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2011年12月14日(水)

【電撃PlayStation】『ファイナルファンタジーXIII-2』発売記念! 3人のコンポーザーにロングインタビュー

文:電撃PlayStation

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『ライトニングのテーマ』は今年の自分のベストワークスですね(鈴木)

『FFXIII-2』発売記念 コンポーザーインタビュー
▲鈴木光人氏。代表作は『FFXIII』『The 3rd Birthday』など。

――3人での取り組みということで、お互いの楽曲のことをどういう見ているのか教えてください。

浜渦:水田さんは楽曲に向き合う姿勢に妥協がなく、自分が思い描いたものができるまで作り込むんですよ。おそらく誰もがそうだとは思うんですが、彼の曲はそういうものをより強く感じますね。

 鈴木さんとは長く一緒にやっているので、仕事がやりやすい相棒みたいな感覚ですね。音楽性もそうですし、サウンドが非常に洗練されていて好きなんです。今回1曲ずつお互いの曲を交換してアレンジしてみたんですが、自分が作った『ライトニングのテーマ』を彼に渡せば絶対おもしろくなると思って渡したら、本当におもしろくなって返ってきましたね(笑)。

 その逆みたいなこともしまして、彼が作ったものに僕がピアノを打ち込んでいったんです。オーケストラ曲ばかりのなかでそれをやれたのは楽しかったですね。もちろん2人とも非常に優れたコンポーザーであることは間違いないです。

水田:今回の仕事を始める前に『FFXIII』の曲をあらためて全部聴きましたが、本当にすばらしく、あまりにも目指すべき目標が高すぎて悩みましたね。

 浜渦さんの音楽はゲームに溶け込んでいて、しかもバックボーンというのか、骨格にクラシックの歴史が刻まれてるんです。そこからすべてが派生している気がしますね。うまく言えないんですけど、音楽的な骨格がしっかりしている。

 また、本人には違うと言われるかもしれませんが、曲の中で浜渦さんご自身が気に入っているだろう部分が自分と共通しているのではと思うんです。たとえばちょっとした和音の遊びとか、心をつかまれる部分に僕との共通項が多いと思います。

 鈴木はサウンドデザインとか音響的なセンスなどがずば抜けていて、その分野では、絶対手の届かないところにいるというか。こんなにすばらしい音楽世界を作る人を身近では見たことがないので、このレベルのサウンドを作れる人は世界でどのくらいいるんだろうって、いつも思っています。

鈴木:水田の曲は仕掛けや仕込みが細かくて、実装したときの音のよさが半端じゃないんですよ。この人はミックス的なセンスがすごいあるんだなあって、そこはある種プレッシャーでした。このミックスに合わせないとまずいなあって。だから水田に「プラグインは何を使ってるんですか?」とか、いろいろ聞いたりしましたね(笑)。

 今回最後まで作業をしていたのも水田です。それもどんどんよくなっていくから、職人気質というイメージが今回さらに強くなりました。

 今回、水田が作ったラスボス戦の曲を自分がアレンジさせてもらったんですが、仕上がりを確認してもらうときに水田のブースで聴いたら、自分のブースの音とは違って聴こえたんですよ。スピーカーが違うので聴こえ方が違うという話になって、直すべきか直さないべきかしばらく考えました。最終的には落としどころがあったんですけど、その取り組みはおもしろかったですね。

 浜渦さんの曲は最初の2秒3秒を聴くとわかって、引き込まれる要素があるんですよ。これってなかなかできないことで、聴いた瞬間に鳥肌が立ちますね。『ライトニングのテーマ』をやったときは、カッコいいですねってメール送ったら、じゃあリミックスやってよって返ってきたんです。

 水田とは逆に、自分は聴いてるところが違うようで、うまい具合に隙間に入りやすいというか、完成されてるんだけど別物の要素が入れやすいんです。今回『ライトニングのテーマ』のアレンジをやらせてもらったのはすごくよかったですね。今年の自分のベストワークスですね。

水田:こんないいコンビないですよ。横から見ていて本当にそう思います。

浜渦:曲をアレンジするとき、音を削ったり足したりして原曲を殺してしまうパターンがありますが、彼だと自分の意図したものがほとんど全部残るんですよ。彼にお願いして返ってきたものほぼ絶対満足できる。

