2011年1月28日(金)
一方、出てくる人間がいちいち個性的なのもこのゲームの特徴。基本的にゾンビたちは平和主義者で、あくまで悪人たちによって奪われた平和な暮らしを取り戻したいだけなんですが、人間たちがおもしろがってニュースにしたり、懸賞金をかけたりするんもんだから、ゾンビを実験材料にしようとするマッドサイエンティストやら、賞金目当ての自称正義のヒーローやら、おかしな連中がどんどんやって来るのです。特に中盤以降では、こうした“悪い”人間たちとの戦いも、もう1つの柱として描かれていくことになります。
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▲ストーリーの合間に挿入されるニュース番組。毎回さまざまなゲストや賞金稼ぎが登場し、ゾンビについて好き勝手しゃべってくれちゃったりします。 |
とことんピュアなゾンビたちに対し、人間たちといえば勝手で、強欲で、傲慢で、見栄っ張りで、ホントに自分のことしか考えてない。こうして見ると、このゲームって完全に善悪が逆転して描かれているんですよね。「でもゾンビだって人間を襲うじゃないか!」って言われそうですが、このゲームのゾンビって、人間を“やっつけ”はするけど、たぶん“殺して”まではいないんです。何度も同じ名前の市民が敵として出てくるし。
欲にまみれた人間のほうが、ゾンビよりよっぽどタチが悪い。ゾンビものとしてはある意味王道のテーマですが、これほどストレートかつ鮮やかに、それを言ってのけた作品はかなり珍しいのでは。途中、あるイベントでゾンビの1人が「私たちは新しい生き方を見つけただけ」みたいなことをしゃべるシーンがあるんですが、そう考えると実はゾンビって、結構ハッピーなヤツらなのかもしれない。そんな風に思ったりもしました。
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▲賞金につられてやってきた人間たちが、時々ボスとして登場。それぞれ個性豊かな攻撃方法でゾンビたちに襲いかかってきます。 |
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▲ある意味最強の敵と言えるカメラマン。早く倒さないと無敵のSWATたちを呼ばれてしまう。これがマスコミの暴力か……! |
エンディングまでに要した時間はだいたい10時間強。こう書くと短そうに思えますが、1クエスト5分くらいのゲームなので、体感的にはかなりのボリュームがありました。またクリア後には、一度倒されたゾンビが復活しない“サバイバル”モードと、強さを引き継いだまま最初から遊べる“ストロング”モードも追加されるため、ボリューム的には十分と言えそうです。
ただクエストの数自体は多いものの、マップや達成目的にバリエーションが少ないため、途中から同じことの繰り返しになってしまったのがやや残念。またせっかくゾンビ自体にあれだけ細かなプロフィールがあるのに、アクションパートになるとみんな一緒に見えてしまうため、「こいつを重点的に育てよう!」といった気が起きにくい。結局、育成についてはほとんど“おまかせ”にしてしまい、最後まであまり思い入れのあるゾンビには出会えませんでした。あ、でも途中イベントがらみで仲間になるアイツには超肩入れしましたけどね! 願わくばすべてのゾンビに、ああいう個性的なイベントやエピソードがあればと思った次第。まあ、あんまり個々のゾンビを個性的にしちゃうと、今度は“ゾンビ”としてのアイデンティティが崩壊しちゃうので、今くらいの個性づけがちょうどいいのかもしれませんが……。
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▲用意されたクエストの数は全部で130(メインクエスト30、サブクエスト100)。すべてのサブクエストを網羅しようと思ったら、たぶん20時間以上は遊べるはず。 |
考えてみれば、ゾンビって扱いやすいんですよね。ヘタに架空のモンスターを出すより説得力があるし、みんな知っているから余計な説明をすっ飛ばして出せる。何より人間じゃないから腕や手を切り刻んでも、頭をふっとばしてもOK。そして今日も世界では何十万何百万というゾンビたちが、モニタの中で殺されまくる。ねえねえ、それってホントにゾンビじゃなきゃダメだったの? みんなホントにゾンビが好きなの?
もしかすると、このゲームはそんな哀れなゾンビたちへの鎮魂歌として作られたのかもしれません。ゾンビって怖い、ゾンビってかわいそう――なんてイメージとは無縁の、ゾンビたちがとことんハッピーになれる世界が1つくらいあってもいい。
世間はまだまだゾンビブーム。今後もゲームに映画にと、ゾンビたちは引っ張りだこの毎日です。でも、画面の中のゾンビたちを嗤(わら)ったり、怖がったりする前に、ちょっとでいいからこのゲームに触れてみてください。きっと今までよりも少しだけ、ゾンビたちのことを“だいすき”になれるはずです。
皆さん、ゾンビは好きですか?(てっけん)
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▲こんなに幸せそうなゾンビ、このゲーム以外じゃなかなか見られません。制作者のゾンビ愛が伝わってきます! |
(C)2011 CHUNSOFT