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月イチの幸福!!【O村の漫画野郎#10】

奥村勝彦
公開日時

 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

月イチの幸福!!

 あー。まあ、条件反射なのよ。良いも悪いも関係なし。もし、あの時の話の内容が、〇×氏の担当しろ!! じゃなくて、世界の平和のために戦争を止めてこい!! ってな話でも蹴っ飛ばしてたな、たぶん。

 もうそっから新編集長とは、完全にすれ違ったままだったな。その後の人生を振り返っても、上司にはかなり恵まれたと思うけど、あの時だけは例外中の例外だった。当然、ほぼ命令無視のオンパレード。会社なのに。

 でも、ほとんど問題視されなかったのは、秋田書店という独特の社風と、恐らく周囲の人間たちの俺に対する秘かな支持もあったよーな気もする。そーいうのは言葉で聞かなくても、なんとなく感じるもんなんだ。ドンシンク、フィール!!


 さすがの俺もそんな状況下ではストレスが溜まった。だもんで、恐らく既定路線だったと思うが、しばらくして編集部が3分割されて月刊チャンピオン専属になった時は、嬉しかったねえ。

 新たに編集長になった大西さんとは相性が良かったからなあ。彼は新編集長(壁さんの次の人ね)とは正反対の人で、入社後も仕事だけじゃなく組合活動で頑張っちゃったもんだから、出世街道から外れちゃった人達(結構多い)の1人だった。

 深夜に原稿を取って帰って来て、あーこれから広告の版下(広告の元原稿)作るのかあ、しんどいなあ……と思っていたら、机の上に広告の見事な版下が!? ってな粋な事をやってくれちゃう人なのよ。もー頭が上がんねえわなあ。

 編集部の人数も4人。全員が一通りの仕事をこなせるという前提では、月刊誌としてほぼ適正な数なんだわ。喫茶店のテーブルひとつで編集部の会議が出来ちゃう。

 なんだったらマージャンしながらだって出来ちゃう。素晴らしい!! その上、校了が月イチなんで、落ち着いていろんな事を考えられるし、最高だった。

 他の月刊漫画誌を分析して、自分の雑誌に足りないものは何か? 連載漫画同士の相性、バランスはどうか? まーいろんな角度で考えて実践できるのだ。ああ、雑誌を作るのは面白いなあ、楽しいなあ、と心の底から思えたもん。

 そんで、雑誌の核に3本の硬派漫画をスタートさせようと思って始めたうちの一本が『クローズ』だったりした(俺の担当じゃなかったけどな)。まさか、始めた当初は、ここまで大きなタイトルになるたあ、編集部も、そんで作者の高橋ヒロシ君だって思ってなかったハズだ、恐らく。その辺の話は……待て、次回!!

(次回は8月10日掲載予定です)

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イラスト/桜玉吉

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