 レコーディングとかで誰かに渡すと自分がどこか我慢しないといけない部分がある反面、世間一般の人から見たらいいものになってる。でも彼が手をかけると自分も満足かつ、一般の人にもより聴きやすい状態になるんです。

 以前自分が渡した楽曲に、延々とノイズが入っていたりしたものがあったんですけど、そのノイズを曲の最後にうまく入れて決めにしてくれたりしたんです。普通だったら返品交換を言い出すところを、あえてネタにしてくれたりとか。

鈴木:浜渦さんはこう言ってますけど、初めて一緒に仕事したときに浜渦さんの曲のいろんなパーツを抜きすぎてスカスカ状態になり、ムッとさせてしまったりもしました(笑)。そういう段階を経て、今があるわけです。

浜渦:ただ、彼はここからさらに進化できるかなって思うんですよね。逆に次はまた音を抜いてくるかもしれないけど、それを私が「なるほど」と思えるようになっているかもしれない。あまり長い言葉やメールは交わしませんが、そういうデータ上のキャッチボールみたいなものがあって、それが楽しいですね。

――言葉じゃなくて相手の意図を感じられるのっていいですね。今後はそこに水田さんが入ってより違うものができたら楽しそうですね。

水田:そうですね。今回をキッカケに、今後混ぜてもらえるようにがんばります(笑)。

――では今回発売されるCDの曲のなかで、聴いてほしい、オススメされる曲を教えてください。

浜渦:1番自分らしい作業ができたのは『時空の狭間』じゃないかな。鈴木さんの曲を自分がアレンジしたものですね。もうある程度骨組みができてるなかにピアノを入れるんですけど、調整のとれないかつ不協すぎない音をものすごくていねいに探したんですよ。『女神の騎士』もいいですけど、自分らしさならこれが1番かもしれません。ぜひ聴いてもらいたいですね。

水田:自分のお気に入りは鈴木の『ヒストリアクロス』です。サウンドももちろんですけど、こう展開するかっていうアイデアが豊富ですよね。この1曲にそんなにたくさんイメージを投入するなら、その労力で3曲はできそうなのになって思ってしまうほど、惜しげもなくこの曲に使ってるんですよ。

鈴木:自分は先ほどもお話した『ライトニングのテーマ』ですね。ピアノと弦だけで成り立ってるところと、裏に仕掛けてあるものが気に入っています。仕事していて初めてわかることですが、いい曲の譜面とデータってすごくキレイなんですよ。大変感銘を受けましたし、いろんな意味で思い入れ深い曲になりました。

――最後にメッセージをお願いします。

浜渦:今回のサントラは三者三様というだけでなく、3つの魂みたいなものがぶつかりあって爆発した、これまでにない音楽になっているので、ぜひ聴いていただきたいなと思います。

水田:普通とは違うものをいろいろ盛り込んだつもりなので、「こういうのもアリだな」というふうに楽しんでいただければ幸いです。「『FF』の曲といえばこういうもの」というのがそれぞれにあるのかもしれませんが、そういう概念を突き崩すきっかけになればすごくうれしいですね。

鈴木:前作で浜渦さんが完成させたものにさらに2人が加わり、新しいものがうまく表現できているのではないかと思います。ゲームでこういうふうに曲が流れるというのをサントラの演出でもちょこちょこ入れているので、ゲームをやってる人は全体の流れを聴いて思い起こしてもらったり、プレイしてない人はこういうふうに流れたりするんだと楽しんで聴いてください。

★この記事は電撃PlayStation Vol.508掲載の内容をもとに再編集したものです。

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データ

▼『ファイナルファンタジー XIII-2 オリジナル・サウンドトラック』初回生産限定盤
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2011年12月14日
■価格:4,800円(税込)
 
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▼『ファイナルファンタジー XIII-2 オリジナル・サウンドトラック』通常盤
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2011年12月14日
■価格:3,990円(税込)
 
■『ファイナルファンタジー XIII-2 オリジナル・サウンドトラック』通常盤の購入はこちら
Amazon.co.jp

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