『真・三國無双』20周年インタビュー。口コミで広がり100万本を達成した人気シリーズを振り返る【周年連載】
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あの名作の発売日から5年、10年、20年……。そんな名作への感謝の気持ちを込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。
第110回でお祝いするのは、コーエーテクモゲームスから発売されている人気アクションゲーム『真・三國無双』シリーズ。中国・三国時代を舞台に、さまざまな武将が一騎当千の活躍する爽快な本シリーズは2020年で20周年を迎えました。
前回のタイトル紹介に続いた『真・三國無双』20周年を記念した企画記事として、『真・三國無双』シリーズのプロデューサーの鈴木亮浩さんにインタビューを実施。『真・三國無双』1作目から始まり、東京ゲームショウの生放送で発表された最新作まで、印象的だったタイトルやモード、派生作品や出来事など、さまざまなことについて質問を行いました。
1作目の10万本から2作目で100万本の売り上げを達成
――20周年おめでとうございます。振り返ってみていかがですか?
ありがとうございます。20年を振り返ると、本当にあっという間だったなと。『2』、『3』、『4』は勢いがあって、国内100万本という実績を残していました。その当時から比べると、現在は国内のユーザーが減っている傾向にあります。
ただ、『5』以降のシリーズは海外、特にアジアでのユーザーが非常に増えています。全世界の合計本数で言うと、前半も後半もそこまで変わりません。
20周年を迎えて、これからもっと『真・三國無双』というシリーズが広がっていくと思っています。
――当時と現在では、鈴木さんの立場も大きく変わったのでは?
1作目からディレクターをしていたので、それほど大きくは変わってないと思います。ただ、シリーズの前半はディレクターを務めていて現場に近い立場でしたが、『3 Empires』や『6』以降はプロデューサーとなり、外に向けてどう宣伝してくかという意識が強くなっていきました。
――開発初期の段階では、『真・三國無双』をどのようにとらえていましたか?
1作目は新しいものにチャレンジしようという意識が大きかったです。もともとPSで発売された格闘ゲーム『三國無双』があって、PS2の発売にあわせて続編を作ろうという流れでプロジェクトが立ち上がりました。
しかし、当時は格闘ゲームがマニア向けのジャンルになりつつあり、「今そこに踏み込むのはどうなのか」という思いがありました。チームとしては新しいゲームを作りたいという気持ちもあり、チャレンジ精神から生まれたプロジェクトですね。
――PS2の開発ツールを実際にさわってみて、これまでにないジャンルの開発ができそうだと感じての開発だったのでしょうか?
はい、それに近い形です。PS2のスペックは、開発会社には発表より前に届いていたので、「このスペックなら戦場そのものを再現できるんじゃない?」とチーム内で盛り上がっていました。実際に開発を始めて、いろいろな案が浮かび、実現に向かいました。
――発売されて、ユーザーからの反響はいかがでしたか?
正直なところ、1作目は前評判もなく、初回出荷は10万本にも満たないような本数でした。一般的にアクションゲームは最初だけ売れて、あとの売り上げは下がっていくことが多いのですが、『真・三國無双』は評判が口コミで広がっていき、売れ続けていきました。
営業や販売店の人からの評判もよく、「続編を作ったら売れるよ」という話をよく耳にしていました。
――1作目は武将もステージもまだ少なかったのですが、『2』を作るに際してどんどん増やしていこうという流れが開発内で出たのでしょうか?
アクションゲームとして考えると、1作目は28武将を操作できるので、少なくはありません。むしろ多いほうではないでしょうか。ただ『真・三國無双』の場合、世界観が『三国志』ということもあり、ユーザーから「もっとプレイアブル武将を増やしてほしい」という要望がありました。また、開発チームにも『三国志』ファンが多いこともあり、増やす流れになりました。
あわせて、要望がとても多かったのは“2人協力プレイ”です。ただ、『2』での目標として、“敵兵をより多く表示すること”を掲げていたので、たくさんの描写数を求められる2人プレイを搭載できるのかは難しい状況でした。
とはいえ、開発内でも「このゲームを2人で遊んだら、もちろんおもしろいよね」と考えていたため、頑張って実現しました。
――ギリギリまで、できるかできないかの判断を求められていたのでしょうか?
