2012年6月23日(土)
――科学アドベンチャーシリーズは“99%の科学と1%のファンタジー”というのがシリーズを通してのテーマになっていますが、他に根幹になるようなコンセプトはあるんでしょうか?
科学アドベンチャーって、作品に出てくるキーワードのひとつひとつをググってみたときに「本当にあるんだ、これ」となるようなものを積み重ねてできているシリーズなんです。今回もいろんなキーワードが出てきますけど、その中で僕らがこの作品用に作ったものってそんなになくて、ほとんどが現存する、科学的なものや都市伝説的なものなんです。
そんな感じで近未来の科学をいろいろと調べて先取りして、おもしろいなと思って取り込んだネタがあとにニュースになったりすると、最高うれしいんです。以前、Yahoo!のトップニュースに“人工衛星が降ってくる可能性をNASAが示唆”っていう記事と、“CERNが光速を超える物質をどうのこうの”っていう見出しが並んだことがあって。それは思わず画像保存しました(笑)。
『ロボティクス・ノーツ』でも同じような現象が起こるとおもしろいと思うし、実際出てくると思うんです。こういう現象は科学アドベンチャーシリーズを作っているクリエイターとしてのだいご味でもありますね。
――君島レポートにも出てくる“太陽嵐”とかは、まさに最近話題になりつつありますよね。
そうなんです。ただ太陽嵐は、マヤ暦の予言がもし本当になるとしたら……というので、12月に絶対話題になるだろうと踏んでいたんですが、今だとちょっと早すぎますね。少なくともゲームの発売後に話題になってくれないと。なので「(太陽の)黒点よ落ち着け!」と(笑)。
――爆発はまだ待て! ってことですね(笑)。
あとシリーズを通して意識しているのは、過去の作品の世界をなかったことにしないことですね。2009年の渋谷崩壊、2010年のラジオ会館崩落っていう過去に起こった事件のことを、新しい作品でも主人公たちは知っているんです。科学アドベンチャーシリーズは作品ごとにテーマもイラストレーターも全然違いますが、そこが地続きで繋がっているのがすごく重要なんです。
――世界が記憶を共有しているのが大事なんだと。
そのほうがリアルなんですよ。『シュタインズ・ゲート』で“世界線”っていう言葉が定義されましたが、その世界線が大分岐するポイントをクローズアップして物語を追いかけているのが科学アドベンチャーシリーズなんです。今、僕らが言っている一番最初に世界線が大分岐したであろう年っていうのが、IBM5100が作られた1975年なんですけど、その後は1990年の湾岸戦争だったり、2000年だったり。
2000年問題はすごく不思議で、あれだけ世界的に大問題が起こるって心配していたのに、何も起こらなかった。あれってどう考えても、僕ら全員が奇跡的に無事だった世界線に移っただけなんじゃないか? と。『シュタインズ・ゲート』のラジオ会館の崩落も、世界線が違うので理由は別になっていますけど、結局は収束されてラジオ会館がなくなるっていうことは実現しているんですよね。そして今作の舞台である2019年というのは、二足歩行ロボットが世界中でブームになっており、そのときに、とある種子島の高校生が作っちゃったものによって、世界線が大分岐したという年なんです。
――では逆に、従来の作品と比べ、『ロボティクス・ノーツ』であえて変えたところはありますか?
初めて青春ものというか、爽やかなテイストを入れたことですかね。『カオスヘッド』も『シュタインズ・ゲート』も、冒頭からして何かありそうな感じでしたけど、今回は冒頭は爽やかに見えるんだけど、どっちに転ぶかわからない。種子島の青い海とか青い空がキーワードになっていますけど、それは本当の青さなのか、それともミスリードなのか。その先にどんな物語があるかっていうテーマを投げかけた感じでもあります。
でも、ティザームービーや体験版でもわかるように、爽やかだけじゃない怪しい空気はバンバン出てますからね。
――今回は主人公たちが高校3年生という設定なのも、大きな要素のひとつですよね。否が応にも、卒業後にもうすぐ現実が待っているという。
恋愛だけをテーマにしたギャルゲーとかだと、受験とかのネタは置いておいて恋愛を中心に描けるので、高校2年生という設定が多いんですよ。でも高校3年生になると、その後の自分の人生がどうなるのか、次の一手で決まるような不安が一般的にあるじゃないですか。
種子島のような島に住む高校3年生なら、きっとなおさらだろうと思ったんです。島の産業に就くのか、島を出て鹿児島や本土に行くのか。本当に運命の大分岐点なんですよ。
――進学するにも島を出ないといけないですからね。
その受け止め方はキャラクターそれぞれですけど、そういう重要な時期にロボ部の話が動いていき、もしかしたらそれが未来に繋がっていくのかもしれないという思い。僕もそうでしたし、高校3年生のときに誰もが持った悩みみたいなものも描かれているので、共感してもらえる部分があると思います。
――ストーリー的には、体験版に収録されたPHASE01以降、どんな展開をしていくんでしょうか?
『カオスヘッド』も『シュタインズ・ゲート』も第1章で事件の入口まで行きましたけど、それと比べると『ロボティクス・ノーツ』の1章はまだキャラクター紹介が終わったくらいで、本当の事件は全然始まっていないんですよ。だから、もう1~2章は青空が見られるかもね、というところでしょうか。本音を言うと、体験版で3章くらいまでは配信したかったくらいなんです。本当の意味での『ロボティクス・ノーツ』はそこから先だったりするので。
(C)MAGES./5pb./Nitroplus
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