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2010年7月12日(月)

【まり探】『ゴースト トリック』は裏『逆転裁判』だった? 開発者インタビュー

文:電撃オンライン

●キャラクターにオッサンが多いのはすべて僕のせいです(笑)

――『ゴースト トリック』では、キャラクターデザインも『逆転裁判』のテイストからガラリと変化しましたが、キャラクターのデザインコンセプトを教えてください。

:今回は構想の段階からゲームっぽくない、イラストのような絵にしたいと考えていました。完全に立体感を消した真正面から描いた世界で、キャラクターは基本的にちっちゃい状態で全身で演技するものにしようと思っていました。それにともないデザインも特徴がわかりやすい、シルエットが目に焼き付いてカラーも目に焼き付く、インパクトのあるデザインを心がけました。

 主人公のシセルは、まさにそのコンセプト通りのキャラクターです。真っ赤な服に、頭はトンガリで。ただ、極端にデフォルメしてしまうとイメージがマンガ的になってしまい、人間ドラマを加えた時に感情移入しにくくなってしまうため、シルエットで強調しながらも現実にいるんじゃないかなと感じる範囲内で収めるよう、デザイナーと相談して作り上げていきました。『逆転裁判』と比べて線が少ないのは、『逆転裁判』が顔などを描き込んでバストアップで見せる方向だったのに対し、『ゴースト トリック』は全身で見せるコンセプトだったからです。

『ゴースト トリック』 『ゴースト トリック』 『ゴースト トリック』
▲赤いスーツにトンガリ頭の主人公のシセル(画像左)。女性陣はキュートな容姿が印象的だった。

――個人的に、今作は女の子のビジュアルがかわいいという印象を受けました。その一方で、イケメンが少ないなと……。

:イケメンが少ないというよりは、オジサンが多いかも。それは僕の責任です。シナリオに沿ってキャラクターを配置していったら、結果的にそうなった感じですね。でも、カッコイイオジサンもいますよね?

――ド近眼の殺し屋ジーゴやカバネラ警部など、男性キャラクターはインパクトのあるキャラクターが多いですね。

:男性キャラクターでは、カバネラ警部が制作チームの中でも特別な地位を占めていました。このゲームはジーゴとヒロイン・リンネの攻防から始まるのですが、最初のステージでは、まだキャラクターの動きがおとなしいんですね。でも1つ1つカスタムでキャラクターのアクションを作る以上は、見るだけで価値のある、このゲームでしか見られないおもしろいものにしなければいけない。では、どこまで変なヤツが出てくるのか、リアリティを感じるシリアスなモーションだけじゃない、このゲームはこんなヘンなヤツもいるんだよ、ということを示すために作ったのが、カバネラ警部だったんです。ですから、他のキャラクターよりも時間をかけて作りました。電話の受話器を取る動作1つも、「これじゃフツーだから、もっとこうしましょうよ」と言いながら作りました。彼によって、みんながこのゲームには、こんなヘンなキャラクターも出てくるゲームなんだなと共通認識することができたと思います。“歩く”動きだけでも1カ月くらいイジっていましたね。そうやって磨き上げた分、チームでも愛着が深いキャラクターです。

『ゴースト トリック』 『ゴースト トリック』
▲開発チームでは特別な存在だったというカバネラ警部。歩いたり階段を上ったりと、すべての動作がインパクト大。立ち止まった時のポーズまでイカしている。

――キャラクターデザインで一番苦労したキャラクターは誰ですか?

:リンネは苦労しましたね。何回か手直しも入りましたし、他セクションから「もっとこうしてほしい」という注文もありました。ヒロインというのは、ある意味「普通」でありながら、でも「普通」ではダメで、みんなの心に残る魅力がなくてはならないから、本当に難しいんです。でも時間をかけて作っただけあって、お気に入りですね。

――キャラクターの名前は、やはり“生死”に関係あるものに?