実装自体はできていたので、2人プレイを搭載することは決定していました。ただ、ゲームのクオリティをどこまで上げられるかが課題でしたね。
実装のために“ステージの見える範囲を狭くする”や“敵兵士の数を減らす”といった調整で、クオリティとのバランスが難しかったです。
――『2』では象に乗れるようになったり、武将が増えたり、意欲的な作品という印象があります。『1』のユーザーからの要望で取り入れたのか、好評を受けて開発内でやりたいことが生まれたのか、どちらでしょう。
その両方ですね。ユーザーからの評価や意見もたくさん来ましたし、自分たちがやり残したこともかなりあったので、いろいろなことを導入したタイトルです。
――“オープニングエディット”もおもしろい要素でしたが、どのような経緯で生まれたものなのでしょうか?
正確には覚えていませんが、デザイナーのCGディレクターによる発案だったと思います。
先ほどもあがった格闘ゲーム『三國無双』では、キャラごとのエンディングムービーがありました。当時はよくあった形式ですが、ファンの方がそれを使ってオリジナル編集ビデオを作って送ってきてくれたんですね。その人は許チョファンだったようで、オープニングやエンディングから許チョのいいところをピックアップしていました。
その編集が凝っていて、それを見たチーム内で大爆笑が起こりました。全然違う場面をつないでいるにもかかわらず、同じキャラがテンポよく出てくるのがおもしろくて、これが発想の発端になったのかもしれません。
――『2』は1作目以上にロングセールを記録したと覚えています。
『2』のロングセールは2人プレイが後押しした気がします。当時、家族や友だちと遊んだという話をよく聞きました。
その結果、1年以上かけて100万本を突破しました。これはなかなかないことだと思います。
実は100万本を突破したのは次作『3』の発売近くだったと思います。『3』は発売して9日後で100万本を記録したため、そちらの方が盛り上がっていました。
『2』の100万本突破については、当時のソニー・コンピュータエンタテインメント、現ソニー・インタラクティブエンタテインメント主催のPlayStation Awards 2003で『2』と『3』が同時に100万本突破のゴールドプライズを受賞し、ようやく実感しましたね。
――今でこそ『猛将伝』の発売は浸透しています。こちらが生まれた理由を教えてください。
『2』の評判がよく、1作目よりもさらに多くの意見が集まりました。『2』の無双モードは個人のストーリーになったため、「呂布や貂蝉などのストーリーがないのはなぜ?」といった疑問をはじめ、こうしてほしい、ああしてほしいという意見が多数寄せられました。
本当であれば次のナンバリングタイトルで応えることが理想ですが、当時はすでに『3』の開発がスタートしていて、いろいろなことを入れようとすると時間がかかることが明白でした。
そのため、“ユーザーの意見を反映した何か”を『3』の前にやるべきではないかという話になり、『猛将伝』が生まれました。
アペンドディスクのアイデアは、『2』を買ってくれたユーザーに再度フルプライスを出してもらうよりは、安価で追加部分だけをプレイしてもらいたいという発想が発端だったと思います。
ミリオンセラー作品の『3』から『4』、『5』へ
――いろいろな要素が変わった『3』についてお聞かせください。
『3』は武将が非常に多くなり、個人のストーリーを用意することが難しくなりました。また武将ごとに活躍する時期が違うこともあって、勢力ごとのシナリオになっています。
システム的には、一騎討ちやオリジナル武将作成などの新要素を取り入れたタイトルです。
――『3』からは『Empires』が発売され、現在も続くシリーズとなっています。
『Empires』も、ユーザーからの要望を受けたことが開発理由として大きいです。弊社のSLG『三國志』シリーズが人気ということもあって、「内政は『三國志』、戦闘は『真・三國無双』の作品を遊んでみたい」という意見があり、そこにインスピレーションを受けたことから、タイトルが生まれました。
――実際にその2作品を組み合わせると考えると興味を惹かれますが、開発的には非常に大変そうですね……。
