2012年6月1日(金)
人気ソーシャルゲーム『ドラゴンコレクション』の生みの親であるコナミデジタルエンタテインメントの兼吉完聡氏へのインタビューを掲載する。
『ドラゴンコレクション』は冒険や対戦を通じてモンスターカードや秘宝を集めながら、最強のドラゴンマスターを目指すRPGで、登録会員数が600万人を突破しているソーシャルゲーム(2012年3月末時点)。その生みの親であり、同社ドラコレスタジオでエグゼクティブプロデューサーを務める兼吉氏にお話をうかがい、クリエイターとして注力した点や制作秘話、知られざる苦労話などをお聞きした。
●株式会社コナミデジタルエンタテインメント
ドラコレスタジオ 兼吉プロダクション
エグゼクティブプロデューサー
兼吉 完聡
▲『メタルギア ソリッド 3 サブシスタンス』の制作などを経て、『ドラゴンコレクション』の企画、ディレクション、プロデュースを担当。現在はソーシャルゲームの制作を中心とした制作スタジオ“ドラコレスタジオ”のエグゼクティブプロデューサーとして、さまざまなプロジェクトの指揮をとっている。 |
――まずは『ドラゴンコレクション』の企画が生まれた経緯について教えてください。
兼吉:今から2~3年前になりますが、ソーシャルゲームのオープン化が始まった当初は、ゲームメーカーが作ったものよりもIT系の制作会社が作ったゲームが人気を博している状況でした。ゲームメーカーではヒットするソーシャルゲームを作れないという風潮すらあった時期ですが、そんなことはないだろうと。むしろ、ゲームメーカーだからこそ、ゲームとしてしっかり楽しんでもらえるソーシャルゲームを作れるはずだと、『ドラゴンコレクション』の企画に取りかかりました。
――当時、ゲームメーカーから出されていたソーシャルゲームは、それまでゲーム機で成功して知名度があるタイトルを題材とする流れが多かったと思うのですが、完全オリジナルとなる『ドラゴンコレクション』の企画はすんなりと社内を通ったのでしょうか?
兼吉:やはり最初は、周囲からなかなか理解が得られませんでした。そもそも当時のソーシャルゲームのセオリーは、身近な日常をテーマとするものが多かったんです。農園で野菜を育てたり、店を開いて物を売ったりするゲームですね。そんな状況で自分が提出した企画書は、ドラゴンやカード、ファンタジーやRPGといったものをテーマにしており、当時の流行とは真逆のものでしたから(笑)。
――逆に、そんな状況を知ったうえで、なぜファンタジーを選んだのでしょうか?
兼吉:奇をてらったわけではないんですよ。我々が得意とするゲームらしいゲームとして考えたら、ファンタジーRPGというのは王道なんですから。自分たちが得意として、自分たちが遊びたいゲームの形を考えた結果として、それほど不思議な選択ではなかったと思います。社内にもその部分を強くアピールして、なんとか我々の熱い気持ちが伝わったのか、最終的に制作にGOサインが出ました。
▲サービス開始当時、ソーシャルゲーム業界ではある意味で異端だったファンタジーRPG。だが、その世界観が多くのゲーム好きな人たちの心をつかんだ。 |
――なるほど。そんな流れで王道感があるRPGの路線になったのですね。それでは、ゲームのキモとなるシステムやゲームデザインについては、どんなアイデアをもとに考えていったのですか?
兼吉:当時のソーシャルゲームで主流だった要素について、個人的にどうしても気になった部分がありました。それは、アイテムが壊れるという仕組みです。有料か無料かを問わず、自分が苦労して手に入れたアイテムが壊れるのって悲しいじゃないですか。
――ああ、わかります! 自分にも経験がありますね。せっかく強力なアイテムを手に入れたのに、壊れるのがもったいなくて、結局使わずに遊んでしまったことがあります(笑)。
兼吉:だから、自分のお気に入りのアイテムは壊れずに、ずっと使うことができるような仕組みを考えました。そこを出発点にした結果、モンスターのカードを育成することができたり、リーダーカードとして設定して友だちにアピールできたりと、現在の形になっていきました。
――他にも『ドラゴンコレクション』ならではのユニークな要素はたくさんあると思いますが、そういった要素は、企画書の段階から盛り込まれていたのでしょうか?
兼吉:そうですね。カードをコレクションしたり育てたりするといった主軸の部分は、かなり早い段階から考えていました。ただ、個人的にソーシャルゲームはお客様のみなさんと一緒に育てるというか、みなさんの声を聞きながら完成度を高めていく部分が大きいと思っています。たとえばサービス開始当初は、デッキ構築の仕組みをシンプルなものにしていましたが、「もっと自由にカードを編成して遊びたい」という気運が高まってきたので、それに対応してバトルやデッキ構築の戦術性を高めました。
▲モンスターのカードを育成して、さまざまな特技を使いこなして戦うという『ドラゴンコレション』ならではのゲーム性は、企画の当初から盛り込まれていた。 |
――『ドラゴンコレクション』というタイトルはスムーズに決まったのでしょうか?
兼吉:ソーシャルゲームはゲームを気軽に遊ぶ方も多いということで、わかりやすいタイトルが一番だと思いました。「ドラゴンをコレクションするんだから『ドラゴンコレクション』でしょ」というスタンスで、企画書の段階からまったく変わっていないですね。
――ちなみに『ドラゴンコレクション』の略称は、スタッフ内でも『ドラコレ』なんでしょうか?
兼吉:まさに『ドラコレ』ですね。だからスタジオ名にも『ドラコレ』とつけました。
――『ドラゴンコレクション』の大きな魅力として、カードに描かれたバラエティ豊かなモンスターがあると思います。そのデザインはどんな流れで行われているのですか?
兼吉:ソーシャルゲームという新しいジャンルのゲームということで、器用にいろいろな物をしっかりと描けるデザイナー複数名でデザインをしています。リーダーとして、制作初期から本作に携わっている人物がクオリティのコントロールを行っているので、全体的なデザインのテイストのバランスはとれていると思います。
――モンスターのデザインを発注する際に意識していることはありますか?
兼吉:そこは原則的にデザイナーの感性にまかせています。ただ、携帯電話の液晶で見る場合、サムネイル的に小さくカードが表示されるケースが多いため、縮小して表示しても見栄えがよく、カードの種類の判別がつくように意識してもらっています。だから全体的に線は太くして、細かくなりすぎないデザインということを重視しています。
▲かわいいものからかっこいいものまで、多彩なモンスターのデザインも本作の魅力の1つ。 |
――これまでの期間限定イベントなどで、少しずつ世界観が明かされている部分がありますが、そういった世界観設定はどなたが担当しているのでしょうか?
兼吉:初期設定や初期イベントは私のほうで考えました。本格的な世界観や特殊な用語を押し出すことは、ストーリーが好きなお客様には喜ばれると思いますが、あまり凝りすぎると、多くのお客様に楽しんでいただけないものになってしまいます。誰でもわかる王道ファンタジーの世界観として見せることを心がけています。
あえて作り込まないことも大事!? 兼吉流ソーシャルゲームの作り方→(2ページ目へ)
(C)Konami Digital Entertainment
■『ドラゴンコレクション』URL
http://pf.gree.jp/1