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『青ブタ』かえでの精一杯で純粋な想いに涙。“青春ブタ野郎”と大切な妹の物語を辿る【第5回】

ハチ
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 6月23日から公開されている劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』。ここでは小説をベースにしつつ、TVアニメ『青春ブタ野郎』の内容を振り返っていきます。

 今回は劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』でも中心となっている少女、“花楓”と“かえで”――咲太の妹である彼女たちを中心とした物語『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』をおさらいします。

『青ブタ』振り返り記事バックナンバー

咲太に翔子さんからの手紙が届いて……なんだか波乱の予感⁉

 ある日、咲太の家のポストに翔子さんからの手紙が入っていました。内容は“明日、七里ヶ浜の海で会えないかな”というもの。中学生の翔子は自分のことを“さん”付けで呼ぶ ので、差出人はきっと、咲太が中学3年生のときに出会った年上の翔子ですね。

 どう麻衣に伝えるべきか悩んだ咲太は、翌日学校で双葉に相談! その話を聞いた双葉は「桜島先輩に相談すればよかったんじゃないの?」と、麻衣にすぐさまメールをします。そのメールを見て咲太のもとへやってきた麻衣は「私としては、咲太に変な未練を残したままでいてほしくないのよ。」と、怒ることもなく大人な対応をしてくれました。

 そんな麻衣の態度に咲太は気持ちが抑えられなくなりグラウンドに向けて「麻衣さん、好きだあああ!」と叫びます。第1巻で咲太が全校生徒の前で愛を叫んだことを思い出します(笑)。こういうところが人を惹きつけるのかもしれませんね。

 6時には帰る、と約束をして、海へ向かおうとする咲太。そこへ花楓の同級生が訪ねてきました。咲太は話を聞いてから行くことになり、一足先に麻衣が海へ。花楓の隣のクラスだったという同級生は「かえちゃんに会うのは無理ですか?」と言いますが、「たぶん、戸惑うから」と、咲太はやんわりと断りました。

 花楓の同級生を駅へ送ったあと、咲太は麻衣のいる海へ向かいます。が、翔子さんはまだいないようです。もう日が暮れそうだし、待っていても来るかわからないということで、2人で帰ることになったのですが、そのときに咲太は砂浜にメッセージを残しました。“彼女ができました 咲太より”――それは咲太が充実した日々を送っている“今”を伝えるためのものでした。

 咲太は中学生の翔子に電話で手紙について尋ねましたが、知らない様子。翔子と翔子さんの関係性は、まだまだ謎に包まれていますね。

かえでが少しずつ前へ進んでいく……健気な頑張りに涙

 家に帰るとかえでが“かえでの今年の目標!”と書いたノートを咲太に見せてきました。その目標は“お兄ちゃんと外に出る”や“お兄ちゃんとお散歩する”といったお兄ちゃんに関するものから、“お兄ちゃん以外の人からの電話にも出る”という、人とのコミュニケーションに関することも。

 そして、最後には“学校へ行く”。それは小さな文字でした……けれど、精一杯の言葉であることに違いはありません。そんなかえでの目標を見て、咲太は「外へ出たくなるような目標を増やしたらどうだ?」とアドバイスします。そして、2人はパンダを見に行くことを約束しました。少しずつ外へ出て、たくさんの楽しい思い出を作ろうと頑張るかえでの姿は応援したくなりますよね。頑張れ……!

 ある日、かえではかわいい服を着て「今から外へ出たいです」と咲太に伝えます。かえではドキドキしながら自分で靴を履いて、咲太の背中にピッタリとくっつき目をつむりました。

 そんなかえでを見て、咲太は「怖いなら、今日はこれくらいで勘弁してやってもいいんじゃないか」と声をかけますが、かえでは「い、いやです!」と答えます。そして「かえでは、このままでいるのがこわいんですよ」と続けました。嫌なことから逃げ出すことで生まれる恐怖、目を背けることで膨らんでいく不安――自分が置いて行かれるような、自分だけが止まっているような気持ち、理解できる気がしました。歩けなくても、まわりは常に動き続けていますからね。

 ただ、かえでには、並んで歩いてくれる人がいます。彼女の想いを汲んだ咲太は家のドアを開け、背中にくっついたかえでをエスコートします。そして、ついにかえでは外に出ることができました。兄妹で嬉し泣きするこのシーンはとても印象的です。