おっしゃる通り大変で、アイデアとして出てきても、実際にゲームに落とし込むところで実現性を考える必要があります。そのため『3 Empires』の内政は「三國志』シリーズをそのまま使うのではなく、システムとして簡易なものに落とし込んでいます。
もう1つ課題となったのが、戦闘システムです。一騎当千の『無双』シリーズのシステムでは、勝利条件である敵の総大将に突撃して勝利するという単調なゲームになってしまう懸念がありました。
そこをどうやってゲームのシステムに落とし込むかというところで、兵站を繋げながら前線を押し上げるシステムを考えました。
――ゲームシステムとしても悩んだ作品だったわけですね。続いて、『4』についてお願いします。
『4』の開発は、PS2が発売されて長い期間が経ち次世代機が出てくるタイミングだったこともあり、PS2の集大成として制作しました。PS2のスペックを限界まで使い、登場する敵の数を多く表示できました。
また、『2』のように個々のストーリーを用意しました。『3』では勢力のストーリーを作っので、次のナンバリングで同じことをするよりは、武将それぞれのストーリーを作ることがいいだろうという判断でした。
――ここまでの4作を振り返ってみて、印象的だったタイトルはどれでしょうか?
前半のタイトルだとやはり『2』ですかね。1作目でやり残したことや、新しいことをいろいろ入れられました。『2』で評判が一気に上がったこともあり、一番印象に残っています。
――『5』から新世代機で展開されました。
『5』も意欲作で、システムを大きく変更しました。アクションシステムを、絶え間なく流れるように攻防を続けられる“連舞システム”に刷新、より駆け引きを楽しめるようになっています。
また、アクションだけではなく、レベルデザインにも凝っています。川を泳いだり櫓(やぐら)に登ったり裏側から奇襲をかけたりなど、攻略しがいのある戦場で戦術を楽しんでもらえるように作っています。
新しいシステムの数々は好評でしたが、一方でプレイアブル武将を減らした点がユーザーにとって大きなマイナスポイントになったこともあり、『5』は賛否両論のタイトルになっています。
――個人的にも、初めて触った時にゲームデザインに感動しました。一方で、キャラクターゲームとしての側面では批判もあった、と。
『5』では髪型や服装などデザインを大きく変えています。「馬超といえばこう」というそれまでにあった印象を外したところもあって、そちらでも賛否両論でした。
この時の意見を踏まえて、以降の作品では武将のアイデンティティやキャラクター性を損なわない範囲での変更を意識しています。
――『5』から『6』の発売までには4年ほどの間がありましたが、これにはどういった理由があったのでしょうか?
まず1つには、ハードスペックが上がるのに伴い開発が長くなった、という理由があります。もう1つには、この前後の時期から『無双』シリーズのIP展開が始まりました。
会社として『無双』シリーズ全体のカニバリゼーションを考慮し、ナンバリングの発売時期が長くなる傾向にあります。
――新世代機になったことで、開発内で変わったところはありましたか?
『真・三國無双』シリーズは、ハードが変わっても基本のコンセプトは同じです。そのため、各ハードごとに“いかに『無双』らしさを出すか”、“いかにビジュアル面を向上させるか”を突き詰めていきます。この2つのバランスをとること以外は、そこまで大きく変わったことはありませんでした。
――続編『6』についてはいかがでしょうか。
“復活”と表現すると変ですが、『6』では『5』で指摘されたマイナスポイントを払拭したいという思いがありました。そのため、『5』の反省点を最大限に取り入れた作品です。
また、ナンバリング6作目ということもあって、ユーザーはもちろん、作っている開発側もマンネリ感を感じていました。そこをどう打破するかが課題で、装備を変更できたり、新たな勢力“晋”を追加したり、大きな変更を加えています。
――晋の追加は大きな反響があったことを覚えています。
そうですね。「ついに三国志ではなくなった!」という声もありました。
――“王元姫”が出てきたのも『6』でした。これまでの武将と比べて、“王元姫”は人気の勢いがすごかったと記憶しています。
もちろんそれまでも人気のある武将はいました。ただ、キャラクターとしてブレイクしたと言えるのは、“王元姫”が初かもしれないですね。
――王元姫の人気は、デザインがあがってきた段階から予想できていましたか?
