漫画版『イド』であの名探偵が競演。アニメファン必見の第2巻レビュー(ネタバレあり)

長雨
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 2020年冬に放送され、現在Blu-ray BOX上・下巻(各18,000円+税)が発売されているあおきえい監督×脚本・舞城王太郎氏のコンビが手掛ける完全オリジナルアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』。

 本作は殺意を感知するシステム“ミズハノメ”が作り出した犯人の深層心理“殺意の世界(井戸)”に、名探偵・酒井戸が潜入して事件の真相を解き明かしていく本格SFミステリー作品です。

 各話に登場するゲームのダンジョンのような奇抜な構造の“井戸”、連続殺人犯でもある特殊すぎる“名探偵”たち、謎多き“殺人鬼メーカー”の存在など、魅力的な世界観やオリジナル作品だからこその先が読めない展開が多くのファンを魅了しました。

 キャラクター原案を担当する小玉有起氏(シナリオ:舞城王太郎)によるコミカライズ『ID:INVADED #BRAKE-BROKEN』がヤングエース(KADOKAWA)にて連載中で、7月3日に待望の第2巻も発売されました。

 本作にどっぷりハマっていまだに抜け出せないライターが、アニメのファンならニヤリとしてしまう展開目白押しだった第2巻の見どころをご紹介します。

 可能な限り事件の真相に触れ合いように注意していますがネタバレが含まれておりますので、「新鮮な気持ちでコミックを楽しみたい」という方は、第2巻まで好評発売中ということだけ覚えていただいて、気が向いたときに記事を読んでいただけると嬉しいです。


名探偵2人が協力して事件に挑む

 コミカライズ版は車が高速で暴走する“井戸”と、その持ち主である犯人・S(殺人、殺意、疾走より命名、アニメと同じく言葉遊びが取り入れられています)が起こした事件を中心としたオリジナルストーリーが展開。

 酒井戸は“ハイスピードで走り続けなければいけない車”、“2台並んでほかの車を吹き飛ばしていくトラック”など殺意と悪意が強すぎる“井戸”に大苦戦しながらも、名探偵に覚醒するカギとなる“カエルちゃん”を発見して事件の謎に迫っていきます。

 一方現実世界でも“ミヅハノメ”を運用する犯罪事件捜査組織・通称“蔵”や、外務分析官の本堂町小春たちが“ワクムスビ”で探知した殺意を調べ、高速事故で起こった単独死亡事故が実はSが起こした連続殺人事件だったことを突き止めるのでした。

 高速道路にSがいることを知った本堂町たちはSの痕跡を掴みながらもあと少しというところで逃げられ、“井戸”にいる酒井戸も推理をミスリードされ……。

  • ▲第1巻より

 Sの捜査をコントロールするような行動に本堂町たちが振り回されるなか、外務分析官・福千(アニメの最終回にも登場)に犯人の魔の手が迫り……という気になりすぎる場面で第1巻は終了しました。

 これまでと同じようにSが起こした事故によって福千が重症を負いますが、本堂町の推理によって早めに救助され、犯人・Sも無事に確保されます。

 仲間の大怪我を見ても冷静に事件現場の調査をするなど、アニメと同じく肝が据わっていて頼もしい本堂町。

 でも事態が収拾したあとは福千を心配そうに見つめたり、先輩の松岡を前に動揺したり、彼女の弱い部分が描かれるカットも……。

 本堂町は目的のためなら冷徹になれるタイプだと思っていたので、人間らしいところがあるんだとほっとしました。

 またアニメではちょっとギクシャクしてしまった2人が、ちゃんと向き合って会話していることにもジーンときます。

 犯人逮捕で事件は解決かと思われましたが、事故当時のSの状況から複数の協力者がいることが判明。

 酒井戸のいる“井戸”にも、協力者を暗示するようなバイク集団が登場します。事件や犯人(の無意識化)の状況によって刻々と変化していくのが“井戸”という空間の面白いところであり、推理する名探偵には厄介なところです。

 またSの行動から、“ミズハノメ”を知っている人物が事件に関与している疑惑も浮上。しかも現場から福千の使用していた“ワクムスビ”が持ち去られていることがわかり、ただの事件とは思えない不穏な空気が流れ始めました。

 “ミズハノメ”に関しては、福千の気になるシーンがあるんですよね。基本的には“井戸”にいるはずのカエルちゃんが、彼の夢と思われる場所に登場して……。セリフの1つ1つにも意味深に聴こえてしまいます。

 そんななか現実に戻ってきた酒井戸こと鳴瓢秋人の提案で、もう1人の名探偵・聖井戸御代が“井戸”に投入されることに!

 前髪で上手く本堂町の額にある傷が隠れていたので第1巻のときはわからなかったのですが、今回の事件はアニメ終了後に起きたことだったんですね。

 Sの“井戸”に入った名探偵2人は、協力して事件を調べていきます。アニメで2人が共闘するのは物語がかなり張り詰めた時期だったのでシリアスな会話ばかりでしたが、今回はコミカルな掛け合いもあって微笑ましい気持ちになりました。

 また人命救助を優先しようとする酒井戸と名探偵の仕事に忠実な聖井戸、目的は同じでも行動パターンがまったく違う2人の対比もおもしろいです。

ダークヒーロー・鳴瓢も本領発揮!

 聖井戸より一足早く“井戸”から出ることになった鳴瓢は、盗まれた“ワクムスビ”が検知した新たな殺意から形成された“井戸”へと入ることになります。

 その“井戸”は、鳴瓢がよく知る人物のものだったのです。

 誰の“井戸”か分かった瞬間、“ワクムスビ”を盗んで利用している人物の悪意にぞっとしました。

 鳴瓢や組織のことをどれだけ知っているのか、なぜ挑発するような行動を取ったのか、もしかして最初から彼を巻き込むことが目的だったりするのでしょうか?

 さらにSが鳴瓢に会いたいと言い出し、彼はその要望を飲んで収監先の病院に向かいます。そこで鳴瓢は、意外な行動に出て……。

 “井戸”のなかで人々を救う心優しい名探偵・酒井戸とは違う、ダークヒーローの鳴瓢をたっぷり堪能できるエピソードも用意されているので楽しみにしていただきたいです。

 事件の謎が深まるとともに、闇もどんどんと濃くなっていく『ID:INVADED #BRAKE-BROKEN』。最新話は無料マンガサイト『コミックウォーカー』で期間限定配信されていますので、そちらもチェックしてみてください。

 また、電撃オンラインにはアニメ放送終了後に行ったインタビュー記事“酒井戸はダークヒーローにしたかった。アニメ『イド』あおきえい監督インタビュー(ネタバレあり)”、“アニメ『イド』をもう一度見たくなる。最終話や続編、細かすぎる伏線も監督に聞いてみた(ネタバレあり)”も掲載しているので、こちらもご興味がある方はぜひ!


(C)IDDU
(C)2019「イド:インヴェイデッド」製作委員会

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ID:INVADED Blu-ray BOX 上巻

  • メーカー: KADOKAWA アニメーション
  • 発売日: 2020年4月24日
  • 価格: 18,000円+税

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