【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 2】ウマ娘たちの関係性を知るとより深く楽しめるんです
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- 柿ヶ瀬
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オタク歴と競馬歴がほぼ同じ約30年。当『ウマ娘』コラム担当の柿ヶ瀬でございます。
タイトルの通り、これを読めば、『ウマ娘』が1.8倍面白くなるかもしれないコラムです。競馬の本命単勝オッズみたいな数字です。
第2回の内容は、ウマ娘の関係性のお話をいくつかさせていただこうかと思います。
ウマ娘の関係性はいくつかあります。親子兄弟孫などの血縁関係だったり、同じ騎手が乗っていたことがあったり、意外なところでは年はちょっと離れているけど実は同じレースで走ったことがあったり……などなど、様々な関係性を思わせるようなイベントや会話でウマ娘同士の絡みが見られます。
今回はその中から世代の話と、もう1つ、競馬を知っていると気付けるかもしれない関係性の話をしたいと思います。
世代のライバル関係は、やっぱり盛り上がる
ウマ娘の関係性で一番目立っているのは、世代です。
その中でも一番多く描かれているのはアニメ1期でも描かれたスペシャルウィークを中心とする98年クラシック世代と言われる面々でしょう。スペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイロー、エルコンドルパサー、グラスワンダー。
セイウンスカイは育成ウマ娘として実装されておらず(2021年4月20日現在の話)、キングヘイローは路線変更をすることもあり、スペシャルウィークとグラスワンダー、そしてエルコンドルパサーの3人の関係がよく描かれます。
現実では外国産馬であるためクラシック三冠に出られなかったエルコンドルパサーとグラスワンダー。エルコンドルパサーは3歳時(当時の馬齢表記では4歳)のジャパンカップでスペシャルウィークに勝ち、翌年からは海外へ。グラスワンダーは3歳時、故障に泣きましたが古馬となってから宝塚記念と有馬記念でスペシャルウィークに土をつけました。
さて。この頃からしばらくの間、現実世界で何が起こっていたのか――そう、「じゃあその3頭で誰が一番強かったんだよ?」というスペグラエル最強議論……というか論争です。
当時はインターネットの隆盛が始まった頃でもあり、丁度始まった2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)のように競馬について話せる掲示板などにおいてこの論争が盛り上がることになります。それぞれの主張にはそれぞれの根拠はあるのですが、それでも20年結論は出ていません。
わからないまま20年が経った今だからこそ、こうやってIFを作り上げられるウマ娘の価値はあると言えるのかもしれませんね。
ちなみに筆者はこの世代ではセイウンスカイが一番好きでした。
続いては、2期アニメや、1期のBDの特典OVAでも登場したBNWこと、ビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケットの93年クラシック三冠を分け合ったトリオです。
かつて言われたクラシック三冠の格言に「皐月賞は最も速い馬が勝つ、ダービーは最も運の強い馬が勝つ、菊花賞は最も強い馬が勝つ」というものがあります。
ダービーの“最も運が強いものが勝つ”というのは、80年代前半までは出走馬の数が今のように18頭ではなく、20頭とか28頭、もっと昔は30頭以上が出走しており、枠順や展開などに恵まれなくては――すなわち運が強くなくては勝つことができない――というところからの格言です。
なので現在と同じく18頭がフルゲートとなっていたBNWの世代でも既に死語になりかかっていましたが、それでもこの3頭はまさに格言のようだなと筆者は当時思ったのです。
皐月賞のナリタタイシンは、鬼脚と呼ばれたとてつもない追い込みを見せ、二強と言われたビワハヤヒデとウイニングチケットをあっという間に抜き去りました。
ダービーのウイニングチケット。それまで不思議なくらいダービーに縁のなかった当時45歳の大ベテラン騎手・柴田政人にダービーを勝たせ、東京競馬場を感動のマサトコールで包んだウイニングチケットを、運が強い馬と言わずしてなんと言うでしょう。
そして菊花賞のビワハヤヒデ。レース中に怪我をして5着だった最後の天皇賞秋を除けばすべてのレースで1着か2着しかなく、絶対的と言っていいほどの安定感。強さという意味では間違いなく最も強かった。翌年弟であるナリタブライアンが三冠馬になってしまうがゆえに少し目立たなかった部分はありますが……。
そんな彼らが並び立った93年クラシック世代が、筆者はとても好きでした。
今『ウマ娘』でBNWの3人が仲良く、しかしライバルとしてしのぎを削る姿を見ていると、なんとも言えない感慨が沸いてきますね。
他にもダイワスカーレットとウオッカの同世代最強牝馬同士や、マックイーン、ライアン、パーマーのメジロ同門同世代など、挙げて行けばキリがありません。
登場しない“ウマ娘同士を繋ぐ馬”もいる
関係性がイマイチわからないけどなんか時々一緒にいるね、というウマ娘たちがいます。
もちろんウマ娘のキャラクター的に近かったりとか相性が良かったりとか、現実とは縁のない関係もあると思いますが、中にはウマ娘に登場しない実在の競走馬を介して関係性がある、なんてウマ娘たちがいるのです。
その一部を紹介していきましょう。
エアグルーヴとファインモーション