ジト目や明るい髪色、目を引く胸など、これまでのシリーズにはなかったデザインでした。デザイン案を見た時は「あからさまに狙いすぎではないか?」と思いましたが、あそこまでの人気になるとは正直予想できませんでした。
ただ、今思うと、キャラクター設定がうまくいった感じはあります。性格やセリフ周りなどビジュアル以外の部分を含めての人気だったと感じています。
――PS3世代では最後となる『7』が発売されました。
『6』は、おかげさまで好評でした。また、『4』の時と同じく、開発メンバーがハードに慣れてきたこともあって、『7』はPS3での集大成として作るつもりでした。
また、PS3が発売されて長い期間が経ち、次の次世代機が出ることも予想できる時期でした。
当然ハードが発売された直後は普及していないため、ソフトは伸びにくいです。それもあって、多くのユーザーに届けたいと考えて、なるべく多くのプラットフォームに対応するようにしています。
――なるほど。
『6』の時はPS3に完全に移行して、PS2向けには発売していません。しかし、すでにPS2が現役だった時に比べてコンシューマ機で遊ぶユーザーが減っていたように思います。
当時はまだPC版も発売していなくて、言うなればターゲットがすごく少ない状態でした。そのため、『7 猛将伝』ではPS4やSteamに対応するようにし、多くのユーザーの皆さんにお届けすることができました。
――ユーザーを飽きさせないためには、何が必要だと思いますか?
『真・三國無双』シリーズで言うと、変えてはいけない“一騎当千”の部分と、変えなければいけないシステムの部分を、毎回意識しています。
三国志がテーマである以上、ストーリーの大筋は同じになってしまうので、毎回異なるエピソードを必ず入れたり、新たなキャラクターのエピソードを本筋に絡めて描いたりと、ドラマ部分でも違う印象を持ってもらえるようにしています。
加えて、サブモードのやり込み要素として新しいゲーム性で遊べるところを、工夫しています。
――『7』では結構な人数の新武将が加わりましたが、ユーザーからの要望や開発の意見を集めた選定になるのでしょうか?
『6』から『7』は正統進化したタイトルになるイメージだったので、システム的に大きな変更がない代わりに、ストーリーを膨らませるために、新武将を多数追加した形です。
――そして、現在のナンバリングである『8』がリリースされます。
『8』はまさにマンネリ打破が目標の作品でした。『7』が集大成で作った作品だったので、『8』を作るならばまったく新しいものにチャレンジしようと、ずいぶん前から考えていました。
三国志の世界感なら、オープンワールドのシステムは間違いなく合うだろうと思ってチャレンジしました。
――『8』は賛否あったタイトルであるという印象ですが、開発内ではどのようにとらえていますか?
