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2009年8月13日(木)

【経営者は語る 第1回】なぜ今ブラウザゲーが注目を集めるのか――SeedC社長インタビュー

文:電撃オンライン

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●ブラウザゲームの理想は、サボテンを育てるようなプレイスタイル?

『SeedCインタビュー』

――社長自ら最前線に立つということで、非常に高い意気込みを感じるのですが、改めてブラウザゲームの魅力とは何でしょうか?

山田:あまり日本にはないゲームである、ということですね。ボードゲームのようなフィーリングがあって、対戦してとても楽しい。それで、勝つにはどうしたらいいのか、勝負を分析して、そこで戦略性を楽しむ。その上で、いつでもプレイできるし、PCに無茶なスペックを要求することもありませんし。ものすごいプレイ時間を要求されることもない。ユーザーの生活にフィットする形でのゲームだというのは、とても良いと思います。

 おかしな例え方かもしれませんが、ブラウザゲームとはサボテンを育てるような感じに近いと思ってます。ものすごく手間や時間がかかるわけではなく、たまに水をあげる程度。それでいて楽しく育てられて、花が咲いたり成長したサボテンをみんなで見せ合うようなコミュニケーション要素もあります。だからといって、サボテンを枯らしちゃうような人にブラウザゲームは無理だというわけではないですよ。

崔:いいね、サボテン。サボゲーだ。『Webゲー』をやめてサイト名を“サボゲー”にしましょう。

山田:いや、それはちょっと。サボってるゲームみたいなイメージになりそうです……。

――じゃあ、今後『Webゲー』でサービスしていく作品が増えてきたら、サボテンマークの個数で「サボテン育成っぽさ」を評価するとかどうですか? サボテンマークが多いほどまったり遊べる、みたいな感じで。

斧:いいですね、それ。

『SeedCインタビュー』

――斧さんとしては、ブラウザゲームにおける魅力はどこにあるのでしょうか。

斧:経営という面から見ますと、MMORPGなんかになるともう市場が完成してしまっていて、端的にいって良いゲームは、ライセンス料から何からすべて“高いゲーム”なんです。こうなると資本力勝負になってしまいます。

 でもブラウザゲームには良質な作品がたくさんあって、なおかつ高いゲームだとは限りません。そういう、未開拓な部分が広く残っているんです。将来的には、世界の優れたブラウザゲーム開発者に、「日本でサービスするならwebゲーさんにお任せしたい」と言われるような、そんなビジネスをしていきたいです。

――崔社長からも、まだ『Webゲー』を知らない読者向けに一言メッセージをお願いします。

崔:繰り返しになってしまいますが、「簡単手軽」という言葉に尽きると思うのです。ブラウザゲームには、既存のオンラインゲームから脱皮した、新しい楽しさがあります。それでいて、サーバにせよ開発にせよ、あるいはユーザー側がPCや時間に対して行わなくてはいけない投資にせよ、あらゆるものが軽くなっている。

 企業として言うならば、そうやって軽くなった分をユーザーに還元していきたいし、ユーザーと一緒にゲームを作っていく。それが可能なのがブラウザゲームだと思います。

 そのためにも、まずはブラウザゲームという概念を日本に広めていく、弊社がその先陣としてやっていくつもりでいます。

――サービス中の3タイトルの中でも、特に『Khan Wars』は「ドイツブラウザゲーム大賞」に輝く作品ですが、ブラウザゲーム大賞なんていう賞があること自体、現状の日本では考えられないことですからね。ジャンルとしての認知度を高めていくというのは、とても大事なことです。本日は長時間、ありがとうございました。

 オンラインゲームは常に進化し続け、グラフィックやサウンドなど、以前とは比べ物にならないくらい充実したコンテンツを誇るようになっている。その一方で、そういったゲームをプレイするために必要なPCのスペックは急上昇し、自分の生活時間にあわせてゲームを楽しむとなると限られた部分にしか触れられない点は、オンラインゲームの黎明期から変わらない問題として残っている。しかし、ブラウザゲームは“みんなで遊ぶ”というゲームの本質部分はそのままに、自分のペースで遊ぶことを可能にしている。

 多様化するプレイヤーのライフスタイルに合わせることが可能で、MORPGのような高い開発費用や人件費、サーバ維持費などをかける必要がない。しかも欧米さらには中国における成功例が既に存在しているブラウザゲームは、今後急速に市場を拡大していくことであろう。その最先端に立ち、日本のブラウザゲームを牽引したいと語るSeedCと『Webゲー』の今後の展開には注目していきたい。(徳岡正肇/アトリエサード)

『SeedCインタビュー』

 本文中でも触れている通り、ブラウザゲームと一口にいっても、その既に四桁を超えるタイトルが世界中でサービスを提供している状況にある。ジャンルも多種多様で、プレイヤー同士の直接対戦がメインになるゲームもあれば、自分のキャラクターをじっくり育てることが中心の、いわゆる育成ゲームもある。

 また、プレイの方向性もプレイヤーの生活スタイルに合わせて多様だ。多くのブラウザゲームでは、何かアクションを起こすと、次のアクションまで短くて10分前後、長いと数時間というテンポでゲームが進み、他のゲームや仕事と同時の“ながらプレイ”が基本となる。しかし、なかには数分刻みで新しい行動を起こせるタイトルもあり、こちらはプレイ感覚的にはMMORPGとほとんど変わらないのだ。

 これから初めてブラウザゲームをプレイしてみたい、という読者には、とりあえず雰囲気を掴むために記事中で紹介している『Webゲー』の『NIGHT FIGHT』をオススメしておきたい。『NIGHT FIGHT』はファンタジー世界の騎士となり、冒険に出て経験点やお金を稼ぎ、他プレイヤーのキャラクターに勝負を挑んで自分のキャラクターを強くしていくのが目的だ。自分と同レベル以上の相手と戦えば、たとえ負けても経験点がもらえる(逆に言えば、自分より強い相手に勝負を挑まれて負けても、経験点が入る)。

 キャラクターの装備や能力値が勝負の結果に大きく影響するため、数多くの戦いを経験させ、その結果をよく分析し、「勝つためにどうしたらよいのか?」という自分なりの答えを導き出すのが本タイトルの醍醐味である。ゲームシステム自体は“簡単手軽”そのものだが、単調な作業ゲームとは異なる戦略・戦術性の高さが、大きな魅力を持っているので、まずは試してみてほしい。

『SeedCインタビュー』 『SeedCインタビュー』 『SeedCインタビュー』

一方で『Khan Wars』は、より本格的なストラテジーゲームだ。ゲルマン、ビザンチン、リトアニアなど9つの民族から1つを選び、自ら国王として君臨する。周囲の国との和平外交、プレイヤー同士が連携をとる同盟という形を選ぶもよし。武力を持って制し君臨することもできるが、反感を買えば複数の国=プレイヤーに襲われ、国もろとも滅ぼされる可能性すらある。『NIGHT FIGHT』『FREEDOM RESIST』に比べると、高い戦略・戦術性が問われるがルールを理解してしまえば、かなりハマれる本格派ストラテジー作品である。


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