レビュー:『Pechka(ペチカ)』は死がテーマのアドベンチャー。朝鮮、ロシア、日本の3国に翻弄される青年の運命は?【電撃インディー#468】

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はGrowing Seedsより、iOS/Android版が配信中でPC(Steam)版が7月14日に配信予定のアドベンチャーゲーム『Pechka(ペチカ)』を紹介します。

 電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

悲劇的な歴史に翻弄される青年の運命は?

 『Pechka(ペチカ)』は、ロシアを舞台にした2Dアドベンチャーゲーム。実際に起きた歴史的な出来事を背景にしたストーリーが展開されます。

 時代は20世紀初頭。ピョートルという青年は朝鮮、ロシア、日本の3国が対立しているロシア極東地域で暗い仕事をしていました。

 その仕事というのが、日本に不利益を及ぼしている相手の暗殺や密告などを行い、表舞台から消してしまうことでした。

 ただ、ピョートル自身は、その仕事を辞めたいと思っていました。そのことをピョートルに仕事を命令している二瓶兵二に伝えると、最後の仕事として5人の暗殺を命じられます。

 ピョートルは仕事のたびに暗殺をためらっていて、そのことが原因で毎晩悪夢を見ていました。それくらい、望んで仕事をしているわけではないということです。むしろ、かなり繊細な青年だということがわかりますね。

 では、なぜこのような仕事をしているのかというと、二瓶兵二にはめられたからでした。ピョートルの父親は亡くなっているのですが、二瓶兵二の策略によりピョートルが殺したことにされていて、かくまうかわりに仕事をさせられているというわけです。

 それなら警察などにそのことを伝えればいいと思うかもしれませんが、二瓶兵二はかなりの権力を持っていて、ピョートルのような権力を持たない青年にはどうすることもできません。

 実際に何度も脅している様子をゲーム内で見ることもできます。だからこそ、5人の暗殺を行った後に本当にピョートルを解放するか怪しいですね。

 また、実際の歴史や人物が登場しており、どのような形で物語に関わっているのかも本作の注目ポイントです。

ピョートルの進む先に待つ道は?

 これだけだと、複雑な事情によって日本側についている青年の物語になりそうですが、本作のストーリーを複雑にして奥行きを与えているのがピョートルの生い立ちです。

 ピョートルは朝鮮人の子として生まれ、ロシアで育ち、日本の仕事をしています。つまりこの地域で対立している朝鮮、ロシア、日本の3国と何かしらの関係を持っています。

 こういった経緯もあり、ピョートル自身は3国のどれも祖国だと思っていません、本作に登場するキャラクターはどの国の人も祖国のために行動している人ばかりで、ピョートルとうまくいかない人が大半。

 自由になるために仕事をしていたピョートルは、ときにさまざまな選択を迫られます。その結果によって物語が変わるので、ピョートルが3国の人とどのような関係を築いていくのか気になります。

 ピョートルが置かれた状況や関連するキャラクターが何を考えているのかを判断材料として、選択を決断していきましょう。

 ストーリーを進めるためには、画面の左上に表示される場所やキャラクターに表示される赤い“!”をたどることで進んでいきます。ストーリーだけでも話している人物やそのときの状況などを十分に把握することができますが、灰色の“!”では、その場所やキャラクターのさらなる情報を得ることができます。

 ストーリーを進めるためには必要ないですが、ストーリーを深く知るためにはできるだけ探しておきたいです。なお、これらの情報はいつでも見返すことができます。

  • ▲名前の横に“MazM”という文様が付いているキャラクターは架空の人物であることを示します。

 本作は、ピョートルという架空のキャラクターを通して、実際の歴史や実在した人物がどのようなことを思って行動していたのかを垣間見ることができます。

 当時の過酷な現実やピョートルの仕事もあって、人の生死が何度も描かれます。きれいごとだけでは済まされない3国の行動をピョートルの行動から感じられるというわけです。

 死というものを通して、歴史とともに20世紀初頭を生きていた人たちのことをうかがい知ることができるのが、本作のおもしろいところですね。


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