賛否はありました。従来の『無双』シリーズの遊びを望んでいた人にとっては楽しみ方が違い、面倒になったという感想が多かったです。
一方で、海外ではチャレンジを好意的にとらえていただき、オープンワールドにしたことも評価していただいています。
ただ、“オープンワールド”という言葉はわかりやすかったのでプロモーションで使っていましたが、開発内部的にはシリーズに合わせたオープンワールドのシステムがあると思って作っていたので、従来のタイトルのような“オープンワールド”にはならないと考えていました。
“オープンワールト”という言葉だけが先走りしてうまく評価されていないこともあったのですが、実際、ゲームの品質としても密度が薄くなってしまったので、“ステージが広くなっただけ”という評価は反省点として受け止めています。
より戦略的なゲーム性を表現したかったのですが、そこがうまくハマらず、マイナスの評価が多いですね。
――“オープンワールド”という言葉は響きこそいいですが、ジャンルとして適しているかどうかの判断は難しいと感じました。
三国志なので、“国取り”の要素が必要となります。そうなると、時間の流れを考えなくてもいいRPGのようなゲームとは違って、時間の概念をゲームに落とし込まなければ成立しません。
『8』では、時間の概念をシャットアウトした結果、ステージの広さと時間のすり合わせをうまくゲームに落とし込めず、ゲームとして成立していなかったところが反省点です。
もし採用するとしても、ナンバリングではないゲーム性になってしまうので、別のゲームとして作った方がおもしろくなったかな、とも思っています。
――『5』から『8』まで振り返ってみて、いかがでしょうか?
一番反響があったのは、『猛将伝』を含めて『7』でした。ボリュームや完成度を含めて評判がよく、いまだに売れ続けているタイトルです。それもあって、『真・三國無双』を代表するゲームは『7』と言えるかもしれません。
ただ、一番印象深いのは『8』ですね。賛否両論ありますが、作るのが難しかったこともあって、深く印象に残っています。
――過去のタイトルで、もっとも反響があったモードはなんでしょう。
『7』の“将星モード”の評判はかなりいいですね。やり込み要素の他、無双武将と親密な会話ができたり、ユーザーの要望とゲーム性が一致したモードだと思います。
あとは、『4 猛将伝』の“立志モード”も反響が大きかったです。各勢力の武将に仕官して立身出世を目指すモードですが、いまだに「あれをもう一度遊びたい」という要望が出るくらい、評判がいいです。新作を出す時でも、立志モードは毎回検討に挙がっています。
――シリーズのターニングポイントになった作品はどれでしょうか?
『6』ですね。勢力が増えたことと、装備を変えられるようになったことが大きかったです。
『MULTI RAID』は通信協力プレイで『真・三國無双』を作った作品
――派生作品として、『真・三國無双 NEXT』など携帯機の展開もありました。こちらの話もお願いできますか。
新ハードが出れば、そのハードの特性を使ったゲームにして出そうと考えます。携帯機でも、基本的にはシリーズのコンセプトを踏襲しつつ、ハードの特性を盛り込む意向で制作しています。
『NEXT』は、携帯機ながら“一騎当千”のわらわら感を出せていたと思います。
――PSPでは『真・三國無双 MULTI RAID』という共闘作品が出ましたが、どのようにして生まれたのですか?
PSPというハードの特性をいかし、かつ『真・三國無双』というIPを使ったゲームを作ろうと考えて生まれたタイトルです。当時、共闘ジャンルが盛り上がっていたこともあり、『MULTI RAID』の1作目はかなり売れましたね。
――光栄(コーエー)と言えばシミュレーションゲームのイメージでしたが、最近のユーザーや海外ユーザーにはアクションゲームのイメージが付いていると思います。改めてACTに取り組むようになった流れを教えてください。
その当時の社長であった襟川陽一の指示で、アクションゲームにチャレンジするために作られたチームがω-Forceです。その1作目が対戦格闘ゲーム『三國無双』でした。
当時のコーエーがSLGで有名だったこともあって、会社規模で新しいことに取り組もうという思いから生まれたプロジェクトでした。
――「コーエーが格闘ゲームを作るのはどうなの?」という声は上がらなかったのでしょうか?
ありましたよ(笑)。格闘ゲームを発売した時には「コーエーから発売されているけど、開発は外部だよね」という話を聞きました。でもそれは、外注で作られたゲームと同じくらいの完成度であるという評価でもあったので、作っている我々としてはうれしかった一面もありました。
――長く展開されている『真・三國無双 Online』はいかがでしょうか?