:はい。本当の意図は彼らをどこの国にもない名前にしたかった、というところですね。。日本の名前でもないし、かといってアメリカやヨーロッパ風の名前でもない、どこの国でもない“おとぎ話風の世界”にしたかったんです。でも、わけのわからない覚えにくい名前を付けてもダメですから。イメージしやすいけれども、国籍がわからないような名前をどうやって付けようかと考えた時に……僕のダジャレ癖が出てしまったんでしょうね(笑)。一応、善と悪で分かれるならば、善の側にいる人はいいイメージの名前にしようとしましたね。

 もう1つ言うと、このゲームにおいてキャラクターは名前ではなく、外見のシルエットや、彼らの置かれた状況で印象づけたいと思っていました。だから、ゲーム中一度も名前が出てこないキャラクターもいます。一応、設定してあったりする名無しのキャラクターもいるのですが、名前を呼ぶ機会がなかったりして。

――その中で“ミサイル”はやはり異色ですよね。やはりモデルは巧さんの愛犬なのでしょうか?

:そうですね(笑)。他のキャラクターはリンネ(輪廻)だったり、カノン(観音)だったり、ジーゴ(地獄)だったり、カバネラ(屍)だったりしますが、ミサイルはまったく関係ありませんからね。アレだけは特別枠です。実際に自分が犬を飼っていなかったら、『ゴースト トリック』にあのキャラクターが登場することもなかったかもしれませんね。犬を飼ってらっしゃる方から見ても、リアリティのある犬になっていると思います。

『ゴースト トリック』 『ゴースト トリック』
▲さまざまな場面で活躍するポメラニアンのミサイル。巧さんが飼っている愛犬がモデルとのこと。

――先ほどカバネラ警部の動きについて話していただきましたが、各キャラクターのなめらかなモーションを作り出すには、やはり苦労なさったのでしょうか?

:実際に苦労したのはスタッフのみんなですけどね(笑)。でも、本当にスタッフには頑張ってもらいました。レンダリングという方式を使い、最初に3Dで大きなポリゴンモデルを作って、それに動きを付けたものを縮小して、ドット絵の形に出力しています。つまり、最終的には2Dのアニメーションなんです。最初にテストした時、アニメーションのきめ細かさに驚いて、この手法でゲームを作りたいなあと思いました。手間はかかるのですが、手間をかけて作るだけの意味があるモーションにしたかったんです。普通に歩くだけなら量産できるけど、キャラクターごとの歩き方の違いを見るだけでも価値があるような、それくらい“尖った動き”にしようと。だから、あえて今回はモーションキャプチャーなどの機材を一切使わずに、アニメーターの手でひとつひとつ、動きを作っていきました。ただリアルなだけのモーションキャプチャーでは作れない、魅力的な動きにこだわりました。でも、どんなムチャな動きでも、しっかりキャラクターの重さが感じられるリアリティは、スタッフの力量によるものですね。

――実際に巧さんがポーズを取ったり動いたりして指示をしたことも?

:ありましたよ。あまりうまく指示できなかったんですが、気持ちはしっかり伝えられたと思います(笑)。やはり普通ではダメなので、一度上がってきたものを何度も壊すくらいの勢いで。もっと上へいくために、1つの動きにつき何回もやりとりして、納得いくまでOKを出さないという作り方をしていました。

――本当にこだわって作られたんですね。やはり今回のテーマは“動き”ということになるのでしょうか?

:グラフィックに関していえば、そうですね。ただ、それよりもっと根本的なテーマに、先ほどもいいましたが“人々の生活を垣間見る”というものがあります。その人々をいかにして印象づけるか、生き生きとして見せるかというところで出てきたのが“動き”なんです。

『ゴースト トリック』 『ゴースト トリック』
▲巧さんがこだわり抜いたという、キャラクターたちの動き。2Dの小さなキャラクターたちが、生き生きと動き回る様子は必見だ。

→次のページでは、難易度調整をめぐる秘話が明かされる!?(3ページ目へ)

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