 それからは順調で、かえではどんどん外へ出られるように! 麻衣たちと海へピクニックにも行けるようになったかえでは、とても生き生きしていました。

 かえでと花楓、話し方もパジャマのボタンの留め方も、性格もまったく違う……。咲太も最初は戸惑ったものの、翔子さんの言葉を聞いて今のかえでを受け入れることができました。花楓、ではなく、ひらがなで名前を書くことを提案してくれたのも咲太だったんです。かえでがお兄ちゃん大好きなのも納得ですよね。

かえでの目標がついに達成……⁉

 しかし、たびたび熱を出していたかえでは、ついに倒れて病院に運ばれてしまいます。それはかえでの記憶が戻る兆候でした。咲太は花楓に戻ってきてほしい反面、かえでのことが心配でした。花楓が帰ってくれば、きっと“かえで”は……。

 かえでと2年過ごしたことを思うと、咲太の心の中は複雑だったのだと思います。ずっと“かえで”を見てきたので、花楓に戻るかも、という展開に、こちらも心配になってしまいました。かえでがずっと、頑張ってきたのを知っているからです。私の知っている彼女は、最初から見てきた“かえで”だけ……かといって、花楓のことを否定するわけではありません。きっと咲太も、こんな気持ちだったのではないでしょうか。

 そして、咲太はかえでに「今、1番、何がしたい?」と聞きます。かえでは「1番は学校に行きたいです」という気持ちを伝えます。咲太はかえでの望みを叶えようと“学校へ行く練習”に付き添ったり、精一杯サポートをしたりしました。

 それでもなかなか学校へ行くことができず、涙を流すかえでを見て、咲太はとっておきの場所へ連れ出すことに! そこは、一緒に行くことを約束した動物園でした。パンダを見て、年間パスポートを買って、何度も来ようと笑い合って……今までに見た、どのかえでよりも楽しそうでした。

 動物園の帰り、咲太は“家への近道だから”という嘘を吐いて、かえでを学校へ連れていきます。電気も消えて、眠っているように静かな学校。誰もいないけれど、それは“学校へ行きたい”という、かえでの願いが叶った瞬間でした。

 「明日はお昼の学校にいけるような気がしてきました」と嬉しそうに笑うかえで……。このシーンを読んだときの私は「よかったね!」と素直に感じ、かえでが明日学校へ行けるのを楽しみにしていました。

かえでとの別れ、花楓との再会

 次の日の朝、咲太がかえでを起こしに行くと「んー」という、いつもと違う声のトーンで目を覚まします。そう、かえでは花楓に戻っていました。いつかこんな日が来るとは思っていましたが、ここで⁉ と、いきなりすぎるかえでとの別れに驚きました。

 花楓はいまどきの中学生といった感じで、お兄ちゃんとの距離感もまさに“妹”。咲太も突然の別れに困惑し、“かえでにもっとしてあげられたことがあったかもしれない”と自分を責めてしまいます。

 すると、咲太の前に翔子さんが現れます。“かえでが咲太に笑顔でいてほしくて、がんばっていた”ということ、“後悔させないように、いっぱい目標を達成していた”ことを伝えます。このシーンではかえでの日記の内容を知ることができるのですが、かえでの純粋な想いがぎゅっと詰まっていて涙が止まりませんでした。少しでも、“かえで”が存在していた証が残っていて良かったです。

 麻衣は咲太を心配して、仕事先の金沢から駆け付け家を訪ねます。が、翔子が家に来ていたことを知り、2人は険悪ムードに。麻衣はすぐに帰ってしまいますが、その日は麻衣の誕生日だったことを知り、咲太は麻衣を追いかけていきました。この上手くいかない感じ、もどかしい……!

 金沢で会うことができた咲太と麻衣は、お互い正直に気持ちを伝え合って仲直りします。咲太のセリフに「いるだけでいつも僕を幸せな気分にしてくれますよ」というものがあるのですが、すごく素敵ですよね! きっとこれが“なんにも無理をしないで愛されている”ということなのでしょう。

 次回は小説第6巻から第7巻、劇場アニメ『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』の翔子と咲太、そして麻衣の物語を振り返ります。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

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