『真・三國無双 Online』は完全に内部制作です。もともと、ブロードバンド通信の最初のころに、“Yahoo! BB”さんとの協業で通信回線をいかしたゲームを開発したのが発端です。
純粋なアクションゲームのオンラインゲームはあまりないため、サービスインからかなり経った今でも遊んでくれている人がたくさんいます。逆に、最近は新規プレイヤーがあまり入っていないようです。
――『真・三國無双 英傑伝』は、『無双』シリーズ初のSLGになっていました。
『英傑伝』は、純粋に『真・三國無双』のIPを広げようとチャレンジした作品です。『真・三國無双』を違うジャンルに持っていったらどういうゲームになるのか、それに挑戦したのが『英傑伝』です。
ゲーム外の展開として『真・三國無双』20周年ライブを予定していた!?
――シリーズを長く展開してきた中で、印象に残っているプロモーションはどれでしょうか。
いろいろありますが、パッと思い浮かぶのはローソンさんとのコラボ。王元姫にローソンの制服を着せたプロモーションは自分的にはヒットでした。
コンビニとのコラボでは、イメージカラーを衣装に取り入れるコラボが多いですが、「やるならば制服をそのまま再現したい」と提案して実現しました。あれはかなり評判がよく、今でも印象に残っています。
――編集部でも、ローソンに行って予約した人がいました。見た目のインパクトがあって、三国志の世界であの見た目の武将を単純に触ってみたいと感じました。
本シリーズは世界観に気を使って作っているのですが、三国志の世界観に現代ものを入れた時の違和感からくるおもしろさは、作っている側としても衝撃でした。
――肉まんを展開するコラボもおもしろかったですね。
それもありましたね! 肉まんはコンビニとコラボしたいという話を毎回していたのですが、なかなか実現できませんでした。これまでに実現できたのは、肉まんの上に焼き印で“無双”と押してあるもので、ピリ辛麻婆味です。肉まんのコラボは思っていたよりも難しく、『真・三國無双』要素の少ないコラボでした。
話題になったのでよかったのですが、味付けなど企画段階からしっかりとコラボした肉まんを作りたいと常々思っています。
あとは、ナンバリングタイトルでは著名なアーティストの方々とコラボさせていただいています。その中でもB’zさんとのコラボは特に印象に残っていますね。社内でもB’zファンが多くいて、コラボが決まった時は盛り上がりました。
ユーザーからの反響も今までで一番大きかったアーティストではないでしょうか。
――時期によって異なると思いますが、『真・三國無双』シリーズで人気の武将は誰になるのでしょう。
ずっと変わらず人気があるのは、趙雲、夏侯惇、陸遜、曹操ですかね。彼らは、シリーズ初期から今まで継続して人気があります。特に陸遜は女性人気が非常に高いです。
最近の作品だと、郭嘉や徐庶が人気。郭嘉は『6 猛将伝』から登場したのですが、『7』のストーリーモードの評判がよかったのです。このようにストーリーモードでの描かれ方によって、武将の人気が上がることもあります。
――鈴木さんご自身の好きな武将は誰ですか?
