岩井参戦!!【O村の漫画野郎#37】
- 文
- 奥村勝彦
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秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!
岩井参戦!!
あー。アメリカ滞在の最終日前日の深夜である。岩井の身の上話が始まる。どうやら俺が行く直前に、つき合っていた女(たしかロシア人だったっけ)に逃げられたらしい。
……申し訳ねえけど、非常にナイスな展開である。もし現在進行形でつき合っていたら、絶対に日本になんか帰ってこねえもんな。ついでに大学の学費の方も、かなり心細くなってきた模様。
彼は秋田書店時代の貯金だけで渡米しており、おまけにアメリカの学費はバカ高いらしい。だもんで、彼は相当気弱な状態である。ますますもってナイスな展開じゃねえか。
俺は、この時の為に考え抜いた“殺し文句”を発動させた!!
「あのよう、そろそろ打ち合わせしたくねえ?」
もちろん打ち合わせってのは、漫画の、である。それも仕事の段取りを決める打ち合わせじゃなくて、ネタをひねり出すヤツだ。まさに無から有が生まれる瞬間!! これが嫌いな編集者はいねえ!! ……たぶん。
「あーっ……やりたいっすねえ。」
そっから俺は、編集長になった経緯を説明し、編集部に参加してくれねえかって頼んだ。さすがに、その場で返事はもらえなかったが、大丈夫だって確信があったからね。なんつっても流れがいいやね。
事実、日本に帰ってしばらくしたら、岩井からOKの返事が来た。これで心配のタネがひとつ消えた。
俺は守備範囲が広い人間ではない。むしろその正反対のタイプで、自分一人では何にも出来ねえんだわ。だもんで、周りに優秀な人間がいねえと困る……ちゅうか話にならねえの。
さて、これで準備万端、オーイエーといきたかった所だけど、実際はそうはいかなかった。それどころか実は、その時、滅茶苦茶ピンチだったのである。
ただ俺はその頃、あまりにアホで無知だったので、単にその事実に気が付いていなかっただけだったのだ。……待て!! 次回!!
(次回は3月8日掲載予定です)
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イラスト/桜玉吉
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