2012年5月7日(月)
──システムを中心としたゲームデザインは羽入田さんが担当されたとのことですが、どのような流れでゲームデザインを考えていったのでしょうか。
羽入田:iOS用のアプリということで、バトルにタッチ操作を盛り込むとおもしろそうだと感じていました。
▲バトルでは、画面上の9つのボックスを指でタップ&スライドさせることで技を使用可能。技ごとに異なるコマンドが設定されており、アクションゲームのようにスピーディなテンポでプレイできる。 |
──難易度について意識された部分は?
羽入田:前提としては、さくさく気軽に遊べる形をイメージしつつ、ゲームとして歯ごたえを感じる部分も用意したいというバランスで考えました。そのさじ加減はかなり悩みましたね。
──ジャンルとしてはA・AVGですが、RPGのような成長要素はあるのでしょうか?
羽入田:経験値を稼いでレベルアップする意味での成長要素はありませんが、メインシナリオの進行に応じて主人公が自動的に強くなっていく形で、バトルで使える技も増えていきます。ただ、シナリオクエストをクリアしないと覚えられない隠し技もあります。
──バトルの際に、技の使い分けは重要になるのでしょうか?
羽入田:そこまでシビアなバランスではありませんが、新しく覚えた技を使っていったほうがいいと思います。
──3Dダンジョンの部分は少し難しそうに見えますが、実際はいかがですか?
羽入田:演出的に3Dに見せていますが、絵は2Dですし、マッピングが必要なほど複雑な構造ではありません。それなりのボリュームはありますけど、遊び続けているうちに構造を把握できると思います。
赤尾:“入り口へ戻る”という部分をタップすれば、ほとんどのシーンですぐにダンジョンから脱出できます。かなりユーザーフレンドリーな仕様ですね。
▲時にはダンジョンを探索して、モンスターを倒しながら最深部を目指すことに。簡単にダンジョンから脱出できる機能を用意するなど、遊びやすく作られている。 |
羽入田:あまりシビアにしたくなかったんですよ。バトルに負けた場合のデスペナルティ的なものもほとんどないので、気軽に楽しんでもらえると思います。
──コアなユーザーが楽しめる、やり込み要素は用意されているのでしょうか?
羽入田:メインシナリオとは別の部分で、いろいろと用意しています。特にコロシアムに登場する敵の中には、初めて戦った時に「こんなの勝てるの!?」と絶望するほどの超強敵もいます。
▲ケタ外れの強敵も登場するというコロシアム。がんばって戦いを制覇すると、受付嬢の反応が変わるらしい。 |
──非常に雰囲気があるキャラクターばかりですが、デザインをする際に意識したことはありましたか?
皆葉:僕はもう40歳なんですけど、『ウィザードリィ』をかなり遊び込んだ世代でして。ファンタジーと言えば『ウィザードリィ』が思い出される部分もあるので、ちょっと意識した部分はあるかもしれません。
──王道のファンタジーの世界観を意識したということでしょうか。
皆葉:当時の世界観を再現することを意識したわけでなく、「自分を含めた『ウィザードリィ』を遊んでいた世代の人が、今見たいと思うファンタジーってなんだろう?」と考えながら雰囲気を出していったニュアンスですね。
──デザインに際して使われた画材や意識した描き方があれば教えてください。
皆葉:僕は基本的に、ボールペンを使った一発描きをしているんですよ。勢いを出そうと思って手書きを意識しているんですけど、だいたいデッサンが狂って、最終的にはフォトショップでちょっと修正することがあります(笑)。
──最初にデザインしたキャラクターは誰でしたか?
皆葉:ブラート(デイランドの王子)です。最初は主人公から描き始めようと思っていたんですけど、このゲームの主人公はイラストがないんですよ。
▲【ブラート】軟弱な性格をしている、デイランドの王子。主人公として考えていたデザインをもとにブラッシュアップしたとのこと。 |
野島:主人公はプレイヤー自身ですからね。
羽入田:名前も自分で決める形です。
皆葉:とはいえ、実は自分の中で主人公のイメージとして考えていたキャラクター像がありまして、それをどこにはめようかと考えた結果、王子様がしっくり感じたんです。
──描きやすかったキャラクターはいましたか?
皆葉:ネオン(ナイトランド王家の騎士である中年の男性)ぐらいが、自分を投影しやすくて描きやすかったですね。ブラートやネオンを軸に、「このキャラクターはネオンより少し若くしよう」など、全体的なバランスを考えていきました。
▲【ネオン】ナイトランド王家の騎士。やや年配のダンディなキャラクターとなっている。 |
──ディレクションを行った羽入田さんから見て、皆葉さんからあがってくるデザインはいかがでしたか?