ゲームの武将として見ると初期から出ている、趙雲と夏侯惇に思い入れがあります。『三国志』というくくりで考えると、横山光輝さんの漫画の影響もあり、最初は諸葛亮が好きでした。ただ、『蒼天航路』を読んでからは曹操ですかね。時期によって結構変わっていますね(笑)。
――趙雲と夏侯惇は、『6』のオープニングで対峙していましたね。
オープニングは会社全体で力を入れてるところです。『真・三國無双』シリーズでは、戦いをテーマにしていることもあって、何度見ても毎回たぎりますね。
シリーズ前半のオープニングは、オールスターが登場するお祭り感のある構成ですが、シリーズ後半ではストーリー仕立ての構成にしています。ただ、どちらも力の入れようは同じです。個人的には、1作目のオープニングが好きですね。
――『真・三國無双』シリーズは音楽も人気という印象です。
音楽はずっと人気があって、最近では“無双サウンド”と呼んでくれる人がいるくらいの知名度になっています。MASAという作曲家がいるのですが、ゲームの雰囲気にマッチするテンポのいいロック調の楽曲を生み出してくれています。『呂布のテーマ』をはじめ、ユーザーから支持される人気曲がたくさん生まれました。
――“「ω‐Force」20周年記念ライブ”では楽曲の演奏が行われ、好評だったことも印象的です。
タイトルを買って応募いただいた方の中から抽選で参加できる形で行いました。音楽が好きな人たちの中ではMASAは有名なので、ライブを見たいという要望もあり、『真・三國無双』シリーズの単独ライブを開催してみたいとも考えています。
実は2020年に『真・三國無双』20周年ライブをやる話もあがっていました。ですが、新型ウィルスの影響もあって実施は難しくなりました。
――『三国志』から始まり、数々のIPとのコラボが行われている『無双』シリーズですが、どこが人気の秘訣だと思いますか?
“一騎当千の爽快感”がありつつ、“誰でも簡単操作で楽しめるアクションゲーム”というポイントをシリーズを通して踏襲していることが、大きな要因だと思います。
著名なIPと組むことによって、相乗効果からシリーズが広がっているのではないでしょうか。
――コラボで印象深かったものはどれでしょう。
初めてのコラボ作品が『ガンダム無双』で、とても印象深かったです。組み合わせ的に「そんなのアリ!?」と社内でもインパクトありました。
他には、『ワンピース無双』はIPの勢いがものすごく、ユーザーからの反響も比例して大きかったです。
新作『真・三國無双8 Empires』は攻城戦がポイント!
――20周年を越えて、今後の目標はありますか?
直近の私の目標としては、先日発表させていただいた『真・三國無双8 Empires』とアプリ『真・三國無双』をしっかり作ることですね。
『真・三國無双』のIPはまだ広げられると考えているので、シリーズタイトルだけではなく、いろいろな展開を行っていきたいというのが、長期的な目標となります。
また、いつ情報を出せるかはわかりませんが、ナンバリングタイトルの展開は続けていきます。その発表に向けて準備を行うことも目標の1つです。
――東京ゲームショウの生放送では、先ほどの2タイトルの発表がありましたね。アプリについては批判的な意見も多くあったと思うのですが……。
事前に、社内でもアプリについては批判を受けることを想定していました。ただ、予想以上に批判コメントが多くて驚きましたね。単純に、アプリというだけで拒否している人もいたようですが。
しかし、東京ゲームショウの放送を見ている人はコアなゲーマーの方が多いので、否定的な意見が出ることも理解しています。
――アプリ『真・三國無双』はどういうゲームになるのでしょうか?
IP許諾のアプリ『真・三國無双 斬』をはじめ、携帯向けタイトルのサービスはこれまでにもありましたが、スマートフォンの性能が高くなったこともあり、アプリ版でもしっかりとしたアクションゲームが制作できるのではないかと考えました。
そういった開発経緯から、『真・三國無双』シリーズアプリの決定版という意気込みで、タイトルをそのまま付けました。端的に言うと、“携帯で一騎当千を楽しめる『真・三國無双』シリーズ最新作”となります。
――本作についてはIP許諾ではなく、社内で開発するつもりで立ち上げたのでしょうか?
そうです。開発・運営ともに社内でやるつもりで動いていました。これまでの『真・三國無双』シリーズシリーズだけでなく、『三國志』シリーズのIP許諾もいい成績を収めているので、そちらも参考にしつつ開発しています。
――ゲーム画面を見させていただきましたが、縦持ちと横持ちの切り替えがスムーズでした。
アプリでキモになるのは持ち方だと思っています。
昔コンシューマゲームを遊んでいたけど、最近はゲームをやっていないという人は結構いると思うので、その人たちに遊んでもらうためには、まず遊びやすい環境を整える必要があります。
しっかり遊ぶ時は横持ちでもいいのですが、気軽に遊んでもらうためには縦持ちが必須。その両方に対応することは最初から考えていました。
レイアウトが2種類必要なので、開発的には大変です。しかし、そこはファンに入ってきてもらうために必須な要素だと考えています。アプリのアクションゲームはたくさんありますし、自社開発で負けるつもりはありません。
――アプリとあわせて発表された『真・三國無双8 Empires』は?