ファインモーションのサポートSSRで練習上手○がもらえるイベントにエアグルーヴが登場したり、ロビーでの会話だったり寮で同室だったり。ロビーでの会話では、実家と関わらせるのはやめろ! とエアグルーヴが泣きを入れていたりします。
この2人の間を繋いでいる実在馬、それはファインモーションの半兄(母親が同じで父親が違う兄のこと)、ピルサドスキーです。
ピルサドスキーはファインモーションと同じアイルランド生産馬です。イギリスなどで活躍した名馬ですが、このピルサドスキー、日本へやってきてジャパンカップに出走、見事に優勝しています。
そして、同じレースの2着馬が、誰あろうエアグルーヴだったのです。しかも、ピルサドスキーはパドックで大変興奮(オブラートに包んでいます)していました。その時のジャパンカップではエアグルーヴが唯一の牝馬だったので、エアグルーヴを見て興奮(繰り返しますがオブラートに包んだ表現です)したのではないか……と言われていました。
日本牝馬初のジャパンカップを逃したり、自分を見て興奮したのではと言われたり……そう言った現実の事柄が、ウマ娘世界において、勿論理由は違いますが、エアグルーヴはファインモーションの実家が苦手、という話に反映されているのかな、と想像できますね。
エアシャカールとアグネスタキオン
こちらの2人はどちらも理系で頭がいいからコンビなのでは? と思われるでしょうし、実際そういう側面もあると思います。しかし実はこの2人にも、ある馬が繋いでいる縁があります。
それは2000年のダービー馬・アグネスフライトです。名前を聞いてピンと来たかもしれません。そう、アグネスタキオンの1つ上の全兄(父親も母親もまったく同じ兄のこと)なのです。
そして、このアグネスフライトこそ2000年のダービーにおいて、結果的にエアシャカールの三冠を7センチ差で阻止した馬なのです。
サポードカードのタイトルにもある7センチのその先。偶然か必然か、その7センチ先にいたアグネスフライトが繋いでいる2人がともに理系の頭脳明晰、そして性格に若干の難アリなキャラクターになっているのも、『ウマ娘』のおもしろいところ。いや、本当にそこまで計算してるのだとしたら凄すぎる……。
セイウンスカイとニシノフラワー
先日のガシャ更新で追加されたサポートSRニシノフラワーは、セイウンスカイにニシノフラワーがデイジー(ヒナギク)のリースをプレゼントするシーンが描かれたカードです。
セイウンスカイとニシノフラワーは、名義や勝負服こそ少し違いますが、実質的には同じ馬主と言ってよく、同じ馬主さんが所持している牧場でどちらも生まれています。メジロ家みたいなもので、それだけでも2人が繋がるには充分な理由です
しかし、今回のカードはそれだけではありませんでした。
この2人を繋ぐ馬、いや、この2人が繋いだ馬と言うべきでしょうか。ニシノデイジーという馬を中心にお話します。
ニシノデイジーは、2018年の札幌2歳ステークスと東京スポーツ杯2歳ステークスを勝った重賞2勝の牡馬で、なんとまだ現役馬です。
(↑こちらは掲載時に2012年と記載しておりましたが2018年のお話でした。訂正いたします。Twitterでご指摘くださいまして、ありがとうございます。)
そんなニシノデイジー、実は、セイウンスカイとニシノフラワーのひ孫なのです。セイウンスカイとニシノフラワーの間にできた仔がニシノミライといい、ニシノミライとアグネスタキオン(こちらにも色々と縁がありカードイベントにも登場します。気になった方は調べてみてください)の間に生まれた仔がニシノヒナギク。そして、ニシノヒナギクの仔が、ヒナギクと同じ意味を持つデイジーの名を持ったニシノデイジーなのです。
そしてそのニシノデイジーなんですが、実は半妹がいます。こちらも現役馬なんですが、ニシノリースといいます。
すなわちセイウンスカイとニシノフラワーの子孫であるニシノ「ヒナギク」の仔、ニシノ「デイジー」とニシノ「リース」。
先の文章をもう一度復唱すると、“セイウンスカイにニシノフラワーが「デイジー」「(ヒナギク)」の「リース」をプレゼントする”カードになっています。そこに込められた意味合いを知ることで、全く違う文章に見えてきたのではないでしょうか。
またかつて連載されていた4コマ漫画『うまよん』においても、セイウンスカイが元気のないニシノフラワーをデイジーの花畑へ連れて行く回がありました。
しかもその回が更新されたのは、ニシノデイジーがダービーに出走する直前のこと。『ウマ娘』の運営は、こういった競馬好きの心を震わせることを時々やってきます。気をつけてください。
さてそんなニシノデイジーの次走は5月9日に行われる新潟大賞典ではないかと言われています。近走成績はあまり良くありませんが頑張ってほしいですね。
というわけで今回も、知っているとウマ娘がより楽しくなるお話をしてきました。
今回ご紹介した例以外にもウマ娘には沢山の関係性によるウマ娘同士の絡みがあります。 さらに今後実装(育成でもサポートでも)されるウマ娘が増えればまた関係性も増えていくのではないかと思います。
その時に、この馬とこの馬が絡んでいるがどういうところからの関係なんだろう? と疑問を持って実際の競走馬を調べていくと、また新たな発見ができて、さらにさらに『ウマ娘』を楽しんでいけると筆者は考えています。
また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければと思っています!
それではまた!
【コラム】ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話
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