羽入田:とにかく素晴らしいデザインで、ありがたかったですね。クオリティはもちろんなんですが、仕事に対する真剣なスタンスやスピード感がすごくて。とても印象に残っているのは、お仕事をお願いしようと思ってセッティングした最初の打ち合わせでの出来事です。喫茶店で「こんなゲームを考えているんです」とお話したところ、カバンからノートとペンを取り出されて、ササっとキャラクターを描き上げて、「こんな感じでいかがですか」と差し出されまして。
植松:マジで(笑)。さすがだね。
羽入田:驚きながらも、それがまた僕のイメージ通りで、もうゾワゾワとしちゃいました。とにかく感動の一言でしたね。その時におおまかな方向性を打ち合わせて、あとは皆葉さんにおまかせしました。
皆葉:かなり自由にやらせていただきましたけど、細かい部分はいろいろと話を聞いて調整していきました。例えば、“かわいい女性”というイメージも人それぞれなので、「羽入田さんはこういう女性が好きなんじゃないかな?」みたいな部分を探りながらデザインしていきました。
羽入田:道理で僕好みの女性キャラクターが多いと思いました(笑)。
野島:皆葉さんから「服装は何世紀くらいがモチーフなのか」と聞かれたことを覚えています。
羽入田:服の素材についても知りたがっていましたね。
野島:皆葉さんからそんな質問を受けて、それに答えるために何冊もそういう本を購入したんですよ。1万円近く使ったから、それを是が非でも回収したいと思っています。だから、このゲームは特に売れてほしいですね(笑)。
羽入田:いろいろと話をして、“金属的なものはあまり身につけていない”とか“レザーを主流にしている”とか、細かい部分の世界観を決めていきました。
皆葉:そういった話を受けて、中世のファンタジーの世界観から未来に行き過ぎないように意識しました。
──個々のキャラクターのデザインは、どのような流れで行われたのでしょうか。
羽入田:キャラクターの特徴を1行くらいで簡潔に書いたリストを私が作成して、野島さんにチェックしていただいて、皆葉さんに発注した流れです。
野島:本当に簡潔でしたね。“赤ら顔のオヤジ”とか(笑)。
羽入田:基本的には皆葉さんにおまかせする形だったので、あえて細かい指示はしませんでした。
──スタッフの間でお気に入りのキャラクターは?
羽入田:すべて素敵で、1人は選べないですね。ゲーム中に1回しか登場しないような脇役についてもしっかりデザインされているので、ぜひ注目してほしいです。細かい話ですけど、コロシアムの受付嬢がかなりセクシーなデザインであがってきたんですよ。そこで野島さんと相談して、言葉遣いをよりセクシーにする形でお願いしました。
野島:ちなみに、コロシアムにはめちゃくちゃ強いモンスターも登場するんですけど、それを倒すと受付嬢の態度がちょっと変わります(笑)。
▲【夜の王】ナイトランド王家の王で、ミクリアの父。当初は青い肌をした獣人としてデザインされていたという。 |
▲【ミクリア】夜の王の娘である、ナイトランド王家の王女。金髪で少し勝気そうな目をした美女として描かれている。 |
▲【エディット】デイランドの王都ビリウムの女性商人。いろいろと主人公につっかかってくるようで、野島氏のお気に入りとのこと。 |
──ボツになった幻のキャラクターデザインはあるのでしょうか。
羽入田:リテイクはほとんどありませんけど、ちょっと悩んだのが夜の王のデザインでした。最初は人間じゃなくて、青い肌の獣人のようなデザインがあがってきたんです。それはそれでかっこよかったんですけど、夜の王の娘であるミクリアは人間の女性としてデザインされていたので、これはどうしたものかと(笑)。
皆葉:“夜の王”という言葉のイメージを先行してデザインをしてみたんですけど、娘がいるということを意識してなくて(笑)。
野島:獣人のデザインをいただいた時に、その絵を受け入れる設定をいろいろと考えたんですけどね(笑)。でも、そうするとまた世界観が広がっちゃうなあって。そんなわけで羽入田さんに、「もし間に合うようならば、皆葉さんに描き直してもらえるように説得してみてください」とお伝えしました。
羽入田:皆葉さんにお話をしたところ、すぐに人間で再デザインしていただけました。
──野島さんのお気に入りキャラクターは?
野島:エディット(主人公につきまとう女性の商人)が、エッチくてかわいいです(笑)。
皆葉:すごい表現が来ましたね(笑)。それは、顔がセクシーってこと?
野島:(隣に座る赤尾さんと腕を組みながら)こんな感じで話しかけてくるイメージ。
皆葉:ああ、ボディランゲージで接してくる感じということか。
野島:そんなシーンを想像しながらセリフを書くのが楽しかったです。
→名曲ぞろいの植松さんの音楽の聴きどころは? スマホ用アプリ開発に関する本音も激白!(3ページ目へ)
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