これまでの『Empires』シリーズの戦闘は、兵站を繋げながら拠点を支配して前線を押し上げて敵本陣を攻略する、という内容でした。
『8 Empires』では、リソースを『8』のスケール感のあるステージを使うことにしていたので、そこに従来の戦闘システムを当てはめると、テンポが悪くなり戦闘として成立しないと思っていました。
逆に、城のスケール感はこれまでと比較にならないくらい作り込んでいるので、言うなれば“本物の攻城戦”ができるのではないかと。そこを突き詰めていけばおもしろくなると思ったので、『8 Empires』の戦闘ではそこに重点を置いています。
――『Empires』シリーズは内政もポイントになりますが、そちらは従来通りの内容になるのでしょうか?
第1作の『3 Empires』では、初心者がプレイした時に『三國志』シリーズのようなSLG要素の強いゲーム性だと難しすぎるのではないかと思いました。そのため、2種類のカードからどちらかを選ぶという、ランダム要素があり戦略要素が薄いシステムにして、内政の要素を簡略化していました。
ただ、シリーズを続けていくに連れて、『Empires』シリーズを購入してくれる人はSLGや内政が好きな傾向が強いことがわかりました。
そのため、徐々に内政の戦略要素を深め、『6』や『7』では『三國志』のシステムに近いところまで来ていました。今回も、それくらいのレベルで内政に力を入れています。
――『真・三國無双8 Empires』では新世代機でもリリースされます。ハードが変更されるメリット・デメリットはどこだと思いますか?
メリットは、“敵兵士を多く表示できる”、“ビジュアルを向上させられる”という2つの要素ですね。全体的にレベルアップさせつつ、フレームレートを安定させられることは大きなメリットです。
デメリットは……あまりないですね。新ハードでの開発初期が大変なのはいつものことなので。
あと強いて言えば、ハードが普及してくれないと困るというところですね。また、ハードが切り替わることで、ゲームソフトの価格が上がることはこれまでもありました。上がった場合は、ユーザーにとってデメリットになる可能性があります。
――自身が手掛けているタイトル以外で、鈴木さんが気になっているゲームがあれば、教えてください。
弊社が作っている『ゼルダ無双 厄災の黙示録』はかなりいい出来です。ストーリーも気になる要素ですし。
他社のタイトルでは『Ghost of Tsushima』。演出が凝っていていいですね。あとはいまだに人気の『Fortnite』でしょうか。
――『Fortnite』が出てくるとは思いませんでした。
うちの会社では、休み時間に社員同士がゲームをプレイすることは頻繁にあります。最近はコロナの影響もありできていませんが、FPSや格闘ゲームなど、いろいろなゲームを皆で遊んでいます。
――ちなみに『Fortnite』のどこが好きなのでしょう。
単純にシューティングの対戦ゲームが好きということもあるのですが、射撃に加えて建築の要素があって、戦術がものすごく広いところです。また、ストイックに遊ぶタイトルより、大雑把に遊べるタイトルが好きということも、理由にあるかもしれません。
――最後に、記事の読者に向けて一言お願いします。
『真・三國無双』シリーズが20周年を迎えられたのは、支えてくれたファンの皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。
引き続きシリーズは続けていきますし、アプリ『真・三國無双』や『真・三國無双8 Empires』をはじめ、いろいろな展開を考えています。「昔プレイしたことはあるけど、最近は遊んでいない」という人も、新しいタイトルに触れていただき、引き続き応援していただければと思います。
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