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2012年6月1日(金)

会員数600万人以上を誇る『ドラゴンコレクション』の生みの親に聞く大ヒットの秘密とゲーム作りのこだわり

文:電撃オンライン

■あえて作り込まないという言葉の真意とは? ソーシャルゲーム初挑戦の苦労談

――制作当時、まだソーシャルゲーム制作のノウハウが少なかったと思いますが、苦労された点はありましたか?

兼吉:技術的な問題より、概念論的な部分の問題が大きかった気がします。端的に言うと、「ソーシャルゲームとは何か?」ということについて明確な定義が難しく、その意識をスタッフ内で共有したり、理解してもらったりすることが大変でしたね。

――具体的にはどういった部分でしょうか?

兼吉:例えば、ソーシャルゲームはお客様のみなさんと一緒に育てるという考え方です。長くパッケージゲームを作っていると、自分が考えるおもしろさを前面に出して、完成形としてお客様に提供しようとすることが多いです。この考え方は決して間違いではありませんが、オンラインで常にアップデートしていけるソーシャルゲームにおいては、ちょっと考え方を変える必要があると思うんです。

――オンラインゲームのようにアップデートができるのは強みですね。

兼吉:そういう意味では、オンラインゲームに近い部分はあります。ソーシャルゲームはサービス開始後にお客様の反応を見ながら最終調整をして、完成度を高めていくという前提があります。だから、時にはあえて“作り込まない”という選択と勇気も必要になるんです。

――“作り込まない”と聞くと、ちょっとネガティブな印象を受けますが……。

兼吉:言い方を変えると、あとでいろいろな形に対応できる幅の広さを残してゲームの設計を行うという考え方です。サービス開始の時期からガチガチに作り込んでしまうと、お客様からの意見を反映したいと思っても、対応が難しくなってしまいます。そういった先々の展開を考えたうえでの考え方をスタッフ内で共有していくのは、少し時間がかかりました。

――ユーザーの反応は、どのような形でリサーチしているのでしょうか。最近はデータマイニングのように、ユーザーのアクセス傾向から分析を行う手法が進んでいるようですが?

兼吉:プレイ人数の規模が大きいので、たしかにデータマイニングの有用性は高まってきているとは思います。ただ、個人的には数字やデータに頼り過ぎる分析は、逆に危険だと感じる部分もあるんです。だから、どちらかというと公式コミュニティでのお客様の反響を見て、どう対応するかを考えることが多いですね。

――データよりも公式コミュニティのほうにヒントが隠されている感じですか?

兼吉:データを軽視するわけではありませんが、ソーシャルゲームにおいて、生のコミュニケーションはとても大きな要素ですから。お客様同士が交流を行う公式の掲示板に目を通すことは、ほとんど通常の業務の一環になっているぐらいです。

『ドラゴンコレクション』 『ドラゴンコレクション』 『ドラゴンコレクション』
▲他のプレイヤーとは秘宝をめぐってバトルを行うこともあるが、協力してボス敵に挑むこともある。ユーザー間でのコミュニケーションも、本作における重要な要素だ。

――なるほど。たしかに概念論的な部分での問題に苦労されたんですね。それでは、プログラミングなどの技術的な面に関してはスムーズに進んだということですか?

兼吉:ノウハウが少ない状況でソーシャルゲームの制作や運営にチャレンジしたわけですから、すべてがスムーズにトラブルなく進んだわけではありませんけどね。どうしてもパッケージゲームとは異なる知識が必要になるので、こればかりは実際に経験して、その都度対処していくしかないという感じでした。サービス開始初期は、アクセス遅延によってデータが更新されなかったことがあり、お客様にご迷惑をおかけしてしまった時期もありました。

――ソーシャルゲームという新しいビジネスモデルを動かすにあたって、課金形態といいますか、どうやって収入を得るのかと考えることも大変だったと思いますが、いかがでしたか?

兼吉:おもしろいゲームを作って、それをお客様に遊んでいただくことが一番だと思っています。今の自分の立場としてはビジネス的な部分を考えることも求められてはいますが、根っこの部分はゲームとしての楽しさを大事にしたいんですよね。考え方としては、お客様に愛されるコンテンツを創り、多くのお客様を集めることができれば、しっかりとした収益が上がると思っています。おもしろいゲームを作れば遊ぶ人も増えるはずというストレートな気持ちです。

――そういった考え方が『ドラゴンコレクション』の大ヒットにつながったんですね。その手応えは、サービス開始直後から感じられましたか?

兼吉:実はそれが、サービス開始初日は登録者数の数字があまりに悪くて、我々スタッフもみんな落ち込んでいました……。

――え? そんなに悪かったんですか?

兼吉:当時は事前登録のような仕組みもありませんでしたし、ソーシャルゲームを告知する媒体も限られていました。正直なところ、『ドラゴンコレクション』はお客様の目に入らず、埋もれてしまうかもしれないと覚悟していたんですが、翌日以降にものすごいペースで会員が増えていったんです。

――その理由はなんだったんですか?

兼吉:ゲーム内に組み込んでいた、お客様が別のお客様を誘うシステムのおかげです。本作をプレイしたお客様が、従来のソーシャルゲームとは違うゲーム性に気付いてくださって、知り合いをどんどんと誘い始めてくれたんです。こうして一気に会員数が増えていきました。ソーシャルゲームにおけるお客様同士の交流や口コミの強さについて、すごく実感できた出来事ですね。

最後の質問として『ドラコレ』の続編の可能性について聞きました!→(3ページ目へ)

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■『ドラゴンコレクション』URL
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