸せにする”という目的を果たすことを決めていました。

 交通事故の直前、咲太を助けるために飛び出してきたのは麻衣ではなく、ウサギの着ぐるみ。そして、着ぐるみの中身は空っぽになっていました。翔子の未来を奪ったことに、咲太が苦しみ泣きながら帰ると、麻衣が待っていてくれました。優しさが染みる……。

 その後、12月31日。咲太は翔子の母親からの連絡を受けます。「翔子はもう長くない」――泣き崩れる翔子の母親の声が、咲太の胸を締め付けます。

 けれど咲太はまだ、翔子が助かる道を諦めきれずにいました。将来スケジュールのプリントが更新され続けていることから、小学4年生の翔子の思春期症候群がまだ終わっていない、ということに咲太は気づいていたからです。

 だから、過去を変えれば助けられるかもしれない。咲太は麻衣に「牧之原さんを助けたい」ということを打ち明け、集中治療室にいる翔子へ会いに行きます。翔子を救うために過去を変えれば、今までの思い出を失いかねないという賭けでもありましたが、麻衣はそんな咲太の背を優しく押しました。翔子だけでなく、麻衣の持つ強さ、本当に心に残ります。優しさこそが強さだと思わざるをえません。

 集中治療室を訪れた咲太に翔子は、夢を見ていたと語ります。咲太と結婚式場へ行ったことなどを話し、全部わかっていると言いました。そして「もう大丈夫ですよ、私がちゃんとやり直してきますから。私と咲太さんが出会わない未来を作るために。咲太さんが悲しまなくていい未来へたどり着くために。全部私に任せてください」と咲太に伝え、眠ってしまいました。

 麻衣と咲太が翔子の病室で“将来のスケジュール”を見ると、内容が変わっていました。そこには“「ありがとう」「がんばったね」「大好き」を大切にして生きていく。いつかやさしい人になりたいです”と書いてありました。それはかつて咲太が大きな翔子から教えてもらった言葉であり、小さな翔子に教えてあげた好きな言葉でした。

 それを見た咲太は、赤鉛筆を使って“はなまる”を描き、宿題を終わらせます。あたたかい、けれど切なすぎる。咲太たちの心情を想うだけで胸が苦しくなります……。

 年が明け、麻衣と咲太は初詣へ行ってから、七里ヶ浜へ向かいます。

 七里ヶ浜の駅へ到着すると、麻衣は「咲太って海が好きよね。そんなに夢に出てきた高校生がいいんだ」と、ちょっと拗ねたように話しました。夢で出会ったようですが、

 そして、咲太が麻衣に「麻衣さんもこの場所好きですよね」と言うと、麻衣が映画でドナーを待つ心臓病の女の子の役を演じたことがわかります。咲太は募金をしているようですし、麻衣もこの役は絶対にやりたいと思った、と言っていたので、翔子さんの思い出のかけらは確実に2人の中に存在していました。

 そのまま海へ向かうと、聞き覚えのある声が……。するとそこには、楽しそうに走り回る少女の姿が。

 咲太は通りすぎようとしますが、その少女を見ていて、記憶が一気に蘇ります。「牧之原さん!」と咲太が叫ぶと、嬉し涙をいっぱいにした翔子がこれまでで1番輝いた笑顔で「はい! 咲太さん!」と答えます。

 一体どういうことなのだろう、と思ったら、麻衣の映画はとても影響があり、ドナー登録者が増えたそう。なので翔子も、無事に手術を受けられたみたいです……もう、何回泣かせてくるんでしょうか、この劇場アニメは。怒涛の展開と胸を締め付けられるようなシーンで気持ちがぐちゃぐちゃになりますが、視聴した後にすごくやさしい気持ちになれる、そんな作品でした。

 6回に渡ってお送りしてきた『青ブタ』の物語の魅力をおさらい”企画。いかがでしたでしょうか?

 改めて振り返ると楽しい日常もありつつ、誰もが感じたことのある不安や切なさに寄り添ったストーリーとなっていて、人を優しい気持ちにさせてくれる作品だと感じました。こちらの記事を読んだあとは、ぜひ公開中の劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』を観に行ってみてくださいね!。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

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